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共通の敵=IS壊滅後の脅威拡散と新たな紛争拡大の懸念

 イラク首相が勝利宣言をしたが・・・・ポスト「イスラーム国」について、欧州、アジアへの戦闘員の流入にわる脅威の拡散、「共通の敵」がなくなって中東での新たな戦国事態の到来の懸念についてのいくつかの記事。
IS掃討で影響ましたイランなどシーア派勢力とイラン封じ込めに奔走する米、湾岸諸国との対立。また大きな貢献をしたクルド勢力は、イラク内でより強固な自治権をもとめており、独立の動きに発展するならトルコに大きな影響を与えることになる。
中東調査会は、この6月に“アメリカ軍、トルコ軍と両軍の配下の武装勢力諸派の動きは、「アサド政権打倒」とも「「イスラーム国」対策」とも本質的には無関係の行動となっている”と分析している。
 またアメリカがぐちゃぐちゃにした中東の安定化へ貢献したイランを中心としてシーア派勢力とロシア、それと中国との関係についてのレポート。
 「対テロ戦争」という暴力で破壊された秩序と暮らしの回復には途方もない困難と労力が必要なことをあらためて実感する。
【IS脅威、世界に拡散=中央アジアへ戦闘員流入か―欧州で共鳴者のテロ続発 時事7/11】
【「イスラム国」壊滅はさらなる戦火を呼ぶのか?|「ポストIS時代」への各国メディアの予測 2017.7.5  クーリエ・ジャパン】

【モスル奪還後、ISの弱体化によって中東は「新・戦国時代」に陥る! クーリエ・ジャパン6/14】
【シリア:イラクとの国境地域の緊張が高まる 中東調査会6/16】
【中国の一帯一路と中東 2017年7月2日  田中 宇】

【IS脅威、世界に拡散=中央アジアへ戦闘員流入か―欧州で共鳴者のテロ続発 時事7/11】

 【エルサレム、モスクワ時事】過激派組織「イスラム国」(IS)の活動拠点だったイラク北部モスルが奪還され、IS掃討作戦は一定の成果を挙げた。

 しかし、ISの過激思想は欧州やアジアなど世界各地に拡散。組織としてのISが弱体化しても、戦闘員や共鳴者が世界各地でテロを起こす可能性は高く、「テロとの戦い」に終止符を打てる日はまだ遠い。

 ◇アフガン経由で流入か
 今後、IS残党の流入が懸念されるのが中央アジア諸国だ。南方のアフガニスタンではISが勢力を拡大させており、ロシアのプーチン大統領は「ISが中央アジアとロシア南部を不安定化させる新たな計画を練っているという情報がある」と指摘。「アフガンを拠点とするテロリストがわれわれの国々で活動しようとしている」と強い懸念を示した。

 中央アジアは強権的な国家が多く、貧富の差も大きい。貧困にあえぐ若者を狙い、イスラム過激派が勧誘を行ってきた。中央アジア諸国からは約5000人がISに参加したとみられ、イラクで行き場を失った戦闘員が帰還すれば大きな脅威となる。ロシア・サンクトペテルブルクで4月に起きた地下鉄爆破テロの実行犯はキルギス出身で、シリアでISの訓練を受けた可能性があると報じられている。

 東南アジアでもISが拠点を設ける動きが出ている。イスラム教徒が世界最多のインドネシアでIS支持者によるテロが頻発しているほか、政情不安に悩まされているフィリピン南部でもISの活動が活発化している。

 ◇対テロ戦「新たな始まり」
 欧州では、ISの共鳴者によるとされるテロ事件が続発している。英国では3月以降、テロ事件が4件発生し、30人以上が死亡。そのうち3件について、ISが犯行声明を出し「(対IS)有志連合参加国の人々を標的にした」などと主張した。近年、イスラム過激主義に心酔した青年たちによるテロが相次いでいるフランスでも、パリのシャンゼリゼ通りで4月、銃撃テロで警官1人が死亡した。

 IS情勢に詳しいアラブ系イスラエル人の政治・軍事アナリスト、ラフェア・アブタリフ氏は、ISの支配地域や財源が縮小する中、「(ISは)旧来の『国家』戦略でなく、自分たちの思想を欧州をはじめ世界中に広げる新戦略に転換しつつある」と指摘。「テロとの戦いは終わるどころか、新たな始まりを迎えるだろう」と語った。 

【「イスラム国」壊滅はさらなる戦火を呼ぶのか?|「ポストIS時代」への各国メディアの予測 2017.7.5  クーリエ・ジャパン】

シリア北部のラッカ、イラク北部のモスル。IS(いわゆる「イスラム国」)の重要拠点がまもなく解放されるだろうと日本でも報じられている。

だが、その後はどうなるのだろう。シリアやイラクで安定した行政組織が機能するのだろうか。米紙「ワシントン・ポスト」は欧米が急いで「ポストIS」の体制を考えないと取り返しのつかないことになる、と懸念し、以下のように述べる。

「イランがレバノン、イラク、シリアのシーア派勢力を統合できたなら、ペルシャ人は2300年ぶりに地中海に影響力を及ぼせるようになる。

そしてロシアが、イランと同盟関係にある勢力に、資金、兵器、そして上空での援護まで提供している。イランとロシアの戦略は、中東のスンニ派にとって悪夢である。それは米国にとっても同様である」

「米国には戦略が欠けており、ライバル国の計画を破綻させることしか考えていない」と指摘するのは英紙「ガーディアン」だ。同紙は米軍が支援したシリア民主軍(SDF)のクルド人勢力が「ポストIS」の不安定要素になると懸念している。

こうした状況に対処すべき湾岸諸国は、サウジアラビアなどがカタールと断交することで、かえって過激派につけいるスキを与えてしまっている。米紙「ニューヨーク・タイムズ」は、「湾岸諸国が、過激派に対して統一戦線を組む可能性が消えてしまった」と嘆いている。

そして、「ポストIS」にともなう戦火に、中東から離れた地域も巻き込まれていくことになる。中国紙「環球時報」は、中東で敗れたISがフィリピン南部で新たな拠点を築きつつあることに着目。「東南アジアでのISの危険性は、次第に高まっていくだろう」と書く。

さらにフランス紙「ル・モンド」によれば、「ISに忠誠を誓うグループはアジア全域に約30存在するとされ、それらがお互いに協力しあっている」という。

「ISは消滅しても、ジハード主義者は消滅しない」と警鐘を鳴らすのはドイツ紙「フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング」。同紙は今後の展望について悲観的にこう書いているのだ。

「ISの指導者たちは、自分たちが育てた戦闘員を出身国に送り返してテロを起こさせているだけではなく、欧米で過激化した若いイスラム教徒のネットワークのなかからも、新たな戦闘員を見つけ出している。

トランプが、中東訪問の際に『いまいましい敗者』と呼んだ若者たちとは、普通のイスラム教徒のことだ。だが、彼らが全員ISのイデオロギーを無視できるようにならない限り、世界規模のテロには勝利できないだろう」


【モスル奪還後、ISの弱体化によって中東は「新・戦国時代」に陥る! クーリエ・ジャパン6/14】

IS(いわゆる「イスラム国」)がイラクの重要拠点としてきた北部の都市モスルの奪還が、間近に迫っていると見られている。これでようやくイラクにも小康状態が訪れると期待する向きもあるが、4月に起きたある一つの空爆が、中東の新たな混迷を示唆しているという。現地取材と気鋭のイラク研究家・吉岡明子氏による分析でお届けする。

◆イラク情勢の今後を象徴する「空爆」

2016年10月に始まった北部の要衝都市モスルの奪還作戦が、まもなく成功裏に終わるだろうとロイターなどさまざまなメディアが報じている。

 モスルは2014年6月以来、IS(いわゆる「イスラム国」)の重要拠点の一つだった。

 モスル奪還作戦が成功すれば、イラクでのIS勢力はかなり縮小すると見られている。そうなればようやくこの地にも、安定が訪れるのだろうか。だが、ISの出現により、すでに中東の勢力図は大きく塗り替えられている。それを象徴する事件が、2017年4月25日の未明(現地時間)に起きた。

トルコ軍が、イラク北部シンジャール山周辺を空爆したのだ。

シンジャールは、クルド系少数民族であるヤズィド教徒が多く暮らす地域だったが、2014年8月のISの襲撃によって壊滅的に破壊されてしまった。5000人が犠牲となる大規模な虐殺がおこなわれ、6000人を超える女性や子供が奴隷として拉致されたのだ。

2015年11月、イラク北部にあるクルド人自治地域の政府KRG(クルディスタン地域政府)の国防軍ペシュメルガや、トルコ系クルド人の武装組織PKK(クルディスタン労働者党)の働きによって、ISはシンジャールからようやく駆逐された。

それゆえ、ISがシンジャールで犯した蛮行は世界を震撼させたが、その出来事はすでに過去のものになろうとしていた。そんなときに起きた「シンジャール空爆」のニュースに対する国際的な関心は当然、高いものではなかった。

だが、クルド系メディア「ルダウ」によれば、この空爆によりペシュメルガなど6人が死亡、9人が負傷したという。空爆翌日のシンジャールを訪ねてみると、PKKが使用していたというビルや地元通信会社の電波塔が無残に破壊されていた。

シンジャール山の山頂付近にあった電波塔も瓦礫に埋もれていた

なぜ、ISが去って1年半ほどたったシンジャールが、突然トルコ軍の空爆の標的になったのか? それにはこの地域における、IS以外の武装勢力の台頭が大きく関与している。

その一つがトルコ系クルド人の武装組織で、近年シンジャールでの存在感を増すPKK(クルディスタン労働者党)だ。

◆テロリストが「英雄」に

シンジャールは、もともとイラク政府の統治下にある地域だった。だが、2003年のイラク戦争でイラク軍が敗走すると、米軍と共に戦っていたKRGが混乱に乗じて南下し、シンジャールを手中に収めた。だが、イスラム教徒ではないヤズィド教徒たちは、イラク人からもクルド人からも差別されてきた。

一方、クルド人の自治独立を目指すPKKは、クルド人勢力が拡大すると自国の安全保障が脅かされると考えるトルコ政府と断続的に武力闘争を続けてきた。その結果、国際的にも長年「危険なテロリスト集団」と見なされてきた。

2013年、両者はいったん停戦に合意するが、その後もトルコ側がクルドの権利擁護に対して積極的な姿勢を示さなかったことから、2015年に合意は決裂。トルコの迫害が原因で、1990年代からPKKがイラクのKRGの領土に逃れる現象が続いており、「ルダウ」によれば、現在KRGには約5000人のPKKが潜伏しているという。

だが、ISの存在がPKKを「テロリスト」から「英雄」に変えた。シリアにおけるIS掃討作戦で、米軍の支援を受けながら大きな軍事的成果を挙げ、国際的な名声を高めたのだ。

PKKはこの機に乗じて、イラクにも進出。シンジャールにISが攻め込んだ際、蜘蛛の子を散らすように逃げ去ったペシュメルガに代わって、山頂に避難したヤズィド教徒を救った。シンジャールの住民は敵前逃亡したペシュメルガよりも、PKKに信頼を寄せている。

だが、PKKのさらなる台頭はトルコにとって大きな脅威だ。そこで、トルコはシンジャールの空爆に踏み切ったのだ。

トルコはこれまでも国境周辺のPKKの拠点を空爆し続けてきた。だが、今回のように自国の国境からはるか離れた場所で、他国の主権を侵害しながら空爆をしたという事実に、トルコ側の切迫感が現れているといえる。

石油貿易においてトルコと密接な関係にあるKRGは、PKKに早く領土内から出ていくようにと勧告した。その結果、シンジャール住民のKRGに対する不信感はさらに高まり、地域の分断が進んでいる。

このような状況をさらに複雑化するのが、2014年に発足したシーア派民兵組織PMUだ。

◆新たな「シーア派同盟」が米国を脅かす

PMUの中核をなすのはフセイン政権時代に結成されたシーア派の反政府武装組織で、イラク戦争後は政治家の傭兵のような役割を果たしてきた。ISが侵攻すると、PMUは同じシーア派のイラン政府から支援を受けて戦闘に参加。現在のモスル奪還作戦にも大きく貢献し、これまでの「ならず者」のイメージを払拭して、国民的英雄の地位にのぼりつめた。

だが、米国や周辺諸国はPMUの台頭に危機感を強めている。

米誌「ナショナル・インタレスト」で、「近東政策ワシントン研究所」のファブリス・バランスは、今後PMUはISの補給線を絶つためにさらに北上し、シリア国境に到達する可能性があると指摘。PMUとシリア政府の接近は、新たなシーア派同盟の形成とイランが地中海に出る海上ルートを手に入れることを意味すると、懸念を表明した。

また、イスラエルの中東情勢研究機関「ルービン・センター」の所長ジョナサン・スパイヤーは、PMUがシリア経由でレバノンのシーア派武装組織ヒズボラと接触する危険性を、イスラエルの日刊紙「エルサレム・ポスト」に書いている。

◆イラクは「戦国時代」に突入

「日本エネルギー経済研究所中東研究センター」の主任研究員で、イラクの政治経済を専門とする吉岡明子氏によれば、ISの出現でクルドとPMUが急成長したことにより、今後イラクは、イラク政府軍、ペシュメルガ、PKK、PMU、そしてISが濫立する混戦状態に突入するという。

こうした武装勢力が勝手に各地で検問所を作り、領土拡大を狙う動きもある。今年3月には、シンジャール北西部でペシュメルガとPKKの大規模な衝突があり、一時的に大勢の市民が避難を余儀なくされる事件が発生した。もちろんISの脅威もゼロではない。残党が地下に潜伏し、テロ行為を続ける可能性もある。

吉岡氏は、「IS掃討作戦が進んで各武装勢力の『共通の敵』がいなくなれば、『この土地は誰のものか』という新しいアジェンダが生まれる。土地は必ずしも元の持ち主に戻るわけではなく、それを奪い合う『戦国時代』が到来するだろう」と分析する。

◆「ISの死」でしか癒されない

シンジャールが空爆された直後、イラク北西部にあるマミリアン国内避難民キャンプを訪ねた。

2014年12月に設立されたこのキャンプでは、ヤズィド教徒やイスラム教徒など5000人以上の国内避難民が生活しており、日本の国際NGO「JEN」が水衛生設備の管理や衛生促進活動などをおこなう。

キャンプ内を歩いていると、シンジャール出身のヤズィド教徒だという女性が「自宅」であるテントに招いてくれた。キャンプでの暮らしはもちろん楽ではないが、生後4ヵ月の孫のためにと親戚が送ってくれたゆりかごの話をするときには笑みがこぼれる。

ところがテレビで空爆のニュースの続報が流れると、彼女の目はそれに釘付けになった。孫をあやしていたときは穏やかだった声に、急に怒りと憎しみがこもる。

故郷シンジャール空爆のニュースに釘付けになる、ヤズィド教徒の女性。マミリアン難民キャンプに避難してから、すでに2年半の月日が経つという

「故郷で人が殺されたというニュースを聞くたび、最悪の気分になります。ISが殺されたと聞いたときにだけ、心が安らぐんです」

暴力の応酬は憎しみの連鎖しか生まない。たとえ、それがどんなに善良な市民によるものだとしても。

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