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小田原市へ 生活保護行政で公開質問状 全国会議

 生活保護問題対策全国会議が、担当職員が「保護なめんな」「不正を罰する」などと、受給者を威圧するような文言をプリントしたジャンパーを着て各世帯を訪問していた問題、同市のホームページの生活保護の説明が、申請をあきらめさせるような違法な記述がされていた問題〔今回の件で一定訂正された〕で、「今回の事件の背景に何があるのか、貴市における生活保護利用者の憲法上の権利を実現するために何が必要か、ともに考えたいと思っております」と公開質問状をおくっている。
これは「新自由主義」と「自己責任」を推し進めてきた自公政治のもとで構造的につくられてきた門対゛てある。
【生活保護行政に関する公開質問状】
【小田原「保護なめんな」ジャンパーは氷山の一角! 安倍政権下で横行する生活保護申請者への差別と辞退強要 リテラ1/19】

 病気や事故など誰にでもおこる生活上のリスクに、セーフティネットがはられている社会ことで、社会としての健全性や活力が維持できるのではある。
【格差が社会を不健康にする~社会的包摂を/阿部彩(メモ)2012/2】

【生活保護行政に関する公開質問状】

2017年1月20日

小田原市長 加藤憲一 殿
生活保護問題対策全国会議
代表幹事 弁護士 尾藤廣喜


当会は、弁護士、司法書士、研究者、ケースワーカー、生活保護利用当事者、その支援者等で構成され、生活保護制度の違法な運用を是正するとともに同制度の改悪を許さず、生活保護法をはじめとする社会保障制度の充実を図ることを目的として活動している市民団体です。
 今般、報道された貴市の生活保護担当部署職員らが作成・着用したジャンパーの問題について以下のとおり、意見を申し述べるとともに、質問および資料提供の要請をいたします。
御多忙中にお手数をおかけして恐縮ですが、2017年2月末日までに本書末尾記載の連絡先あてにご回答いただきますよう、よろしくお願い致します。

◆今回のジャンパー作成・着用の何が問題か

 本年1月17日付読売新聞の報道等によれば、貴市の生活保護担当部署の職員が「保護なめんな」「不正を罰する」などと、受給者を威圧するような文言をプリントしたジャンパーを着て各世帯を訪問していたということです。ジャンパーの背面には、「我々は正義だ」「不当な利益を得るために我々をだまそうとするならば、あえて言おう。クズである」などの文章が英語で書かれているといいます。

 もちろん不正受給は許されるべきものではなく、悪質な不正受給に対しては厳正に対処することが必要です。しかし、不正受給の割合は、金額ベース(不正受給額÷保護費全体)では0.5%程度、件数ベース(不正受給件数÷保護受給世帯数)では2%程度で推移しており、全体から見ればごく稀な現象です。ほとんどの生活保護利用者は適正に保護を利用しているにもかかわらず、このジャンパーを着て日常業務にあたるということは、すべての保護利用者に対し、不正をし、職員を騙しているかもしれないと疑い、敵視し、威嚇する姿勢で対峙するものと言わざるを得ません。

 生活保護利用者のほとんどは、高齢、障害、傷病、ひとり親などのハンディを抱えており、福祉事務所のケースワーカーには、その困難に寄り添った福祉的な支援が求められています。ジャンパーの記載内容は、そうした姿勢とはおよそかけ離れており、唖然とせざるを得ません。家庭訪問に来た職員の胸に「保護なめんな」「×悪」と書かれたエンブレムがあるのを見た生活保護利用者たちは、どのような思いを抱いてきたでしょうか。そこに信頼関係に基づくケースワークが成立するはずがありません。「利用者のウェル・ビーイング を支援する」というソーシャルワーク共通の価値観にも真っ向から反するものです。

 また、生活保護の利用は権利ですが、2012年春以降の「生活保護バッシング」の影響もあり、生活保護制度とその利用者に対しては偏見が根強くあります。そのため、利用者の多くは、生活保護の利用を周りに知られたくないという思いを強く持っています。この点は、生活保護手帳別冊問答集(問13‐31)も、「今日においても、できれば保護は受けたくないという気風も残っており、こうした状況の下では、被保護者であるということを他人に知られたくないと考えることは社会常識に反するとはいえないであろう」として、被保護者の秘密保持に配意すべきとしているところです。揃いのジャンパーや制服を着て家庭訪問をすることは、生活保護を利用していることを近隣に広報することに等しく、福祉事務所においては一般的には厳禁とされています。

◆貴市の組織的・構造的な問題であること

 報道(NHK、毎日新聞)によれば、ジャンパーは10年前に作られ、これまでに64人が購入し、現職33人のうち28人が持っているといいます。10年の長きにわたって、誰からも問題が指摘されることなく脈々と引き継がれてきて、現在も職員のほとんどが所有していることからすると、これは一部の職員の問題行動ではなく、貴市の保護担当部署が抱える組織的構造的問題と言わざるを得ません。

 このことは、今回の問題発覚後、指摘を受けて既に是正されたとはいえ、貴市HPの「生活保護制度について」に数々の違法な記載がなされていたことにも表れています。すなわち、是正前の貴市HPには、まず求められる記載である生活保護制度が、どのような場合に利用できる制度であるか、そして、これが憲法25条に基づく権利であるとの基本的な記載がなく、「生活保護よりも民法上の扶養義務(特に親子・兄弟間)の方が優先されますので、ご親族でどの程度の援助ができるか話し合ってください。」という一文から記載が始まっており、親族による扶養が保護適用の前提条件であると誤解させる内容になっていました。これに続く文章も、生活保護が受けられない場合や、受けることによるデメリットのみが羅列されていて、生活保護の利用を抑制しようという姿勢が顕著でした。

 また、貴市は、上司ら7人を厳重注意とし、1月17日、福祉健康部長等による謝罪会見を開きましたが、会見で同部長は、「受給者に差別意識を持っている職員はいません。そう断言したい」と発言し、他の幹部も、不人気な生活保護職場の中でみんな頑張っていることを訴えたかったと職員を擁護する姿勢に終始しました。これでは、何が問題なのか、その本質を理解しておらず、謝罪や注意は批判の鎮静化を図るためのポーズに過ぎないのではないかとの疑念を抱かざるを得ません。

◆要望及び質問事項

 そこで、当会は、貴市に対し、何ゆえに10年前にこのようなジャンパーを作成・着用することになったのか、何ゆえにその後10年の長きにわたって問題が是正されることなく続いてきたのか、ジャンパー問題以外に保護行政の歪みはないのか等について、学識経験者、支援者、生活保護利用当事者等による検証委員会を設置するなどして、徹底した検証を行い、上記の組織的構造的問題を根本的に改善することを求めます。

 また、当会としても、今回の事件の背景に何があるのか、貴市における生活保護利用者の憲法上の権利を実現するために何が必要か、ともに考えたいと思っておりますので、以下の事項について質問させていただきます。

1 何ゆえに10年前にこのようなジャンパーを作成・着用することになったのか、その具体的な経過を明らかにしてください。
また、その後10年の長きにわたってなぜジャンパー問題が是正されることなく続いてきたのか、さらに、この10年間に、ジャンパー問題の問題点を指摘する職員、生活保護利用当事者、支援者などは、いなかったのかどうかを明らかにしてください。

2 訂正前の貴市HPの「生活保護制度について」には、数々の違法な記載がなされていましたが、この記載内容について、問題はないと考えていたのかどうかについて、
記載内容の項目ごとに明らかにしてください。
また、貴市の上記HPは、最近訂正されましたが、その訂正理由と、訂正後の内容で問題はないと考えているかどうかについて、明らかにしてください。

3 今回の事態を受けて、貴市では、生活保護制度の運用について、具体的にどのよう
 な改革をする予定でしょうか。その内容を明らかにしてください。

4 貴市における過去10年間の以下のデータをご提供ください。
(1)生活保護行政全般
① 保護費総額
② 被保護世帯数
③ 被保護人員数
④ 保護率(③÷市人口)
⑤ 高齢、障害・傷病、母子、その他世帯の各割合
⑥ 相談件数
⑦ 申請件数
⑧ 申請率(⑦÷⑥)
⑨ 開始件数
⑩ 開始率(⑨÷⑥)
⑪ 申請から14日以内に決定した件数、30日以内に決定した件数、それ以上要した件数
⑫ 文書による指導指示件数、それに基づく停廃止処分の件数
⑬ 廃止件数
⑭ 廃止理由の内訳及び内訳別件数
(2)職員体制について
 ① 生活保護査察指導員、同ケースワーカーの各人数
 ② ①のうち社会福祉主事、社会福祉士、精神保健福祉士、臨床心理士の各資格取得者の人数
 ③ ①の年齢別、在職年数別人数の内訳、平均在職年数、平均年齢
 ④ ケースワーカー一人あたりの持ちケース数
 ⑤ 貴市職員の男女比率と貴市の生活保護担当部署職員の男女比率
 ⑥ 生活保護担当部署職員に対して実施した研修の具体的な内容

5 貴市において作成している以下の資料類があれば、過去10年分について、開示、ご提供ください。
① 生活保護実務運用のための年度別生活保護運営方針または計画書面
② 県の監査における指摘事項書面及び県に対する回答書面
各種自立支援プログラムの実施要領等書面

ウェル・ビーイング・・・個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあること。最低限度の生活保障だけでなく、人間的に豊かな生活の実現を支援し、人権を保障するためのソーシャルサービス



【小田原「保護なめんな」ジャンパーは氷山の一角! 安倍政権下で横行する生活保護申請者への差別と辞退強要 リテラ1/19】


 これは明らかに“弱者切り捨て政策”のひとつのあらわれだろう──。「保護なめんな」とプリントされたジャンパーを、神奈川県小田原市の生活保護担当職員らが勤務中に着用していた問題のことだ。

 このジャンパーの背面には「生活・保護・悪を撲滅する・チーム」の頭文字から取った英字で「SHAT」というアルファベットや、「私たちは正義。不正を見つけたら追及する。私たちをだまして不正によって利益を得ようとするなら、彼らはクズだ」(朝日新聞より)という英文が書かれていた。まるでネット右翼によるアジテーションのようだが、驚くべきことに、こんな文面を掲げたジャンパーを着て職員らは生活保護を受給する世帯への訪問をもおこなっていたという。

 小田原市は「自分たちの自尊心を高揚させ、疲労感や閉塞感を打破するための表現だった」などと弁明しているが、よりにもよって自治体が生活保護受給者への偏見を助長し不当に貶めるような文言を晒してきたことは、相当に悪質と言わざるを得ない。

 だが、今回露呈した問題は氷山の一角にすぎない。実際、行政の「保護なめんな」という攻撃的な態度によって、保護されるべき人びとが排除されているからだ。

 現に、福祉事務所では、窓口に訪れた人に生活保護の申請をさせず追い返す「水際作戦」がおこなわれてきた。貧困問題に取り組んできた稲葉剛・立教大学大学院特任准教授の『生活保護から考える』(岩波新書)によれば、「水際作戦」が一般化したのは1980年代からで、バブル崩壊後の90年半ばになると、東京や大阪などの都市部の福祉事務所では〈相談に来る路上生活者に対して、差別的侮蔑的な言動を用いて追い返す、相手をわざと怒らせるような言動をして席を立たせる、ということが日常的に行なわれていました〉という。
「どこの馬の骨かわからない人に生活保護は出せない」
「仕事なんてえり好みしなければ、いくらでもある」
「病気があると言って甘えているが、日雇いでも何でもして、自分の金で病院に行くのが筋だ」
「あんたが悪いんだから、頭を下げて実家に戻りなさい」
「あんたは性根が腐ってる」

 これらの罵詈は稲葉氏が生活困窮者の保護申請に同行した際、福祉事務所で実際に耳にしたという言葉だ。これでは取り付く島もないが、小田原市のジャンパーと同根の問題である。

 そして、この「水際作戦」を組織的におこなっていたのが北九州市だ。北九州市では2005年1月に生活保護を5度にわたって申請したものの認められなかった67歳男性が、翌年5月にはやはり生活保護の申請を認められかった56歳男性が餓死する事件が発生。さらに2007年7月にも52歳男性が「オニギリ食べたい」という文章を残して餓死しているのが発見されたが、この男性は生活保護を利用していたが、「辞退届」を書くことを強要されたとみられ、保護を打ち切られていた。

 立て続けに起こった餓死事件の裏にあったもの。それは北九州市の福祉事務所に設けられていた「ノルマ」だ。

 まず、〈北九州市の生活保護行政には「三〇〇億円ルール」と言われる暗黙の取り決め〉があったといい、〈生活保護費が三〇〇億円を下回るように予算の総枠が抑制されていた〉。生活保護利用者数は景気や失業者数に左右されるもので、300億円以下に抑えるためには〈人為的な操作が不可欠〉となる。そこで取られたのが、福祉事務所職員たちの「ノルマ」方式。〈市内のすべての福祉事務所が毎年の年度初めに、申請書の交付枚数制限、受給中の世帯の廃止目標数を具体的に設定し、面接主査とケースワーカーにノルマとして課していました〉というのだ。

 このノルマ制は「ヤミの北九州方式」と呼ばれているが、その結果、引き起こされたのが前述した餓死事件だった。しかし、こうしたノルマ制の「水際作戦」を、よりにもよって厚労省は〈生活保護の「適正化」を成功させた「モデル福祉事務所」として折に触れ称揚〉してきたのである。

 それもそうだろう。事実、「聖域なき構造改革」によって所得格差を拡大させ、貧困を増大させた小泉純一郎首相は、02年度に社会保障予算を3000億円も削減したが、生活保護費もターゲットにし給付の削減をおこなった。これと同時に全国で「水際作戦」が多発し、孤立死や自殺に追い込まれたケースが頻発したのである。これは「行政による殺人」と言うべきものだ。

 しかも、生活保護を受けられずに餓死するという事件が立て続けに起こったというのに、2007年の第一次安倍政権では生活保護基準の見直しを打ち出した。さらに、歩調を合わせるように、メディアでも生活保護の不正受給に対するバッシングが徐々に増えはじめた。小田原市でおぞましいジャンパーがつくられたのは、ちょうどこのころだ。

 そして、生活保護バッシングの決定打となったのが、2012年4月にもちあがった次長課長・河本準一の親族が生活保護を受けていた問題だった。河本のケースは不正受給など違法にあたるものではなく扶養義務の問題だったが、これに自民党の片山さつき議員や世耕弘成議員が噛みつき、メディアに登場しては河本の大バッシングを展開。同年1月には、札幌市で40代の姉妹が生活保護の相談に出向きながらも申請に至らず死亡するという痛ましい事件が起こっていたが、生活保護の重要性が謳われることなく片山の主張と同じようにメディアも「不正受給許すまじ」とバッシングに加担。「生活保護は恥」などという空気を社会につくり出していったのだ。

 こうした生活保護バッシングの波に乗り、同年12月の衆院選で自民党・安倍晋三総裁は「生活保護の給付水準を10%引き下げる」という公約を掲げて政権に復帰。生活保護費の削減を断行し、13年には生活保護の申請厳格化という「水際作戦」の強化ともいえる生活保護法改正と生活困窮者自立支援法を成立させてしまったのである。

 そもそも、小泉首相から安倍首相が引き継ぎ、いまなお「アベノミクス」と称してつづける新自由主義政策は、貧困を広げる一方で社会保障を「自己責任」として切り捨てていくものだ。「福祉や保障に頼るな、家族で助け合って生活しろ」というその考え方は、公的責任を逃れ、個人にすべての責任を押しつける。そうしたなかで生活保護バッシングが吹き荒れたことは、偶然の一致などではない。煽動したのが自民党の政治家だったように、起こるべくして起こったものだったのだ。

 だからこそ確認しなくてはならないのは、バッシングの根拠としてもち出される不正受給の問題だろう。自治体による調査強化によって不正受給の件数と金額が過去最多となった2012年度でも、保護費全体で不正分が占める割合は0.53%。一方、生活保護を受けられる水準にあり、実際に受給している人の割合を指す「捕捉率」は2割程度だと言われている。つまり、困窮状態にあるにもかかわらず生活保護を受けていない人が圧倒的である、ということだ。

 不正受給の問題以上に深刻なのは、この受けるべき保障を受けずにいる人びとの存在だということは明白だ。いま、力を入れるべきは捕捉率の向上だが、しかし、そういう空気はこの社会にまったくない。

 だからこそ、何度でも繰り返し言わなくてはいけない。生活保護を受けることは憲法で保障された「権利」であり、生活を保護することは国家の責任だ。それを自民党および安倍政権は、不正受給問題だけを取り上げ「不当に得をしている人間がいる!」という憎悪を掻き立てることで、社会保障を自己責任にすり替えようとしているのである。

 こうしたなかでは、「水際作戦」という行政の犯罪的行為も、小田原市の醜悪なジャンパーさえも、肯定されかねない。「行政による殺人」を見過ごす危うい社会になりつつあるということを、今回の小田原市の問題は突きつけているのだ。


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