トランプ政権によるシリア攻撃 国際法違反の愚かな選択
化学兵器の使用は許されないが〔無人機などの通常兵器での民間人の犠牲もゆるされない、と思うが、ここに「化学兵器」が禁止されている重みがある。今、交渉中の「核兵器の違法化」の重要な意義もここにある〕
事実も明らかでないもと、低迷する支持率を回復させるために「オバマ前米政権との違いの強調」し、国際法を無視して他国を攻撃する・・・ イラク戦争と、そっくりである。直ちに支持した日本政府の姿勢も同じ。軍事力行使は内戦の悪化、混迷を深めるだけである。過去にまったく学んでいない。
中東調査会の高岡豊氏はトランプの決断に、「あまりにもマイナス面が大きい」「攻撃しすぎれば紛争被害の拡大・イスラーム過激派の伸張を招き、攻撃しなければアメリカが言うところの抑止や懲罰にならないという、いずれの選択肢も望ましくない副作用を伴う」とのべ、「トランプ政権は自ら迷路に迷い込み、ジレンマに陥ってしまったように思う」と語る。
【米国トランプ政権によるシリア攻撃について 4/7日本共産党幹部会委員長 志位 和夫】
【思わぬ副作用が生じる可能性も…米シリア攻撃 中東調査会上席研究員・高岡豊 読売4/7】
【中途半端な介入ならマイナス 高岡豊・中東調査会上席研究員 高岡豊氏 毎日4/7】
【シリア:アメリカ軍がシリア軍基地を巡航ミサイル攻撃 中東調査会 かわら版4/7】
【米国トランプ政権によるシリア攻撃について 4/7日本共産党幹部会委員長 志位 和夫】一、シリア北西部で、化学兵器とみられる攻撃で多くの犠牲者が出たと報じられるなか、米国のトランプ政権は6日(日本時間7日午前)、シリアの空軍基地へ数十発のミサイル攻撃をおこなった。
化学兵器の使用は、誰によるものであれ、人道と国際法に反する重大で許されない残虐行為である。しかし、国連安保理の決議もないまま、米国が一方的に攻撃を強行したことは、国連憲章と国際法に反するものであり、厳しく抗議する。軍事攻撃は、シリア内戦をさらに悪化させることにしかならない。一、米英仏は5日に提示した安保理決議案のなかで、シリアでの化学兵器使用について、国際的な真相究明を求めていた。米国の一方的な攻撃は、自らの主張にも反するものといわなければならない。国連を中心に、国際社会が一致協力して、化学兵器使用の真相をつきとめ、使用したものにきびしい対処をおこない、二度と使われることのないよう取り組みを抜本的に強めることこそ必要である。
一、とりわけ憂慮されることは、米国トランプ政権が、今回の攻撃を、「米国の安全保障上の死活的な利益にかかわる」と合理化していることである。「米国第一」の立場で一方的な軍事攻撃を合理化する態度はきわめて危険であり、絶対に認められない。
【思わぬ副作用が生じる可能性も…米シリア攻撃 中東調査会上席研究員・高岡豊 読売4/7】アメリカのシリア攻撃は、中東の周辺国のほか、関係する欧州やロシアなどにも少なからぬ影響をもたらしそうだ。現地の動向に詳しい中東調査会の高岡豊氏に解説してもらった。
今回の米軍によるシリア攻撃は、全く予想していなかったわけではないが意外だった。シリア側から見ると、オバマ前政権もトランプ政権も対シリア政策は変わらない。シリアを抜本的に変えるには不十分な戦力で介入しているからだ。すでに報道されているが、米国はロシアに攻撃を事前に通告しており、今回の攻撃は象徴的な意味でしかない。米国が内戦の基調を変えるほどの戦力を投入するのか、注目すべきは今後の動きだ。
今回のシリアに対する攻撃は、反体制派の支配地域で化学兵器が使われたことに対抗するものだが、仮にアサド政権の仕業であったとして、合理的な理由はまったくわからない。そもそも政府軍、反体制派、「イスラム国」という三つの勢力の間の内戦で、政府軍は有利な情勢だった。
その理由は、内戦の当事者の一つであるイスラム過激派組織「イスラム国」への対策が本腰を入れてとられるようになったからだ。2011年から15年ぐらいまで、欧米はアサド政権を攻撃するだけで、「イスラム国」は放任状態だった。
しかし、欧州その他の場所で「イスラム国」が関わったとされる事件が起きるようになり、放置してはいけないという態度に変わったことで、「イスラム国」は明らかな衰退傾向にある。一見、反体制派となっている武装勢力も、実は主力はアル・カーイダ系だったなどというからくりもある。世界がイスラム過激派は害悪だと認識して対策をとるようになり、反体制派の武装勢力も衰退した。政治組織も含めてシリアの反体制派はここ数年、各国の手厚い支援を受け続けたにもかかわらず、まったく実績を上げていない。アサド政権の地盤が案外強かったということだ。一方、ロシアはシリア軍の作戦を支援する形で直接介入している。空軍基地などを整備して足場を作り、顧問団や特殊部隊を派遣して実際の戦闘にも加わっている。中東・アフリカで起きた民主化運動『アラブの春』におけるリビアの政権崩壊の過程で、ロシアは、欧米諸国が特定の政権に対して合格なり失格なりの判定をして自由に放逐していいというルールができるのを断固阻止したかった。その決戦の場がシリアだ。この場面でロシアが譲歩するのは難しい。
今回の米国のシリア攻撃がもうひとつの内戦当事者である「イスラム国」に与える影響は、米軍による攻撃の量と質によって変わってくる。シリア空軍を壊滅させるなど、シリア軍に深刻な打撃を与えれば、イスラム国にとっては絶好の“援助”となる。シリアでは米国の介入の規模にかかわらず、思わぬ副作用が生じうる。正解のない選択肢しか並んでいない状態だといえる。(談)
【中途半端な介入ならマイナス 高岡豊・中東調査会上席研究員 高岡豊氏 毎日4/7】シリア攻撃は短期的と長期的の二つの視点で見る必要がある。短期的に見ると、シリア内戦の戦局やアサド政権に及ぼす影響はほとんどないだろう。シリア政府軍はロシアやイランの非常に大きな支援を受けており、過激派組織「イスラム国」(IS)や反体制派武装組織との戦いを有利に進めてきている。米軍が自ら地上部隊を派遣したり、反体制派への支援を資金面でも人材面でもよほど強めたりしない限り、シリア政府軍が優位に立つ状況を覆すことはできない。しかし、現在の報道を見る限り、トランプ政権がこの攻撃を機にシリア内戦への関与をより一層強めるとは思えない。アサド政権はこれまで通り、反体制派の掃討作戦を続けることになるだろう。
一方、長期的な視点で見ると、今回の米軍の攻撃により、アサド政権は「化学兵器を使った非人道的な政権」という評価が固定したことになる。米政府はこの評価を簡単には変えないだろうし、国際社会もアサド政権を正当な政府として容認することは現在よりもさらに難しくなる。仮にアサド政権側の勝利で内戦が終結したとしても、政権が存続する限り国際社会から復興支援を受けられる可能性はほぼなくなり、国際的に孤立を深めるだろう。復興支援を受けられないことはシリアに残る一般市民にとっても大きな打撃だ。内戦後も貧困や飢餓に苦しむことになり、国外にいる難民も簡単に帰国はできない。
アサド政権はロシアを「命綱」と考えている一方で、「完全に従属したくない」とも思っている。だから、イランからの支援も受けており、ロシア1国だけに依存することを避けている。地政学的な要衝であることを利用してうまく両者のバランスを取っている。シリアへはロシアから相当数の軍事顧問団が派遣されているが、同時にイランも革命防衛隊を派遣したり、アフガニスタンからシーア派民兵を送り込んだりしている。レバノンのシーア派武装組織ヒズボラも参戦している。もはやアサド政権をロシアとイランから切り離して見ることは難しい。アサド政権は戦局を有利に運ぶ上で非常に重要な首都ダマスカスや北部の大都市アレッポを掌握しており、アサド政権の優位は簡単には揺るぎそうにない。
にもかかわらず、なぜトランプ政権は今回の攻撃を実施したのか、疑問に思う。「オバマ前米政権との違いの強調」や「化学兵器使用への報復」といった象徴的な意味で攻撃を行ったとしたら、あまりにもマイナス面が大きい。トランプ政権が最重要政策に掲げるIS掃討はアサド政権やロシアの協力がなければ実現できないが、今回の攻撃によって両者との協力は難しくなった。また、米軍がアサド政権やISを打倒するためにイラク戦争(2003~11年)のように大規模な地上部隊を投入して戦争に突入するようなことは米世論が許さないだろう。今回のように中途半端な介入でアサド政権の力をそげば、ISの伸長を招きかねない。トランプ政権は自ら迷路に迷い込み、ジレンマに陥ってしまったように思う。【聞き手・松井聡】
【シリア:アメリカ軍がシリア軍基地を巡航ミサイル攻撃 中東調査会 かわら版4/7】
「アメリカがどのような意図であるかに関わらず、シリア政府軍を攻撃することはイスラーム過激派に対する援護射撃であり、これはイスラーム過激派の殲滅を標榜するトランプ大統領の方針と矛盾する。すなわち、攻撃しすぎれば紛争被害の拡大・イスラーム過激派の伸張を招き、攻撃しなければアメリカが言うところの抑止や懲罰にならないという、いずれの選択肢も望ましくない副作用を伴うのである。」
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