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「我が事・丸ごと」地域共生社会のねらい~負担増、安上がりの人員体制の「強化」

 「地域包括ケア強化法」は、介護保険法見直し案など31本の法律見直しが一括提案されものだが、衆参あわせても38時時間というきわめて短い審議時間で強行された。同法は、子ども、高齢者、生活困窮者など多くの人に影響をあたえるものである。
 負担増の「強化」とともに、新設された「共生サービス」は、1カ所の事業所で、介護保険法・障害者総合支援法・児童福祉法にまたがった複数のサービスを提供できるとするものだが、もともと「サービスを効果的・効率的に提供するための生産性の向上」が出発点であり、安上がりな人員体制で複合的なニーズに対応を狙ったもの。また、具体的な基準は、厚労省令にもとづく自治体条例で定められるため、現行水準からの後退を危惧する声には、国会審議でもまったく答えられていない。 社会保障抑制だけが目的。
 きょうされん、障害者自立支援法違憲訴訟団の「見解」。
【「地域包括ケアシステム強化法案」成立にあたっての声明 5/26】
【見解:「地域包括ケアシステム強化法案」の問題点と障害福祉への影響(概要版) 3/21】
【「我が事・丸ごと」地域共生社会のねらいは何か~「地域包括ケアシステム強化法案」の問題点と障害福祉への影響 きょぅされん 3/21】
【国による「我が事・丸ごと」政策推進に対する意見 障害者自立支援法違憲訴訟団4/13】

【「地域包括ケアシステム強化法案」成立にあたっての声明 5/26】

本日、参議院本会議において、「我が事・丸ごと」地域共生社会をめざす、介護保険法の見直しを中心とした「地域包括ケアシステム強化法案」が自由民主党・公明党・維新の会らの賛成多数をもって成立したことに、わたしたちは強く抗議します。衆議院に続き参議院の審議においても、新たに同法案の課題や問題点が指摘されたにもかかわらず、疑問や不安を多く残したまま可決・成立したことに、落胆すると同時に、強い憤りを感じています。

わたしたちが強く抗議する、その理由は以下の3点です。

第一に、衆議院・参議院ともに、あまりに審議が短かったことです。31本の法律にまたがる一括提案であるにもかかわらず、厚生労働委員会での審議は衆議院で4日間22時間、参議院は3日間16時間でした。あまりに形式的な審議と言わざるをえません。

第二に、障害分野に大きく影響を与える「我が事・丸ごと」政策に関して、ほとんどの質疑に対して明確な答弁がなされなかったことです。例えば、新たな共生型サービスの支援体制や運営基準など、現行水準からの後退への心配の声にもまったく答えられていません。衆議院・参議院の参考人質疑には、高齢・介護の分野から招致されましたが、障害分野から招致された人はいませんでした。

第三に、介護保険制度の利用者負担増の影響を受ける高齢者の生活実態がまったく把握されていないこと、また同法案により障害当事者にどんな影響があるか、明らかにされていないことです。衆議院・参議院の審議を通じて、障害当事者や家族、関係者の不安は解消されるどころか、いっそう大きくなりました。

この3点に共通するのは「当事者不在」であり、障害者権利条約制定の過程において世界中で共有された「わたしたち抜きに、わたしたちのことを決めないで」がまったく生かされていないということです。

同法案は成立をみましたが、今後、多くの部分は政令・省令にゆだねられることになります。わたしたちは引き続き、政省令の検討過程において、審議により明らかになった課題や問題点が解決に向けて着手されるよう、注視し、粘り強く働きかけていきます。

2017年5月26日
きょうされん

【見解:「地域包括ケアシステム強化法案」の問題点と障害福祉への影響(概要版) 3/21】

1.国民・当事者不在のまま、突然提案された「地域包括ケアシステム強化法案」

・「地域包括ケア強化法案」は、介護保険法見直し案の他に、30の法律の見直しが一括提案されたもの。介護保険にとどまらず、国民の生活と福祉全般に深く関わる法案である。
・「社会的孤立」や「制度の狭間」の背景には、縦割りの法律や制度も要因にあるが、社会保障全体に対する財政抑制などがあり、こうした問題には触れていない。
・子ども、高齢者、生活困窮者など多くの人に影響する法律を、一括で提案し、短期間に国会を通過させようというのは、あまりに乱暴。
・障害者自立支援法違憲訴訟団と国(厚労省)が結んだ「基本合意」では、障害者自立支援法を実態調査や障害者の意見を十分に踏まえることなく拙速に施行したことを、国(厚労省)は反省を表明している。
・にもかかわらず、国民や当事者に一切の説明のないまま法案を提出した政府・厚労省に対して、深い疑問と疑念を抱かざるを得ない。

2.「3割の応益負担」導入は介護サービスを本当に充実できるのか

・いま日本では2週間に1度“介護殺人”が発生。(NHK調べ)
・2015年8月の2割負担導入、要支援1・2の生活支援の介護保険給付からの除外は、高齢者や家族、自治体に大きな影響をもたらした。
・しかし、介護保険法の見直し案は「3割負担」を提案し、課税世帯の利用者負担上限を月44,400円にすることを盛り込んでいる。
・ケアプランの「1割負担」の導入、要介護1・2の人の介護保険給付からの除外、福祉用具の全額自己負担などは、「見送り」であり、いずれ提案される(社会保障審議会・介護保険部会の最終のまとめ)。
・見直し案には、778カ所もの「政・省令で定める」が規定されているため、介護サービスの水準・内容は、法案だけで判断できない。

3.新たに盛り込まれた「共生型サービス」とは

・「共生型サービス」は、介護保険法・障害者総合支援法・児童福祉法のそれぞれに条文が盛り込まれ、1カ所の事業所で3つの法律にまたがった複数のサービスを提供できる。その対象は、以下の通り。
・障害者総合支援法は、すべての介護給付・訓練等給付の15事業。
・児童福祉法は、すべての障害児通所給付の5事業
・介護保険法は、介護給付の居宅サービス(12事業)、地域密着型サービス(9事業)、予防給付の介護予防サービス(10事業)、地域密着型介護予防サービス(3事業)で、合計34事業。つまり、介護保険の施設サービスの特別養護老人ホームや介護老人保健施設などを除いた居宅、通所、ショートステイ、グループホームなど。

・ところが「共生型サービス」の具体的なあり方は、厚労省令にもとづく自治体条例で定めるため、法案では評価・判断できない。
・利用者負担と負担上限額は、すでに明確である。
・障害者福祉は、課税世帯の負担上限は月37,200円となっている。
・介護保険は、課税世帯を月44,400円にすることが提案されている。

4.「共生型サービス」の問題点

・「共生型サービス」は、「サービスを効果的・効率的に提供するための生産性の向上」が出発点であり、安上がりな人員体制で複合的なニーズに対応する、という厚生労働省の問題意識が読み取れる。
・「共生型サービス」の制度化は、遅々として整備のすすまない地域包括ケアシステム確立を促進するためという問題意識も強く出ている。
・利用者負担問題においても、介護・福祉・児童と別々の法制度で利用する人たちが同一の事業所で一緒に活動していながら、制度間によって、また収入や世帯の状況に応じて負担額が異なるという不公平感が生じる。

5.私たちの求める福祉・介護の改革の方向性

・「地域包括ケア強化法案」のめざす社会像は、「地域共生社会」ではなく、公的な社会保障の薄い社会である。
・現時点では各分野について質量の両面から基盤を拡充するべきであり、それを抜きにした「我が事・丸ごと」は支援内容に混乱をもたらす。

①介護保険法は、「介護の社会化」や「公的介護保障の充実」を謳った原点に戻るための改革をすすめるべき。
②「共生型サ-ビス」は、「効率化」や「生産性の向上」から考えるべきではない。
③福祉・介護の人材の確保については、低賃金かつ劣悪な労働条件を解決するなど、問題の根本要因を解決するべき。
④「基本合意」で確認した「応益負担の廃止」を、介護保険にもひろげていく視点が大切。介護保険制度そのものの全面的な総括をするべき。
⑤財政抑制を出発点とした消極的な視点ではなく、「同年代の他の者との平等」の生活水準を指標に、法律・制度、支援のあり方を検討すべき。



【「我が事・丸ごと」地域共生社会のねらいは何か~「地域包括ケアシステム強化法案」の問題点と障害福祉への影響 きょぅされん 3/21】

1.国民・当事者不在のまま、突然提案された「地域包括ケア強化法案」

政府は2月7日、「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案」(以下、「地域包括ケア強化法案」)として、介護保険法の見直し案のほかに、30本の法律の見直しを一括で提案しました。その中には、障害者総合支援法をはじめ、健康保険法、児童福祉法、社会福祉法、生活保護法、社会福祉士及び介護福祉士法、看護師等の人材確保の促進に関する法律などが含まれます。つまり「地域包括ケア強化法案」は、介護保険にとどまらず、国民の生活と福祉全般に深く関わる法案です。

その同じ日、厚生労働省(以下、厚労省)の「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部(以下、実現本部)は、当面の改革工程を発表しました。この改革工程を検討してきた実現本部は、厚労大臣を本部長に厚労官僚のみで構成され、昨年7月15日に25分間の第1回を開きました。3つのワーキングチームを設置し、「地域力強化検討会」と社会保障審議会福祉部会・介護人材確保専門委員会は開かれてきましたが、厚労官僚だけで構成された実現本部の開かれた回数やその内容は、ほとんど明らかにされていません。

今回発表された当面の改革工程では、核家族化と共働き世帯の増加によって、家族や地域住民のつながりが希薄になる一方、「縦割り制度」によって「社会的孤立」や「制度の狭間」が生じて、さまざまな生活困難や支援の要望が複合化してきたと強調しています。その解決のためには、生活困難な人の問題を地域住民が「他人事」とせず「我が事」と捉え、また支援制度のあり方は、「縦割り制度」ではなく、地域住民が相互に支え合い、それを含めた包括的な支援体制をつくる「丸ごと」の視点を強調し、「我が事・丸ごと」地域共生社会の実現を提起しています。その第一弾の法改正が「地域包括ケア強化法案」です。

地域社会の人びとの暮らしを変えてきたのは、経済と社会の変化です。核家族化などは、経済・産業による社会の変貌の結果です。また「社会的孤立」や「制度の狭間」は、厚労省・実現本部自らが認めているように、「縦割り制度」が起因しています。

さらには、企業社会による貧富の拡大や弱者切り捨て、非正規雇用の増大、一人親世帯の子どもの貧困などの社会問題、そして福祉・介護の抑制、年金や生活保護の切り下げなどの社会保障全体に対する財政抑制も、「社会的孤立」や「制度の狭間」を生み出した大きな背景・要因です。ところが実現本部は、こうした問題にまったく触れていません。このような社会問題や抑制政策に真摯に向き合い、根本的に反省する姿勢を欠いた厚労省が掲げる「地域共生社会」とは、いったいどんな未来社会像なのでしょうか。

介護保険法の見直しをめぐっては、3割負担の導入や要介護1・2の介護保険給付からの除外などがニュース等で報道されてきましたから、影響を受ける国民は強い関心をもっていました。しかし、31本の法律を一括した「地域包括ケア強化法案」は突然の提案であり、2

「我が事・丸ごと」地域共生社会にいたっては、国民にとって寝耳に水の話です。
これほど多くの法律の見直しを含む「地域包括ケア強化法案」は、子ども、高齢者、生活困窮者、そして障害のある多くの人たちの生活に大きく影響します。それを一括で提案し、短期間に国会を通過させてしまおうというのは、あまりにも乱暴なやり方です。障害者自立支援法制定のとき、障害のある人たちは「私たち抜きに、私たちのことを決めないで(Nothing About Us Without Us)」と、大きな声で何度も訴え続けました。障害者自立支援法違憲訴訟団と国(厚労省)が結び、訴訟和解文書となった「基本合意」には、「国(厚労省)は、障害者自立支援法を、立法過程において十分な実態調査の実施や、障害者の意見を十分に踏まえることなく、拙速に制度を施行」したことについて「心から反省の意を表明するとともに、この反省を踏まえ、今後の施策の立案・実施に当たる」とあります。

にもかかわらず、またもや国民や当事者に一切の説明のないまま法案を提出した政府・厚労省に対しては、深い疑問と疑念を抱かざるを得ません。


2.「3割負担の導入」は介護サービスを本当に充実できるのか

昨年NHKは、独自の調査を行ない「いま日本では、2週間に1度“介護殺人”が起きている」と報道しました。また警察庁は、介護保険がスタートした2000年から2015年までに生じた「介護・看病疲れ」による殺人事件を663件と公表しています。こうした痛ましい事件は、介護保険法の施行以降減るどころか、むしろ毎年微増しています。しかも警察庁の発表は、遺書があるか加害者の供述が認定された事件だけです。心中事件で加害者も亡くなったケースや、遺族が穏便な事後処理を求め事件として扱われなかった介護関連死の総数は、国も自治体も把握していないのです。2006年、京都で起きた無理心中事件で命を取り留めた加害者に対して、京都地方裁判所は懲役2年6カ月、執行猶予3年の判決を下しました。判決理由の中で裁判官は次のように述べ、貧しい福祉制度に苦言を呈しました。「裁かれているのは被告だけではない。介護制度や生活保護制度のあり方も問われている」(毎日新聞社大阪社会部編『介護殺人』、2016年11月)。

2015年の2割負担の導入や要支援1・2の人の生活支援を介護保険給付から除外する(経過措置あり)などは、高齢者や介護する家族、そして自治体に大きな影響をもたらしました。そもそも介護保険法は、「介護の社会化」や「公的介護保険の充実」を掲げて、2000年にスタートしたにもかかわらず、17年後のいま、このような悲惨な現実に直面しているのです。

認知症の人と家族の会は、2割負担の導入を実施した2015年の介護保険の改定を「撤回してほしい」と、2016年4月に厚労省に要望しました。また同年6月には、「2015年改定による認知症の人と家族への影響」調査を行ない、寄せられた回答から81事例の悲痛な声を選び出し、厚労省に提出しました。さらに8月には、さらなる負担増が懸念される社会保障審議会・介護保険部会の議論を受けて、あらためて「2割負担の撤回」を強く求めました。それは、「介護の社会化」を掲げた原点に戻ってほしいという強い願いからでした。

しかし「地域包括ケア強化法案」の介護保険法見直し案は、何のためらいもなく3割負担の導入を提案し、課税世帯の応益負担(以下、利用者負担)上限をすべて月44,400円にすることを盛り込みました。厚労省は、「3割負担の人は介護保険給付者の3%に過ぎない」と説明しますが、識者の一部は「2018年に3割に上がる。当たり前です。今は一定所得以上の人だけど、そのうち全員が3割になる」と述べています(2017年1月27日、朝日新聞)。まったく報じられていませんが、見直し案には、介護保険料滞納者に「4割負担」を課すことが提案されています。

ケアプラン策定の「1割負担」の導入、要介護1・2の人の介護保険給付からの除外、福祉用具の全額自己負担などは、今回見送りになりましたが、今回の見直し案が通ってしまえば、いずれ提案されることは明らかです。

しかも、提案された見直し条文を含めると、介護保険法の文字数は約23万字にもなります(日本国憲法は約1万字)。また、きわめて難解な条文には「政令で定める」が204カ所、厚労「省令で定める」が574カ所もありました。介護保険給付と利用者負担の負担率は法律の条文に明記されているのに、介護サービス事業所の支援者数や施設の面積、必要な設備と運営基準など、もっとも大切な介護サービスの内容・水準は、国会の採択を必要としない「政令・省令」の通知で、すべて決めるというのです。ということは、この見直し案では、「どのくらいの介護が、どのような水準で提供されるのか」まったくわからないのです。そんな法案の良し悪しを、国会は何を基準に判断するのでしょうか。

3.新たに盛り込まれた「共生型サービス」とは

介護保険法の見直し案で、もっとも字数を割いているのが「共生型サービス」と介護医療院の創設です。「共生型サービス」の条文は、障害者総合支援法・児童福祉法にも同じように盛り込まれ、これら3つの法律は別々のままですが、1カ所の事業所で3つの法律にまたがった複数のサービスを提供できるというものです。

「共生型サービス」の対象サービスは、以下の通りです。
障害者総合支援法については、すべての介護給付・訓練等給付の15事業です。また児童福祉法は、すべての障害児通所給付の5事業です。介護保険法は、介護給付の居宅サービス(12事業)、地域密着型サービス(9事業)、予防給付の介護予防サービス(10事業)、地域密着型介護予防サービス(3事業)で、合計34事業です。つまり、介護保険の施設サービスの特別養護老人ホームや介護老人保健施設などを除いた居宅、通所、ショートステイ、グループホームなどです。ただし当面の対象事業は、2018年3月までに厚労省令で定めるとしていますので、法案だけでは「共生型サービス」の具体的な姿を読み取れません。

また、支援員数や施設・居室の面積、設備・運営基準、利用者定員は、厚労省が通知する厚労省令をもとに、「共生型サービス」独自の基準が自治体条例で定められます。しかも、介護保険の「地域密着型サービス」は、市町村条例であり、それ以外はすべて都道府県条例です。つまり「共生型サービス」の具体的な内容・基準は、自治体条例を定めるための厚労省令が示されなければ、法案だけでは評価・判断のしようがないのです。

それに対して、利用者負担と負担上限額は、すでに明確です。障害福祉ならびに障害児通所事業については、一人当たりの「1割相当額」を算定しますが、生活保護ならびに非課税世帯は負担上限がゼロ円です。課税世帯の負担軽減対象は障害福祉が月9,300円、障害児が月4,600円となり、それ以外の課税世帯の負担上限は月37,200円となります。その際の収入認定は、障害児は世帯収入で、また成人は家族同居でも本人の収入のみですが、配偶者の収入は認定対象となります。

介護保険は、現在の1割、2割の利用者負担に加えて、3割負担が提案されました。負担上限は、現行の生活保護と低所得1が月15,000円、低所得2が月24,600円に加え、新たに課税世帯をすべて月44,400円にすることが提案されています。収入認定はすべて世帯単位であり、年金収入を含めて年収280万円未満が1割負担、340万円未満が2割負担、340万円以上が3割負担となっています。

4.「共生型サービス」の問題点

「共生型サービス」の具体的な姿とその内容は、法案では明らかになりませんが、そのねらいと問題点は、これまでの厚労省の関連文書から浮き彫りにすることができます。

そもそも「共生型サービス」は、厚労省が2015年に設置した「新たな福祉サービスのシステム等のあり方検討プロジェクトチーム」に端を発しています。そこで示された方向性は、「サービスを効果的・効率的に提供するための生産性の向上」であり、それは、少ない人数で福祉サービスの提供が可能となるあり方をめざすというものです。また、このプロジェクトチームの検討を引き継いだ「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部では、この「共生型サービス」の人員体制のあり方として、介護福祉士と保育士、介護福祉士と准看護師などの「ダブル資格」の取得を可能にしていく方向性を提案しました。この背景には福祉や介護、看護などの人材不足があります。また地域包括的な相談支援体制の確立には、「地域力」という名のもとでボランティアの積極活用を提案しました。それらを受けて政府は、「介護離職ゼロの実現」政策の9番目に「地域共生社会の実現」を位置づけた「一億総活躍プラン」を2016年6月に閣議決定しました。

このように「共生型サービス」の出発点には、安上がりな人員体制で複合的なニーズに対応するという方向性があることを読み取ることができます。さらに、こうした「共生型サービス」の制度化の背景には、遅々として整備のすすまない地域包括ケアシステム確立を促進するという問題意識も強くあります。一括法案の名称を「地域包括ケアシステムの強化」とした理由は、この点にあります。

他方、利用者負担については、大きな問題をはらみます。具体的には、福祉・介護・児童と別々の法制度で利用する人たちが同一の事業所で一緒に活動していながら、制度によって利用者負担が異なり、また収入や世帯の状況に応じて負担額が異なるということです。障害福祉では、現在でも配偶者のわずかな収入によって課税世帯に認定され利用者負担が課せられてしまう人と、軽減される人の間で、不公平感が生じてしまっているにもかかわらず、介護保険の1割や2割の負担が課せられてしまう人と軽減される人の間には、ますます不公平感を増長してしまうことが予想されます。その結果、「基本合意」の「応益負担の廃止」が、反故にされてしまうのではないかという危機感が募ります。むしろ「基本合意」の考え方を介護保険にも活かすべきです。

5.わたしたちの求める福祉・介護の改革の方向性

生活困難が複合化している人や家族が増えており、縦割りの法律や制度では対応できないことは、実現本部の指摘の通りです。けれども、厚労省および実現本部の「我が事・丸ごと」の出発点が、「効率化」「生産性の向上」「自助・互助・共助の優先」「地域住民の支え合い」など、福祉・介護の財政抑制にあることは明らかです。そうした問題意識による法改正の行き着く先は、本来あるべき「地域共生社会」ではなく、公的な社会保障の薄い社会ではないでしょうか。 5

現段階で最も重点を置くべきは、子ども、高齢者、生活困窮者、障害者等の各分野について、それぞれの質的な側面と量的な側面を整備、拡充することです。それぞれの基盤が確立していない中での「我が事・丸ごと」は、支援内容に混乱を持ち込むだけではなく、「共倒れ」をもたらすのは必至です。本来の地域共生社会の実現に向けて今とりくむべき基本は、政策面からも支援内容の面からも、まずは分野別に深め、拡充することです。その上で応用問題の一つとして、人口減少地域への対処等の観点から個々の分野の組み合わせなども考える必要はあるでしょう。いずれにしても現状は、障害分野をみただけでも到底、応用問題に踏み込む段階には至っていません。

以上を踏まえ、障害者権利条約を実現する観点から「地域包括ケア強化法案」に対して、以下の見解を述べます。

第1に、介護保険法は、多くの高齢者、介護者、支援者が求めているように、「介護の社会化」や「公的介護保障の充実」を謳った原点に戻るべきです。「制度の持続可能性」を強調して、財政抑制と介護保険サービス対象者の絞り込み、市町村への丸投げなどの見直しでは、多くの高齢者とその介護者を見放してしまうだけで、介護保険がめざした「介護の社会化」は、さらに遠退いてしまいます。前述した「介護殺人」報道の多くの事例は、要介護認定の抑制によって、わずかな在宅介護サービスしか利用できないため、家族の介護に頼るしかありませんでした。懸命に介護した家族たちは、長期にわたる睡眠不足とストレスからうつ病を患い、預貯金も底をつき、残された道が痛ましい無理心中だったのです。今回の介護保険法の見直し案では、こうした悲劇を断ち切ることはできません。

第2に、「共生型サ-ビス」は、「効率化」や「生産性の向上」から考えるべきではありません。もちろん、障害のある人や高齢者の支援の交流・連携はあるべきです。しかしそれは、「生産性の向上=安上がり」という考え方からとりくむべきではなく、地域社会で尊厳ある生活と人生を支える視点から、障害や困難による個別のニーズに対する専門性に裏付けられた支援が基礎にあるべきです。そのうえで、支援の発展・深化の結果として、分野や領域を越えた連携・共同が、「共生社会」のあるべき福祉の姿です。
2割負担を導入した2015年の介護保険見直し以降、利用者の減少した営利法人の介護保険事業者の多くが、障害福祉分野に参入しました。「1年で黒字化できるフロンティアビジネス」などのコピーに飛びついて、とくに放課後等デイサービスなどに参入する営利法人事業者が増えました。その結果、「人権よりももうけ本位」「手厚い支援よりも安上がりなサービス」を増長しただけでした。それは厚労省自身も経験して懲りているはずです。

第3に、福祉・介護の人材の確保については、人材不足の根本問題を解決することです。人材不足の要因は人口減少だけでなく、福祉・介護分野の低賃金かつ劣悪な労働条件にあります。その根本問題解決が最優先課題です。そのうえで、福祉・介護の積極的な連携や、制度の谷間を改善するために「縦割り制度」を改善することが求められます。地域包括ケアシステムで強調されている「地域力」は、町内会やボランティアへの依存が中心です。ボランティアは、あくまでも地域社会の文化として醸成するものであり、それをもって不足する人材を補うものではありません。まして財政制度等審議会は、2017年度の障害福祉予算の編成に対して、障害支援区分の軽度化や継続利用に対する期限の導入、給付費の抑制などを求めています。こうした財政政策のもとで、厚労省までが「効率化」「生産性の向上」をめざしてしまうならば、福祉・介護分野の人材不足は、さらに深刻な事態を招いてしまいます。

第4に、「共生型サービス」の考え方では、障害者自立支援法違憲訴訟団と国(厚労省)が結んだ「基本合意」が曖昧にされかねません。むしろ「基本合意」で約束した「応益負担の廃止」を、介護保険にもひろげていく視点が大切です。「基本合意」は、現在の障害福祉のあり方に、きわめて大きな影響を与え、利用者負担の増大や福祉の抑制に対するくさびの役割を果たしています。政府は、「共生社会」の美名のもとで介護保険の改悪に障害福祉を巻き込む前に、介護保険制度そのものの全面的な総括をするべきです。

第5に、障害者権利条約を批准した日本は、法律制度・施策のあり方を検討する際、「同年代の他の者との平等」という原則を基調にすべき点です。縦割りの法律や制度の谷間で、貧困や「生きづらさ」が生じている元凶は、社会のひずみや法律・制度の欠陥にあるのです。財政の抑制を出発点とした法律・制度のすり合わせという消極的な視点ではなく、「同年代の他の者との平等」の生活水準を指標に、法律・制度、支援体制のあり方を検討すべきです。それでこそ、誰もが分け隔てなく「共に生きる社会」を実現できると考えます。


国による「我が事・丸ごと」政策推進に対する意見

2017(平成29)年4月13日

障害者自立支援法違憲訴訟団

平成28年7月15日、国は、「「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部」を立ち上げ、本年2月7日、「「地域共生社会」の実現に向けて(当面の改革工程)」を公表しました。同日、第193回国会に「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案」として、介護保険法及び、社会福祉法や障害者総合支援法の一括改正法案を上程しています。

3月29日から衆議院厚生労働委員会にて審議され、4月12日同委員会にて強行採決されるという異例の事態に至っています。今後の日本の社会保障の道筋に関わる重要な法案が十分に審議されることなく決められていくことに対して強く抗議せざるを得ません。

 私たち訴訟団は、「助け合い」の美名のもとに国が強引に推進する「我が事・丸ごと」政策に対し大いなる懸念を表明せざるを得ません。この政策を推進することが、障害者の基本的人権行使を支援する福祉法制の実現という、未だ道半ばの目標を否定し、2010年1月7日に国と訴訟団が交わした基本合意の実現に抵触するならば、到底認めることはできません。

一 形を変えた「介護保険統合策」に他ならないこと

  基本合意では、「介護保険制度との統合を前提とはせず」と確認されています。2016年12月12日に開催された第8回定期協議でも国(厚生労働省)は、その懸念は当たらない旨答弁されました。
  しかし、介護保険と障害福祉の事業所や資格等を統合し、相談機関等を一つにする中で、両者の垣根を無くすことにより、障害福祉も介護保険を基本とする制度に変更する狙いがあるのではないかとの懸念は払拭できません。障害特性に応じた適切な支援が保障されるのかも心配です。
  まずは、現行の介護保険優先原則を見直し、「障害のある当事者が社会の対等な一員として安心して暮らすことのできる」(基本合意)法体系の構築、具体的には骨格提言の法制化こそを優先してとりくむべきです。

二 基本合意、骨格提言、障害者権利条約の実現が優先順位です

  訴訟団や多くの障害者団体が繰り返し指摘してきたとおり、障害者制度においては、基本合意を遵守、実現し、障害者権利条約の国内的実施である骨格提言の国内法化こそが国が為すべき優先事項です。2010年1月の基本合意締結、2011年8月の骨格提言から6年になりますが、基本合意と骨格提言の実現は果たされていません。
  また、障害(加齢によるそれを含む)のある人もない人も共に暮らす社会、インクルーシブな社会こそが障害者権利条約のめざすべき道です。
基本合意、骨格提言、障害者権利条約の実現が内容とされていない障害者政策は基本合意、骨格提言、権利条約に抵触するものです。まず、それらの実現を優先するべきです。

三 社会保障制度の理念を自助、共助、公助の順とすることは憲法上問題です

  「我が事・丸ごと」政策のベースは「支え合い」「助け合い」「相互扶助」です。しかし、そもそも社会保障制度とは、国が国民の生存・健康・生活を公的な責任のもと、保障することを目的としています。日本国憲法は25条において社会保障理念国家を採用しています。もっと、支援・援助・救済を必要とする人の公的保障をこそ、念頭において進められるべきです。国の社会保障制度の基本理念において「自助」「互助」を過度に強調することは、日本国憲法のもとで許されません。
  この政策は、「助け合い」の美名のもとに、公的責任を後退・曖昧化させ、市民に保障されているはずの社会保障の権利性を否定する方向性を危惧します。とりわけ、障害者権利条約により国際的にも認められてきたはずの障害者の権利を弱体化させるものと言わざるを得ません。

四 「Nothing about us, without us !」=私たち抜きに私たちのことを決めないで!というテーゼ及び基本合意における国の反省に反すること

  国は 2010年1月7日、訴訟団との基本合意第二条「障害者自立支援法制定の総括と反省」第2項において、「国(厚生労働省)は、障害者自立支援法を、立法過程において十分な実態調査の実施や、障害者の意見を十分に踏まえることなく、拙速に制度を施行するとともに、応益負担(定率負担)の導入等を行ったことにより、障害者、家族、関係者に対する多大な混乱と生活への悪影響を招き、障害者の人間としての尊厳を深く傷つけたことに対し、原告らをはじめとする障害者及びその家族に心から反省の意を表明するとともに、この反省を踏まえ、今後の施策の立案・実施に当たる」。
第3項において、「新たな総合的福祉制度を制定するに当たって、国(厚生労働省)は、今後推進本部において、上記の反省に立ち、原告団・弁護団提出の本日付要望書を考慮の上、障害者の参画の下に十分な議論を行う 」と確約しています。
  すなわち、障害者自立支援法導入の際の過ちを心から反省し、その反省のもと、今後の障害者福祉法制については、障害者の意見を十分に踏まえて十分に議論をして進めることを約束したものです。
  このことは、障害者権利条約推進のテーゼである「Nothing about us, without us !」にも通じる、障害者制度改革推進における極めて重要なプロセス保障です。
  ところが、この「我が事・丸ごと」政策は、本部長を厚生労働大臣とし、政務三役、事務次官、審議官をはじめ、関係部局の局長、その他、全て厚生労働官僚だけをメンバーとして、立案され、推進されています。
  政策推進の方法論が唐突で強引です。基本合意に抵触し、障害者権利条約の精神に反するものと言わざるを得ません。

五  政策の趣旨説明における「自立観」に対する疑問

 平成28年7月15日に示された同政策の「趣旨」において、政策の方向性について、次のように説明されています。  
 福祉分野においても、パラダイムを転換し、福祉は与えるもの、与えられるものといったように、「支え手側」と「受け手側」に分かれるのではなく、地域のあらゆる住民が役割を持ち、支え合いながら、自分らしく活躍できる地域コミュニティを育成し、公的な福祉サービスと協働して助け合いながら暮らすことのできる「地域共生社会」を実現する必要がある。
  ここでテーマとすべきは、憲法を根拠とする公的制度が果たすべき社会保障の役割と方向性のはずです。
  同日に発表された資料2「地域包括ケアの深化・地域共生社会の実現」では、地域の実践例として、介護保険事業所を母体として障害者就労支援事業を実施することで、高齢者・障害者・子どもが共に支えあい、子どもと関わることで高齢者のリハビリや障害者の自立・自己実現に良い効果を生むとされています。
  しかし、障害者が働いたり活躍する場所は、子ども・高齢者・障害者を集めた場所である必要はないはずです。障害者の選択する職種は福祉職だけではありません。ここで、「自己実現」に良い効果があるとされている障害者の視点にたった場合、「高齢者や子どもとの助け合いを通した自立」「福祉の支え手になる」という矮小化された「自立」を強要させる違和感があります。障害の有無にかかわらず、人の自立や自己実現は、人それぞれの自由意思で決められるべきものです。

六 日本の障害者予算は国際的に低廉であることを直視すべきであること

  基本合意では、「障害関係予算の国際水準に見合う額への増額」が訴訟団から問題点として指摘されています。
  OECD Social Expenditure Database(2015年8月20日時点) で、諸外国の社会保障関係支出を対国内総生産比でみると2013年度比較で、障害者に対する支出については、
  日本1.04%、ドイツ3.41%、スウェーデン4.67%等
 であり、日本の障害者予算は国際的にみて各段に低い水準にあります 。
  財務省財政制度分科会(2016年10月27日開催)で事務局から配布された資料では、「障害保健福祉関係の平成28年予算は、他の社会保障関係費の2倍の伸び率」などとして、障害関係予算がやり玉に挙がっています。
  しかし、もともとの障害者予算が低すぎたのです。あたかも、障害者予算が増え続けて、日本の障害者政策は十分に予算が確保されているかのごとき論調はその前提に誤りがあります。日本の予算配分率は障害者に対して極めて冷淡であるという事実を直視すべきです。
  この点、2016年(平成28年)5月11日衆議院厚生労働委員会で塩崎恭久厚生労働大臣は2014年の年末に財務省と議論をした際に強調した点として
「やはり、これまでの日本の障害者の施策は、世界的に見れば、特にOECDの中で見ても、平成12年のときに34カ国中31位、今一番近い統計で平成23年、ですから今から5年前、このときでもまだ34カ国中28位、こういう状況でありますから、これからさらにしっかりとした対応をしていかなければいけないんじゃないか」 「日本が今申し上げたようにOECD諸国の平均より低いという指摘は、もうそのとおり認めないといけないんだろうというふうに思っています」と答弁しています。
  まず、GDPのうち少なくとも4%程度を障害者予算に充てるべきであり、その実現を先行するべきです。この、障害者予算の低廉を据え置いたまま、このような政策を推進するべきではありません。

七 社会保障における憲法上の国・自治体等の公的責任、国民の権利保障を曖昧にする危険をはらむ「我が事・丸ごと 」政策には根本的に疑問があります。

一度、白紙にした上で、障害当事者の参画のもとに今後の日本の社会保障政策のあり方を考え直すべきです。                                以上 


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