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中学生、自衛官にとって“有害” 銃剣道は即時廃止を

  貧弱な衛生、無駄な調達・開発など自衛隊の問題点を長く追っている軍事ジャーナリスト・清谷信一氏の指摘。
競技人口3万人のうち9割は自衛官。心臓、喉をつく危険な競技。銃剣は17世紀フランス発祥で、日本古来の武道でもなんでもないと、学習指導要領に関する問題点に触れた上で、現代戦にあっては役に立たず、こんなものために旧式の銃をつかいつづけ、練習に時間を割くのは自衛隊を弱体化させる。しかも30万円もする道具を指定業者から自衛官個人に買わせる、という癒着構造がある。
中学はもとより、「自衛隊では、銃剣道が国防を歪めている。即座に銃剣道を廃するべきである。」と指摘する。

【新学習指導要領に異議あり 中学生、自衛官にとって“有害”でしかない銃剣道  清谷信一 4/11】

【新学習指導要領に異議あり 中学生、自衛官にとって“有害”でしかない銃剣道  清谷信一 4/11】

 中学校の新学習指導要領で保健体育の「武道」に新たに「銃剣道」の名前が加えられた。木銃を使い、相手を突く国体競技で競技人口は3万人以上とされるが、その約9割が自衛官だ。時代錯誤感のある「銃剣道」は今、必要なのか? 軍事ジャーナリストの清谷信一氏が異議を唱える。

 一部で銃剣道が今年新たに加えられたかのような報道があったが、既に2012年から実施の指導要領の「その他の武道」の中に含まれていた。

 今回は自民党の佐藤正久参議院議員らの働きかけによって、「銃剣道」の名前が指導要領に明記された。

 スポーツ庁によると、その理由は「国体の競技種目である、伝統武道である、競技人口、自衛隊で行われている、既に中学での実績があるなど」(担当者)ということだ。

 だが中学の保健体育で銃剣道を教える必要性や根拠には大きな疑問がある。

 競技人口3万人の内、約9割が自衛官である。つまり市井の競技人口は3千人程度で、全国の中学で教えようにも人材がいない。

 事実、文部科学省によると銃剣道を授業で実施している公立中学は全国で1校しかないという。

 これを中学で教育している「実績」がある、と主張するのは無理がある。

 更に銃剣道は基本的に左胸(心臓)・喉を突いて勝敗を競うが、これを中学生にやらせるのは危険である。

 中学の剣道では部活動でも突きは禁じられている。実際に先述の唯一銃剣道を行っている公立中学校でも相手を突かずに型のみを教えている。つまり、中学で導入するなら本来の銃剣道とは似て非なるものにならざるを得ないだろう。それとも突きをそのままにして導入するのか。

 また日本の伝統文化云々というのも疑問だ。小銃に着剣する銃剣は17世紀にフランスのバイヨンヌ地方で作られた。フランス語のbaïonnette、英語のbayonetからもそれが分かる。銃剣はフランスで生まれ、銃剣術も欧州で発達した。つまりは欧州が由来である。

 佐藤議員はブログで《(銃剣道は)自衛隊ではその入隊時、陸上自衛官や航空自衛官のほとんどが習い、部隊等に配置されてからもそのレベルアップに汗を流している武道です。武道とは「武士道の伝統に由来する日本で体系化された武技の修練による心技一如の運動文化……」》などと記しているが、いささか無理があろう。

 自衛隊では銃剣道の弊害の方が遙かに深刻だ。

「陸自隊員の多くが銃剣道を経験するが銃剣道が自衛隊員の意識を歪めています。自衛隊では銃剣道(その他スキーや持続走)等の競技に勝つことが部隊指揮官の昇進を左右します」(元陸自2尉)

 このため多くの部隊では競技に参加する隊員は課業を免除され競技練習に邁進する。つまり自衛隊ぐるみで仕事をサボらせて競技に熱中している。自衛隊の任務は国防よりも「運動会」で勝つことらしい。

 自衛隊の「兵隊」は充足率が低い。任期制の2士、1士は定員の4割程度、その上の士長を加えても7割程度だ。「運動会」で「兵隊」を無駄遣いする余裕などないはずだ。

 近年、国防強化のために自衛隊の増員をせよという声も少なくないが、不毛な「運動会」を止めれば、即座にかなりの数の増員と同じ効果が得られる。しかも人件費の増加は不要だ。

 そもそも銃剣道は殆ど実戦では役に立たない。

 近年の軍隊では防弾チョッキを着用することが銃剣道を役に立たなくしている。

「防弾チョッキを着ていれば、心臓を突いても致命傷どころか傷もつきません。また喉にしても防弾チョッキには喉をカバーするコンポーネントが装着されることが多くなっており、こちらも致命傷を与えにくくなっています。着剣した小銃で相手に打撃を与えるならば、露出している顔や首、手足を狙う必要があります」(元陸自看護関係者)

 銃剣道の木銃の長さは約1.7メートル。かつてのボルトアクション方式の小銃に銃剣を着剣したものを模している。

 だが現在の自動小銃の全長はかなり短い。自衛隊の89式小銃は約91センチ、刃渡り約15センチの89式多用途銃剣を着剣しても1メートルちょっとしかない。

 米軍の主力のM4カービンに至っては、全長約84センチ、銃床を縮めると76センチしかない。

 しかも、現在の自動小銃は小口径化されて銃身が細い。その分強度は低い。フレームもアルミ合金や鉄のプレス加工、ポリマー製が多い。また銃床も折り畳み式か伸縮式か、あるいはその両方を採用しており精緻である。このため木製銃床の小銃と比べて脆弱で、銃床で敵を殴ると銃自体が破損する可能性が高い。

 そして一部を除いて89式小銃の固定銃床が採用されたのは銃剣道の影響ではないか、とさえ思う。

 折り畳み式銃床では強度の面で銃剣格闘に不利だ。自衛隊が国産兵器を開発する常套句である「我が国固有の環境や運用に適した外国製がない」という便利な言葉があるが、89式は全く適合していない。

 国民の7割が都市部に集中し、市街戦が発生する可能性は極めて高い。固定銃床の89式は市街戦、室内掃討戦で不利である。多くの軍隊がアフガンやイラク等の戦訓を取り入れて市街戦を重視し、改良を加えているのに、未だに89式は改良もされずに、固定銃床のままだ。89式小銃は既に時代遅れだ。

 その上、陸自は実弾射撃も軽視している。

「自衛隊では小銃の実弾射撃が極めて少ない。かつて『たまに撃つ弾が無いのが、玉に瑕』という自虐的な川柳があったが、それは現在も変わらない。普通科(歩兵)の一線隊員でも年5回、平均千発程度、管理部隊などの非戦闘職種や上級幹部、兵站などの非戦闘職種、そして銃剣道の競技会の選手も射撃検定1回で50発程度、弾倉2個分以下しか撃たない」(元陸曹)

 これではまともな小銃射撃の技術は維持できない。

銃剣道という「ごっこ」よりも実弾射撃を熱心に行うべきだろう。

 陸自では実弾射撃や小銃の近代化を軽視し、精神主義と着剣突撃を偏重しているようにしか見えない。

 有事になれば旧軍同様に玉砕覚悟で万歳突撃を行い、隊員に犬死にを強要するのではないか。

 もうひとつ問題なのは高価な銃剣道の道具を隊員に買わせていることである。「予算が足りないとか、あれこれ理由をつけて30万円を超えるセットを、ローンを組ませて指定業者から買わせています。私も36万円のセットを買わされました」(元陸自1尉)

 銃剣道が重要かつ必要と考えているのであれば、予算をきちんとつけて、すべて官費で調達すべきだ。

 自衛隊では本来支給すべき被服や装備をこうして自腹を切らせて、指定業者から買わせている。

 これは指定業者と部隊長ら部隊幹部が組織的に癒着している可能性が疑われても仕方あるまい。

 多くの若い隊員やその親が、こういうところから自衛隊に不信感を持つのだ。

 中学はもとより、自衛隊で銃剣道を行うこと自体、メリットよりも害の方が多い。特に自衛隊では、銃剣道が国防を歪めている。即座に銃剣道を廃するべきである。


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