行政の持つ個人情報を民間活用する条例改定 反対の論戦
6月県議会に、行政機関等個人情報保護法等の改正に対応した条例改定案がだされている。
グレーゾーンをなくすとか掲げているが、肝は、行政の持つ個人情報を「匿名加工」してビッグデータとして民間に提供できるというものだが、「匿名加工」は民間委託されるだろうから・・どこまで行っても漏洩の危険が付きまとう。
条例改定は2段階で、今回は、上位法にあわせた改定。その後、県のもつ行政情報の提供について、国や他県の状況をみながら検討していく、というもの。
以下は「行政機関等個人情報保護法等の改正案」「官民データ活用推進基本法案」についての国会での反対討論 日弁連の「行政機関及び独立行政法人等が保有するパーソナルデータの利活用に係る制度改正に関する意見書」〔15/10/19〕
◆2016年4月
①田村(貴)委員
私は、日本共産党を代表して、行政機関等個人情報保護法等の改正案について、反対討論を行います。反対理由の第一は、法の目的の中に、新たな産業の創出並びに活力ある社会の実現に資することを書き込むなど、国の行政機関等が保有する個人情報の保護が後退させられかねません。
国の行政機関等には、その機関の性格や業務上、多くの個人情報が集まり、保有、管理されています。だからこそ、行政機関には、個人の権利利益を保護するための適正な取り扱い、その保護を厳格に履行する責任と義務が課せられています。
民間企業の提案に応えて、個人情報を利活用していこうとするならば、行政機関等がみずから、個人情報の保護規制を緩める方向に走らざるを得ません。
また、どんな個人情報を何のために利活用するかについても、説得力ある具体例は示されませんでした。本改正案の必要性の根本にかかわる問題です。第二は、非識別加工情報についてです。
そもそも、非識別加工情報の作成と提供については、匿名加工が施されたとしても、個人情報が本人が想定しない民間事業者に提供されるという問題があります。
識別行為の禁止が定められていますが、これは再識別化のリスクを前提にしているものです。万が一、識別行為が行われ、個人情報の不適切な流出、漏えいが発生した場合、情報を提供した側の行政機関等がどのような権限を行使できるのか、漏えいした情報をどのように保護していくかなどの点は極めて曖昧です。
匿名加工情報は、原則的に、行政機関等が作成するとされています。しかし、情報の匿名加工を外部の民間事業者に委託することも排除されていません。不適切な個人情報の流出、漏えいに対する懸念は拭い切れません。
さらに、個人情報の利活用を提案することができる民間事業者の欠格事由の規定についても極めて不十分であります。最後に、個人情報保護委員会の役割は非常に重要です。しかし、個人情報保護委員会が、個人情報の保護を貫きながら、官民の膨大な量の個人情報を適正に処理していくにふさわしい体制を確保する担保は措置されていません。
以上を述べて、討論とします。② 吉良よし子君
私は、日本共産党を代表して、行政機関等個人情報保護法など個人情報の利活用を進める関係法律の整備法案についての反対の討論を行います。本法案は、産業界からの要望に沿って、従来になかった新しい産業、思いもよらなかったイノベーションが起きてくることなどを期待して、行政機関等が保有する個人情報を利活用させようとするものです。行政機関が保有する個人情報は、行政事務の執行のため収集、管理されているものです。だからこそ、厳格な個人情報の保護の下で社会的な要請に応えた利活用が求められているのです。しかし、本法案は、個人情報の保護は不十分なままで、行政機関の側から個人情報の利活用を民間事業者に求めていくものであり、やめるべきです。
また、本法案は、民間企業等からの提案に沿って行政機関等が個人情報に非識別加工を施し提供します。どんなに高度な加工が施されたとしても、本人が想定していない民間企業等に個人情報が提供、利用されるという問題が残ります。そもそも、識別行為の禁止が本法案で明記されること自体、再識別化のリスクがあることを意味しています。
そして、もし民間事業者に提供した非識別加工情報や個人情報がリスクにさらされた場合、情報を提供した行政機関等が行使できる権限などについて曖昧な点が残されています。
さらに、総務省は不適格事業者を提案者から排除できると言いますが、いわゆる名簿屋のような事業者も本法案のスタート時には個人情報の利活用を提案できるという懸念が残ります。個人情報の非識別加工についても外部の民間事業者に委託することもできるとされ、不適切な個人情報の漏えいや流出につながりかねないことから、本法案に反対します。
また、本法案は、個人情報を多く保有している市町村にも、国がその一体的な利用を促進していくことを明記しており、看過することはできません。
以上を述べて、討論とします。
◆16/12/6
○田村智子君 日本共産党を代表して、官民データ活用推進基本法案について反対の討論を行います。
本法案は、ビッグデータや人工知能を活用した新しい産業イノベーションを起こすことを期待し、国や地方公共団体が管理する個人情報を含め、官民の電磁記録データの利活用を促進しようとするものです。これは、日本経団連が提言し、アベノミクス第三の矢とされる二〇一六日本再興戦略で求められていた方向そのものです。そもそも、国や地方公共団体等が管理する個人情報は第三者への提供を前提としていません。個人の資産や所得、納税、疾病や健康等に関わる情報は、たとえ匿名化されたとしても、民間事業者への提供、マーケティングへの利活用等を促進することに国民的な合意があるとは到底言えません。
民間事業者が管理するデータも同様です。クレジットカード情報、交通機関のICカード情報などは個人の行動記録とも言えるものです。匿名化されれば、本人同意も必要なく、何に利用されるかも分からないままに利活用が促進される、このことに国民が不安や不快感を抱くことは当然と言わなければなりません。
データ利活用について、その利用目的をどう規制するのか、国民への説明や知られない権利の保障としてオプトアウトをどうするかなど慎重に検討されるべきですが、法案では、こうした問題を今後の実施法や官民データ活用推進戦略会議などに託すだけで、何も明確にされていません。
この間、日本年金機構、大企業でも個人情報の漏えいが繰り返されました。内閣府の世論調査でも、国民の七割が個人情報の保護に不安を抱いています。個人情報保護委員会は、二〇〇九年度から毎年度、事業所が公表した個人情報漏えい事案を集計していますが、特に五万件以上の大規模な漏えい事案数について、減少傾向はないと指摘しています。
また、法案では、個人識別番号、いわゆるマイナンバーカードの普及及び活用の促進も求めていますが、本年九月時点で百六十万通の通知カードが自治体に返送されており、保管するか破棄するか等、混乱が生じる事態です。国民的な議論も納得もないままにマイナンバー制度が開始されたことに大きな要因があると言わなければなりません。個人情報をめぐるこうした深刻な問題の解決にこそ官民共に全力を挙げて取り組むべきです。
また、本法案は、国と地方公共団体の行政手続はオンライン手続を原則とするとしていますが、高齢者など情報弱者が置き去りにされる、インフラ整備が困難な中小業者が公的取引から排除されることも危惧されます。
以上、問題点を指摘し、反対討論を終わります。
◆行政機関及び独立行政法人等が保有するパーソナルデータの利活用に係る制度改正に関する意見書2015年(平成27年)10月19日 日本弁護士連合会
当連合会は,現在,政府が検討を進めている,行政機関及び独立行政法人等が保有するパーソナルデータの利活用に係る制度改正に関して,10月7日付けで開始された意見募集事項について,以下のとおり意見を述べる。
【意見募集の対象事項】
1 行政機関及び独立行政法人等の保有するパーソナルデータについても,その利活用を図るため,民間部門と同様に,特定の個人が分からないように加工された情報(匿名加工情報)の仕組みを設けること。
2 「匿名加工情報」の仕組みを設けるに当たっては,国民の信頼や安心を確保するために必要な規律を整備すること。【意見】
匿名加工情報の仕組みの導入は,行政機関及び独立行政法人等の保有するパーソナルデータを第三者提供することを前提に導入が検討されているものであり,たとえ匿名加工が施されたとしても,本人の同意を得ることなくパーソナルデータを第三者提供することに対して,反対する。【理由】
一般に,行政機関及び独立行政法人等の保有するパーソナルデータは,法令上の根拠に基づき,公権力の行使によって本人の同意を得ることなく収集されるものが多い。しかし,当連合会が2014年7月16日付け「『パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱』に対する意見書」において指摘しているとおり,同大綱によれば,政府の用いる「利活用」という表現において想定されているのは,「イノベーション」や「新ビジネスの創出」等の経済的利益のための活用である。
このことを踏まえると,これらの情報の「利活用を図る」,つまり商業目的での第三者提供は,パーソナルデータの持ち主本人の認識している本来のデータの利用目的以外での利用を意味する。特に,公権力の行使によって収集されたパーソナルデータに関して無差別な商業目的での利用を許すことについて,国民の理解が得られるとは考え難い。匿名加工情報の概念は,再識別化のリスクを前提としており,すなわち,再識別化が発生し得ることが前提とされているためである。
したがって,行政機関及び独立行政法人等の保有するパーソナルデータについて,本人の同意を得ることなく第三者提供又はそれを前提に収集することは,商業目的が前提とされている場合には,たとえ匿名加工が施されたとしても,容認できるものではない。
【意見募集の対象事項】
3 官民間で「匿名加工情報」の利活用が図られるように,行政機関及び独立行政法人等における「匿名加工情報」の取扱いについて,民間部門と同様に,新設される「個人情報保護委員会」が監督すること。【意見】
行政機関及び独立行政法人におけるパーソナルデータについては,匿名加工情報に限定せず,個人情報全般に関し,個人情報保護委員会の監督下に置くべきである。【理由】
本年1月30日付けで公表された「行政機関等が保有するパーソナルデータに関する研究会『中間的な整理』その2」によれば,本年の通常国会における個人情報保護法の改正によって,第三者機関である個人情報保護委員会に民間部門のパーソナルデータの取扱いを一元的に監督する制度の創設を決定したが,行政機関及び独立行政法人については,実際には「ワークしない(実効性がない)」等の理由をつけて,同委員会の監督権限を民間部門に限定し,行政機関及び独立行政法人等は,総務大臣が監督する方針であるとしている。しかし,本年6月1日には,特殊法人である日本年金機構から125万件に上る基礎年金番号付き個人情報の漏洩事件が発覚し,事件後,取扱いの規定にも反した,極めて杜撰な同機構の情報管理の実態が明らかとなった。同機構は,個人情報の不正閲覧等が問題視され,その改善も含めて改組されたはずのものであるにもかかわらず,このような漏洩事件が発生した。
もとより,日本年金機構が遵守すべき独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律には,個人情報ファイルの総務大臣への通知義務や,総務大臣における資料提出及び説明要求の権限すらなく(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律第10条及び第50条),本件においても,総務大臣は何らの権限行使もしていない。そもそも,パーソナルデータの取扱いの観点から独立行政法人等を監督する十分な仕組みが存在していないと言える。
行政機関においては,「身内」である総務大臣から監督が行われることとされているが,毎年総務省から発表されている行政機関及び独立行政法人等の個人情報保護に関する法律についての「施行状況調査結果」によれば,総務大臣が資料提出及び説明要求の権限を行使した事例は見られず,充分な監督が行われているかは疑問である。
したがって,行政機関及び独立行政法人におけるパーソナルデータについては,全面的に個人情報保護委員会の監督下に置かれるべきであり,匿名加工情報にその監督範囲を限定すべきではない。
【意見募集の対象事項】
4 その他,本件制度改正について【意見】
専門性の高い第三者機関によって,官民を問わず,プライバシーの侵害に対して強い指導監督権限を有するという日本版プライバシー・コミッショナーの設立を実現するため,個人情報保護委員会に官民を一元的に監督する権限を与えるべきである。【理由】
当連合会は,かねてから,EU等の諸外国における国際的な水準を考慮した上で,高い専門性を有する第三者機関として,日本版プライバシー・コミッショナーの設立を強く求めてきた(2014年2月21日付け「日本版プライバシー・コミッショナーの早期創設を求める意見書」)。個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律(平成27年法律第65号,以下「個人情報保護法改正法」という。)の審議の中では,同法による個人情報保護法の改正が,EUにおける「十分性取得を念頭に置いた法改正」であり,「独立した第三者機関」の存在が必要であることが明確に述べられていている(第189回国会衆議院内閣委員会第7号,山口俊一内閣府特命担当大臣答弁(2015年5月20日))。公的機関を監督する「独立した第三者機関」が存在しなければ,EUから公的部門についての十分性を取得できないことは明らかであり,EUから十分性を取得し,十分な保護措置を備えた国として世界からデータを集積すべきであるという個人情報保護改正法の趣旨にも反すると言える。
以上のとおり,行政機関及び独立行政法人等の監督が不十分であることが明らかとなり,今のままではEUにおける十分性認定の取得も困難な状況なのであるから,個人情報保護委員会の監督権限及び所掌については,抜本的な見直しが必要である。
したがって,個人情報保護委員会に日本版プライバシー・コミッショナーの役割を担わせるべく,官民を一元的に監督し,プライバシー侵害の危険性を排除するための適切な権限と所掌を与えることが求められる。
以 上_
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