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自治体の機能破壊~窓口業務の独立行政法人への委託  

  自治体の窓口業務を地方独立行政法人に委託することを可能とする地方独立行政法人法の改悪案(2018年4月1日施行予定)の閣議決定に対する自治労連の談話。
対象は、戸籍、住民基本台帳、マイナンバー、地方税、国民健康保険、高齢者医療、国民年金、介護保険、障害者福祉、母子保健、児童手当をはじめとした広範な窓口業務に及ぶ。
窓口業務は、単なる事務ではなく、住民の状況を把握し、相談や適切な支援に結びつける自治体の「住民の福祉の向上」という本来的責務を構成する業務である。
談話は、そのための専門性の蓄積や個人情報の管理・不正の防止、偽装請負など違法行為を許さないためも、「地方自治体が自ら主体となり、正規の自治体職員が直接担うことが必要である。」としている。

【自治体の窓口業務を地方独立行政法人に委託することを可能にする地方独立行政法人法の改悪に反対する(談話) 自治労連3/17】

【自治体の窓口業務を地方独立行政法人に委託することを可能にする地方独立行政法人法の改悪に反対する(談話) 自治労連3/17】

書記長 中川 悟

 安倍内閣は3月10日、自治体の窓口業務を地方独立行政法人に委託することを可能とする地方独立行政法人法(以下、地独法)の改悪案(2018年4月1日施行予定)を閣議決定し、地方公共団体の内部統制に関する方針の策定や、首長等の損害賠償責任等の見直しなどとともに地方自治法等の一部「改正」案として、今通常国会に提出し、成立を図ろうとしている。地独法の改悪法案は、住民の基本的人権を守る窓口業務の行政サービス水準を著しく低下させ、地方自治体の業務の集約、統廃合を推進して地方自治体を空洞化させるものであることから、自治労連は断固反対し、廃案を求めるものである。

 安倍内閣は「骨太方針2015」で「公的サービスの産業化」を打ち出し、「市町村で取組が遅れている分野や窓口業務などの専門性は高いが定型的な業務の適正な民間委託の取組の加速をはじめ、公共サービスの広域化、共助社会づくりなど幅広い取組を自ら進める。その際、窓口業務のアウトソーシングなど汎用性のある先進的な改革に取り組む市町村数を2020年度(平成32年度)までに倍増させる」としている。

 地独法改悪法案は、2014年に東京都足立区が戸籍事務を民間企業に委託したところ、戸籍法違反や偽装請負の問題が発生して住民からも批判を浴び、一部を直営に戻さざるを得なかったことを受け、「骨太方針」に基づき、地方独立行政法人を突破口にして、窓口業務の包括的な委託を進められるようにする意図で提出されたものである。地独法改悪法案では、地方独立行政法人が行うことのできる業務を列挙した21条(業務の範囲)に、窓口関連業務等で「定型的なもの」を加えるとともに、具体的な事務は別表により総務省令によって定めることとしている。別表では、戸籍、住民基本台帳、マイナンバー、地方税、国民健康保険、高齢者医療、国民年金、介護保険、障害者福祉、母子保健、児童手当をはじめとした広範な窓口業務を対象にしている。具体的にどの事務の委託を認めるのかは総務省令で定めることとなっており、総務省の裁量で無限定に拡大されるおそれがある。
窓口業務を地方独立行政法人に委託することについては、次の重大な問題点がある。

 第一に、窓口業務を地方自治体の業務から切り離すことにより、住民の基本的人権を守る自治体の機能が損なわれることである。地方独立行政法人は「地方公共団体が自ら主体となって直接に実施する必要のない」(地独法第2条)業務を担うこととされている。窓口業務を、自治体が直接行う業務から切り離せば、住民と自治体職員が直接に接する場がなくなり、自治体職員の専門性やノウハウも失われる。

 窓口業務は、住民相談、申請の受付、申請に対する処理、申請者への各種証明書等の引き渡しまで、一連の業務が一体不可分である。窓口業務を「定型的な業務」とそうでない業務に切り分け、総務省が「定型的な業務」とみなした業務を外部に委託すれば、本来は一体であるべき窓口業務を担当する職員が、自治体職員と地方独立行政法人の職員とに分断されることになる。申請の受付の事務を「定型的な業務」として地方独立行政法人に委託すれば、自治体職員は申請に訪れた住民の状況を直接に把握することができず、関連する行政部門との連携にも支障が生じる。また、自治体職員と地方独立行政法人の職員との間で、業務について直接のやり取りをすれば偽装請負になる。窓口業務を委託することにより、これまで自治体職員が一体となって進めてきた業務が非効率になるとともに、偽装請負など違法行為が発生するリスクが高まる。

 第二に、住民の個人情報の管理や、不正な請求などに対して、適正な対応ができなくなるおそれがあることである。窓口業務には、住民の個人情報を適正に保護、管理することが求められる。また、戸籍や住民票などの窓口では、本人になりすました不正な請求が行われる場合が少なくない。申請者が本人であるかどうかを確認するために、必要な場合は本人に直接質問をし、答えぶりを見て本人であるかどうかを確認するなど、住民の安全や権利を守るために厳格な対応を行うことが求められる。窓口業務を担う職員には高い専門性が必要であり、業務に必要な専門性は経験を積み重ねることで培われる。専門性を育成、維持、継承するためには、地方公務員として安定した身分を付与し、安心して業務に従事できる賃金・労働条件を保障することが必要である。

一方、地方独立行政法人は、原則として企業会計原則によることとされ(地独法33条)、中期目標(地独法25条)や年度計画(地独法27条)により、段階を追って経費削減などのリストラを推進することが求められており、「住民の福祉の増進を図る」(地方自治法1条の2)役割をもつ地方公共団体とは異なる運営が行われる。地方独立行政法人が「業務の効率化」を優先することにより、法人職員が低賃金で短期間雇用の非正規雇用にされれば、業務についての専門性が蓄積されなくなる。民間委託をしている職場で生じているように、短期間のうちに地方独立行政法人の職員が次々と入れ替わることになれば、住民の個人情報の管理にも支障が生じる。

 法案では、地方独立行政法人の業務の適正を確保するためとして、設立した市町村から地方独立行政法人への立入検査や監督命令を行えるようにするとしているが、問題が発生してから事後的に対応を行うものであり、住民情報の漏えいなどで失われた損害は回復できない。

 第三に、複数の市町村の窓口業務を一括して地方独立行政法人に委託できるようにすることで、地方自治体の業務の集約、統廃合を加速させることである。政府はいま、「選択と集中」の名のもとに、「連携中都市圏」構想や「定住自立圏」構想など、自治体の「広域化」「集約化」を推進している。公共施設の統廃合に加え、窓口業務を一括して地方独立行政法人に委託することにより、地方自治体の空洞化が一層進められるおそれがある。
 自治体の窓口業務は、住民の基本的人権に関わる重要な業務を担っている。これらの業務は、①住民生活の重要な場面において、憲法と関係法令に基づいて住民の基本的人権を保障する、②住民が自治体行政と直接に接する場であり、住民に必要な行政サービスを提供するための総合窓口となる、③住民の個人情報を適正に管理し、犯罪や本人へのなりすましなど不正利用を防止するなどの地方自治体の根幹に関わる業務を担っていることから、地方自治体が自ら主体となり、正規の自治体職員が直接担うことが必要である。

 自治労連はこれまで、窓口業務のアウトソーシングを許さず、業務は直営で正規職員が担うようにすることを求めてたたかってきた。足立区の戸籍事務の民間委託に対しては、当該の地方組織、単組、住民、国会議員とも共同してたたかい、戸籍事務の民間委託に歯止めをかける法務省通知を発出させてきた。また地方自治体の「集約化」や「広域化」を許さず、住民が全国のどの地域に住んでいても憲法が保障する基本的人権が保障されるように国と自治体が必要な役割を果たすことを求めてたたかってきた。自治労連は、窓口業務の外部委託を促進して行政サービスの破壊と地方自治体の空洞化をもたらす地独法の改悪を許さず、憲法をいかし、住民生活を守る地方自治体をつくるために、住民との共同を広げてたたかうものである。

以 上  

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