特別支援学校・学級 3430教室不足 在籍者が急増
特別支援学校の在籍児童は、10年で1・36倍。比較的障害が軽い子が通う小中学校の特別支援学級の在籍者も10年で約2倍となり、教室数が3430足りないとの文科省の調査。
4年前にも、「支援学校に通う子は、少子化にもかかわらず、この10年間で、40%近くも増え」て「教室不足が深刻となっている」ことがとりあげられている。
これにともない特別支援教育にかかわる教員も増えているが、財務省は、こうした事実を無視し、少子化だから教員定数はもっと削減できるとの暴論を繰り返している。過労死水準の勤務の実態や教室不足、重い教育費負担、・・・先進国最低の教育予算の改善こそ急務。
【特別支援学校、3400教室不足 在籍者が急増 朝日2017/4/30】
【特別支援学校 子ども急増で... NHK生活情報ブログ2013.5.30】
【主張 財務省教員削減案 子どもの成長を保障できない 2016/11/23】
【特別支援学校、3400教室不足 在籍者が急増 朝日2017/4/30】障害が比較的重い子どもが通う「特別支援学校」で深刻な教室不足が続き、2016年10月現在、3430教室が足りないことが文部科学省の調べでわかった。特別支援学校の在籍者が近年急増し、教室数が追いついていない。同省は教育に支障が出るおそれがあるとして、教育委員会に補助金の活用などによる教室不足の解消を求めている。
特別支援学校小、中学部の1学級は6人が上限で、重複障害の場合は3人。幼稚部から高等部までの在籍者は15年に13万8千人で、10年で1・36倍になった。特に知的障害のある子が増え、全体の9割を占める。比較的障害が軽い子が通う小中学校の特別支援学級の在籍者も15年に20万1千人で、10年で約2倍になった。
背景には、障害の診断が普及したことがある。障害があると診断されると、支援が得やすい教育を望む保護者が増えたとみられ、「特別支援教育への理解が深まった」(文科省担当者)との見方がある。
一方、支援が必要な子に対応できていない小中学校の課題を指摘する声もある。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」(東京)によると、通常の学級を希望した知的障害児や発達障害児の保護者が、教育委員会や学校から「(通常学級では)いじめられるかもしれない」「高学年になると勉強が難しくなる」などとして特別支援教育を提案されるケースがあるという。
【特別支援学校 子ども急増で... NHK生活情報ブログ2013.5.30】障害がある子どもたちが学んでいる特別支援学校。いま、通う子どもたちが急増しています。支援学校に通う子は、少子化にもかかわらず、この10年間で、40%近くも増えました。発達障害が広く知られるようになり、診断される子供が増えたこと。さらに、学習や就職への手厚い支援を求めて親が支援学校を選ぶケースが増えているのです。そうした中、特別支援学校ではいま大きな問題が起きています。
東京・町田市の特別支援学校です。通っているのは、知的障害や身体障害がある、小学生から高校生およそ400人。この10年で1点5倍に増えました。
保護者は、「1人1人のペースに合わせてそれぞれにあった教育をしてもらえる」。「支援が手厚く、就職を考えるとやはり特別支援学校を選んだほうが良いと考えました」と話していました。
子どもが増える中、大きな課題となってきたのが「教室不足」です。教室が足りないため、1つの部屋をカーテンで仕切って2つの教室に分けて使っています。
クラスを分けるのはカーテンだけ。かけ算の授業の最中も、隣りのクラスの声が筒抜けです。高等部のクラスの半数は、こうしたカーテンやつい立てで仕切られています。体育をする場所もままなりません。この日の場所は玄関前の通路。クラスが増え、運動場や体育館の空きがないのです。
図書室も教室に切り替えたため、本は廊下の一角に置かれていました。
さらに、来年も通う子どもが増える見通しです。このため、高等部の生徒が仕事の技能を学んでいる作業室もなくさざるをえません。東京都立町田の丘学園の明官茂校長は、「今の状況はぎりぎりだと思います。一定の質の教育を提供することは非常に難しくなってくると思います」と話しています。
「教室が足りない」という学校は、全国に広がっています。特別支援学校の校長で作る団体が、学校施設の実態を調べようと、去年10月から12月にかけて全国の学校を対象に行い、およそ90%にあたる1004校が回答しました。それによりますと、「教室が足りない」と答えたのは541校で、全体の54%に上りました。
特に知的障害の子どもが通う学校では63%が、「教室が足りない」と答えていて教室不足がより深刻になっています。
保護者も街頭で署名活動を始めました。強く求めているのは、国の設置基準です。通常の学校には校舎の広さや必要な施設を定めた国の設置基準があります。ところが、特別支援学校には、この基準がないのです。このため、子どもが増えても必要な対応が取られていないと訴えています。
グループの鳥居順子副会長は、「ふつうの学校を見ている親からすると何でこんな狭いところにいるという状況だと思う。適正な学校数、適正な教室数は 確保してほしい」と話しています。
設置基準がない中、空き教室を間借りして、やり繰りする自治体も出てきました。神奈川県では、高校の空き教室を支援学校の分教室にしています。
文化祭などは、高校の生徒と一緒に行い、交流も生まれています。
しかし、使える教室は5つだけ。このため職員室の一角には、保健室のベッドが置かれてます。専門的な実習の教室も確保できません。
保土ヶ谷養護学校の内田豊校長は、「大規模化の解消ということで、分教室が設置されていますが、どうしても教育環境が制限されてしまう。今後、特別支援学校の過密化の問題は、国レベル、県レベルで対策を講じてほしい」と話しています。
専門家も支援学校に一定の設置基準を作らないと教育環境の改善は進まないと指摘しています。東京学芸大学の高橋智教授は、「設置基準がないために、特別支援学校の生徒の数が増えても、なかなか対応がされませんし、音楽室や理科室等の特別教室を、普通教室に切り替えたとしてもそのこと自体が問題にされない。まずは設置基準を作って一般の小中高と同じように学校運営をすることが最初の一歩だと思います」と話しています。
特別支援学校に設置基準がないことについて、国は「障害の度合いに応じて必要な施設も違う。それぞれの実情に合った柔軟な対応が出来るようにするため」としています。
国は支援学校の建設に補助金を出し、自治体に整備を促していますが、子どもの増加に追いついていないのが実情です。保護者たちは、来月にも署名を国に提出し、早急な教室不足の解消を働きかけることにしています。
【主張 財務省教員削減案 子どもの成長を保障できない 2016/11/23】2017年度の予算編成を前に財務省が出した公立小中学校の教職員を今後10年間で4万9千人削減できるとの試算に、批判があがっています。格差と貧困の拡大、いじめや校内暴力の深刻化、外国からの児童生徒の増加、発達障害の子どもの問題など、現在の教職員は多くの課題を抱え、多忙化の中で必死に奮闘しています。精神疾患も増えています。財務省の試算は教職員の劣悪な現状を放置、拡大する内容です。これでは一人ひとりの子どもの成長のための教育を保障することはできません。
◆「事実誤認」の減員主張
財務省の試算は、「現在の教育環境を継続」させた場合でも、子どもの数が減少するから、10年間で4万9千人の教職員を減らせるというものです。しかしそれは、文部科学省ですら「誤解や事実誤認に基づく記述がある」と指摘し、25ページにわたる反論を発表するほどずさんな内容のものです。
例えば財務省は「平成に入って以降、児童生徒40人当たりの教職員数は約40%増」などとしています。しかし、平成以降に児童生徒に対する教職員の割合が増えたのは、教職員の配置基準が多い特別支援学校・学級に通う子どもが増えたことや、10年前までは計画的に教職員定数を改善する仕組みがあったことによるものです。文科省が反論したように、障害児学校・学級を除く公立小中学校の児童生徒40人当たりの教職員は、最近10年間ではわずか0・04人の増で、ほとんど変わっていません。
この10年間では、発達障害などのために別の教室での指導を受ける「通級指導」の子どもが2・3倍、外国人など日本語指導が必要な子どもが1・5倍になっています。さらに、格差と貧困の拡大などで丁寧な対応の必要な子どもたちが増大しています。にもかかわらず、教職員数の削減が続き、現場の困難は増すばかりです。
財務相の諮問機関である財政制度等審議会は17年度予算編成に向けての「建議」で、「『量』の拡充よりも『質』の向上」などとして、教職員定数増に否定的な考えを示しています。しかしこれも、文科省に「事実誤認」と批判され反論された財務省試算に基づくものです。「事実誤認」をそのままに教職員を減らすなど許されません。
財務省が試算の前提にした教職員定数の水準を、現在のままにするということ自体が、国の教育条件整備の責任を投げ捨てる大問題です。日本の教員1人あたりの子どもの数は経済協力開発機構(OECD)諸国の平均を上回っており、1クラス当たりの子どもの人数もOECD平均を大きく超えています。欧米では小中学校は1クラス20~30人なのに、日本は35人学級さえいまだに完全実施していません。現在の水準は国際的にみてあまりに低すぎます。
◆35人学級の完全実施を
子どもの状況の変化を考えても世界の流れをみても、教職員定数を増やすことは最優先課題です。ところが安倍晋三政権は民主党政権時代に国会の全会一致で順次実施することが決められた35人学級をストップしてしまいました。
税金の使い方を変え、文教予算を計画的に引き上げれば、一人ひとりにゆき届いた教育を実現することは十分可能です。国民の共同の運動で教職員定数増、35人学級完全実施を求めていきましょう。
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