「電通だけじゃない」 中学教諭6割が過労死ライン
文科省の2016年度の勤務実態調査。子どもの貧困の広がりに加え、新学習指導要領で教える内容を次々と追加するのだから・・・現場も子どもも疲弊していくのは当然である。
・06年度の前回調査に比べ、全職種で勤務時間が増加
・中学教諭の約6割が週60時間以上勤務
・小中とも教諭の授業や授業準備の時間が増加
・中学では土日の部活動の時間が倍増
・学校内の勤務時間が増加する一方、持ち帰り業務はやや減少
・全職種中、副校長・教頭が最も勤務時間が長い
【中学教諭6割が過労死ライン=月80時間超相当の残業-授業、部活増加・文科省調査 時事4/28】
【<中学教諭残業増>部活、授業増加響く「電通だけじゃない」 毎日4/28】
【教員勤務実態調査(平成28年度)の集計(速報値)について(概要) 文科省】
【中学教諭6割が過労死ライン=月80時間超相当の残業-授業、部活増加・文科省調査 時事4/28】文部科学省は28日、2016年度の公立小中学校教員の勤務実態調査の速報値を公表した。中学教諭の約6割が週60時間以上勤務しており、過労死の目安とされる水準を超過。前回06年度の調査に比べ、教諭や校長ら全職種で勤務時間が増えた。授業時間が増加したほか、中学では土日の部活動の時間が倍増。同省は「学校が教員の長時間勤務に支えられている状況には限界がある」として、中央教育審議会に改善策の検討を諮問する。
調査は全国の小中各400校を抽出し、16年10~11月のうち7日間の勤務時間を、教諭や校長などの職種別、授業や部活動、会議などの業務別に調査。小学校397校(8951人)、中学399校(1万687人)から回答を得た。
調査結果によると、教諭の平日1日当たりの平均勤務時間は小学校で前回調査から43分増の11時間15分、中学で32分増の11時間32分だった。小学校では33.5%、中学では57.6%の教諭が週に60時間以上勤務し、20時間以上残業していた。これは厚生労働省が過労死の労災認定の目安としている月80時間超の残業に相当する。
業務別に見ると、1日当たり「授業」が小学校で27分、中学で15分、「授業準備」も小学校で8分、中学で15分増加。「脱ゆとり教育」の学習指導要領導入により、前回調査時から授業コマ数が増えた影響とみられる。中学では土日の「部活動・クラブ活動」が前回の1時間6分から2時間10分にほぼ倍増した。◇教員勤務調査のポイント
一、2006年度の前回調査に比べ、全職種で勤務時間が増加
一、中学教諭の約6割が週60時間以上勤務
一、小中とも教諭の授業や授業準備の時間が増加
一、中学では土日の部活動の時間が倍増
一、学校内の勤務時間が増加する一方、持ち帰り業務はやや減少
一、全職種中、副校長・教頭が最も勤務時間が長い(2017/04/28-09:09)
【<中学教諭残業増>部活、授業増加響く「電通だけじゃない」 毎日4/28】文部科学省が28日に2016年度の教員勤務実態調査結果(速報値)を公表し、国が示す「過労死ライン」に達する週20時間以上の「残業」をした教諭は中学校で57.7%、小学校で33.5%に上ることが明らかになった。部活動や授業の増加が主な要因。1週間の平均勤務時間は、06年度の前回調査に比べ、中学校教諭で5時間12分、小学校教諭で4時間9分増えた。現場からは「ひどいのは電通だけじゃない」と悲鳴が上がっている。
調査は16年10~11月、全国の公立小中学校各400校の教員約2万人に連続7日間の勤務状況などを尋ね、小学校8951人、中学校1万687人から回答を得た。
小中とも校長や副校長・教頭、教諭など全ての職種で10年前より勤務時間が増え、1週間あたりの平均勤務時間は中学校教諭で63時間18分、小学校教諭で57時間25分だった。中学校教諭が土日の部活動に関わる時間は2時間10分と、10年前の1時間6分から倍になった。
職種別で1週間の勤務時間が最も長かったのは小中とも副校長・教頭で、中学校が63時間36分(06年度比2時間27分増)、小学校が63時間34分(同4時間29分増)だった。管理職としての事務作業やトラブル対応が増えているのが要因という。
教諭の年齢構成も変化した。30歳以下は小学校で25.9%、中学校で24.4%と、10年前より10~12ポイント増えた。若い教諭はベテランに比べて授業準備に時間がかかり、部活動も任されることも多い。
多忙化の背景には、授業時間の増加がある。旧学習指導要領に基づく教育課程(カリキュラム)だった06年度に比べ、小学1~2年で授業時間(1単位時間45分)が2時間、小学3~6年と中学の全学年で1時間増えた。次期学習指導要領では小学英語の正式教科化に伴い、小学3~6年でさらに1時間増える。
文科省は前回調査以降、「回答に時間がかかる」と指摘された各種全国調査を毎年実施から隔年に変更したり、スクールカウンセラーなど外部の人材を増員して「チーム学校」体制を整備したりした。しかし、今回の調査では「教員の多忙化」に歯止めがかかっていない状況が浮き彫りになった。【伊澤拓也】
◇「休みは月に1、2回」
「完全な休みは月に1、2回。ずっと忙しい」。千葉県内の公立中で数学を担当する40代の男性教諭はため息をつく。
出勤時間は午前6時50分。教務主任として各部活動の「朝練」の欠席連絡を受ける業務をこなした後、授業が始まる。放課後は顧問を務める柔道部の指導で汗を流すと、再び教務主任として各学級の時間割などを調整し、午後8時にようやく校門を出る。部活は土日もあり、土曜は午前練習。日曜は大会が多く、朝から昼過ぎまで拘束される。
愛知県内の公立中の30代の男性教諭は「提出書類が多く、いつも何かの報告や説明を求められる。運動部の部活動は、参加する大会の数が確実に従来より増え、顧問は土日がなくなる」と話した。また、40代の男性教諭は「今はいじめも現場では把握しづらいソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で起きるなど、教員の対応範囲は確実に広がっている。仕事は増える一方で何かを減らすという発想はない。でも『子どものため』と言われるとやらざるを得ない」と嘆く。
小学校も深刻だ。福岡県内の公立小に勤める50代の女性教諭は、午後6時に退勤して学童保育所へ長女を迎えに行き、帰宅後は家事に追われる。土日は平日に終わらなかった授業プリントの採点などをこなす。時間外労働は、過労死ラインの月80時間を優に超え、100時間に上る計算だ。
10年前と比べ、土曜授業や教育委員会からのアンケート調査も多くなった。道徳や英語の教科化も控え、負担感は増す一方という。「自分のために使える時間は1分もない。国が率先して業務を減らす努力をすべきだ」と訴える。
負担は授業だけではない。東京都内の公立小に勤務する30代の女性教諭は、時間割の作成や図書室の管理など五つの校内業務を掛け持ちする。作業は保護者の電話で何度も中断を余儀なくされ「公園で子どもたちがけんかした。うちの子は悪くない」という愚痴も聞かされる。保護者対応は「まるで子どもの相手をしているよう」とこぼす。
午後5時ごろに終業となるが、同僚の視線が気になって退勤できず、午後9時半まで働く。「『電通だけじゃない』と叫びたい。教員の長時間勤務が当たり前となっていることが残念だ」【水戸健一、金秀蓮、太田敦子】
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