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東芝、三菱、日立 「原発御三家」の苦境

 不良債権・原発をかかえこんだ東芝の危機的状態は、日をおって深刻化。今度は、中国でも工事の遅れが深刻化しているとの報道。
他の原発メーカーも、三菱重工は、豪華客船、小型ジェットのつまづきに加え、事実上倒産したアレバへ出資、日立も米国の原子力事業で700億円の損失、他国が撤退する中で英国での原発新設・運営参入。おまけに三菱重工と日立が南アの火力発電所建設にからんで7634億円の追加負担をめぐってもめている。
【東芝が米原発産業の「ババを引いた」理由  ダイヤモンド2/2】
【東芝内部資料で判明、中国でも原発建設3年遅れ  受注から9年、着工から7年経過しても稼働は「ゼロ」 日経ビジネス2/10】
【日立vs三菱重工、7600億円を「押し付け合い」  火力発電事業めぐり請求額が一気に倍へ拡大 東洋経済2/9】
【日立、東芝、三菱重工「原子力御三家」は原発を捨てられるか プレジデント1/11】
【日立・三菱重・東芝の原発3社、海外案件暗礁で苦境 最先端技術や人材の喪失懸念 sankeibiz 11/29】

【東芝が米原発産業の「ババを引いた」理由    ダイヤモンド2/2】

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

日本を代表する名門企業・東芝が崩壊の瀬戸際に追い込まれた。米国事業に隠されていた地雷「隠れ損失」が爆発して日本の本社が吹っ飛んだようなものだ。3.11の事故後、原子力事業は採算に合わず、リスクの高いビジネスであることは世界で常識になったが、安倍政権は今なお原発輸出を成長戦略のかなめに置いている。政策の失敗を認めない経産官僚と重厚長大から抜けられない産業界に引きずられ、時代の趨勢が見えない。東芝危機は「目を覚ませニッポン」という警鐘でもある。 

原発関連の企業など420団体が集う日本原子力産業協会(今井敬会長)の新年会が1月12日、東京国際フォーラムで開かれた。「今年は原発再稼働を本格的に進める年」。年頭の辞で今井会長は強調した。もう一つ力を込めたのが原発輸出。「原子力発電所インフラ輸出分野は日本の強みでございます」と語ったが、果たしてそうだろうか。東芝で起きたことは「日本の弱み」そのものではないのか。

今井会長は新日鉄で社長・会長を務め、経団連会長を経て今なお財界の奥の院で健在だ。天皇の退位問題では、有識者会議の座長を務めている。その権勢を裏打ちしているのが甥で首相政務秘書官の今井尚哉氏である。経産省のエネルギー官僚で政務秘書官の前は資源エネルギー庁次長として原発再稼働に取り組んでいた。安倍政権が原発輸出を成長戦略に掲げたのは「二人の今井」の連係プレーと言われている。 

役人と業者が結託した政策。盲点はそこにあった。日本では原発は儲かる。「官民癒着の電力支配」がそれを可能にしたのだ。だが日本の産業風土は世界に通用しない。海外で原発はリスク満載の事業である。談合体質の日本では信じられない苛烈なビジネス戦争が原発の現場で起きている。 

◆不安と損失の押し付け合い 米原発業界のババを引いた東芝

「7000億円」と報じられる損失が発生したのは米国の子会社ウエスティングハウス(WH)が2015年12月の子会社にしたストーンアンドウエブスター(S&W)という原発工事の会社だ。東芝にとって孫会社という末端が、本社を揺るがす損失を出した。買収して1年で巨額損失が露見した「奇怪な破綻劇」である。東芝は嵌められた、という疑念さえ湧く。

この会社は工事代金を巡りWHと訴訟合戦を起こしていた。WHはジョージアとサウスカロライナで計4基の原発を受注し、S&Wに工事を任せていたが、高騰する建設費用をどちらが負担するかで揉めていた。 

買収の経緯も不透明である。東芝は「S&Wの買収価格はゼロ」としている。タダで引き取ったというのだから、内容の悪い会社であることは知っていたのだろう。にもかかわらずS&Wの親会社シカゴ・ブリッジ・アンド・アイアン社(CB&I)に260億円を支払う約束をしている。 

つまり260億円で買った会社に7000億円の赤字が隠れていた。「詐欺」に遭ったような話である。よほどの間抜けか、何か弱みがあったのだろう。

買収が実行された2015年12月、東芝は粉飾決算で大騒ぎしていた。「不適切な会計処理」が問題化したのは3月。損失を先送りするバイ・セル取引など姑息な操作が明るみに出て、西田厚聰元会長と佐々木則夫元社長の確執が話題になった。粉飾の根源に米国子会社WHが抱える損失が浮上したのがこの年だ。訴訟でS&Wに負ければ「WHの経営は順調」と強弁してきた東芝に大きな打撃になる。 

呑みこんでしまえば会社間の揉め事はなくなる。だが訴訟にまでなった赤字要因が消えるわけがない。原発工費の膨張がもたらす損失を東芝グループは抱え込むことになった。 

CB&Iは米国最大のゼネコン、ショウ社を買収して成り上がった会社だ。ショウは東芝が頼りにしてきた会社でもあった。2006年にWHを買収した時、協力したのがショウ。原発工事で稼ぐショウにとってもWHが健在であることが必要だった。東芝は77%、ショウが20%の株式を持つことになった。 

スリーマイル島の事故を経験しているショウは原発に不安を抱いていた。「将来、株を手放すときは引き取る」と東芝に約束させたのである。そして3・11福島事故が起きるとショウは権利を行使してWHから手を引いた。更に会社を丸ごとCB&Iに売却して原発事業から撤退してしまった。 

CB&Iも原発を不安視した。WHと組んで工事を担ってきた子会社S&Wの損失処理が課題となっていた。結果から見ればCB&Iは訴訟合戦でWHを追い詰め、S&Wを引き取らせることに成功した。「ゼロ円」で売却しながら240億円の追い銭を取って、7000億円の損失を置き土産にした。 

壮大なババ抜きが米国の原発産業で展開されていた。ウブな東芝が見事にババを掴まされたのである。 

◆20世紀に始まっていた 米欧日の壮大なババ抜き

東芝内部でこの取引を主導したのは子会社エネルギーシステムソリューション社。WHを翼下に置く東芝の社内カンパニーで、社長はダニー・ロデリック氏。原子力事業は志賀会長が総責任者だが、実権はロドリゲス氏が握っていた、と関係者は指摘する。 

WHは子会社であっても設計やエンジニアリングの技術で先を行っている。東芝はWHの指導で原子力事業に乗り出したいきさつもあり、親会社として指導性を発揮できる関係になかった。日米間の意思疎通の悪さから、本社は米国で起きている深刻な事態を見過ごしたのだろうか。東芝は致命傷を負った。 

ババ抜きは今に始まったことではない。WHが売りに出た時からゲームは始まっていた。米国の電機産業を代表したGEやWHは1980年代からモノづくり企業として存続するのは難しくなっていた。GEはパテントやメンテナンスなどサービス産業に活路を見出し、改革できなかったWHは売りに出された。 

電機部門はドイツのジーメンスが買い、原子力部門は1999年、英国核燃料会社(BNFL)が引き受けた。だが再生は困難だった。スリーマイル島の事故以来、安全検査は厳しく、電力自由化が重なり電力会社は疲弊し、原発に逆風が吹いていた。BNFLはWHを持て余す。原子力産業は米国にとって戦略分野。売り先はどこでもいい、とはいかない。英国がダメなら日本。米エネルギー庁から経産省に売却が持ちかけられ2006年、入札で東芝が買い取った。

ライバルの三菱重工が「相場の2倍」と驚くほどの高値。純資産3000億円程のWHを、後のショウからの引き取り分を含め6600億円で買ったことになる。喜んだのは売り抜けた英国公社とWHの処理に困っていた米国。背景には日米原子力協定で優位に立つ米国の政治力があった。事実上の経営権を米国に残しながら、日本から資金を引き出しWHを支える、という日米同盟である。 

◆米国のツケを払わされ細る東芝 やがて原発も官主導で合併・再編か

今回、東芝が被った7000億円の損失は米国の原子力業界が開けた穴である。 

9.11の同時多発テロで原発が狙われる恐れが問題になった。戦闘機が突っ込むことは想定していた安全基準が、大型航空機が突っ込んでも耐えらえる基準に引き上げられた。 

3.11の福島事故で、溶けだした燃料がこぼれ落ちない炉心の設計が求められ、安全検査は一段と厳しくなった。工事は頻繁に止まり、工期が伸び、物量・人件費が膨らみ原発の建造コストは跳ね上がった。そのツケが「実権のない親会社」である東芝に回された。 

2016年3月期の決算で東芝はWHで生じた損害2400億円を処理した。資金をひねり出すために儲け頭である医療機器部門の東芝メディカルをキヤノンに売却した。その前には白物家電部門を中国の会社に売っている。もう終わりかと思っていたところに、また米国から請求書が届いた。 

今度は半導体部門を別会社にして切り売りする。大型のフラッシュメモリーが好調で、粉飾決算で生じた大赤字を今年は埋められる、と思っていた矢先である。また、東芝の至宝が泥沼に引き込まれる。次に売られるのは東芝病院か、などと取りざたされている。去年も売却候補に挙がったものの従業員の健康に配慮して見送られたが、損失処理が拡大すれば手放さざるを得ないだろう。 

米国でつかまされたババによって、東芝は優良部門を一つひとつ剥され、細ってゆく。残されるのは引き取り手がない原子力部門だが、やがて日立・三菱重工の原子力部門と合体され官主導の「ジャパン・ニュークリア」にされるのでは、という観測が広がっている。 

◆米欧アジアで原発衰退の動き 今さら官民一体で打って出る無謀

「エネルギー事業で原子力にもっとも注力するという位置づけを変え、今後、海外の事業は見直したい」。東芝の綱川社長は記者会見で述べた。遅きに失した、とはいえ「見直し」は当然だろう。米国ではGEのジェフリー・イメルトCEOは「原発事業を正当化する根拠を見出すことは困難になった」と述べている。欧州最大の電機メーカー・ジーメンスは、原発事業から撤退し再生エネルギーへと舵を切った。フランスでは原発大国を担ってきたアレバ社がフィンランドで受注した原発で膨大な損を抱え経営が行き詰まった。

安全基準の強化に現場が対応できず、工期が延び、運転開始の遅れで工費が膨れ上がった。米国でも欧州でも同じことが起きている。原発事業の先端を走ってきたGE、WH、アレバが挫折した。そんな危ない事業に日本は打って出ようというのである。 

旗を振るのは経産省。「米国市場とともに、新規導入国を含めたアジアが、我が国原子力産業の国際展開の中心になる」という見通しに沿って2000年台初頭、「海外の原発市場を取りに行く」という方針が打ち出された。東芝はWH、日立がGE、アレバは三菱が応援する。基礎技術は米国でもタービンや原子炉などモノづくりは日本が引き受ける、という「捕らぬタヌキの皮算用」で官僚と業界は盛り上がった。 

「原子力ムラ」が支配する日本では、原発は作れば儲かる。製造コストが膨らんでも電力会社は総括原価方式なので、電力料金に被せて消費者につけ回しできる。「原発は安全」「原発の電気は安い」というウソが国内で喧伝され、経営者の頭まで妄想に支配されたのではないか。作れば儲かる、という発想がリスク感覚を麻痺させた。
幻想は3.11で粉砕されたはずだが、日本は政権も産業界も現実を認めるたくない。今や台湾まで原発撤退を決め、日本が熱心に売り込んでいたベトナムまで原発計画を取り下げた。 

役人は失敗を認めない。「原発ルネッサンス」のシナリオを描いた官僚たちがまだ現役で政権の近くにいる。その一人が今井秘書官で、安倍首相の側近に納まっている。鉄鋼やプラント業界の面倒を見る立場にある叔父の今井敬氏は、財界長老として安倍政権に寄り添う。 

以前から「アメリカファースト」だった米国の原子力支配と「日米同盟ファースト」の外交が東芝事件の底流にある。 

悲惨な原発事故を起こしながら経験から学ばない、官民癒着の原子力行政が東芝を悲劇に追い込んだ。 

政策の失敗・経営の誤りは、末端のリストラ、従業員の失業、企業のモラル低下となって社会を傷つける。なぜ東芝はこんなことになったのか。 


【東芝内部資料で判明、中国でも原発建設3年遅れ  受注から9年、着工から7年経過しても稼働は「ゼロ」 日経ビジネス2/10】

東芝の米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)が中国で建設している4基の原発で、工事の遅れが深刻化している。東芝は米原発事業を巡る損失が最大7000億円に拡大する見込みだが、中国でもリスクを抱えていることが鮮明になった。
 中国浙江省で建設中の「三門1号機」については、運転開始時期が当初予定から3年以上遅れていることが既に分かっている。一方、残りの3基(三門2号機、海陽1/2号機)については「顧客企業が公表していない」(東芝広報)として、東芝は運転開始スケジュールを明らかにしてこなかった。
 今回、日経ビジネスが独自に入手した内部資料によると、3基全てで少なくとも3年、当初予定から遅れていることが明らかになった。資料によると海陽2号機の運転開始予定は2018年夏。当初計画では2015年3月には運転を開始していたはずだった。
 WHが米建設会社のストーン・アンド・ウェブスター(S&W)とともに、中国国家原子力発電技術公司(SNPTC)などから4基の「AP1000」型原子炉設備を受注したのは2007年7月。2009年から順次着工し、建設が続けられてきた。
 なおS&Wは、2013年に親会社とともに別の建設会社に買収された後、2015年12月にWHの完全子会社となった。子会社化を巡り、原発事業で巨額の損失が生じようとしているのは既に報じた通りだ(「東芝、原発事業で陥った新たな泥沼」)。

◆2017年になっても1号機は稼働せず

 最初に着工した三門1号機はもともと、2013年11月に運転を始める予定だった。ところが2011年の福島第1原発事故を受けて安全規制が強化されたことで、工事が次第に遅延するようになった。原子炉格納容器の上蓋の設置こそ2013年2月に完了したが、燃料装荷(原子炉に燃料を入れること)に向けた重要なマイルストーンとなる「1次系耐圧試験」が完了したのは2016年5月のことだ。
 目算通りに進んでいないことは明白だったが、東芝は強気の姿勢を崩さなかった。2016年7月6日に記者会見したWHのダニー・ロデリック会長は、「三門1号機は燃料装荷を待っている段階で、2016年内に稼働する」と宣言。着工時からの工事進捗状況を動画で映し出して見せた。ところが2017年に入っても、三門1号機は運転を始めていない。
 米原発事業では工事の長期化により、建設に携わる人件費などが想定を超えて膨らみ、巨額の減損損失計上を迫られようとしている。計画が当初予定から大幅に遅れているのは中国も同じだ。東芝の関係者は「建設コストの超過を巡って中国で争いになったら、WHに勝ち目はない」と話す。
 東芝は2月14日に、2016年度第3四半期決算と「原子力事業におけるのれん計上額」などを発表する予定だ。米国だけでなく、中国での原発プロジェクトについても適切な情報開示が求められている。

【日立vs三菱重工、7600億円を「押し付け合い」  火力発電事業めぐり請求額が一気に倍へ拡大 東洋経済

山田 雄大 : 2017年02月09日

「倍率ドン!さらに倍!!」
名門企業間の争いは、昭和の時代に流行ったクイズ番組の決まり文句を彷彿とさせる展開となった。
日立製作所は2月8日、三菱重工業から南アフリカ共和国の火力発電プロジェクトに関連して7634億円の請求を受けた、と発表した。請求額は従来の3790億円から一気に2倍になった。


■合弁で事業を営むパートナーだが・・
争点となっているのは、日立が2007年と2008年に受注した石炭火力発電用ボイラー設備計12基、総受注額5700億円のプロジェクト。もともとの計画では2011年に1号機の運転が開始される予定だった。
両社は2014年2月に火力発電事業を統合、合弁会社(三菱重工65%、日立35%)の三菱日立パワーシステムズ(MHPS)で事業を営んでいる。事業統合に当たり、日立の火力事業の価値を算定し三菱重工に譲渡する形を取った。その中で遅延していた南アのプロジェクトは、統合前の原因は日立が、統合後はMHPSが責任を持つことを前提に暫定価格で譲渡し、その後、最終譲渡金額を確定し差額を調整する契約だった。
しかし、当初定めていた期間内では合意できず、昨年3月末に三菱重工が日立に、三菱重工が主張する差額を請求。日立が拒否したため、5月の決算発表時に両社の対立が表面化していた。
2月1日の2017年3月期第3四半期の決算発表で、この問題について問われた日立の西山光秋CFOは「協議中で何も決まっていない」と語っていた。
ここに来て請求金額を2倍に引き上げた三菱重工は「請求は事実だが、詳細はお答えできない」とするが、大幅な納期遅れに伴うコストオーバー分を再算定し、統合前の日立の責任として請求したものと考えて間違いない。同プロジェクトはMHPSが引き継いだ後の2015年8月に1基目がようやく運転を開始したが、終わりはまだ見えない。

■妥協点を見い出せるか

この請求について、日立は「法的根拠に欠けるため請求に応じられない」、三菱重工は「契約上、請求権の根拠がある」と平行線。一方、両社とも誠実に交渉を続けると強調する。
しかし、ここまで金額に開きがある中で妥協点を見い出せるのか。合意できない場合、契約では解決策も定められているもようだが、それで納得できるかはわからない。真っ向から対立している以上、安易に妥協すれば、それぞれ株主代表訴訟のリスクもあるからだ。
三菱重工側は請求額の一部を貸借対照表の「その他流動資産」に計上しており、支払いがなされなければ損失を計上することになる。対する日立は、合理的に見積もった金額は引き当てているとするが、その金額は非開示。だが、少なくとも7000億円といった金額でないことは確かだ。いずれにしろ、どちらか、もしくは両社とも数千億円の損失計上のリスクを抱えていることになる。
大型プロジェクトでのコストオーバーといえば、東芝の米国原子力発電所案件がある。三菱重工でも大型客船、国産旅客機MRJなどで大きな傷を負った。
ビジネスが大型化、グローバル化する中、受注時のリスク管理とプロジェクト遂行中のマネジメントを失敗すれば、名門企業といえども経営が傾きかねない。両社にとっても、その影響は決して小さくなさそうだ。

【日立、東芝、三菱重工「原子力御三家」は原発を捨てられるか プレジデント1/11】

◆「東芝ショック」米原子力事業で巨額減損

日立製作所、東芝、三菱重工業の国内原子力「御三家」が原子力事業の存続に向けた岐路に立たされている。福島第1原子力発電所の事故を契機に国内は先細りし、頼みの綱の海外も東芝が米国の原発事業で数千億円規模の減損損失を出すなど不確実性を強め、出口は遠退くばかりだ。
3社は原発の燃料事業の統合で打開策を探るものの、さらに踏み込んだ原子力事業全体の統合への足並みは揃わない。昨年12月、海外原子力事業で3社はそれぞれ慌ただしい動きをみせた。三菱重工は16日、提携先で実質経営破綻に陥ったフランス原子力大手アレバの出資要請に応じた。日立、東芝がそれぞれ英国で手掛ける新規原発建設については、日英両政府は22日、資金支援などを含めて原子力分野での包括協力で覚え書きを交わした。
さらに、暮れも押し迫った27日には、東芝が米原発事業で数千億円もの巨額な減損損失が発生する可能性があると発表し、原子力関係者や株式市場に「東芝ショック」が走った。明暗の分かれる事案とはいえ、3社が今後の原子力事業を託す海外の厳しい環境が背景にあった点は共通する。
三菱重工の場合、フランス政府の強い要請を受け、日本原燃(青森県六ヶ所村)とともにアレバに5億ユーロの出資を提案したとされる。出資規模からして、大型客船事業での巨額損失や米原発をめぐる賠償問題など難問を抱える三菱重工にとって、「沈みかけた船」に相乗りするようなアレバへの出資は苦渋の選択だったはずだ。

◆三菱重工、日立、東芝、それぞれの難題

三菱重工の宮永俊一社長は「アレバとの緊密な関係維持」を大義名分に社内の反対を押し切ったとみられる。確かに、両社の協業関係は、ベトナム政府が11月に白紙撤回したとはいえ、共同開発した新型炉で同国での原発受注をほぼ手中に収めるなど密接だ。海外事業を加速するうえで手を切るわけにはいかないとの判断が働いたことも容易に想像がつく。
英原発建設に向けた日立、東芝に対する政府支援は、原発輸出を成長戦略に据える安倍政権による頓挫したベトナムの轍は踏まないとの強い意思表示に映る。同時に、英国で原発建設を受注した中国への警戒感も透けてみえ、新興国を中心に海外で中国勢と激しい受注合戦を繰り広げる日本勢には後ろ盾になる。
一方、東芝の米原発事業で発生する巨額損失は、原子力事業に決定的な打撃になりかねない。会計不祥事後、半導体事業と並び経営の柱に位置付けた原子力事業、しかも中核となる米子会社ウエスチングハウス(WH)による企業買収で生じる損失だけに、同事業にとどまらず、再出発途上の東芝に再び暗雲が立ち込める。
このほか、3社の海外事業は、受注にこぎ着けたトルコ、インド、リトアニアなどで相次ぎ暗礁に乗り上げている。こうした内憂外患の逆風下で浮上した打開策が、原発で使用する燃料事業での統合構想だ。既に3社は交渉に入り、今年春の統合を目指す方向とされる。しかし、それは単なる延命策に過ぎない。経済産業省などはその先に原子力事業全体の統合も視野に入れているとの観測もある。
ただ、ここに行き着くまでには3社それぞれが海外企業をパートナーに受注競争を繰り広げ、得意な原子炉形式も異なる事情もあり、二の足を踏む。原子力ビジネスは少なくとも計画から20年、30年先を見据えた超長期型であり、それに応じた経営判断が求められる。しかし、再建の危機に見舞われかねない東芝を挙げるまでもなく、3社は国内外で激変する事業環境に耐え、座して待てるだけの体力を維持できるか――。事業存続の岐路のなかで大きな決断を迫られている。

【日立・三菱重・東芝の原発3社、海外案件暗礁で苦境 最先端技術や人材の喪失懸念 sankeibiz 11/29】

日立製作所、三菱重工業、東芝の原発メーカー3社が、海外進出をめぐり苦境に立たされている。東京電力福島第1原発事故で、国内の新設が見込めなくなる中、そろって海外に活路を見いだそうとしているが、22日にベトナムが建設計画を白紙撤回するなど、有望な案件が相次ぎ暗礁に乗り上げている。海外進出の停滞は、事業のもくろみを狂わせ、技術や人材の維持に支障を生じかねない。

◆成長戦略にも打撃

「残念だ。(計画を)見直す時期も来るだろうから、支援は続けたい」
日本電機工業会の志賀重範会長(東芝会長)は24日の会見で、無念さをにじませつつベトナムへの輸出に引き続き努める考えを強調した。
ベトナムは、2010年に国会が中部ニントゥアン省の建設計画を承認し、第1原発2基をロシア、第2原発2基を日本が受注していた。なかでも、三菱重工が仏メーカーのアレバと開発した中型炉「アトメア1」の採用が有力視されていた。
ところが、福島第1原発事故後に新たな安全対策が必要となり、建設コストが膨らむ見通しとなったことで、14年に着工予定だった計画が遅れ始めた。ベトナム共産党内では、財政が悪化する中で巨費を投じることへの反対論が浮上。10月の党中央委員会総会で、計画を再検討する方針を決め、政府に見直しを指示していた。

日本は原発輸出を成長戦略の柱と位置付け、官民一体でベトナムでの受注を目指してきた。既に日本原子力発電が事業化調査に入り、技術者の研修も受け入れていただけに、打撃は大きい。

一方、ベトナムとともに日本の受注が有力視されるトルコでは、7月にクーデター未遂が起きるなど、政情不安が懸念されている。トルコでは、三菱重工・アレバ連合が4基を受注する見通しだが、まだ事業化調査は終わっていない。日立がビサギナス原発建設の優先交渉権を得ているリトアニアでも、10月の議会選で反原発を掲げる野党が第一党に躍進し、計画の頓挫が危惧されている。

そのうえ、11日に日本と原子力協定を結んだインドも、原発メーカーにも事故責任を負わせる原子力損害賠償法が壁となっている。

このため、東芝子会社の米ウェスチングハウスが6基の受注を内定しているのを除けば、各社とも売り込みに二の足を踏んでいるのが実情。比較的順調なのは、日立と東芝が現地の発電事業会社を買収し、それぞれ4~6基、3基の建設を推進している英国ぐらいだ。

原発メーカーなどの関連企業で構成する日本原子力産業協会によると、今年1月時点で稼働している原発は世界に434基あり、建設中が74基、計画中も101基あるなど、潜在需要は大きい。

◆さらなる再編圧力も

 一方、各社とも主力の国内は既存原発の保守や廃炉に軸足を移しつつあり、新規受注が途絶えてもすぐに事業が行き詰まるわけではない。
 もっとも、受注の間隔が空くほど、技術や人材の維持は難しくなる。そうなれば、国を挙げて輸出を推進し、手ごわいライバルに成長しつつある中国などとの競争が不利になるどころか、産業の維持すらおぼつかなくなる。
 国内市場の縮小が避けられない中、3社は原発燃料事業の統合交渉を進めており、原子炉についても経済産業省が統合を模索している。炉のタイプが違うなど課題は多く、メーカー側では「短期的に結論付ける時期なのか」(電機工業会の志賀会長)と慎重だが、海外進出の停滞が長引けば再編の圧力がさらに増しそうだ。(井田通人)
                   ◇
 ■日本が原発輸出を目指す主な国
 トルコ/三菱重工業などの企業連合が4基の受注を内定
 ベトナム/日本が2基受注も計画を白紙撤回
 英国/日立製作所、東芝が現地の原発事業会社を買収し、建設を推進
 リトアニア/日立が1基の優先交渉権獲得
 インド/11日に日本と原子力協定締結、東芝子会社が6基の受注内定


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