アパートローン「バブル」 増える空室 マイナス金利の副作用
アベノミクスの「効果」を印象づける株高は、異次元金融緩和による円安・輸出大企業の収益増と、公的資金・日銀による株式市場への介入である。さらに5年連続増の公共事業費、軍事費。
その上、マイナス金利が「追い風」となったアパートローンの急増など架空の需要にも支えられたのもの。〔奨学金の残高も5年間で2兆円強増など将来の消費の先食いも加わっている。〕
だから国民に実感がないのは当然。実態は、家計消費は、うるう年効果を除けば17ヶ月連続減。
【16年度住宅着工、5.8%増=貸家は8年ぶり高水準 時事4/28】
【アパートローン「プチバブル?」マイナス金利追い風で急増 増える空室…日銀など対策へ 産経4/3】
上記と換券して“アベノミクスは、最初から理論自体破たん”“マイナス金利は「愚かな金融政策」”と指摘している東洋経済の対談記事。
【マイナス金利で日本は「空き家だらけ」になる 日本は構造改革できず再びバブルがはじける 東洋経済16/11/1】
【16年度住宅着工、5.8%増=貸家は8年ぶり高水準 時事4/28】国土交通省が28日発表した2016年度の新設住宅着工戸数は、前年度比5.8%増の97万4137戸だった。相続税の節税対策として需要が旺盛な賃貸アパートなど「貸家」は、11.4%増の42万7275戸。08年度以来、8年ぶりの高水準となり、全体を押し上げた。
全体の水準は消費税増税前の駆け込み需要が起きた13年度(98万7254戸)に迫った。国交省は、貸家の動向について「一部に空室増加や賃料低下がみられ、注視を要する」と指摘した。
貸家以外では、注文住宅などの持ち家が2.6%、マンションと一戸建てを合わせた分譲住宅は1.1%、それぞれ増加した。
【アパートローン「プチバブル?」マイナス金利追い風で急増 増える空室…日銀など対策へ 産経4/3】金融機関が貸家業向けに個人に融資するアパートローンが過熱気味で、「プチバブル」の様相を呈している。相続税対策とマイナス金利が背景にある。ただ、物件の供給が過剰になって空室が増え、賃料が下がる地域も出始めた。返済が滞ればローンは不良債権になりかねないことから、金融庁と日銀は対応に乗り出した。(中村智隆)
■人口減なのに
「新生活が始まる時期になっても空室が多い」
「家賃が2、3万円台と半分以下に下がる物件が出てきている」
東京のベッドタウンとして発展してきた相模原市。小田急小田原線の小田急相模原駅は新宿まで約50分で商業施設も充実したエリアだ。それでも、地元の不動産業者からは悲鳴にも似た声が上がる。
実際に、駅から車で10分も離れると「空室あり」「入居者募集」の看板を掲げたアパートやマンションが目立つ。別の業者は「人口が減っているのに投資用の物件はずっと増えている」と指摘する。■相続税対策
投資用物件の増加を後押ししているのがアパートローンだ。日銀によると、平成28年12月末の国内銀行のアパートローン残高は前年比4・9%増の22兆1668億円に拡大している。
27年の税制改正で、相続税の基礎控除額が引き下げられ、課税対象者が広がった。アパートを建てれば更地などより課税時の土地の評価額が2割下がることから、節税目的で借り入れる人が増えた。
金融機関も、日銀のマイナス金利政策が収益の下押し圧力となる中、特に地方銀行が収益源として着目するようになった。アパートローンは競争が激しい住宅ローンに比べて高めの金利が見込めるためだ。
地銀はエリアを越えて拠点を広げる際、アパートローンを入り口とすることもある。銀行関係者は「通常融資は地場の金融機関がいて難しい。建設会社などに行きアパートを建てたい人を探している」と明かす。
ただ、アパートローンを利用するのは担保がある富裕層が多いこともあり、物件の収益性を度外視し安易に貸し出しが行われているケースも少なくない。空室が多く、返済が滞るなどすれば、担保があるとはいえ、金融機関の財務にも悪影響が出かねない。
建築請負業者が提案書などを作成し、アパートローンを勧めることも多い。当初見込んだ家賃収入が得られなくなった大家と、家賃保証をした業者との間ではトラブルも起きている。
こうしたことから、金融庁は28年末から実態調査を実施し、銀行に融資審査で担保だけでなく事業の将来性を評価することなどを要請した。
日銀は金融機関への29年度の考査で、アパートローンの適切な審査や、組織的な採算性の検証が行われているかを点検する方針だ。
【マイナス金利で日本は「空き家だらけ」になる 日本は構造改革できず再びバブルがはじける 東洋経済16/11/1】三井 智映子 :フィスコリサーチレポーター
◆アベノミクスは、最初から理論自体破たんしていた
三井:日本で2013年以降、新しい経済政策が始まってほぼ4年が経とうとしていますが、中原さんはアベノミクスの未来について、始まった段階からかなり正確に予測をされていましたね。
中原:金融緩和に頼る円安によって、実質賃金が下がり消費が冷え込むことは、普通に因果関係を考えれば、誰にでもわかることだと思います。ところが、なぜか政権のブレーンとなっている学者にはそのことがわからないから、いまだに不思議で仕方がないのですよ。実は、民主党政権時代にも日本銀行に緩和圧力をかける動きがあったので、自民党政権が誕生する前にはそういった趣旨の本は書きましたが、あまり売れ行きがよくありませんでした(笑)。
三井:なぜアベノミクスのような「誤った政策」が行われてしまったのでしょうか?私のまわりにも生活が苦しくなったという人たちが増えています。
中原:日本で浅はかな経済実験が行われてしまったのは、ポール・クルーグマンの「インフレ期待」という理論が「原因」と「結果」を完全に取り違えているにもかかわらず、彼を支持する学者たちが為政者にその理論を見事に信じ込ませてしまったからでしょう。
経済の本質からすれば、「物価が上がることによって、景気が良くなったり生活が豊かになったりする」のではありません。「経済が成長する結果として、物価が上がる」というものでなければならないのです。もちろん、「経済が成長する結果として、物価が下がる」というケースもあるので、アベノミクスの理論自体が、始める前から破綻していたわけです。三井:先日、中原さんが野田一夫先生(日本総研名誉会長)と対談している記事を拝見いたしました。野田先生ってすごい方なんですね。「天下の孫正義さん」が師と仰いでいるなんて、私は全然知らなかったです。
話が少し脱線しましたが、自然科学の世界から見ると、経済学の世界では合理的でない学説や理論が多いと……そんなことをお二人でお話しされていましたよね。中原:三井さんの「下調べ力」には頭が下がります(笑)。経済学の世界では、「鶏が先か、卵が先か」の議論が結論の出ないまま成り立ってしまうことが多いのですが、実際の経済は決してそのようには動いていかないものです。経済にとって本当に重要なのは、「どちらが先になるのか」ということなのです。すなわち、実質賃金の上昇よりもインフレが先に来ては、決していけないということです。
科学の世界では、決して「原因」と「結果」がひっくり返ることはありません。経済学の世界で「物価が上がれば、経済が良くなる」などと主張している学者たちは、私から見ると、科学の世界で「引力が働いているから、りんごが落下する」というべき現象を、「りんごが落下するから、引力が働いている」といっているのと同じようなものなのです。◆「理論的主柱」クルーグマン教授も自説の誤りを認めた
三井:政府はアベノミクスの成果として、有効求人倍率が高いこと、税収が増えたこと、倒産件数の減少などを強調していますが、中原さんの本を読んでいるとすべてデタラメなことがわかりますね。
中原:そのとおり、全部デタラメな主張です。これらについては近年の拙書でも数回取り上げたことがありますが、2015年の正確な統計データが出てきているので、検証の意味も含めて、もう1度だけ今回の拙書で説明しています。私たちはこれらの数字がどのような背景によってつくられているのか、しっかりと認識する必要があるでしょう。
三井:最近のクルーグマン(米プリンストン大学教授)は、アベノミクスに対する情報発信をしなくなったようですが……。
・・・・・ 略
中原:2016年に入ってドル円相場が円高基調に転換することによって、輸入物価も下げに転じるようになってきています。すなわち、国民の生活水準を決定づける実質賃金が押し上げられる環境が徐々に高まっているといえるのです。実際のところ、円高基調が進行するにつれて、実質賃金が上昇に転じ始めています。2016年8月までの統計では、実質賃金は7カ月連続の上昇をしていて、アベノミクスが始まって以来、初めての良い環境になってきているのです。
しかしそこで注意すべきは、政府が「アベノミクスの成果で、実質賃金が上がり始めた」と支離滅裂な見解を言い始めることです。アベノミクスが敵としている円高こそが、円安によって失われた家計の可処分所得を取り返しているのであり、消費を少しは押し上げる呼び水になるということを、そろそろ政府や日銀も認識する必要があるのではないでしょうか。三井:日銀の金融政策はやはり限界に達しているのでしょうか?
中原:黒田総裁は心のうちでは「もうダメだ」と思っているはずです。日銀は大幅な金融政策の見直しによって、国債の購入を3%程度減らす予定とはいえ、それでも今のペースで量的緩和の継続をするのは、せいぜいあと2年が限界だろうと思われます。
そのうえ、マイナス金利の副作用がじわじわと日本経済をむしばみ始めています。銀行の収益が利ザヤの縮小により悪化するのは当然として、運用が困難な状況に陥ることで年金制度が危機に陥ろうとしています。ただでさえ国民には年金不安があるというのに、運用の不振により年金不安はいっそう高まり、それは日本人の貯蓄性向をより高める結果になっているのです。おまけに、マイナス金利に伴う超低金利の進行は、投資マネーを必要以上に株式や不動産などに向かわせ、それらの需給関係をゆがめることにもつながっています。不健全な需要が資産価格をつり上げた後、供給過多が明らかになるにしたがい、最終的には価格の長期低迷が避けられなくなるからです。◆マイナス金利は「愚かな金融政策」
三井:黒田総裁がマイナス金利の主な効果として貸家の増加を挙げているのを聞いて、私も「それは違う」と思ったのですが、やっぱりその感覚は間違っていませんよね?
中原:間違っていません。所有する土地に貸家を建てて相続税の評価額を下げるという節税法はよく知られていますが、2015年1月に相続税の増税がなされたことに加え、日銀のマイナス金利政策で借金を容易にできるようになったため、貸家の建設に拍車がかかっています。すでに全国で820万戸の空き家があり、その半数以上は貸家となっているのです。人口減少社会が到来した日本では、ただでさえ今後も空き家が増えていくというのに、今のようなペースで貸家の供給が進むことになれば、さらに空き家が増えて家賃が大幅に下がることになるでしょう。将来の需要と供給のバランスを考えると、アパート・マンションの建設ペースは明らかにバブルの状況にあるといえるわけです。
三井:つまり、黒田総裁は「副作用」を「効果」と偽っているのですね。
中原:そのとおりです。マイナス金利は経済全体で見れば明らかに副作用のほうが多く、愚かな金融政策というほかありません。現代の経済システムは、金利が必ずプラスになるという前提で構築されているはずです。その証左として、マイナス金利はまったく想定されていなかったためか、まだ8カ月が過ぎたばかりだというのに、すでに銀行や年金、市場などに多大な損失を与え始めているのです。これからは数々の副作用が相互に作用し合って、経済全体をいっそう危ない方向へと導いてしまうのではないか、非常に心配しているところです。
三井:黒田総裁は玉砕も覚悟のうえということですか?
中原:いいえ。黒田総裁は玉砕前に任期満了となります。どこかで量的緩和とマイナス金利を止めなければならないわけですが、それは黒田総裁が辞めた後に、新しい総裁が決断することになるのではないでしょうか。
・・・・・・略
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