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いじめの重大事態の調査 第三者委員会の課題と新ガイドライン


 この5月、「全国学校事故・事件を語る会」が開催さ、第三者委員会の問題点、課題についてのレポート。
その中で、今年3月の文科省が策定したガイドラインは、当事者なぜ?どうして?など当事者のメッセージを理解しようとしている。と評価しており、改めて調べてみた。
  高知県のある自治体でも自殺があり、第三者委員会が設置されたが「いじめはあったが・・・原因と特定てきない」というみので、両親が委員会の議事録の公開をもとめたが、議事録を作成していなかったという事後の検証できないし、教訓化にも役立たないという事例が発生している。

【「全国学校事故・事件を語る会」 参加者が語る第三者委員会の問題点 (上)5/27 渋井哲也】
【「被害者・遺族に権利性を持たせるべき」全国学校事故・事件を語る会で明らかになった第三者委員会の課題とは? (下)5/28】
【いじめの重大事態の調査に関するガイドライン  平成29年3月 文部科学省】

【「全国学校事故・事件を語る会」 参加者が語る第三者委員会の問題点 (上)】

 いじめや体罰による自殺、熱中症や部活動の事故など、学校で起きた事故によって子どもに後遺症が残ったり、死亡したりするケースがある。「全国学校事故・事件を語る会」は5月20、21の両日、集会を兵庫県神戸市内で開いた。テーマは、事故や事件が起きたあとに設置される「第三者委員会の課題」について。遺族3人が事例報告をした。交流会では、今年初めて、亡くなった子どもの「兄弟姉妹の会」も開かれた。

◆学校や市教委との温度差を埋めるためには

 2013年3月、奈良県橿原市立中学校の一年の女子生徒(当時13)が自宅から徒歩で数分のマンション7階から飛び降りた。生徒はいじめを受けていた。病院で担任は「やっぱり、クラスのことが原因なのか…」と言った。しかし、しばらくすると、校長が家庭の問題を匂わす発言をしていた。
 教頭は「調査は限界。証拠がないと調査しない」と言っていた。教育長も「アンケートは実施しない」としていた。加害者の親も通夜や葬儀で「これは事故死。自殺ではない。蝶々を追いかけて落ちたのよ」と言っていたことを覚えていると遺族の母親は語る。
「何度も調査をしてほしいと言ったが、なかなか動いてくれなかった」(母親)
 しかし、加害者の一人は無料通信アプリLINEのタイムラインで「私のせいでこうなった…」と書き込みをしていたことが後に発覚した。
 「加害者には腹が立つ。けど、なぜ、学校側は加害者に適切な指導ができないのか。反省する機会を奪って欲しくない」(同)
 その後に取ったアンケートの回答によって校長はいじめを認めることになる。しかし自殺との因果関係は「わからない」と発言していた。また、校長はアンケート結果を見せるといったが、「学校は?教育委員会のメッセンジャーでしかない。権限はない」と言い、見せないと言い出した。
 遺族は第三者委の設置を要望した。当初、市教委は「いじめと自殺の因果関係は低い」との見解だった。そのため、遺族の要望に対し「望むところだ」と対決姿勢を示していた。しかも、初会合は一方的に通知。委員の構成、時間、場所は秘匿して行われた。母親は初会合を「報道で知った」という。しかも、委員には市の顧問弁護士がいた。そのことで「中立公平ではない」と遺族側が抗議したものの、回答がないことから、遺族側は調査協力を拒否。それを他の委員と世論が後押しし、第三者委は解散した。
 「市の顧問弁護士は『訴訟の代理業務』として、遺族の親族の戸籍を『損害賠償請求訴訟提起準備のため」として、取得していたことがわかった。そのことが市議会で取り上げられ、市側の上層部が『訴訟に発展する可能性がある』との回答していた」(同)
 結局、新たな第三者委ができるのは11月。生徒からの聞き取り調査は出遅れた。
 「いじめ防止対策推進法が施行されて、学校事故対応の指針が通知されても、学校側の事故対応は改善されない。遺族は『学校で子どもに何があったのか』を知りたい、(遺族と)学校・教委側は、情報量、人脈、経済力がまったく違う。温度差を埋めるためにはコーディネーターが必要だ」(同)

◆第三者委はいかに公正中立を担保できるのか

2012年7月、新潟県立高田高校3年の男子生徒(当時17)が自殺した。背景には、顧問による指導があった。第三者委の報告書では「不適切な指導の中で、決定的な要因とは言えないまでも、決定的な契機であったと考えられる」とした。
指導の原因になったのは、ラグビー部員だった生徒が、女子マネージャーの仕事ぶりに不満を持ち、SNSに書き込みをしたことだ。それを知り、マネージャーは退部する。顧問は、マネージャーに批判的だった男子生徒を含む三人の部員を呼び出し、叱責をした。男子生徒を含む三人は納得しなかったものの、混乱を招いたことを部員全員の前で謝罪した。
 「(三人の)言い分はまったく聞かなかった。SNSに書き込んだ背景はまったく無視した。この学校では、インターネット利用の問題は異常な反応を示す」(父親)
この問題は解決したように見えたが、マネージャーの父親が学校を訪問。男子生徒への処罰を求めた。顧問は男子生徒一人のみを呼び出し、密室で指導した。この夜に男子生徒は自殺している。
自殺後、遺族が学校に電話をすると、「しかるべきときに伺う」と回答した。1ヶ月が過ぎた頃に学校側が家庭訪問し、「自殺の原因はわからない」と話した。ただ、その1週間後に学校側が県教委に提出した「学校事故報告書」では、自殺の理由を「自責の念」としていたことがわかった。しかも、事件翌日に、その理由にすることが決められていたというのだ。学校側は遺族に誠実な対応をしなかったことになる。
学校側は保護者説明会をしてない。部活の保護者だけに行った。

「事件そのものがなかったような対応だった。(夏休み中に亡くなったため)2学期の始業式に、通常であれば、何らかの言葉があるのが普通ではないか。にもかかわらず、何もない。始業式直後に、詰め寄る生徒もいたというが、学校側は生徒に口を閉ざしていた」(同)

遺族に事実を告げる生徒もいた。その情報をもとに、学校に質問しても、学校側は「指導に問題があったなどとは断じて認められない」と回答するだけ。県教委に再調査を依頼するが、聞き取りを行ったのは教員だけ。調査を行うことはなく、第三者委の設置を要求。14年6月に初会合が開かれた。
県教委は当初、「第三者委の設置目的は自殺の原因究明ではなく、学校の報告書の検証である」「委員の遺族推薦は、公正、中立、客観性に欠けるために認められない。公正、中立、客観性は教委が判断する」「設置要項の作成に、遺族の関与は認めない」「直接聞き取りの必要がある場合は、調査委員ではなく、県教委が行い、調査委に回答する」などと言ってきた。しかし、その提案には同意しなかった。
「諦めずに県教委と交渉した。遺族と県教委との面会は、すべて報道機関に公開することを条件にした。その中で設置要項と委員の人選方法を提案した。結局は、個人推薦ではなく、団体への推薦依頼という形になった。いかに公正中立を担保できるのかに尽きる」(同)

◆毎回のように『公正・中立な立場です』と言われ続けた

2014年1月、兵庫県三木市立中学校1年の北芝隆晴さん(当時12)が4階教室の窓から転落し、亡くなった。警察は当初、事故、事件、自殺の3つの可能性を考えて捜査したが、遺族は「息子さんの性格からして、自殺はない」と一番に言われたという。大柄の体型ということもあり、担ぎあげて窓から落とすのは考えにくいともされた。亡くなって数時間経っても体温が38度以上あったことで、司法解剖は翌日に行ったが、原因不明のまま葬儀を迎えることになった。
学校はテレビで報道されてから全校集会を開いたが、保護者には連絡はなかった。そればかりか、市教委は、警察の捜査と逆行して、「いじめによる自殺の可能性」と記者会見をした。そのため、風評被害で同級生も苦しむことになった。葬儀が終わってからは保護者説明会が開かれたが、遺族には連絡してない。
その後、第三者委が設置されることになるが、委員には市立病院の医師が入っていた。市の利害関係者ではあるが、遺族はきちんと調べてくれるものと思っていた。
「毎回のように『公正・中立な立場です』と言われ続けた。事実の究明を息子のために早くしてあげたいと思っていた私は、あまり違和感を持たなかった」(母親・嘉代子さん) 
16年6月、第三者委は転落事故の原因について「インフルエンザなどウィルス性疾患脳症による異常行動が原因」とした。また、「当日の朝、発熱症状は呈しておらず。極めて予測不能な事態」と結論づけた。
ただ、アンケートでは体型をからかわれていたという記述があった。しかし、報告書の結論は「ウィルス性疾患の脳症」だった。嘉代子さんは「やはり病気やったんや。自殺じゃなかった」という気持ちと同時に、なぜ教室で一人にしたのかと思い始めた。しかも、亡くなったときに着ていた体操服が泥だらけだったことや、アンケートの証言と学校の説明の食い違いが納得できないでいた。数々の疑問が浮かんだ。
「学校のアンケートも抜粋だけは見せてもらえた。第三者委の委員の弁護士さんもアンケートを取ったが、その内容は見ることができない。インフルエンザが急に発症して重症化するのか。病名がインフルエンザなのか、あるいは熱中症なのか。私にはわかりません。熱中症であれば、転落する直前の授業、体育の持久走で一体何があったのか知りたい」 
隆晴さんは亡くなった日、体育の授業で持久走を終えた後、「しんどい」と座り込んだ。担当教諭が男子生徒を見たとき、「大丈夫か?しんどいなら保健室へ行くように」といい、養護教諭にも声をかけた。その後、同級生が授業のために音楽室に移動。隆晴さんは教室で一人になった。そのときに転落したという。
いじめなのか、病気だったのかーー。嘉代子さんは第三者委のやり直しと、アンケートの開示請求をした。請求の結果は「非開示」だ。本当のことを知りたい。アンケート開示のための署名活動も行われた。現在、嘉代子さんは神戸地裁に民事訴訟を起こしている。

◆渋井哲也
1969年栃木県生まれ。93年、東洋大学法学部卒業。長野県の地方紙「長野日報」社を経て、98年、フリーに。2001年、東洋大学大学院文学研究科教育学専攻博士前期課程修了。近著に、「実録闇サイト事件簿」(幻冬舎)、「解決!学校クレーム」(河出書房新社)、「自殺を防ぐためのいくつかの手がかり---未遂者の声と、対策の現場から」(河出書房新社)がある。



【「被害者・遺族に権利性を持たせるべき」全国学校事故・事件を語る会で明らかになった第三者委員会の課題とは? (下)】

 「全国学校事故・事件を語る会」は5月20、21の両日、兵庫県神戸市内に集まった。今回のテーマは「被害者・遺族から見た第三者委員会の課題」。基調講演では、第三者委の委員の経験がある弁護士による講演も行われた。

◆講演「当事者は第三者委員会とどのように関わるべきか」

 基調講演では、2011年10月に起きた、滋賀県大津市立中学校でのいじめ自殺に関する第三者調査委員会で副委員長を勤めた、渡部吉泰弁護士(兵庫県弁護士会)が「当事者は第三者委員会とどのように関わるべきか」と題して話をした。
 「まだ第三者委員会とは何か、コンセンサスは得られていない」
 子どもが自殺をした場合の調査は、文部科学省は2011年6月、「児童生徒の自殺が起きたときの背景調査の在り方について」を通知している。それによると、学校または教育委員会が主体的に行うことが必要で、調査にあたり、遺族の要望・意見を十分に聞き、できる限りの配慮と説明を行う、となっている。
 「大津市のいじめ自殺事件以前は、教育委員会による調査が基本だった。教委主導で調査委員が選任され、教委が提供した資料に基づいて調査をして、結果的に学校や教委の見解にお墨付きを与えるもの。(利害関係がある意味で)『第三者』ではなかった」

◆大津のいじめ自殺の調査が注目されたわけ

 しかし、大津市のいじめ自殺事件が発覚したことを契機に、2013年6月、いじめ防止対策推進法が議員立法で成立した。06年の調査にあたって、文科省がいじめの定義を変更していたが、それにならって、この法律でも、以下のように定義している。

 児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校(小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校)に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係にある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの。

 そして、いじめによって、自殺(未遂を含む)や恐喝、不登校など起きると「重大事態」とされ、学校や教委は調査をすることになっている。しかし、その委員会のあり方はまちまちだ。

 「全国津々浦々、第三者委が設置されて、数多くの報告書が作成された。充実しているものとそうではないものがある。本当に多様なものが出ている。結論としては、被害者・遺族(当事者)には権利性をあたえるべき。また、学校事故・事件特有の二次被害が起きる。これがダメージを与える。当事者への支援が必要」

 大津市のいじめ自殺がなぜ、注目されたのか。それは教育委員会の隠蔽があったためだ。それによって第三者委が作られた。
 「大津の調査では、学校や教委による事実の隠蔽や歪曲があった。ならば、第三者委員会の責務は、隠されたものを調査する責務が必然的にある。第三者委は当事者や地域社会に対する説明責任がある」

 「当事者は(噂を流されるなどの)二次被害にあい、深刻な状態にある。地域から孤立する。当事者にとっては日常がなくなるが、他の人たちには日常がある。そのため意識の格差が出てくる。地域では忘れられていく。一方で、当事者にとっては回復が不可能になっていく。こうしたことを視野に入れて、第三者委では議論をしてほしい」

◆専門家の間でも根強い“伝統的な被害者観”

 渡部氏は、調査には被害者支援という観点も必要だという。ただ、調査する前提に、「伝統的被害者観」があるのではないかと指摘する。
 多くの航空機事故を取材したノンフィクション作家の柳田邦男氏が作成した「事故調査と事故調査機関のあり方について」の中では、“感情的になりがちで、客観性に欠ける”“専門的な知識、視点がないので、参考にならない”“一方で補償交渉があり、利害関係がからむので意見がへだたる傾向がある”“調査は専門機関が公正な立場で行うのだから、被害者の意見を聞くまでもない”としている点を紹介し、
 「こうした“被害者観”を持っている専門家は日本ではかなりいる。そうじゃないんだ。止むを得ない状態なんだ。被害者観は変えるべき」

 柳田氏の作成資料の中でも「被害者の新しい位置づけの流れ」という項目がある。「被害者は自ら進んでなったのではない」「被害者も当然の人権を持つ存在である」「被害者は心身面でも経済面でも追い込まれている場合が多く、社会的支援、救済を必要とする」「被害者でなければ気づかない問題がある」などとあり、渡部氏は「被害者の意見表明権や参加権が大切」と話した。

◆当事者の納得がいかない報告書には社会的には意味はない

 「やむなくそうなった人たちの立場を考えなければならない。被害者観は変えるべき。航空機事故に関する調査は、学校事故事件の調査よりもかなり進んでいる」

 国土交通省公共事故被害者支援室が作成した「公共交通事業者による被害者等支援計画作成ガイドライン」では、「被害者などへの継続的な情報提供」がなされるように記されている。
「こうした視点は、学校事故・事件の調査では欠落している」

 一方、いじめ防止対策推進法では調査に関する詳細な記述はないものの、文科省は17年3月、「いじめ重大事態の調査に関するガイドライン」を作成した。
 「第三者委にとっては被害者が調査の客体にとどまっているのではないか。当事者への考慮?となっている。しかし、委員選任や調査プロセスについて関与できる部分は散見でき、利用価値はある。動ける当事者はきちんと要求すること。我々弁護士の役割でもあるが、そこで委員の気持ちを動かすことが重要だし、委員が『こちらを向いてくれた』という経験は当事者にとって大切。当事者の納得がいかない報告書には社会的には意味はない」

◆学校や教委は何もしてくれない

 内海千春・代表世話人は今回の集会を以下のように振り返った。

かつて、学校や行政は何もしれくれなかったので、私たちは第三者委をずっと要望してきた。20年以上前は、被害者・遺族は地域の中で孤立し、生活が成り立たなかった。事件が表に出ず、「なかったこと」にされたこともある。今は、特に大津市いじめ自殺以降は、多くの第三者委が設置されて、混沌としている。

 学校事故事件の被害者や遺族が発信するようになり、報道が教委の対応を批判するようになった。そして第三者委が設置される。そんな時代だ。しかし、沈静化のための委員会、教委の見解にお墨付きを与えるときもある。学校事故が起きた場合、再発防止が言われるが、すべては事実解明から始まる。死亡事案の場合、子どもは生き返らないが、子どもが亡くなったことに意味を見出せるようにするためには、遺族は再発防止を言わざるを得なかった。それが延々と続いてきた。

 被害者・遺族は本当は何があったのかを知りたい。事実が解明されれば、あったことを受け入れることはできないとしても、どう向き合えばいいのかがわかるし、亡くなったことに納得することもあり得る。しかし、被害の程度によって知れる情報が制限されるのはどうなのか。怪我の場合は誰が加害者なのかがわかり、謝罪を求めることができる。一方、亡くなった場合は、加害者の情報が知らされない。被害者救済は緊急対応の原則ではないのか。それを前面に出さなければならない。

 ガイドラインを読むと、文科省は当事者のメッセージを理解しようとしている。被害者・遺族は、なぜ?どうして?を問い続けている。合意がないまま、事実認定があっても、そこからの話がまったくない。専門家は現場に降りて来てほしい。まずは被害者・遺族の救済が第一でなければならない。


【いじめの重大事態の調査に関するガイドライン  平成29年3月 文部科学省】


議論のとりまとめの「重大事態への対応」に係る項目において、「重大事態の被害者及びその保護者の意向が全く反映されないまま調査が進められたり、調査結果が適切に被害者及びその保護者に提供されないケースがある。」などといった現状・課題が指摘され、併せて、このような現状・課題に対して、「重大事態の調査の進め方についてガイドラインを作成する。」という対応の方向性が提言されたところである。

第1 学校の設置者及び学校の基本的姿勢
(基本的姿勢)
○ 学校の設置者及び学校は、詳細な調査を行わなければ、事案の全容は分からないということを第一に認識し、軽々に「いじめはなかった」、「学校に責任はない」という判断をしないこと。状況を把握できていない中で断片的な情報を発信すると、それが一人歩きしてしまうことに注意すること。また、被害者である児童生徒やその家庭に問題があったと発言するなど、被害児童生徒・保護者の心情を害することは厳に慎むこと。

○ 特に、自殺事案の場合、学校外のことで児童生徒が悩みを抱えていたと考えられるとしても、自殺に至るまでに学校が気付き、救うことができた可能性がある。したがって、いじめが背景にあるか否かにかかわらず、学校の設置者及び学校として、適切に事実関係を調査し、再発防止策を講ずる責任を有しているということを認識すること。

○ 被害児童生徒・保護者が詳細な調査や事案の公表を望まない場合であっても、学校の設置者及び学校が、可能な限り自らの対応を振り返り、検証することは必要となる。
それが再発防止につながり、又は新たな事実が明らかになる可能性もある。このため、決して、被害児童生徒・保護者が望まないことを理由として、自らの対応を検証することを怠ってはならない。重大事態の調査は、被害児童生徒・保護者が希望する場合は、調査の実施自体や調査結果を外部に対して明らかにしないまま行うことも可能であり、学校の設置者及び学校は、被害児童生徒・保護者の意向を的確に把握し、調査方法を工夫しながら調査を進めること。決して、安易に、重大事態として取り扱わないことを選択するようなことがあってはならない。

○以上のことを踏まえた上で、学校の設置者又は学校は、被害児童生徒・保護者に対して自発的・主体的に、詳細な調査の実施を提案すること

(自殺事案における遺族に対する接し方)
○ 自殺事案の場合、子供を亡くしたという心情から、学校の設置者又は学校が遺族に対する調査の説明を進める際に、時間を要する場合があるが、そのような状況は当然起こり得ることであり、御遺族の心情を理解して丁寧に対応すること。学校の設置者及び学校は、必要な時間をとりながら丁寧に説明を尽くし、根気よく信頼関係の構築に努め、被害児童生徒・保護者に寄り添いながら調査を進めること。

第2 重大事態を把握する端緒
(重大事態の定義)
・・・、重大事態は、事実関係が確定した段階で重大事態としての対応を開始するのではなく、「疑い」が生じた段階で調査を開始しなければならないことを認識すること。


(重大事態の発生に係る被害児童生徒・保護者からの申立てにより疑いが生じること)
○ 被害児童生徒や保護者から、「いじめにより重大な被害が生じた」という申立てがあったとき(人間関係が原因で心身の異常や変化を訴える申立て等の「いじめ」という言葉を使わない場合を含む。)は、その時点で学校が「いじめの結果ではない」あるいは「重大事態とはいえない」と考えたとしても、重大事態が発生したものとして報告・調査等に当たること。児童生徒や保護者からの申立ては、学校が知り得ない極めて重要な情報である可能性があることから、調査をしないまま、いじめの重大事態ではないとは断言できないことに留意する。

第3 重大事態の発生報告

(支援体制の整備のための相談・連携)
○ 必要に応じて、公立学校の場合、市町村教育委員会から都道府県教育委員会に対して、重大事態の対処について相談を行い、支援を依頼すること。また、私立学校が支援体制を十分に整備できない場合等においては、都道府県私立学校所管課は、適切な支援を行うこと。その際、都道府県私立学校所管課は、都道府県教育委員会に対して助言又は支援を適切に求め、都道府県教育委員会と連携しながら対応すること。・・・


(記録の廃棄)
・・・これらの記録の廃棄については、被害児童生徒・保護者に説明の上、行うこと(無断で破棄して被害児童生徒・保護者に学校に対する不信を与えたケースがある。)。また、個々の記録の保存について、被害児童生徒・保護者からの意見を踏まえ、保存期限を改めて設定することも考えられる

(地方公共団体の長等に対する所見の提出)
○ 調査結果を地方公共団体の長等に報告する際、被害児童生徒・保護者は、調査結果に係る所見をまとめた文書を、当該報告に添えることができる。学校の設置者及び学校は、このことを、予め被害児童生徒・保護者に対して伝えること。

などなど・・・


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