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日本国憲法の源流…土佐人として誇り 県知事

 改憲団体のフォーラムに知事が南海トラフ巨大地震対策として「緊急事態条項」の必要性を語ったビデオメッセージを送った件について、様々な意見はあっても発表の場が問題であると、同団体が主張する「東京裁判史観」「男女共同参画」の否定、「押し付け憲法論」という、暴論・俗論への認識をただした。
 以前に自民党県議団が「押し付け憲法」論を展開して質問していたので、その認識の浅はかさを明確にする目的をもって質問した。
 現憲法への植木枝盛の影響は圧倒的である。そうした経過を認めっせ、知事に「憲法制定について、このような経緯があることは、土佐人として誇らしいことだと思います」と答弁させた。以下は、その論戦部分。

●塚地県議
 東京裁判は、日本の侵略戦争を引き起こしたA級戦犯を断罪、日本政府はサンフランシスコ条約でこの判決を受諾し、国際社会に復帰しました。
「東京裁判史観の克服」とはこの裁判を否定する議論で、知事が先日訪問された韓国をはじめとした侵略を受けたアジア諸国はもとより国際社会で到底受け入れられないものと思います。また、ジェンダーフリーを目指す「男女共同参画条例」を否定する日本会議の立場を容認されるのか、お聞きをいたします。

■知事
 次に、「東京裁判史観の克服」を掲げ、「男女共同参画条例」を否定する目本会議の立場を容認するのか、とのお尋ねがございました。
今回、美しい日本の憲法をつくる国民の会に送らせていただきましたビデオレターについては、この国民の会が緊急事態条項について推進する立場にあることから、かねてからの主張を広く訴える機会であると考え、メッセージを送らせていただいたものであります。
なお、東京裁判史観に関しては、政府のこれまでの答弁にもありますように、我が国としては、サンフランシスコ平和条約第11条によって極東国際軍事裁判所の判決を受諾しており、それに異議を唱える立場にはないものと理解しております。
また、男女共同参画条例については、女性と男性が互いにその人権を尊重し、共に支え合い、責任も分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮することは重要なことと考えており、引き続き、その取り組みを推進してまいりたいと考えております。

●塚地県議
 先の「国民の会」は、「日本国憲法は、敗戦後、連合国軍の占領下でGHQに押しつけられた『占領憲法』です」国民の会Q&Aに書かれています。これは、二度の憲法調査会でも否定された「押し付け憲法」との立場をとっています。
これは自由民権運動の歴史を誇る高知県民としても看過できない主張といわなくてはなりません。
敗戦後、民主的な憲法の策定を担うことになった時の政府は、民主主義の意味を理解せず明治憲法とかわらないものしか提示をできず、その案は、拒否をされるわけです。
そうした中、格別に日本国憲法に直接的影響を及ぼしたのが憲法史研究者の鈴木安蔵氏が事務局を担当した憲法研究会による「憲法草案要綱」です。その内容には、本県の民権家植木枝盛の理論が圧倒的な影響を与えています。実際、鈴木安蔵氏は、「憲法草案要綱」の発表の記者会見で、植木枝盛等の憲法草案を参考にしたと説明をしています。
同要綱の冒頭の根本原則では、「統治権ハ国民ヨリ発ス」として天皇の統治権を否定し国民主権の原則を採用する一方、天皇は「国家的儀礼ヲ司ル」として儀礼的天皇の存続を認め、また人権規定においては、「国家ノ安寧秩序ヲ妨ゲザルカギリニオイテ」という留保を付すことなく、具体的な社会権、生存権が規定をされています。これらは植木枝盛の展開した理論であり、それをもとにした憲法研究会の憲法草案要綱の基本構造は、象徴天皇制・基本的人権の尊重・国民主権という日本国憲法の基本構造そのものとなっています。
 この要綱にGHQが強い関心を示し、これを英語に翻訳し、民政局のラウエル中佐から参謀長あてに、この内容に詳細な検討を加えた報告書が提出されています。
 国会図書館の日本国憲法の誕生・資料と解説の中で、このラウエル中佐の「私的グループによる憲法改正草案(憲法研究会案)に対する所見」が発見をされたことで、「憲法研究会案とGHQ草案との近似性は早くから指摘されていたが、1959(昭和34)年にこの文書の存在が明らかになったことで、憲法研究会案がGHQ草案作成に大きな影響を与えていたことが確認された。」と説明がされています。
 まさに、土佐の自由民権運動、その中で培われた理論が、現憲法の源流となっていることは、高知県民の誇りではないでしょうか。
 また平和主義についても、軍備の費用は、人民の負担とからんでいることから、国家の軍備が減少すれば、それだけ「福祉を増すべきこと決して疑ひなかるべし」とのべ、軍備の縮小もしくは廃止の有効性を説いています。その内容を具体化した現憲法の9条、特に2項についても、当時の首相である幣原喜重郎の発案であることが、マッカーサーにより1951年5月5日の米国上院軍事・外交合同委員会聴聞会で証言をされています。さらに昨年、第一回の憲法調査会の会長であった高柳氏が、1958年12月10日付けで、マッカーサーに宛てた質問に対し、マッカーサーから「戦争を禁止する条項を憲法に入れるようにという提案は、幣原首相が行ったのです」と明記がされ、「提案に驚きましたが、わたくしも心から賛成であると言うと、首相は、明らかに安どの表情を示され、わたくしを感動させました」と記された返信の存在が、国会図書館収蔵の憲法調査会関係資料にあることが確認をされました。
 まさに、日本国憲法は、メイドインジャパンであり、メイドイン土佐だとも言えます。
日本国憲法の源流に土佐の自由民権運動があることは明らかで、「押し付け憲法」論は、土佐の先人の英知、努力をおとしめる暴論だと思いますが、知事の認識を伺います。

■知事
 次に、日本国憲法の源流に土佐の自由民権運動があることは明らかで、「押し付け憲法」論は、土佐の先人の英知、努力をおとしめることになるのではないかとの、お尋ねがありました。
国立国会図書館が公表しております「日本国憲法の誕生」によりますと、「(民間の)憲法研究会案がGHQ草案作成に大きな影響を与えていたことが確認された」とされています。
さらに、この憲法研究会案を作成した鈴木安蔵氏は、その作成に当たり、「植木枝盛が著した「東洋大日本国国憲案」などを参考にした」とされています。
憲法制定について、このような経緯があることは、土佐人として誇らしいことだと思います。
 一方で、いわゆる「押し付け憲法」論については、平成17年4月の参議院憲法調査会の調査報告書では「現行憲法の制定過程をめぐっては、連合国最高司令官総司令部(GHQ)の関与度は極めて大きく、押し付け憲法であって、自主憲法とは言えないのではないかとの意見がある一方で、日本国民はこの憲法の登場を熱烈に歓迎し、国民の支持の下でつくられたので自主的といって差し支えないとの意見がある。」とされており、様々な意見があるものと承知しております
いずれにせよ、憲法制定過程にかかわらず、制定から70年を経て、大多数の国民が現行憲法を支持していることは確かであり、現行憲法は国民の間に定着しているものと思われます。
ただし、先ほども申し上げました緊急事態条項などのように、現行憲法では、必ずしも対応できない事柄が生じているものと考えております。
このため、このような事柄について、どのような憲法改正が考えられるのか、また憲法改正が必要かどうかについて、国会での議論はもちろんのこと、国民的な議論が大いになされ、積み重ねられていくことが、重要であると考えているところでございます。

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