17年度予算案~「アベノミクス」と「消費税頼み」の路線の行き詰まりと破綻(メモ)
垣内亮 「議会と自治体」2017.3をベースにしたメモ。
17年度予算案について、個々の項目ではなく、その財政構造を、「アベノミクス」と「消費税頼み」の路線の行き詰まりと破綻という角度から解剖したもの。
【17年度予算案~「アベノミクス」と「消費税頼み」の路線の行き詰まりと破綻】
◆予算案の特徴
①「アベノミクス」と「消費税頼み」の路線の行き詰まりと破綻が、財政運営上も表面化
②「戦争する国づくり」のための軍拡。軍事費5年連続増
③暮らしの予算削減 社会保障「自然増」1400億円削減、文教、中小企業、農林水産業予算など減
④「財政健全化」の見通したたず。日銀の異次元金融緩和による財政の歪みの深刻化
◆予算案のスケッチ
“史上最高の予算規模の一方で国債費の減少”となっているが・・・
〔1〕.3つのごまかし / 苦肉の予算編成
①「高め」の経済成長率で、「税収」を盛る
・17年度 名目2・5%、実質1・5%成長と予測/甘かった16年度当初予算の見積もりより1080億円の増収
→ 16年度税収 見積もり57.6兆円に対し、▲1兆7,440億円 /15年度実績56.3兆円も割り込む
→ 16年度の実績55.7兆円より、「2兆円」も増えると見通し、とした。
・税収減について、安倍首相の説明「円高(による企業業績の悪化)が要因」
→ これまでの税収増は「円安」効果を暗に認めたもの
②外為特会剰余金 6年ぶりに全額繰り入れ 2.5兆円
・運用益2.5兆円全額は繰り入れ。前年比8583億円増/通常は7割程度
・その結果。「その他収入」 5兆3729億円。16年度比 プラス6871億円
③国債の想定金利 0.5%引き下げ
・国債費 前年度当初予算比 ▲836億円減の23兆5285億円
・「想定金利」 金利上昇に備え高めに設定。16年度、1.6% ⇒ 1.1%に引下げ/前年より7359億円の「削減」
→ 長期国債の金利を0%前後に操作するという日銀の介入の「支え」
★指値での無制限国債購入 2/3
10年物長期国債金利は約1年ぶりに0.150%まで上昇。事前に指定した利回りで市場から国債を無制限に買い入れて金利の上昇を抑える「指値オペ」を実施。市場の水準より低い0.11%という金利(高い価格)で、7239億円分の国債を買い入れた。
・従来、「想定金利」との差額が、補正予算の原資の1つであったが、税収を盛ったこととあわせ、補正予算は、赤字国債発行でしか対応できない。
④国債発行額 34兆3698億円と前年度より▲622億円を「粉飾」
税収「2兆円」増、外為剰余金「7500億円」増、国債費「5千億円」減を「操作」して、やっと622億円を「粉飾」
〔2〕財政再建の見通せず
①一般会計基礎的財政収支の赤字額
10兆8199億円 ⇒ 10兆8413億円へ悪化
→ PB、2020年度黒字化の公約(「経済・財政再生計画」)達成は不可能
②国・地方の長期債務残高
16年度末 1073兆円(実績見込み)⇒1093兆円〔見込みで〕
→ 16年度3次補正案で1.7兆円の赤字国債を発行/当初と補正後の比較 新規国債発行 4兆円余り増
★予算規模 5年連続過去最高の狙い
①国交省予算5年連続増など、GDP増/アベノミクスの「成果」粉飾
②GDP1%枠のもとで当初予算の防衛費の5年連続増
~さらに、財政法を無視し、当初予算に載せ切れない正面整備予算を補正で計上
◆「アベノミクス」の破綻が財政面でも表面化
〔1〕「アベノミクス」の3つの破綻 ますます鮮明化
①トリクルダウン政策の破綻
○大企業(資本金10億円以上) 12-15年度比較
経常利益 35.9兆円→ 51.7兆円/ 15.8兆円。148.6%
内部留保 333.5兆円→385.8兆円/ 52.3兆円
株主配当 13.5兆円→ 21.0兆円 /7.5兆円、179%
○大企業の労働者
賃金総額 47.2兆円→ 49.3兆円/2.1兆円、104.3%
一人当たり560.2万円→567.9万円/7.7万円、101.4%
(この間、消費者物価指数 5%近く上昇。大企業の労働者も実質賃金低下)
○毎月勤労者統計/平均賃金 12年11月-16年12月(速報)
名目31.3万円→31.5万円/実質31.5万円→30.0万円(年収18万円減)
○家計消費(二人以上世帯・実質) 15年9月~16年12月まで16ヶ月連続減
(16年2月は「うるう年効果」でプラスに。除くとマイナス)
○家計支出3年連続前年割れ/13年度25万1576円。16年度24万2425円。月9千円、年間10万円の減。
○雇用の「質」 2012-15年 (労働力調査)
・正規 36万人マイナス。非正規167万人増
・16年7-9月期 4年前の同時期より、正規33万人増
→ うち「医療・福祉」59万増。他は減少/重労働・低賃金の「人で不足」の分野
○年間新規求人数 12-16年 210万人増
・半分以上が非正規
・「医療・福祉」3割がトップで「卸・小売」「宿泊・飲食」「その他サービス」で3/4。低賃金で離職率が高い分野
〔2〕消費税大増税の破綻
・「影響は一時的」どころか、二度、4年間の延期。
・他の税の収入増も伸びを見込めず
・赤字国債発行 「民進党のような無責任なことはしない」といっていたが、2回の補正で4.6兆円発行
→16年度発行額39兆円。民主党12年度との比較(安倍政権になってからの補正除く)で5.8兆円しか改善せず/その間、消費増税。8.2兆円のうち6.5兆円は年金特例公債など借金圧縮に充当
→ 国債発行額の減少は、消費税増税の効果。「アベノミクス効果」ではない
★「アベノミクスの果実」の実態
国・地方で21兆円の税収増 12年度-16年度見込み比較
・この間に増えた消費税収は9兆円
・その他の税収が12兆円増え/12年度はリーマン・ショック後の経済危機と東日本大震災の影響で税収が異常に落ち込んだ時期。
→ 07年度との比較 法人税や所得税などは軒並み減収。計5兆円
・2012-15年度予算比で、税収が12.2兆円増・・・
①消費税増税、②証券優遇税制の期限切れ、相続税の増税、石油石炭税(地球温暖化対策税)の増税を除くと、3~4兆円。
しかも、うち「1.6兆円」は、2012年度のうちに発生した増収(決算と予算の差額)なので、実質は、2兆円程度。その中には、リーマンショックの「赤字」の「繰越欠損金」を解消して法人税を納税する企業の増加(1ショットの効果)もある。トヨタだけでも4千億円強。/また、名目賃金の増加による所得税増も。
【「アベノミクス」で財政は再生できない(メモ) 2016/1】
★企業業績の「回復」~ 数量伸びず、円建て利益の拡大
・輸出が伸びていない。円安のために受けると円建ての利益が拡大(円高に振れると、利益/法人税収が縮小)
・海外で利益が発生したのでなく、円安・物価高で苦しむ国民・中小企業からの所得移転でしかない。
輸出金額 輸出数量
平成24年 94.6 91.6
平成25年 103.5 90.2
平成26年 108.4 90.7
平成27年 112.2 89.8
平成28年 103.9 90.0
輸出量指数(2010年=100)
【「異次元金融緩和」 の階級性 大企業の業績回復、米国への所得移転(メモ) 2015/08】
★大企業減税4兆円など税の空洞化/実態経済低迷
・15.16年の連続減税 実効税率37%→29.97%(18年度29.74)/14年度復興特別法人税廃止
→ 国税庁統計データより計算/大企業の法人税負担12%/中小企業より低い(20%前後)
・研究特別減税の適用期限がきたものの延長、サービス開発の分野にも適用拡大
→ 減税額約6千億円のうち、8割以上が大企業
・GDPの6割占める家計消費はマイナス続き
〔3〕異次元金融緩和の破綻
・「マネーの大量共有でデフレ脱却」・・・デフレの原因は、国民所得の減少。診断も治療方針も間違い
・16年9月「長期金利操作つき量的・質的金融緩和」/混迷のきわみ・・・「金利」を操作の対象としてきた日銀が「異次元金融緩和」で「マネーの量」を操作対象に転換。再度「金利操作」へ/誤りをみとめたなまま軌道修正
・他の2つの破綻と違い、予算案では表面化しない/ 超低金利で国債費の抑制・・・日銀頼みの財政への傾斜
◆株高にもかげり
・円安・輸出企業の収益アップ→海外資金の流入→株高 は築いたが
→実態経済はよくならず、国民は物価高・実質賃金の低下。
・海外投資家の「売り」への転化/GPIFの株式運用倍加。日銀の株式株価連動型上場投資信託(ETF)の「年6兆円増」で支える/「日銀相場」
・マイナス金利・・・日銀から年間2000億円を超える利子を受け取っている金融機関の利益を優先する一方、国民の利子所得はさらに削減する金融収奪
◆リスクの蓄積
・年間80兆円の国債買入れ/日銀買いオペ価格。金融機関が政府から買ったときの価格より高い価格
→ 金融機関は、国債売却益を獲得でき、日銀は損失を抱え込む
・安倍政権発足後、16年9月まで/国債・財投債残高187兆円増。日銀の保有高265兆円増。残高の36%保有
・国債の価格暴落・長期金利高騰さけるために無制限の日銀の国債引き受け
→ リスクの蓄積
①財政破綻の懸念から国債相場の暴落リスク(長期金利の暴騰)への直面
国債利払い費用の増大=消費税増税、社会保障費削減、住宅金融ローンなど暴騰
②日銀の対外的な信頼の失墜。「円」の為替相場の暴落、輸入物価の暴騰=国内物価高
【「異次元金融緩和」と金融・財政問題の深刻化(メモ)2017/02】
☆トランプ政権 為替操作批判、継続的な利上げ / 円高、利上げに直面するリスクも
◆暴走の危険
・「アベノミクス」の破綻がさらに進行し、17年度も税収不足になれば「経済・財政計画」の破綻がいっそう明白になれば・・・
①「PB黒字化」のためとして、増税、社会保障切捨て
②「PB黒字化」の目標棚上げし、超低金利の国債発行に頼った「浪費」の拡大/ヘリコプター・マネー
→浜田宏一内閣官房参与(イェール大学名誉教授)「アベノミクスはやや手詰まり感」とし、金融緩和しても「インフレが起こらない理由は『財政とセットで行っていないからだ』とわかった」()
→もともと安倍首相は「財政よりも株価が大事」(改憲のために長期政権が必要)との姿勢であり、財政も緩和せよ、の提案に飛びつく危険
◆税金の集め方、使い方の改革を
略 27大会決議等参照
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