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共謀罪反対~今も行われている市民監視の実態事例集

 自由法曹団などが参加している「 共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会」の資料
「具体的事実に即して共謀罪の問題点の検証を」として、
「大垣警察市民監視事件」「大分県・別府警察署による盗撮事件」「イスラム教徒監視事件」「自衛隊の国民監視差止訴訟」「名古屋市マンション建設反対運動弾圧事件」「倉敷民商事件」「緒方宅電話盗聴事件、無反省の警察」「堀越事件」を例示。資料に「実行委員会に参加していた男は公安警察だった」を紹介。

 今でも起きている市民監視、弾圧事件~この事実から検証をすべきである。
【今も行われている市民監視の実態事例集 5/9】

【共謀罪法案 政府・自民党の説明 10の疑問とウソ 5/9】

◆大垣警察市民監視事件と共謀罪 弁護士山田秀樹(岐阜)

岐阜県大垣市において、共謀罪の先取りとでもいうべき事件が起きている。
2014年7月24日付け朝日新聞は、「岐阜県警が個人情報漏洩」との見出しのもと、「岐阜県大垣市での風力発電施設建設をめぐり、同県警大垣署が事業者の中部電力子会社『シーテック』(名古屋市)に、反対住民の過去の活動や関係のない市民運動家、法律事務所の実名を挙げ、連携を警戒するよう助言したうえ、学歴または病歴、年齢など計6人の個人情報を漏らしていた。」と報じ、大垣警察による情報収集とシーテック社(シ社と省略)との情報交換が明らかとなった。私たちは、これを大垣警察市民監視事件と呼んでいる。

この事件が明るみに出たのは、シ社が、警察との情報交換を記録した「議事録」を残していたからである。我々は裁判所の証拠保全の手続によってこの議事録を入手したところ、情報交換は4回行われていた。議事録から、警察の発言とされる部分を抜粋する。なお、原文のままで、当事者名は仮名とした。

㋐「岐阜新聞7月31日(水)版に『大垣市上石津町で風力発電について学ぶ勉強会が行われた』ことが掲載されたことを知っているか。」「同勉強会の主催者であるA氏やB氏が風力発電に拘らず、自然に手を入れる行為自体に反対する人物であることを御存じか。」
㋑A及びBは、「同じ岐阜県内で活発に自然破壊反対や希少動物保護運動にも参画しており、岐阜コラボ法律事務所とも繋がりを持っている。」
㋒「また、大垣市内に自然破壊につながることは敏感に反対する『C氏』という人物がいるが、御存じか。本人は、60歳を過ぎているが東京大学を中退しており、頭もいいし、喋りも上手であるから、このような人物と繋がると、やっかいになると思われる。」
㋓「このような人物と岐阜コラボ法律事務所との連携により、大々的な市民運動へと展開すると御社の事業も進まないことになりかねない。」「大垣警察署としても回避したい行為であり、今後情報をやり取りすることにより、平穏な大垣市を維持したいので協力をお願いする。」
㋔Bが、「風車事業に関して一部法律事務所に相談を行った気配がある。」
㋕「Aは、岐阜コラボ法律事務所の事務局長である『D』と強くつながっており、そこから全国に広がってゆくことを懸念している。現在、Dは気を病んでおり入院中であるので、速、次の行動に移りにくいと考えられる。」
㋖「Cは、徳山ダム建設中止訴訟を起こした張本人である。」「反原発・自然破壊禁止のメンバーを全国から呼び寄せることを懸念している。」

これは、警察による市民監視という他ない。その根本には、警察が市民運動を違法視していることにある。
岐阜県警は、監視対象となった当事者からの「公開質問状」や「抗議・要求書」に対して、「大垣警察署員の行為は、公共の安全と秩序の維持に当たるという責務を果たす上で、通常行っている警察業務の一環であると判断いたしました。」と開き直っている。
共謀罪が成立すれば、警察が市民運動を「組織的犯罪集団」と一方的に決めつけ、監視が行われることは必至である。


◆大分県・別府警察署による盗撮事件
弁護士河野善一郎(大分)

1 事件の概要
昨年7月の参議院選公示前の6月18日深夜に、大分県別府警察署の捜査員2名が、民進党の野党統一候補を支援していた連合大分労組や社民系の平和運動センターが入っている「別府地区労働福祉会館」の敷地内に無断で侵入し、2箇所の木立に木の葉でカムフラージュしたビデオカメラを設置して、公示後の同月24日に発見されるまで、会館に出入りする人や車を隠し撮りしていた事件が発覚した。会館関係者が保存していた記録媒体の映像がテレビで報道されたが、会館に出入りする人の顔や車のナンバーが明瞭に読み取れる状態であった。
後日県警は、参議院選の選挙違反事件の捜査のためと弁明したが、現行犯性がなく、会館を出入りする人物を無差別に撮影しているから、むしろ選挙、政治活動の動きや人と人の接触情報の収集を目的とした疑いが濃厚である。

2 警察は大量のビデオメラを日常的に使っている
さらに今年3月議会で、県警はビデオカメラを190台所有しているうえに、業者から平成27年度79台(560万円)、28年度59台(390万円)リースして多額の県費を使っていることが明らかにされ、警察が日常的に大量のカメラを使用している実態の一端が判明した。全国では驚くべき数になる。

3 事件発覚後も警察庁が令状なし盗撮を容認
警察庁は、本件が発覚した後の平成28年8月26日、「捜査用カメラの適正な使用の徹底について(通達)」を出した。
この中で「捜査用カメラによる被疑者の撮影・録画(以下「撮影等」というは、その捜査目的を達成するため、必要な範囲において、かつ、相当な方法によって行われる場合に限り任意捜査として許される。」として、令状なしの盗撮を容認している。

4 共謀(内心の意思)を探るには盗撮、盗聴しかない
共謀は、内心の意思の合意であるから、それを把握しようとすれば、人の行動、人と人の接触、会合、会話、通信などを探るしかない。盗撮、盗聴が野放しにやられる恐れが現実になる。
市民団体や労働団体の活動でも、抗議の座り込み(組織的威力業務妨害罪)、団体交渉(組織的強要・監禁)、ビラ配布(組織的信用毀損罪)等々が対象にされる。

本来の市民団体は対象にならないなどと政府は答弁しているが、市民団体等でも、組織的に上記の行動を行うことを役員会で決めれば、その時点から組織的犯罪集団に一変したと見做されるのである。一変したと見做す「疑い」は、警察が抱く疑いであるから、警察は、盗撮、盗聴をその「疑い」を裏付ける証拠として、最大限に活用するであろう。共謀罪は、間違いなく監視社会、盗聴社会をつくり出す。


◆イスラム教徒もあなたも~イスラム教徒監視事件
弁護士梓澤和幸(東京)

共謀罪法。適用される277の犯罪一覧表を見つめては毎日ため息をつきながらツイッターを書き、寸劇の台本を作る。法律を専門としていない国会議員、市民の方々にとっては本当の怖さはまったく霧の中だと思う。
この闇に光をあてるためにイスラム教徒(以下ムスリムという)に行われた捜査のことを振り返ってみたい。ムスリムが味わった恐怖、不安、孤独を次にこの文章を読むあなたも味わうことになるかもしれない。

2010年10月28日ごろ在日のムスリムに災難が襲いかかった。警視庁公安部が国際テロ犯罪の捜査と称して行ってきたイスラム教徒捜査の記録フアイル114点がインターネット上に公開拡散された。犯罪の実行はもちろん、嫌疑もないのに、ムスリムというだけで捜査対象となった個人の氏名、住所、写真、取引先、交友関係が詳細に記録されていた。近隣の交際、商取引、などに深刻な影響が出たうえ、信仰に関する情報を突如自分の意思に関係なく拡散されたことへの不安は少なくなかった。
しかし一層の憤りはムスリムであるというその一点で違法にして執拗な捜査の対象とされたことである。イスラームの礼拝に現場で立ち会った人ならば誰しも大地や床に身を投げうち、すすりなくように神と対話しながら祈る敬虔な姿に心を打たれると思う。信仰とはそのようなものなのだ。
流出した資料が語る捜査はかかる内心の営為の核心に踏み込むものであった。毎週金曜日にモスクに祈りに参集する人々の一人ひとりの出入りを確認し、自宅まで尾行して住所氏名一覧表を作り上げた。自宅に複数の警官が身分証明書も呈示せずに入り込んできた。レンタカー記録、銀行の取引記録も調べられた。
流出した警察の内部文書にはその「成果」が誇らしげにこう記されている。
「わが国には9万人を超えるOIC(筆者注イスラム諸国会議機構57か国加盟)諸国出身者が居住するとみられていますが、昨年のサミット(北海道洞爺湖サミット)までに、略72000人(把握率98パーセント原文のまま)を把握できました。以下略」

関東地域圏テロ担当補佐等会議概要警察庁1・9(平成21年1月14日国際テロリズム対策課)(文書の引用は青木理ほか編国家と情報現代書館2011年198ページから)内部資料に実名で記載された被害者は国家賠償請求訴訟を起こした。一審(判例タイムズ2016年3月号掲載)に始まり上告審まで、裁判所は機微に触れる個人情報が拡散したことの警視庁(東京都)の管理責任は認めたが、捜査の違法、個人情報の収集、保管、管理についての違法は認めなかった。司法とて頼りにならぬ。
所得税法や消費税の節税相談会が法違反とされ、著作権法違反(歌や朗読の入る集会)、商標法違反(コピーブランドのバザー)、森林法違反(山菜狩り、キノコ狩りの準備)、組織的威力業務妨害罪(住民運動ピケットをやるとのの集会)など市民団体、労働組合の行う勉強会、集会は共謀罪を使っていくらでも「適法的な捜査の名目で」干渉と監視、スパイの対象となる。昨日ムスリムに向けられた牙はいま私たちに、向かってきている。

◆自衛隊の国民監視差止訴訟からみた「共謀罪」の危険性-国民「監視」から国民「弾圧」へ- 弁護士小野寺義象(宮城)

共謀罪による国民監視の危険が指摘されているが、それを裏づける事実が、自衛隊情報保全隊の国民監視差止訴訟の中で明らかにされている。
政府は、「共謀罪は一般人とは無関係」と言っているが、これが事実に反することは、自衛隊の内部文書(裁判所が自衛隊作成文書と認定したもの)をみれば明らかである。
自衛隊は、イラクへの自衛隊派兵に反対する一般市民の集会やデモなどを「反自衛隊活動」と呼んで敵視し、個人が特定できる写真撮影や録音、実名・職業・所属団体・政党などの個人情報の収集をまで行っている。
監視の範囲も、自衛隊とは関係のない年金改悪反対・消費税増税反対の運動、写真展や小林多喜二展にまで及び、一般市民、国会議員、地方議会議員、新聞記者、学者、映画監督、弁護士会も監視対象になっていた。生協前でイラクへの自衛隊派兵反対ライブをしていたシンガーソングライターは、実名や職業まで追跡調査された。しかも、裁判所がこれは違法なプライバシー侵害として国家賠償を命じ、国自身も上告を断念したにもかかわらず、謝罪も反省もない。このように国民監視態勢はすでに完成しているといえる。

この監視の目的について、自衛隊の教科書(教範)には、このような「探知活動」は「無力化活動」のための情報収集であり、「無力化活動」には「敵等の情報・謀略活動を無効化する分野(防勢的活動)」だけでなく、「情報・謀略活動を行う敵部隊等の撃滅、施設・機材の破壊等により敵の情報・謀略活動そのものを排除する分野(攻勢的活動)」も含まれていると記載されている。つまり、自衛隊が「敵」に該当するとすれば、一般市民であっても「無力化活動」の対象になるのである。

この「無力化活動」を実施できる法律が現在はない。「共謀罪」は「無力化活動」実施の突破口となる法律である。共謀罪の成立によって、「監視」から「弾圧」の時代が始まる。これは絶対に阻止しなければならない。

◆名古屋市マンション建設反対運動弾圧事件 弁護士中谷雄二(愛知)

1 平成28年10月7日、名古屋市内の閑静な住宅街に建設中の高層マンションの建設現場に出入りしている大型ダンプの監視活動をしていた反対派住民のリーダーの男性(O氏60歳)に現場監督が立ちはだかり、両手で抱え込むなどした。束縛を逃れようと、O 氏が両腕を組んだまま身体をねじった際、現場監督と軽く接触、現場監督が体勢を崩して、後ろにいた大型ダンプの荷台側面に触れた。現場監督はただちに110番通報し、O 氏は「傷害罪」で勾留、その後、暴行罪で起訴された。現在、O氏は暴行の事実はなかったと無罪を主張して争っている。

2 O氏は自営業者で自宅近くで店舗を経営している。家族と一緒に住み逃亡の恐れなどない。ところが、否認したことを理由に14日間に及ぶ勾留がされた。勾留終了後、釈放をされて、暴行罪で在宅起訴された。ところが、釈放の前日には自宅と経営する2か所の店舗にも家宅捜索が行われた。釈放を目前に控えた家宅捜索は異例であり、何も差し押さえるべきもの出てこはなかった。

3 住宅街に高層マンションの建設計画が公表されたことから地域住民は住環境の悪化を心配し、計画変更を求めたが、建築会社はまともに取り合おうともしなかった。住民は、法的な争いと合わせて建築現場の出入り口にカラーコーンを置くなどの抗議行動・監視活動を繰り広げてきた。
起訴後開示された証拠によれば、住民が抗議行動を行う度に建設会社の現場監督や代理人弁護士から110番通報等が頻繁に行われていた(現場監督の証言では13回110番したと証言している)。事件前日には、警察官7名が建設現場に来ていたことを付近住民は目撃している。

4 この事件では全く政治活動の経験などないマンション建設反対運動のリーダーが逮捕された。警察・検察は、企業側から住民が事業を妨害していると訴えられるや、紛争を調整するのではなく、一般住民を逮捕・勾留し、起訴まで行った。地域の平穏を守り、安全をまもってくれる筈の警察は、住民の言い分を聞くこともなく企業側に立ち強行措置をとったのである。

共謀罪が導入されれば、この事件のように軽微な接触すらない段階でも、住民が大型車両の出入りを実力で止めようと話し合っただけで、準備行為(プラカードの作成等)があれば、組織的威力業務妨害罪の共謀で、逮捕することが可能となる。
その時、逮捕されるのは、「組織的犯罪集団」として政府が宣伝する「テロ組織」などではなく、「〇〇地区の住環境を守る会」のメンバーが逮捕される可能性があること、一旦、逮捕勾留されれば、大変な被害を被ることをこの事件は教えている。

◆倉敷民商事件と共謀罪 弁護士岡邑祐樹(岡山)

1 倉敷民商事件とは
広島国税局は、2013年5月、全国商工連合会(全商連)加盟の倉敷民主商工会(倉敷民商)の法人会員I(後に退会)の法人税法違反にかこつけて、倉敷民商の事務所とIの事務所に法人税法違反で国税犯則取締法に基づく捜索差押えを行った。その後、2014年1月、岡山県警は、I担当の禰屋町子さんがIの脱税を手助けしたとして法人税法違反幇助(勾留までは共同正犯が被疑事実だった)及び税理士でないのに会員の税務書類を作成したとして税理士法違反で逮捕・起訴した。同年2月には、事務局長の小原淳さんと事務局次長の須増和悦が税理士法違反で逮捕起訴された。
2013年の国税犯則取締法に基づく捜索差押えでは、広島国税局は倉敷民商から、事務所にあったパソコンのすべてやIと関係のない会員の記録まで差し押さえ、Iからも元帳等を差し押さえた。この記録をもとにして国税局は法人税法違反のストーリーを作ってIの社長とその妻に認めさせ、I以外の会員についての税理士法違反の資料としたのである。

2 民商と共謀罪
本事件では、弾圧の材料とされたのは直接的には税理士法違反(倉敷民商職員による会員の税務についてのサポート)であるが、倉敷民商会員の脱税疑惑が弾圧の契機となった。税理士法違反について、捜査当局は強制捜査以前には強制捜査が認められる程度の証拠を何ら得ていなかった。逆に言えば、ある程度の脱税疑惑がなければ、倉敷民商の弾圧に踏み切れなかったともいえる。
一方で、現在審議されている共謀罪の対象構成要件には、法人税法違反も含まれている。テロ対策と法人税法違反とがどう関係するのかと首をかしげたくなるが、共謀罪が新設されたならば、民商の正当な活動が、法人税法違反の準備行為として捜査の対象となる恐れが十分にある。

3 岡山県警の横暴
本事件の捜査に当たっては広島国税局だけでなく岡山県警も国家権力としての本性をあらわにした。
岡山県警は、捜査員を多数投入して倉敷民商会員のほぼ全員に聞き込みをかけるローラー作戦を展開し、その中で、倉敷民商が犯罪組織であると会員に吹聴して、倉敷民商からの脱退を促したのである。その結果、倉敷民商からは脱退者が続出した。また、裁判が始まると、支援者に混じり支援団体のビラを受け取って誰ともしゃべらない不審な者が何回も傍聴に来ていた。私はその者を常に監視していたが、目が合うとすぐに背け、裁判後はただ一人報告集会に出ず、裁判所を後にしていた。私はその者が公安警察であったことを確信している。支援者になりすまして市民の運動を監視するというなんとも汚いやり口である。
また、禰屋町子さんの第1審判決の言い渡しについては、岡山県警40名ばかりが法廷に投入され、裁判長の走狗となって傍聴人を強制的に追い出した。本来市民を守るべき警察が善良な市民に牙をむいたのである。情けない限りである。

4 共謀罪は廃案に
このような横暴な警察に、強力な弾圧の武器である共謀罪を与えることは断じて避けねばならない。共謀罪は廃案にするほかない。

◆緒方宅電話盗聴事件無反省の警察に「共謀罪」は渡せない! 弁護士弓仲忠昭(東京)

1986年11月、当時、共産党の国際部長だった緒方靖夫さん宅の電話盗聴が発覚した。緒方宅電話の電話線が約200メートル先の「メゾン玉川学園206号室」に引き込まれ、同室内の電話器で緒方宅電話の通話内容が盗聴できる状態になっていた。緒方さんの告訴(電気通信事業法違反、職権濫用罪等)を受けた東京地検特捜部の捜査の結果、206号室内で押収した文書類の筆跡、複数の指紋、神奈川県警職員共済組合関係文書などから、盗聴実行犯として神奈川県警警備部公安一課所属の5名の現職警察官が特定され、処罰可能な証拠もあった。
しかし、検察庁は不当にも5名の警察官を不起訴(2名は起訴猶予)にした。当時の伊藤栄樹検事総長がその回想録「秋霜烈日」で、「おとぎ話」として、「末端部隊による実行の裏には、警察のトップ以下の指示ないし許可がある」と思われるが、「末端の者だけを処罰したのでは、正義に反する。」「指揮系統を遡って、次々と検挙してトップにまで至ろうとすれば、…、警察全体が抵抗する」等と述べ、今後の警察と検察の協力関係維持
のために手打ちをしたことを事実上認めた。
緒方さん家族は、1988年9月、盗聴警察官と神奈川県警及び警察庁の責任追及のため、民事国家賠償訴訟を提起。被害者緒方さん、支援者、弁護団の三者が固く団結、法廷の内外で警察の不正を許さず真相を究明する闘いを展開し、1994年9月に東京地裁、1997年6月に東京高裁と勝訴し高裁判決が確定した。

確定判決は、① 緒方宅電話盗聴は、共産党の情報収集を目的とし、県警警備部公安一課所属の3名以上の警察官が関与し10ヶ月近くにわたり継続的に行われた、② 情報収集活動を末端の警察官が職務と無関係に行うことはあり得ず、本件盗聴は、同公安一課所属の警察官が県の職務として行ったと推認できる、③ 警察庁は、一貫して共産党を警備情報収集の対象とし、全国警察に同党関係の情報収集の一般的指示を行い、各県警等が収集した同党関係の情報の報告を受けていたと推認できると警察の関与を認定、国及び県に損害賠償の支払いを命じた。

裁判所に断罪された警察は、619万円余(遅延損害金を含む)を支払ったものの、未だ緒方さんや家族に対して、一片の謝罪の言葉もないままである。また、事件発覚から約半年後の参議院予算委員会(1987年5月7日)で、山田英雄警察庁長官が、「警察におきましては、過去においても現在においても電話盗聴ということは行っていない」と答弁した。さらに、組織的関与を推認した高裁判決確定後も、高橋清孝警察庁警備局長は、「組織的犯行と断定したものではなかった」、「警察としては、違法な通信の傍受は過去にも行っておらず、今後も行うことはございません」(衆議院法務委員会、2015年4月17日)と警察による組織的・計画的盗聴の事実を否定し続けている。
未だに組織的盗聴の事実を認めない警察に、話し合っただけで処罰する「共謀罪」という「武器」を与えたならば、その取り締まりを名目に「盗聴」が拡大され、市民の通信の秘密やプライバシーが大きく侵害されることになろう。監視社会をもたらす憲法違反の悪法「共謀罪」法案は廃案にするほかはない。


◆「堀越事件」と共謀罪による「捜査構造」~国家公務員法による政治活動禁止規制にもとづく捜査の実態に照らして
弁護士船尾徹(東京)

○「堀越事件」における「捜査構造」
国家公務員の政治活動禁止規制は、公務とまったく無関係に行われる「勤務時間外」の政治活動を禁止していること、公務員の地位を前提とする、あるいは公務の遂行に関連した「政治的行為」の禁止に限定されずに、市民生活の場における「市民」としての政治的表現行為を広範に禁止する規制となっていること、政治活動に対する制裁として懲戒処分にとどまらず「刑事制裁」まで科す規制となっているなどから(国家公務員法102条1項、110条1項19号、人事院規則14-7)、こうした過度に広範な政治活動禁止規制はかねてから違憲であると圧倒的多数の憲法研究者から指摘され、最近では高裁段階で違憲判決、最高裁段階で無罪判決が出されている。
こうした政治活動禁止規制にもとづく捜査は、公務員の「勤務時間外」における市民生活を日常的に監視してやまない捜査構造とならざるを得ない。
目黒社会保険事務所職員が、政党機関紙を各戸に投函するのではないかとの嫌疑のもとに、29日間ほぼ連日、警視庁公安部総務課の警察官が大量に投入され、その間に投入された警察官はのべ171人、とくに勤務のない土・日・祝日には、1日に11人、ビデオカメラ6台、自動車4台といった異様な捜査体制のもとに、その職員の日常の生活行動が執拗に監視・尾行の対象とされ、盗撮されていた(「堀越事件」)。

この「公安警察」による監視・尾行による情報収集活動の一端が、「行動確認実施結果一覧表」というタイトルの捜査記録として作成されていた。その内容をみて弁護団のだれもが息をのんだ。職員の日常の生活行動が文字通り分刻みで、「公安警察」の監視・捜査の対象となり、その情報が詳細に収集されていた。たとえば10月12日(日曜日)の「行動確認結果」には、

「12時8分自宅を出てくるの再捕捉、12時25分有楽町駅改札を出たところで氏名不詳の女(身長150 cm 位、年齢35歳前後)と接触、銀座インズ地下1階『月の雫』に入店、13時20分同店を出る。徒歩にて築地方向、中央区銀座2-15-6『区立中央会館』に入る、14時30分演劇『銃口』を見る、17時25分演劇を終了し同演劇を見ていた男女10名位と、居酒屋にはいる、19時50分居酒屋から出た後、被疑者は女と手をつなぎながら、氏名不詳の男と3人でカラオケ店『デイアナ銀座』(中央区銀座3-9-6)に入店、20時30分視察を打ち切る」と記載されていた。

この捜査の責任者(警視庁公安部警視)は証人として、「我々の捜査のスタンスというのは、そういったもの(国家公務員法所定の「政治活動」と無関係の市民生活における「生活行動」をさす)を回避するかどうかとか、そういう問題ではなくて、それは行動確認してみなければ結果として分からない」、「行動確認をしている過程でそれが私生活だからといって、いったん行動確認を打ち切って、そのあと行動が把握できなければ捜査にはならない」と、このとき行われた捜査の実態を証言をしている。

この証言は、この政治活動禁止規制が「勤務時間外」における「市民」としての政治活動を「刑事制裁」の対象とする広範な法規制のもとでは、「公安警察」は国家公務員法(人事院規則)が禁止している「政治活動」とそうした「政治活動」と無関係の市民としての日常生活における営みを、捜査上分離することなど不可能なことであり、後者の「生活行動」をも含めて網羅的に監視・捜査の対象として実行せざるを得ないことを明らかにしたものである。
政治活動禁止規制にもとづく公安警察によるこうした捜査は、職員がいまだ犯罪を実行してもいないにもかかわらず、市民生活の場で政治活動を行うのではないかとの嫌疑のもとに行われた「事前捜査」として拡大・増殖し、この職員の市民としての日常生活にとどまらず、その職員の友人・知人らとの日常的な人間関係、さらには職員が参加・交流している特定の団体やメンバーに狙いをつけ、平素から組織的かつ秘密裡にその思想・動向などを監視の対象にした「一般情報」を収集する捜査の重要な一翼を形成しているのである。
国家公務員法による政治活動禁止規制にもとづく公安警察の捜査の恐ろしさは、監視・捜査の対象を、職員の市民生活、そして、職員がさまざまな政治的思想・信条を有する者との間の日常的な交流にまで拡大し、職員やその知人のプライバシーを全面的に剥奪することにより、市民が自由に情報を交換し自己の意見を形成することを萎縮させる点にある。
それは、この国の政治とあり方を自由に決定しようとする民主主義の基盤そのものが破壊されることにつながる。

○共謀罪にもとづく「捜査構造」と監視社会
共謀罪の新設は、こうした公安警察にいかなる捜査権限を与えることになるのか。それは市民の自由な意見表明・活動にどのような影響を与えるのか。
共謀罪の新設は、「予備」「陰謀」にも至らないはるか前の計画・準備段階である「共謀」「合意」にまで「前倒し」して犯罪化することにより、「処罰の網」(構成要件)を広範に拡げる。それに応じて警察の捜査権限は飛躍的に拡大し、「堀越事件」にみられる市民の日常生活を奥深く監視する捜査が横行する「監視社会」をつくり出す。
共謀罪新設によって警察権力が取得することになる捜査権限は、共謀罪の対象とされた犯罪を実行するための「準備行為」があった時、はじめて発動されるというものではない。「準備行為」前でも、共謀・計画の疑いがあるとして捜査を始めることができるのである(法務省の林真琴刑事局長は、準備行為が行われていない段階でも、「犯罪の嫌疑があり、捜査の必要性が認められる場合、手段の相当性が認められる範囲で任意捜査を行うことが許される」と4月21日の衆議院法務委員会で答弁している)。

さらには「共謀」「計画」が成立した時にその捜査が始まるというものでもない。「共謀」「計画」が成立していない状況のもとでも、つまり、話し合いや計画などが行われていない時点でも、「堀越事件」において政党機関紙を各戸に投函するのではないかといった嫌疑のもとに監視・尾行・盗撮を行ったように、これから共謀・計画をするのではないかとの嫌疑のもとに、ターゲットとされた市民・団体に対する監視・捜査が行われていく。

警察庁警備部が1957年に公刊している「警備犯罪に関する諸問題」によると、警察活動を、①犯罪発生後、その捜査のための情報収集活動(「捜査情報」)、②具体的に公安を害する事態又は犯罪発生のおそれがある場合、その予防鎮圧に備えて情報を収集する活動(「事件情報」)、③具体的に公安を害する事態あるいは犯罪発生のおそれはないが、一般的に公安の維持または犯罪の予防鎮圧に備え、平素から情報を収集する活動(「一般情報」、「争議に入っていない平和な状態にある労働組合の組織や動向を調査しておく」活動などがその例として挙げられている)に分類している。

上記②③の警察活動は、「犯罪そのほか公安を害する事態の発生する以前に行われる事前情報活動であり、狭義の警備情報活動はこれを指す」として、犯罪の具体的発生のおそれとは関わりなしに、平素から組織的かつ秘密裡に特定の団体や個人に狙いをつけ、その組織の動向などの情報収集を行う③の活動こそ、「公安警察」がその本領を発揮する主要な任務とされている。
そこで、共謀(計画・準備)がいまだ成立する前から「公安警察」は、共謀・計画をするのではないかと平素から狙いをつけた団体とそのメンバーの人間関係、そのメンバーである市民相互の間で行われている室内の会話を含め、携帯電話、電子メール、ライン、ツイッター、フェイスブックなどによって行われている市民相互のコミュニケーションや日常的な行動にかかる情報のすべてを、長期間にわたって網羅的に取得するための監視・盗聴をする捜査権限を求めていくことになる。そうしてその団体のメンバーである市民の思想、信条、性格、その友人・知人との交流関係、さらには団体の動向にかかわる情報など、犯罪と無関係の情報までも網羅的に捕捉しようとする「公安警察」の監視・捜査が日常化していく。

こうした監視・捜査が、偶々逸脱して行われると捉えるのは、共謀罪の本質を正しく把握したことにはならない。共謀罪の捜査は、構造的にそうした監視・捜査を、市民生活のなかに日常的に肥大化させていくのである。2016年に通信傍受(盗聴)の対象犯罪が大幅に拡大された現在、共謀罪が新設されれば、両者が相まって市民相互の日常的な通信・コミュニケーションがたやすく盗聴され、歯止めのない監視・捜査が拡大した「監視社
会」へと拍車をかけ、民主主義の基盤ともいうべき市民の自由な活動を萎縮させていく。
ひとたび「共謀罪」による警察権限を拡大して形成された「監視社会」をもとに戻すことは容易ではない。それはこの国の戦前の歴史に照らし明らかとなっている。


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