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「異次元金融緩和」と金融・財政問題の深刻化(メモ)

「『異次元金融緩和』と金融・財政問題の深刻化」山田博文・群馬大名誉教授、「『公的マネー』40兆円超の株価対策  GPIF、日銀資金の株式市場投入の実態」 垣内 亮氏の論考「経済2017.2」のメモ。
 GPIFの株式運用はマスコミなどでも話題になるが、日銀の株式(ELT)購入と事実上の国債引き受けによる問題点は見えづらい。
 それら仕組みと、異次元金融緩和の目的が、改憲のために長期政権を維持することにあり、そのために「株高」を人為的にづくりだし、実態経済低迷下でも大企業・金融機関・富裕層の金融利益を実現させることにあること、それは一方で国民の金融収奪、実体経済の低迷であり、財政破綻の深刻なリスクを増大させている、ことなどを解明している。

【「異次元金融緩和」と金融・財政問題の深刻化】   山田博文・群馬大名誉教授  経済2017.2

◆はじめに

・アベノミクス4年近くの実態/ 実質経済成長率  わずか0.6% /株価は、200%近くも暴騰、株式バブルの発生/ 国債バブルは、世界の歴史上例がない水準  

 →「第一の矢」、異次元金融緩和策の結果 /内外の投資家には恩恵ははかりしれないが、99%の国民にとっては、貧困と格差の拡大

1.アベノミクスの破綻と目的

○破綻した「2%の物価上昇」目標

・第一の矢/日銀の供給マネーを2年間で2倍に拡大し、2%の物価上昇を2年程で達成する。

・本来政府から独立した存在の中央銀行が、アベノミクスに組み込まれた/ 日銀の最大の使命は「物価の安定」にあったが、異次元金融緩和は、それと真逆の物価吊り上げを目標にした。
→ が「2%の物価上昇」は、4年近くたっても達成できず、5年後に先送り/その破綻は、国民生活にとって朗報

○ みえてきたアベノミクスの目的

・現在の物価下落は「デフレ」(流通する通貨量の不足することから発生する物価下落)が原因ではない
→長期の賃金カット、消費増税など国民の可処分所得が絶対的に削減され、購買力が低下し、深刻な消費不況に陥っている、ことが原因 /当初から破綻が明白

・実態経済に必要なマネーの量は、日銀が決めるのではなく、企業、家計など経済の実態が決める
→よって、利益を求める過剰マネーは、実態経済ではなく、株式、国債、不動産に流入し、官製バブルの発生

・アベノミクスの真の目的/実態経済が低成長下であっても、金融政策が利用し、官製バブルをおこすことで、3百数十兆円の内部留保を運用している大企業、国債を日銀に高値で売却し日銀トレードで稼いでいる金融機関、株高の恩恵を享受している内外の大口投資家・富裕層の金融利益を実現することにある。

~ よって、「2%の物価上昇」は、官製バブルを持続するための「口実」

○ 「マイナス金利政策」の挫折と業界擁護

・異次元金融緩和策は「マイナス金利付の量的・質的金融緩和」を契機に、綻びを目立ち「総括的検証」を迫られる事態に

→同政策は、①銀行の貸出金利引き下げを誘発し、金利収入が減ることで銀行業界の反対に直面 ②償還分もふくめ100兆円を超える日銀の国債買いオペは、国債バブルを誘発。7割の起債国債の利回りをマイナス圏に押し下げ、証券会社、保険会社の終身保険などの販売停止に直面し、経営に悪影響をもたらした。

・結局、足元の金融機関の利益を優先し、挫折した「マイナス金利」政策から「長期金利操作付き量的・質的勧誘緩和」に方向転換 / その最大の被害者は家計

→「▲0.1%のマイナス金利適用」と言っても、金融機関の当座預金残高260兆の全体に適用されるのではなく、「政策金利残高」分野、10兆円ほどにすぎない

→ 210兆円の「基礎残高」は、リーマンショック後0.1%金利(付利)が支払われ、金融機関は日銀から2100億円の利子を受け取っている。
/しかも、金融機関は、マイナス金利政策を決定すると、普通預金(約360兆円、うち個人234兆円)の金利を、0.02%から0.001%と大幅に低下/ 個人が受け取る利子、468億円→23.4億円に激減
(バブル崩壊後の低金利、91年~2014年まで、家計部門が失った利子606兆円)

・異次元金融緩和/日銀から年間2000億円を超える利子を受け取っている金融機関の利益を優先する一方、国民の利子所得はさらに削減する金融収奪を招いている


2. 国債と株式を買い支える日銀

○国債の高値買いオペと日銀の損失

・異次元金融緩和/日銀が金融機関の保有する国債を大量に買い取り、その買取代金を供給する国債買いオペ

・14年10月、「保有残高が年間80兆円」のベースで増加させることを決定/国債は、償還期限が来れば自動的に償還されるので、年間の買い入れは100兆円を超える。2016年度120兆円
→ 国債市中発行額に匹敵/ 日本の国債は、日銀の買いオペにより「完売」する事態に

・日銀買いオペ価格/金融機関が政府から買ったときの価格より高い価格
→ 金融機関は、国債売却益を獲得でき、日銀は損失を抱え込む

・金融機関は、日銀の高値買いを前提に、国債を買い日銀に売って利益を確保するリスクフリーの「日銀トレード」を展開 /「日銀が長期国債市場で政策的にバブルを作っている、ということを意味する」と経済誌も指摘

・日銀の長期国債の損失  16年8月末、8兆8200億円/日銀の自己資本「7兆6300億円」を上回っている。

・金融機関は、当座預金から年間2000億円の利子を売れとるだけでなく、巨額の国債売却益を受取っている
→ その結果、日銀の16年9月中間決算で、2002億円の赤字/一般会計への国庫納付金の納付が不可能に/この穴埋めも、最終的には国民が負担することになる。

○日本銀行による株価対策

・16年7月の政策決定会議 /「株価連動型の上場投資信託」(ELF)の保有残高を、年間3兆3千億円から、倍の6兆円に増やすペースでの買い入れを決定

→ 日経平均株価を買い支える「官製バブル市場」 /事実上、大企業への日銀ルートから公的資金の投入

・ブルームバーグ社の試算/ 16年6月末 ELT全体の59.5%、8兆9000億円保有。日経平均株価を構成する225銘柄のうち、その75%で、日銀が大株主上位10位以内に。

・海外投資家/ 13年度、15兆円の日本株の買い越しで、アベノミクス相場を演出 /15年度、日本株5兆円、ELF3千億円ほど売りこし
→ この売越額は、日銀マネー、年金積立金の流入によって吸収/ 株価暴落=アベノミクス破綻の表面化が回避された。

・日銀は、特定の政策に肩入れし、大企業・大銀行の利益供与する存在に
→ 「業務の公共性及び運営の中立性」を旨とする中央銀行としての日銀は死んだも同然

○年金積立金の損失と株式投資

・140兆円の年金基金の運用/国債60%→35%、株式12%→25%へ変更
→ 数十兆円の年金マネーで株式相場を吊り上げ /変動リスクの拡大
→ 株価下落で損失が膨らむと、株式総額が縮小。運用比率25%に近づけるために買い増す仕組み/年金積立金が株価対策のために食い物にされている。

3 金利負担増・円安物価高と国民生活

・日銀の大量買いオペにより、国債発行残高の雪だるま式に増加/G7の中で唯一GDPの2倍1000兆円に膨張
→ 日銀は、既発行国債の34.9%を保有する最大の保有者、財政資金提供者
→ 事実上の財政ファイナンス状態  /財政法5条が禁止する国債の日銀引き受け状態

○2017年以降の金融・財政問題によせて

・中長期的展望/事実上の財政ファイナンスによって累積した国債残高・政府債務のリスクの深刻さ

①財政破綻の懸念から国債相場の暴落リスク(長期金利の暴騰)への直面
 国債利払い費用の増大=消費税増税、社会保障費削減、住宅金融ローンなど暴騰

②日銀の対外的な信頼の失墜。「円」の為替相場の暴落、輸入物価の暴騰=国内物価高

~ このリスクがいつ発生するかは、市場にきくしかない/

・終戦直後と同じGDPの2倍の政府債務 / 戦後はどのように返済したか

①預金封鎖、新円への切り替えによる国民の貯蓄の国家による没収
②物価が300倍に暴騰するハイパーインフレによる債務負担を事実上300分の1に縮小
③朝鮮特需をきっかけとした高度経済成長による税収の増大

~憲法25条が存在する現代で、政務債務のリスクを、一方的に国民に転嫁させることは復活させてはならない

【「公的マネー」40兆円超の株価対策  GPIF、日銀資金の株式市場投入の実態】  垣内 亮 経済2017.2

・筆者試算/16年10月末 GPIF保有の国内株式31兆円強、日銀12兆円弱〔ELT経由〕
~計43兆円の「公的マネー」が株式市場に投入/ 日本の株式時価総額534.4兆円〔10月末〕の8%


〔1〕「公的マネー」の株式市場への投入の経過と実態

●日銀のETF購入の歴史的経緯

・日銀法の定める業務に、株式、ELTの売買はない。43条には「他業の禁止」/が、日銀の目標達成上必要である場合は、財務大臣、総理大臣の認可得た場合に限って他業務を認めている

・ELT購入 2010年12月より /リーマン・ショック後に継続的に行われた金融緩和策の一環として「リスクプレミアムの減少を促す」趣旨で始まったもの。当初、上限「4500億円」、12年12月までに「2.1兆円」に拡大
・黒田総裁のもと、「上限撤廃」、「保有額が年1兆円増えるペースで購入」に変化
→ 14年10月「3.3兆円」に増額 →16年7月「6兆円」に増加

〔2〕真の目的は「政権維持のための株価対策」

・安倍政権の説明~ GPIF「将来の年金財源確保のための効率的な資金運用」/日銀・ELT「金融緩和の一環としての資金供給」/ 本音は「なりふり構わぬ株価対策」

●改憲の目的のために「長期政権」を画策

・安倍首相の暴走政治の原動力/60年「安保改定」の「偉業」を成し遂げた祖父・岸信介もなしえなかった「改憲」を自らの手で成し遂げたい

・06年・第一次政権では「美しい国」「戦後レジームからの脱却」を前面にしたが、意気込みは空振りに。参院選での惨敗、参院ではじめて第一党を明け渡し、自らも健康悪化で、わずか1年で退陣。

→ ここからの教訓 「改憲という大仕事は短期間ではできない。何としても長期政権をつくる必要がある」
→そのため、本音を隠し、「経済政策最優先」を表にだすこと/ 選挙中は「アベノミクス」、選挙がおわれば「秘密保護法」「戦争法」に熱中する国民だましの手法をつかうこと

●株価対策に汲々とする「株価連動政権」

・経済政策で重視したのは、国民の暮らし、実態経済でなく「株価を上げること」
~ 永田町の伝説の1つ「長期政権の条件は株価が上がること」/それを最も信奉したのが安倍首相

→ 「アベノミクス」の神髄は「なりふり構わず株価を上げる」こと。

・政権発足時2013年 「異次元金融緩和」を契機とした投機マネーの活発化で株価急上昇
→ 14年、消費増税もあり、株価は一進一退/ 頻繁に官邸で「株価対策会議」、マスコミも「株価連動内閣」

・その姿勢が鮮明/14年6月「日本再興戦略」改定(いわゆる「新成長戦略」)/雇用分野の規制緩和、法人税の大幅減税にど大企業の利益を確保し株価を上げる対策と、年金基金の株式運用拡大で下支え

●「株価対策」としてのGPIF株式運用拡大

「新成長戦略」で、GPIFの基本ポートフォリオの変更  株式12%→25% /決定は14年10月

→ そのはるか以前からの方針/世界に首相自身が発信
・14年1月「ダボス会議」 「日本の株式運用は大きく変わるでしょう。1兆2千億ドルの運用資産をもつGPIFについては、フォワード・ルッキングな改革を行います。成長への投資に、貢献することになるでしょう」
・14年5月、ロンドン・シティ主催の晩餐会でも同様の発言

~国民の年金資産をエサに海外投資家をよびこもうとした。

●海外投資家の「売り」に公的マネーの「買い」で対抗

・首相が海外投資家に直接よびかけたのは、海外投資家の動向が株価を左右するから/ 株式の3割を保有。特に日々の売買取引では6割を占めている。/長期政権のためには海外投資家を呼び込む必要

・「公的マネー」は「呼び水」だけでなく、海外投資家が日本から資金を引き上げる局面では株価下支えに使用
例)15年7-8月、日経平均2万円突破、その後、低下。16年1月以降大きくおちこむ/海外投資家の「売り越し」増加、信託銀行(その多くがGPIF)の「買い越し」増加

●「株式自動買い支え装置」としての基本ポートフォリオ

・基本ポートフォリオは時価で掲載。株価下落で時価総額が減ると、株式の構成割合が小さくなるので、基本ポートフォリオを維持するため株式を買うことになる
・15年度 海外投資家の売り越し5.1兆円、株価が1万9207円から1万6759円に下落。GPIFは3兆円(国内株式の買越額は2兆4千億円だが、株式からの配当収入も投じられていることから推計される額)の「買越」で対抗 
→ GPIFの買い越しがなければ、株価はさらに低下していた。

●今度は、日銀が株価対策のリリーフ役

・GPIFの運用資産がいくら巨額でも株式運用の基本ポートフォリオの上限に近づけは簡単に株式購入はできない
~ しかも参院選後10兆円もの巨額の損失が明らかになり、国民の厳しい目もあり、「株価対策」の有効な役割を果たせなくなる可能性が高い

→ 日銀がリリーフ役として、16年8月から、ELT購入ペースを2倍近く引き上げ「年間6兆円」に拡大
/日銀は、ELT購入額は公表しても、その時価総額は未公表。損をしたかどうかさえも国民にはわからない。国民の批判をあびにくい

・株価対策効果としてもGPIFを上回る
GPIF 14.15年の株式資産の増加9.7兆円、もともと所有していた株の値上がりもあり、全部が「買越」ではない。
 一方、日銀のELT「年6兆円購入」は、純粋な「買越」/実際には、GPIFの2倍以上のペース

〔3〕10兆円もの巨額損失—国民の貴重な資産をリスクにさらす

●ポートフォリオ変更後では大幅赤字

・15年度5兆3千億円、16年4-6月5兆2342億円、計10.5兆円の赤字、7-9月の黒字をいれても8.2兆円赤字
・ポートフォリオ変更14年10月末/変更には一定時間がかかる。国内株式が20%台に達するのは15年3月
→15年4月以降の1年半でみると、国内株式、外国資産は大幅赤字、黒字なのは「低金利のもとでは収益があがらない」と比率を低下させた「国内債権」だけ。

●GPIFが他の投資家の「食い物」に

・株式運用には、株価下落のリスクが常に付きまとう。/GPIFの場合は、その資産額が大きすぎることから、追加
的なリスクが付きまとう

①資産額が大きすぎ、どの株式を購入するか吟味が難しい(特定の銘柄の株価を操作することにもなる)ので、TOPIXなど株価指数に準拠した運用(株価指数の動向に受身である「パッシブ運用」)の比重が高くなる

②パッシブ運用が多いGPIFが株式運用をする場合、投資のプロならどの株が買われるか容易に推測できる。GPIFが買う前に、投資のプロが先に買占め、GPIFが「高値づかみ」させられ、株価が下落する局面では、先に投資のプロが売り逃げし、GPIFに損失が集中

●「出口問題」の大きな不安

・将来、積立金を取り崩して給付に充てる段階で、株式資産をスムーズに現金化できるか、という「出口問題」
・国債など債権の場合/ 10年、長期でも20-40年で償還期限をむかえれば、かりに時価が下がっていても、償還期限まで保有すれば元本割れはない
・株式の場合/ 償還期限がない。現金化は市場で売却する必要がある。GPIFのように巨額の株式を保有している場合、株式売却で、株価を引き下げ、自ら資産価値を損なうおそれがある。

〔4〕主要企業の8割で公的マネーが筆頭株主
 (メモ者 試算の方法は略)

● GPIFが「物言う株主」に

・「新成長戦略」 企業の「稼ぐ力」を高めるための方針の1つとして「公的・準公的資産の運用の見直し」をかかげ、/「銀行・機関投資家等の我が国の金融を担うプレーヤーが、長期的な価値創造と『稼ぐ力』の向上という大きな方向にむけて、それぞれが企業とよい意味での緊張関係を保ち、積極的な役割を果たしていく必要がある」とし「公的・準公的資産の運用機関を含む機関投資家についても、適切なポートフォリオ管理と株主としてのガバナンス機能をより積極的に果たしていくことが期待される」

→ GPIFなど公的資金に対して、ポートフォリオの見直しだけでなく「株主としてのガバナンス機能をより積極的に果たす」ことを求めている。
→「物言う株主」として、「もっと儲けろ」「もっと配当を増やせ」と口出しする可能性があるのではないか。

● 「公的マネー」が株式市場を歪める

・公的マネーが時価総額の1割近くを占めるような事態は、株式市場を歪めることになる
・まんべんなく買う方式で、本来下げる銘柄がざからないなどのゆがみ/日銀の動向をみながら売買する「日銀相場」というべき状態

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