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子どもの貧困と「食」格差

 貧困、子供の貧困の調査研修にとりくんできた阿部彩首都大学東京教授が各分野の研究者に呼びかけ開催された公開シンポジウム「子どもの貧困と『食』格差:政策は何ができるか」〔12月14日〕。
 その内容が気になっていたが、小西みか・清須市議会議員が大要を紹介している。
 また1月にはNHKで、同シンポジウムにも触れ「子どもの生活格差」をテーマの番組が放送されている、
【子どもの貧困と「食」格差 政策は何をできるか 小西みか・清須市議会議員】
【広がる子どもの“生活格差”〜最新調査が明かす実態〜 NHK「特報首都圏」 2017/1/21】

 高知県では、数年前、全国最低の中学校給食実施率だったが、全自治体で実施が決定した(県からの積極的な的な働きかけがあった)。SSWを県単にふくめ70数名を配置。新年度から「子ども食堂」に基金(支援のあり方の柔軟性を高めるため)を作って支援する計画である。また、現在、きわめて詳細な実態調査にとりくんでいる。 「子どもの貧困」が、様々な教育課題を解決していく上での「隘路」であるとして、県政上の重要なテーマとなっている。


【子どもの貧困と「食」格差 政策は何をできるか 小西みか・清須市議会議員ブログより】

★子どもの栄養格差
新潟県立大学人間生活学部の村山伸子さんから、子どもの栄養格差について報告された。

1. 世帯の経済状態と子どもの食事との関係

○世帯収入が少ない世帯の児童は、

・毎日朝食を食べない子が多い
・野菜の摂取頻度が少なく、魚や肉の加工品、インスタント麺を食べることが多い
・休日には収入による栄養素の摂取差が見られたが、学校給食がある平日ではみられなかった。

○世帯収入が少ない世帯の保護者は

・食物を入手できなかった頻度が高く、子どもの健康や発達への影響に不安を感じたり、実際に影響が表れているという人が多いが、食事についての知識を持つ人が少ない
・経済的だけでなく、時間的ゆとりがないと感じ、地域の人を信用できるという人が少ない

2. 見えてくる課題

・栄養格差は子どもの成長、健康状態への影響があり、自立して健康的な食事をする生活経験が乏しいだけでなく、将来的にも子どもの健康への影響があり、健康的な食事をするスキルが低いことが考えられる。

・この負の連鎖を断ち切るためには、必要な栄養の確保と、自立に必要な食生活の基本スキルの習得が必要

3.そのための具体的な政策提言

・食料の支給、保育所への入所による給食の提供、学校の完全給食の実施率の向上、学校の夏休み等の食事提供

4.子どもの貧困対策推進法

○財政力の乏しい地域に貧困家庭が多い→国の関与が必要
○ひとり親家庭・多子世帯等自立応援プロジェクト
・学習力・生活力をつける
・平成31年度までに中学校給食の実施率を学校数で90%、生徒数で85%にあげる

★乳幼児栄養調査

 厚生労働省栄養専門官の日名子まきさんから、10年ごとに実施されている国民生活基礎調査の平成27年度乳幼児栄養調査(対象6歳未満)を社会経済的要因から分析した結果(2016/8)が報告された。

・今回初めて社会経済的要因(経済的な暮らし向き、時間のゆとりなど)と乳幼児の食生活に関する実態が調査された。特に、経済的な暮らし向きにおいては有意な差がみられた。ゆとりがないと答えた世帯では、バランスの良い食事に欠かせない、魚、大豆製品、野菜、果物の摂取頻度が低い傾向が見られた。

・また、乳児へのミルク提供は市町村の義務となっているが、実施していない自治体が増えている。

「・社会経済的要因として、経済的な暮らし向き、生活の中の時間的なゆとり、総合的な暮らしについて尋ね、「ゆとりあり」(「ゆとりがある」または「ややゆとりがある」)と回答した保護者の割合は、それぞれ29.3%、31.1%、41.4%。一方、「ゆとりなし」(「あまりゆとりはない」または「全くゆとりはない」)と回答した保護者の割合は、それぞれ37.5%、47.1%、21.1%。(P29-図37)

・社会経済的要因別に、子どもの主要な食物の摂取頻度をみると、経済的な暮らし向きにおいて、有意な差がみられた項目が多かった。

 具体的には、魚、大豆・大豆製品、野菜、果物は、経済的な暮らし向きが「ゆとりあり」の場合に摂取頻度が高い傾向がみられ、菓子(菓子パン含む)、インスタントラーメンやカップ麺は、経済的な暮らし向きが「ゆとりなし」の場合に摂取頻度が高い傾向がみられた。(P31-図39)」


★子どもの体格格差と社会経済要因

 日本医科大学 公衆衛生学部助教の可知悠子さんからは、2001年生まれの子どもの追跡調査の結果から、体格格差について報告された。

○昭和52年から調査されている結果から

・子どもの肥満は高止まりの状態となっている。一方、子どもの痩せは増加傾向となっている。

・思春期の肥満の8割は大人の肥満につながり、生活習慣病の合併症を起こすことにつながり、自己評価が低い傾向がある。

・成人の肥満治療の効果は、減量維持が難しく、減量しても心血管疾患による死亡率は変わらない。

・思春期のやせは、心の問題からくることが多く、特に出産におけるリスクが高くなり、早産・低体重児出産につながる。

・欧米では親の社会経済的地位が低いほど、その子どもが肥満である可能性が高くなるとの研究が多数報告されている。

・日本では国民生活基礎調査によると、学童期には相関関係があまり見られないが、青年期になると同じ相関関係がみられる。また、母親の体型や、エネルギー摂取量との相関関係もみられた。

・2008年のリーマンショック後、低所得世帯で肥満リスクが増大、特にリーマンショック前より所得が30%減少した世帯で、肥満リスクが顕著になっている。ストレスが食生活や運動習慣に影響しているのではないかと思われる。

・女子中学生では、低所得世帯でBMIが高い傾向がみられた。朝食抜きが大きな要因ではないかと考えられる。→学校で朝食を提供することが有効ではないか

1. 社会経済状況の肥満への影響として考えられる要因

・世帯所得、家計消費→食品へのアクセス
・教育歴→知識、信念(健康意識)
・職業階層→生活習慣、価値観、喫煙率

・低所得の場合、比較的高価な野菜、たんぱく質の摂取が少ない

2.体格格差対策としての給食の役割

○ハイリスクアプローチ リスクの高い人に個別に働きかける 例:特定保健指導
○ポピュレーションアプローチ 集団に働きかけ全体的な状態を向上させる 例:普及啓発

・ハイリスクアプローチは差別を生む可能性 支援対象とする「貧困」の線引きも難しい=1円でも違えば支援の対象とならない
 ただし、知識提供型のポピュレーションアプローチは健康格差を広げる可能性がある

例:学校だより「子どもの肥満予防に脂ものを控えてください」脂質摂取がもともと少ない家庭では、野菜を多めにとなるが、摂取のもともと多い家庭では、今月の家賃の方が重要で肥満予防は二の次となってしまう

・環境改善型のポピュレーションアプローチ 例:学区内のファーストフード店の開業を禁止します

・知識提供型のポピュレーションアプローチは個人に責任を求める健康づくり
・環境改善型のポピュレーションアプローチは社会環境の整備による健康づくり


3.給食は環境改善型のポピュレーションアプローチ

・全員が対象、知識ではなく体験学習
・家庭の職環境による野菜・果物の摂取格差を緩和
・私立小・中学校、高校は給食実施率が低い
・政令指定都市の実施率が低い

★学校給食と子どもの貧困

 跡見学園女子大学の鴈咲子さんからの報告

・公立中学校で完全給食が実施されていないのは政令指定都市に多い。一部で実施されていてもミルクのみ
・中学校給食の実施率が低い理由:未納の督促の対応
未納の理由:未納世帯のうち3割は、生活保護や就学援助の受給対象でありながら申請を行っていない可能性


1.子どもの学習費(一人当たり年間)文科省平成26年度子どもの学習費調査より

・塾以外で中学生約17万円(学校給食費には完全給食が実施されていない学校の給食費も含んでいる)

 学校給食費38,422円、制服代など33,094円、部活動費32,468円、図書・学用品・実習材料費24,645円、修学旅行・遠足・見学費22,918円、PTA会費・学級費12,055円

→未納世帯は、申請の煩雑さや申請自体への抵抗感があり申請していない世帯もあるため、就学援助制度の活用を推奨する必要


2.韓国ソウル市の給食:欠食対策として開始

・給食実施率(2003年から)
 小学校100%、中学校99%、高校99%、特別支援学校97%
 夏休み期間もデリバリー、学校、食堂で実施
 日本でも休み期間中の学童保育で給食を提供する自治体もある

・無料化の状況(2014年)
 小学校94%、中学校76%

・日本でも小さな町村で給食費の無料化が多い→知り合いが役所に多く、就学援助などの申請に生きにくい→給食の現物給付


 今回のシンポジウムでは、相対的な貧困が子どもの栄養格差、体格格差や体格格差、将来にわたっての健康格差につながることがデータに基づき報告された。子どもの人権にかかわる問題であることが示されたといえるのではないか。投資などではなく、憲法で保障されるべき必要最低限の権利である。

 さらに、この格差の解消への有効な手法として、完全給食の実施が提案された。東京は小学校、中学校の完全給食の実施率は高く、清瀬市においても実施している。ただし、夏休みの提供や無料化など、まだ不足していることはたくさんある。食育の一環として位置づけられているはずの給食だが、食がもたらす影響を改めてとらえ直す必要があるのではないか。


【広がる子どもの“生活格差”〜最新調査が明かす実態〜 NHK「特報首都圏」 2017/1/21】

『特報首都圏』(とくほうしゅとけん)は、NHK首都圏放送センターが関東甲信越地方に向けて原則毎週金曜日に放送中の地域情報番組。1984年4月から開始。

  子どもたちの間で、生活の格差が広がっている。大田区の生活実態調査では、年齢にあった衣服や本が与えられない、家族旅行に行けない、習い事の経験がないなど、子どもであれば得られるべきモノや体験が、経済的理由で得られないという実態が浮かび上がった。区はこうした家庭を、「生活困難層」と新たに定義付けた。

 大田区は、子どもたちの生活の実態を性格に把握しようと、「生活困難層」という新たな基準を設けた。調査では、世帯の収入や公共料金を滞納した経験などに加え、子どもの生活の中で不足している事柄を調べた。持ち物や経験などの有無を尋ね、14項目中3項目以上、経済的な理由でできないと答えた世帯を、生活困難層に含めた。その結果、過去1年間に「毎年新しい洋服・靴が買えない」と答えた親の割合は、生活困難層では15%近くに達した。「習い事ができない」という子どもの割合も、生活困難層が大きく上回った。生活困難層に該当する世帯は2割を超えた。

 生活困難層の子どもは、親との関わりが少ないことも浮かび上がってきた。調査に回答した女性は、看護師として働きながら3人の子どもを1人で育てている。女性の月収は28万円で、母子世帯の手当てなども受け取っており、生活に必要な収入はあるようにみえるが、奨学金や生活費などおよそ800万円の返済を続けている。働き詰めの毎日で、子どもとの時間を取れていない。小学5年生だという女性の息子は、母親と過ごせない理由を理解していた。

 調査を監修した専門家は、生活困難層の子どもたちの精神面にも注目している。「自分には価値がある」、「家族に大切にされている」、「将来が楽しみ」、などと思うかといった質問に、「思わない」と答える子どもの傾向が高い割合にあることが分かった。首都大学東京の阿部彩教授は、「生活困難層の子どもたちはずっと我慢を強いられて育っていく。その度合いは家庭の生活困難によって大きく違う」などと話した。

 日々の暮らしに追われる親子をどう支えるのか。大田区にある学習支援教室では、毎週土曜日に大学生がおよそ20人の児童に勉強を教えている。収入に関わらず、希望する子どもなら誰でも通えるようにと、月2000円の授業料で運営している。さらにこの教室では、子どもたちに勉強を教えるだけでなく遊びやレジャー体験ができるようにもしている。

 子どもの貧困についてスタジオトーク。東京医科歯科大学の藤原武男さんは、「教育環境は子どもの教育を受ける権利や遊ぶ権利において、それを保障する重要な要素。ここが整えられていないのは非常に苦しいと思う」などと話した。生活困難層では、「がんばれば報われる」と思わない割合が23.7%、「自分には価値がある」と思わない割合は46.8%となっている。秋元才加さんは「小さいころから親の頑張っている姿を見ていると、家庭のレベルでしか夢を見れなくなってくる。それが自己否定につながるのは悲しい」などとコメント。

 藤原武男さんは、「自己肯定感を育むベースは、自分自身が大事にされていると思える気持ち。それは一般的には親が関わることで育まれるが、必ずしも親でなければいけないというわけではない」などと話した。秋元才加さんは、「人との出会いで学ぶことがたくさんある。外部からいろんな刺激を受けたり知識をもらうことはすごく良い取り組み」などと話した。

 先月、教育関係者たちが東京・千代田区で開いたシンポジウム。子どもの食の格差に関する調査結果が発表された。小学生およそ1500人の食事を詳細に記録。収入が国の貧困基準以下の世帯と、基準以上の世帯を比較。調査では、野菜を食べる頻度が週3日以下と答えたのは、収入が多い世帯で11.6%だったのに対し、収入が低い世帯では21.5%を超えている。一方、インスタント麺を週1日以上食べると答えたのは、収入が多い世帯は15.9%、収入が低い世帯は26.1%だった。さらに摂取した栄養素を分析すると、炭水化物や脂質では差がない一方、たんぱく質など身体を作る栄養素には差があった。

 高校2年生の息子と安定した職についていない母親。今回の調査では、収入の少ない世帯に当たる。この日の夕食はうどん。うどんだけの夕食が3日続いている。野菜や魚は高いため、安くてお腹を満たせる炭水化物に偏りがちだという。足りない分はNPOの支援に頼っている。冷凍庫には、提供されたあんぱんやパンケーキなどが並んでいる。子どもの一週間の献立は、朝はパンかおにぎり、昼は弁当を持たせているが、おかずが容易できない時には朝と同じメニューで済ませる。夕食は、うどんの他にカレーを続けて食べることもある。息子は、身体の不調を感じることが多いという。

 親子を支援する川崎市のフードバンクは、個人や企業から寄付された食品を支援を求める家庭に配っている。しかし寄付の多くは保存しやすいパンや缶詰、レトルト食品など。生鮮食品は限られている。母親は、子どもの健康が将来どうなっていくのか、不安を抱えている。

 子どもの食格差についてスタジオトーク。秋元才加さんは、「野菜や果物は高いため厳しいのは分かるが、本来ならば成長期にバランスの良い食事をしなければならない」などと話した。藤原武男さんは、「食生活が乱れてくるだけでなく、生活習慣全般が乱れることで子ども自身の健康が蝕まれる」などと述べた。貧困で栄養が取れないことにより、成人すると心臓病やうつ病、要介護のリスクなどが高まるという。

 藤原武男さんは、子どもの食格差をなくす取り組みとして給食の無償化、保育園から調理実習を実施すること、ハサミを使って料理することなどを挙げている。藤原武男さんは、「子どもが母親のお腹に中にいる時から対策を始めるべき。特に妊娠中の栄養も大人になってからの健康状態に影響する。母子手帳など、妊娠中は行政が母親に介入できる貴重なチャンスでもあるため、行政の介入による効果が期待されている」などと話した。

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