震災時の避難所運営~ 指定管理者との役割分担の明確化を
熊本地震を教訓に、震災時の避難所運営を想定した指定管理者制度の運用について、4月に総務省から通知がだされている。
「災害時の市町村との役割分担について予め協定等で決めておくとともに、発災後も必要に応じて話合いを行うことが必要である」として、熊本地震のヒアリング結果の参考資料も掲載されている。
6月高知市議会で、党市議団の質問に、市としてマニュアルの基本となる「指定管理者災害対応の手引き」を関係部署と連携し、本年度末を目途に作成したい、と答弁している。
南海トラフ巨大地震の備えとして、小さな自治体もおおいことから、県先頭に取り組む必要がある。
【大規模地震に係る災害発生時における避難所運営を想定した指定管理者制度の運用について(通知)総務省自治行政局長 2017/4/25】
【大規模地震に係る災害発生時における避難所運営を想定した指定管理者制度の運用における参考資料について 2017/4/25 総務省自治行政局行政経営支援室】
【大規模地震に係る災害発生時における避難所運営を想定した指定管理者制度の運用について(通知)総務省自治行政局長 2017/4/25】 平成28年熊本地震における対応で課題が指摘されたものについて、今後の震災対策に活かすため、中央防災会議防災対策実行会議に「熊本地震を踏まえた応急対策・生活支援ワーキンググループ」が設置され、平成28年12月20日に「熊本地震を踏まえた応急対策・生活支援策の在り方について(報告)」がとりまとめられ、平成29年4月11日開催の第37回中央防災会議にて報告されたところです。本報告においては、関係者間の連携の不足に伴う課題の一つとして、「市町村と施設管理者、指定管理者の間で避難所運営を想定した役割分担等が共有されていなかったため、避難所運営を想定していなかった指定管理者に多大な負担が生じる場合もあった」ことが指摘され、実施すべき取組として、「避難所となる施設の中には、市町村が指定管理者を指定している場合もあるが、災害時の市町村との役割分担について予め協定等で決めておくとともに、発災後も必要に応じて話合いを行うことが必要である。」とされています。
ついては、大規模地震に係る災害発生時における避難所運営を想定した指定管理者制度の運用について、下記の点に留意の上、適切な運用に努められるよう、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項に基づき助言します。
なお、貴都道府県内の市区町村に対しても、本通知について周知方よろしくお願いします。
1.指定管理者が管理する施設における避難所等運営の役割分担の確認
(1)指定避難所としての指定や果たすべき機能等の明確化
指定管理者が管理する施設における避難所等運営については、施設を設置する地方自治体(以下「設置団体」という。)の指定管理者制度所管部局及び施設管理担当部局が、防災担当部局等と緊密に連携し、条例、地域防災計画等において、当該施設の災害対策基本法(昭和36年法律第223号)上の指定避難所としての指定や果たすべき機能等について明確にしておく必要があること。
(2)指定避難所である場合
指定避難所である場合、避難所運営の対応マニュアルの作成、指定管理者との協定の締結等を通じ、設置団体、施設所在市町村と指定管理者の間の役割分担をあらかじめ明確にしておく必要があること。その際、指定管理者が避難所運営や、市町村による避難所運営の支援の役割を担う場合にはその旨を明確にする必要があること。
(3)指定避難所でない場合
大規模地震に係る災害の場合には、あらかじめ指定避難所として指定されていないとしても、周辺住民から見て避難に適していると判断された施設は事実上避難者が集まる場所となり、さらに事後的に指定避難所として指定されることもあり得ることに留意すること。このような事態が見込まれる施設では、避難者の受入れの可否の判断方法や、受け入れた場合の設置団体、施設所在市町村と指定管理者の役割分担をあらかじめ明確にしておく必要があること。
(4)避難所等の運営を市町村が行う場合
大規模地震に係る災害の場合には、指定避難所や事実上避難者が集まる場所(以下「避難所等」という。)の運営を市町村が行うこととしている施設であっても、指定管理者が市町村による避難所等運営の支援の役割を担うなど、通常の施設管理以外の業務を行うこともあり得ることに留意すること。
(5)避難所等の運営を指定管理者が行う場合
避難所等の運営を指定管理者が行う場合には、受け入れる避難者の数、安全管理、個人情報の取扱い等運営の基本的な方針の決定方法や、他の関係機関との連絡調整の方法等については、施設所在市町村と指定管理者の間で調整の上、定める必要があること。
また、指定管理者が避難所等運営において重要な役割を果たしている場合には、運営の基本的な方針を決定する際、施設所在市町村と指定管理者との間で十分な連絡調整が行われることが望ましいこと。2.指定管理者が管理する施設を避難所等として利用する場合の費用負担
(1)費用負担の方針、協議の方法の明確化
指定管理者が管理する施設を避難所等として利用することによって新たに必要となる費用や施設の通常利用ができないことによる利用料金収入の補填等の追加負担、また、不要となる費用の減額等の精算について、その方針や協議の方法(協議開始時期や手続、協議対象事項等)をあらかじめ定めておく必要があること。
(2)留意事項
費用の追加負担については、指定管理者の業務の円滑な実施に支障をきたすことがないよう、留意する必要があること。特に、費用の追加負担の支出の時期については、指定管理者が本来得られるべき通常の指定管理料や利用料金等の当面の収入が得られない状況があり得ることを考慮する必要があること。
また、都道府県が設置する施設を施設所在市町村が避難所等として利用する場合には、新たに必要となる費用の負担者が不明確になることがあるため、都道府県と施設所在市町村の間で事前の調整を行う必要があること。3.その他
1及び2については、その内容に応じ、条例、地域防災計画のほか、指定管理者との間で定める協定その他の書面において、可能な限り具体的に明記しておくことが望ましいこと。
【大規模地震に係る災害発生時における避難所運営を想定した指定管理者制度の運用における参考資料について 2017/4/25 総務省自治行政局行政経営支援室】《熊本地震発災後の指定管理施設の管理運営について 2016年10月25日 》
■熊本地震発災後の指定管理施設の管理運営に関するヒアリング結果①
【対応の実態・主な意見】
○行政職員も発災後速やかに施設に配置され、本庁との連絡調整等に従事したが、当該施設の被害状況の確認や避難者誘導、安全確保に当たっては、常日頃から施設を管理運営している指定管理者職員が力を発揮した。
○多数の地域から避難者が集まる避難所の場合、自治会が避難所運営に協力する体制が構築されなかった。
○行政職員は、初期には常時1施設あたり5~7名程度は配置されたが、一定期間経過後は罹災証明など、他の震災対応業務もあり順次人数を縮小した。行政職員のみで運営しようとした場合、常時20~30名程度は必要となり、また、他の震災対応業務のための要員確保も必要であることを勘案すると、行政職員のみで避難所を運営するのは現実的ではない。
○指定管理者によっては、災害対応や避難所運営についてもノウハウを有しており、又はノウハウを有する者とのネットワークを有しており、主体的に役割を果たしていただけた。→1.大規模地震災害発生時には、指定管理施設における避難所運営について、行政職員のみによる実施は現実的ではなく、指定管理者による運営協力は必要不可欠。
■熊本地震発災後の指定管理施設の管理運営に関するヒアリング結果②【対応の実態・主な意見】
○指定避難所以外の施設に大人数の避難者が集まり、自然発生的に避難所になってしまうことは想定していなかった(例:熊本市では、結果的に避難所となった指定管理施設71のうち、8施設のみが指定避難所等に指定されていた)
○特に、避難所の立ち上げ時期には、避難所運営の責任の所在や市町村と指定管理者の役割分担、情報共有や物資・人員の配備等の観点で様々な混乱があった。
○地域防災計画に指定避難所や福祉避難所として位置付けられ、又は、指定管理協定などに「避難所になる場合があり得る」との文言を入れていた場合にも、具体的な避難所立ち上げの手順や役割などまでは、定めていなかった。
○町の縁辺部に所在する施設であり、指定避難所として指定していなかったが、大都市に隣接していたため区域をまたがって大人数の避難者が発生することを想定していなかった。大都市からの避難者の受入れも想定した上で、町において避難所運営を行うことを想定しておくべきであった。
○(県有施設)県の広域災害対応拠点(物資配給拠点)としての位置付けはあり共同訓練も行っていたが、「避難所」として利用することについては、町から要請はなく、そのための諸準備も行っていなかった。発生後、大人数の避難者が集まることになり、追って町から避難所設置の要請がなされた。
○(県有施設)避難所としての指定は市の施設を対象に行われたため、あらかじめ避難所として指定されていなかった。このため、発災直後には市職員の派遣もなく、また、数日間市からの物資の配給もなかった。→2.大規模地震災害発生時には、指定避難所であるか否かにかかわらず避難に適した施設は、避難所又は事実上避難者が集まる場所となる。避難に適した施設では、あらかじめ、発災時の避難所立ち上げに関するルールや役割分担を明確にしておく必要がある。
3.県有施設又は市町村区域の境界付近に所在する施設については、避難所としての機能を果たす際の責任の所在が不明確になりがちである。このような施設については、指定管理者と市町村のほか、県又は近隣市町村を含めた三者間で事前の調整が必要である。
■熊本地震発災後の指定管理施設の管理運営に関するヒアリング結果③【対応の実態・主な意見】
○避難者の部屋割りや他団体によるテント村設置など避難所運営の最も基本的な事項に関して、指定管理者からは避難所の現場管理者としての考えを行政に伝達したが、十分に聞き届けられなかった場合もあった。
○指定管理者が避難所運営を行っているにもかかわらず、地域全体の避難所運営に関する意思決定プロセスに対し、避難所からは、短期間で交代していく職員が代表で参画し、指定管理者には決定事項のみ伝達されたが、現場の実態が適切に反映できなかったのではないか。少なくとも指定管理者側から見ると不安を感じた。
○避難所の運営に当たって、要援護者に関する個人情報の取扱い、住民同士のトラブルの裁定、他の行政機関など各種団体との調整については、民間事業者たる指定管理者では判断又は処理できない部分があった。指定管理者が避難所運営を行う場合でも、行政職員が現場にいることは大変重要。
○時間が経過するにつれ、行政職員は罹災証明など他の震災対応業務に従事する必要が生じたため、行政として判断できる立場の者が避難所運営業務を離れることとなり、行政と指定管理者の間の情報共有や意思疎通に困難が生じることがあった。→4.避難所の運営を指定管理者が行う場合であっても、受け入れる避難者の数、避難者に割り当てる個人スペースの配分や避難所内の安全管理、個人情報の取り扱いなど、避難所運営の基本的な方針についての決定方法や、他の関係機関との連絡調整の方法を行政と指定管理者の間で定めておく必要がある。
5.特に、指定管理者が避難所運営において重要な役割を果たしている場合には、行政の判断に当たって、現場管理に当たる指定管理者と十分な連絡調整をしておく必要がある。
■熊本地震発災後の指定管理施設の管理運営に関するヒアリング結果④【対応の実態・主な意見】
○指定管理協定において「災害発生時の経費(又は、利用料金)の取扱いについては別途協議して定める」と記載がある場合であっても、その都度協議して定めることは現実的ではなく、指定管理者側の経営リスクとなった(例えば、国の支援機関が県が直接管理する施設を災害対応用務等で活用した際、通常は施設の利用料金等を請求することはないが、当施設が指定管理施設であり、その経費負担の取扱いについて定めていなかったことから、一旦は、施設側から国の支援機関に対して請求した(結局、県が指定管理料により措置))。
○当初何ら取り決めもなく、なし崩しで指定管理者が避難所運営業務を開始することになったが、費用負担や責任分担を明確にする観点から、事後的に指定管理業務を一時凍結し、避難所運営業務を受託する契約を締結した。民間事業者からすると、不明確な責任分担での仕事の継続は困難。
○福祉避難所として活動する場合の費用負担について協定を結んでいたが、活動に当たって通常営業を停止せざるを得ないにも関わらず、避難者を受け入れた実績に応じて災害救助法の規定による通常時より相当低廉な単価で手当されることとなっている。また、避難によって生じた施設の汚損についての原状回復は、当該避難者と指定管理者において解決することとされている。このようなルールの下では、指定管理者側は福祉避難所としての対応に躊躇せざるを得ない。
○継続して避難所運営を行っていくにあたり、各種支払に必要な資金繰りに苦慮した。特に利用料金制を前提にしている場合、通常見込まれる利用料金収入を当面の財源とすることもできず、避難所運営の継続に不安があった。→6.避難所対応に要した費用の負担のあり方、指定管理者が費用を請求する場合の協議のルール(協議開始時期・手続、協議対象事項等)をあらかじめ定めておく必要がある。
7.公費負担に関しては、指定管理者の業務の円滑な実施に支障を来すことがないよう、指定管理者が担う役割に相当する適切な範囲又は水準が設定される必要がある。
8.公費負担の支出の時期については、指定管理者が本来得られるべき通常の指定管理料や利用料金等の当面の収入が得られない状況があり得ることを考慮する必要がある。
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