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「月100時間残業に反対」 過労死遺族コメント

 司法の場でも「月80時間超」を違法とする判断が下っているのに、法律で100時間を合法化することを、経団連と連合が合意したことに、過労自殺した電通の新入社員高橋まつりさんの母親は「月100時間残業を認めることに、強く反対します」とのコメントをだしている。
 連合だが、原発再稼働でも政府・財界と立場を同じくし、野党と市民の共同の足をひっぱる。それが「労働者」の代表として、政府の機関ではあかつかわれている。その意味、役割が、いよいよ国民的に明らかになってきたと言える。
【残業「100時間」なぜ認めるの 過労死遺族ら反発 東京3/14】
【残業月80時間超は公序良俗違反 相次ぐ司法判断 共同3/5】

【残業「100時間」なぜ認めるの 過労死遺族ら反発 東京3/14】

 これで本当に過労死が防げるのか-。政府が進める残業時間の上限規制について、経団連と連合のトップは「月最大百時間」で合意した。上限規制の法定化を評価する声もあるが、過労死遺族からは「もっと短くして」「納得できない」と不満が続出している。 (福田真悟)
 「過労死遺族の一人として強く反対します」
 過労自殺した電通の新入社員高橋まつりさん=当時(24)=の母幸美さん(54)は、報道各社へのコメントに怒りを込めた。
 月当たりの上限の基準となる百時間の残業は、脳や心臓疾患の労災認定の目安となる「過労死ライン」の数字。「このような長時間労働は有害なことを政府は知っているにもかかわらず、なぜ、法律で認めようとするのでしょうか。納得できません」と問題視する。
 「死にたい」「一日二時間の睡眠時間はレベルが高すぎる」。悲痛なツイートを残し、命を落としたまつりさん。「娘のように仕事が原因で亡くなった多くの人たちがいます。死んでからでは取り返しがつかないのです」と訴えた。
 「全国過労死を考える家族の会」代表の寺西笑子(えみこ)さん(68)も「過労死を招く長時間労働にお墨付きを与える内容」と憤る。
 約二十年前、夫を過労自殺で亡くしてから、ほかの遺族らと過労死をなくす活動に取り組んできた。その結果、二〇一四年に「過労死等防止対策推進法」が施行。過労死対策への国の責任が盛り込まれた。
 「過労死をなくそうと言っているのに、過労死ラインに近い数字を認めるのは矛盾している」と批判。「最長の残業時間を百時間より大幅に短くする企業も出てきている。流れが逆行しかねない」と懸念する。
 日本労働弁護団の棗(なつめ)一郎幹事長は「罰則付きの上限規制ができるのは賛成」と評価する一方、「労働者の健康が守れるか心配」と述べる。
 長時間労働を巡る過去の裁判では、月八十~九十五時間の残業でも「使用者が安全配慮義務に違反している」と判断された例がある。
 「百時間近い残業は、あくまでも例外的でなくてはならない。使用者の安全配慮義務を免除するものではないと法律に明記する必要がある」と指摘した。

◆高橋まつりさん母・コメント全文

月100時間残業を認めることに、強く反対します
 高橋 幸美
2017年3月13日

 政府の働き方改革として、一か月100時間、2か月平均80時間残業を上限とする案が出されていますが、私は、過労死遺族の一人として強く反対します。
 このような長時間労働は健康にきわめて有害なことを、政府や厚生労働省も知っているにもかかわらず、なぜ、法律で認めようとするのでしょうか。全く納得できません。
 月100時間働けば経済成長すると思っているとしたら、大きな間違いです。人間は、コンピューターでもロボットでもマシーンでもありません。長時間働くと、疲れて能率も悪くなり、健康をそこない、ついには命まで奪われるのです。
 人間のいのちと健康にかかわるルールに、このような特例が認められていいはずがありません。
 繁忙期であれば、命を落としてもよいのでしょうか。
 命を落としたら、お金を出せばよいとでもいうのでしょうか。
 娘のように仕事が原因で亡くなった多くの人たちがいます。死んでからでは取り返しがつかないのです。
 どうか、よろしくお願いいたします。



【残業月80時間超は公序良俗違反 相次ぐ司法判断 共同3/5】

 政府が導入しようとしている残業の上限規制を巡り、月100時間の残業を容認するかが焦点となっているが、最近の労働裁判では、月80時間を超える残業について「公序良俗に反する」「労働者への配慮に欠ける」との判断が相次いでいる。日本労働弁護団の棗一郎幹事長は「政府の規制案は(訴訟になった場合)裁判所に無効とされる可能性もある」と指摘する。
 飲食店の店長だった男性が未払い残業代の支払いを求め、岐阜地裁で争われた訴訟。会社が月83時間の残業代に相当する月10万円の管理者手当を支払っていたことについて、地裁は2015年10月の判決で「(厚生労働省が残業上限の目安とする)月45時間の2倍に近く、相当な長時間労働を強いる根拠となり、公序良俗に違反すると言わざるを得ない。手当を残業代と認めることはできない」との判断を示し、原告の請求を認めた。
 北海道のホテルで料理人として働いていた男性が未払い残業代を求めた訴訟でも、札幌高裁が12年10月、月95時間の残業代に相当する職務手当について「このような長時間の残業を義務付けることは、安全配慮義務に違反し、公序良俗に反する恐れもある」と指摘。「労働者の生活と仕事を調和させようとする労働基準法36条の規定を無意味なものにする」とした。
 京都地裁も10年5月、居酒屋チェーンで働き、24歳で過労死した男性の遺族が会社側に損害賠償を求めた訴訟の判決で、1カ月100時間という残業上限を「労働者に配慮していたものとは全く認められない」と判断した。この訴訟は大阪高裁を経て、最高裁が会社側の上告を退け、原告勝訴が確定している。

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