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「共謀罪」~現代の「治安維持法」 /「テロ対策」は口実

 テロ対策は口実。すでにある法整備で対応できるし、国際条約批准に必要ない。
実行行為でなく「相談・計画」を取り締まるのが共謀罪。対象となる犯罪は676と極めて多く、詐欺や窃盗、道交法違反なども含まれる。どこかの建物の塀にビラを貼る行為も「建造物損壊罪」だとして対象になることもありうる。「みんなで手分けしてビラを貼ろう」と相談したら、それだけで「建造物損壊の共謀」の罪に問われることにもなりかねない。高江などの政府に反対する運動を弾圧するにはもってこいの法律。
「組織的犯罪に限る」というが「犯罪のためにつくられた二人以上の組織」と無限低に認定できる。そして、「謀議」を捜査するには盗聴、密告奨励など不可欠になる。犯罪を未然に防ぐという口実で、そうした捜査の対象はどこまでも拡大する。
 「オリンピックのため」という言葉にだまされたら、治安維持法の復活、戦争する国づくりと一体のとんでない「レガシー」を残すことになる。廃案以外にない。

【主張 共謀罪新設法案 名前を変えても本質変わらぬ 赤旗1/13】


【共謀罪なしで国連越境組織犯罪防止条約は批准できます 日弁連】


【「共謀罪」浦部法穂・法学館憲法研究所顧問 2017年1月11日】

【主張 共謀罪新設法案 名前を変えても本質変わらぬ 赤旗1/13】

 安倍晋三政権が、国民の強い批判で3度も廃案となった共謀罪を導入する組織犯罪処罰法改定案を、今度は「テロ等準備罪」と名前を変え、20日召集の国会に提出することを表明しています。昨年の臨時国会でTPP協定、年金カット法、カジノ法などを次々強行したことに続き、人権を侵す危険な共謀罪法案の4度目となる国会提出を行い、なんとしても成立させようとする―。安倍政権の強権・暴走姿勢はあまりに異常です。

◆「テロ対策」理由にならず

 政府は、共謀罪導入の理由に▽国際的なテロ犯罪の取り締まりの緊急性▽国際機関から法整備を求められている―ことを挙げます。

 しかし、もともと“国際的な取り締まり”というのは、麻薬取引など国境を越えた犯罪の取り締まりを目指したもので、テロを直接の対象にしていません。テロの取り締まりについても、日本にはテロ資金提供処罰法など対応できる法律はすでに複数あります。テロには、殺人罪など刑法規定も適用されます。それらの法律の多くには、計画・準備段階でも処罰対象にする規定もあり、共謀罪がないと対応できないことはありません。

 国際機関からの法整備の要請も、「共謀罪」にあたる規定を一律に設けよというのではなく、国際的組織犯罪防止条約に適合した法的対応を求められているもので、各国の実情に応じた立法をすればいいわけです。なにがなんでも共謀罪規定を設けるため「国際的要請」を持ち出すやり方は、ご都合主義以外の何物でもありません。

 共謀罪の本質は、「犯罪を行うことを相談、計画した」というだけで処罰をするところにあります。政府は、資金準備など「準備行為」をしたという要件を新たに付け加えるから「相談、計画」だけで処罰をされることはないと説明します。しかし準備行為は極めてあいまいで、相談参加者の1人が「準備」をすれば適用されるとしています。これでは、他の「参加者」にとっては「準備行為をしなくても犯罪とされる」ことには変わりありません。「組織的犯罪に限定されている」といいますが、その組織も既成の組織だけでなく、その犯罪のためにつくられた集団(2人以上)も該当するとされています。どうにでも拡大解釈することは可能で、なんの限定にもならないのは明白です。

 政府は、一定の範囲の重い犯罪(4年以上の懲役または禁錮に該当する場合)の全てに「共謀を罰する」規定を入れることを検討しています。そうなれば676に及ぶ犯罪に適用され、不当な取り締まりや冤罪が引き起こされる危険が、いっそう大きくなります。

◆歴史の逆行を許さない

 近代の刑罰法は、単なる発言だけでは、犯罪を実行するかどうかは不明のまま思想・信条を処罰する危険があるので、刑罰は犯罪行為が実行された場合のみを対象とする原則を確立してきました。共謀罪はこの流れに逆行します。
 また、「共謀」を犯罪行為とし、実行行為でなく相談・準備を取り締まることは、捜査方法としても盗聴やGPS利用など事件に関係ない人の人権までも侵害されかねません。密告が奨励され、冤罪を多発させる恐れも増大します。
 「戦争する国」づくりと一体で共謀罪導入を狙う安倍政権の暴走を許さないたたかいが、急務です。

【共謀罪なしで国連越境組織犯罪防止条約は批准できます 日弁連】

■共謀罪の基本問題
・政府は、共謀罪新設の提案は、専ら、国連越境組織犯罪防止条約を批准するためと説明し、この立法をしないと条約の批准は不可能で、国際的にも批判を浴びるとしてきました。
・法務省は、条約審議の場で、共謀罪の制定が我が国の国内法の原則と両立しないことを明言していました。
刑法では、法益侵害に対する危険性がある行為を処罰するのが原則で、未遂や予備の処罰でさえ例外とされています。ところが、予備よりもはるかに以前の段階の行為を共謀罪として処罰しようとしています。
・どのような修正を加えても、刑法犯を含めて600を超える犯罪について共謀罪を新設することは、刑事法体系を変えてしまいます。
・現在の共謀共同正犯においては、「黙示の共謀」が認められています。共謀罪ができれば、「黙示の共謀」で共謀罪成立とされてしまい、処罰範囲が著しく拡大するおそれがあります。
・共謀罪を実効的に取り締まるためには、刑事免責、おとり捜査(潜入捜査)、通信傍受法の改正による対象犯罪等の拡大や手続の緩和が必然となります。
・この間の国会における審議とマスコミの報道などを通じて、共謀罪新設の是非が多くの国民の関心と議論の対象となり、共謀罪の新設を提案する法案を取り巻く環境は、根本的に変わっています。

■国連越境組織犯罪防止条約は締約国に何を求めているのでしょうか
・国連越境組織犯罪防止条約第34条第1項は、国内法の基本原則に基づく国内法化を行えばよいことを定めています。
・国連の立法ガイドによれば、国連越境組織犯罪防止条約の文言通りの共謀罪立法をすることは求められておらず、国連越境組織犯罪防止条約第5条は締約国に組織犯罪対策のために未遂以前の段階での対応を可能とする立法措置を求められているものと理解されます。

■条約の批准について
・国連が条約の批准の適否を審査するわけではありません。
・条約の批准とは、条約締結国となる旨の主権国家の一方的な意思の表明であって、条約の批准にあたって国連による審査という手続は存在しません。
・国連越境組織犯罪防止条約の実施のために、同条約第32条に基づいて設置された締約国会議の目的は、国際協力、情報交換、地域機関・非政府組織との協力、実施状況 の定期的検討、条約実施の改善のための勧告に限定されていて(同条第3項)、批准の適否の審査などの権能は当然もっていません。

■国連越境組織犯罪防止条約を批准した各国は、どのように対応しているのでしょうか
・第164回通常国会では、世界各国の国内法の整備状況について、国会で質問がなされましたが、政府は、「わからない」としてほとんど説明がなされませんでした。この点について、日弁連の国際室の調査によって次のような事実が明らかになりました。
・新たな共謀罪立法を行ったことが確認された国は、ノルウェーなどごくわずかです。
・アメリカ合衆国は、州法では極めて限定された共謀罪しか定めていない場合があるとして国連越境組織犯罪防止条約について州での立法の必要がないようにするため、留保を行っています。
・セントクリストファー・ネーヴィスは、越境性を要件とした共謀罪を制定して、留保なしで国連越境組織犯罪防止条約を批准しています。

■新たな共謀罪立法なしで国連越境組織犯罪防止条約を批准することはできます
・我が国においては、組織犯罪集団の関与する犯罪行為については、
1.未遂前の段階で取り締まることができる各種予備・共謀罪が合計で58あり、凶器準備集合罪など独立罪として重大犯罪の予備的段階を処罰しているものを含めれば重大犯罪についての、未遂以前の処罰がかなり行われています。
2.刑法の共犯規定が存在し、また、その当否はともかくとして、共謀共同正犯を認める判例もあるので、犯罪行為に参加する行為については、実際には相当な範囲の共犯処罰が可能となっています。
3.テロ防止のための国連条約のほとんどが批准され、国内法化されています。
4.銃砲刀剣の厳重な所持制限など、アメリカよりも規制が強化されている領域もあります。

以上のことから、新たな立法を要することなく、国連の立法ガイドが求めている組織犯罪を有効に抑止できる法制度はすでに確立されているといえます。
政府が提案している法案や与党の修正試案で提案されている共謀罪の新設をすることなく、国連越境組織犯罪防止条約の批准をすることが可能であり、共謀罪の新設はすべきではありません。

【「共謀罪」浦部法穂・法学館憲法研究所顧問 2017年1月11日】

 【犯罪の計画段階で処罰する「共謀罪」の構成要件を変えた「テロ等準備罪」を新設する法案の概要が判明した。対象となる犯罪は殺人や覚醒剤の密輸など676に上っており、政府は最終的な内容を詰める与党協議を経たうえで、通常国会に提出する見通しだ。
 「共謀罪」法案はこれまで2003~05年に計3回、国会に提出されたが、野党や世論の反発でいずれも廃案になった。共謀の概念が広く、「市民団体や労働組合も処罰される」といった懸念が出たためだ。
 2020年の東京五輪などを控え、政府は過去の法案を修正。世界各地でテロが相次ぐ中でテロ対策を強調したうえ、適用の対象を「組織的犯罪集団」に限定することにした。
 さらに、犯罪を実行するための「準備行為」を要件とする。具体的には資金の調達や現場の下見を想定している。政府は、国際組織犯罪防止条約の締結を目指しており、そのためには国内法の整備が必要だとして、通常国会の会期中の成立を目指す方針だ。
 条約の規定に従うと、対象となる「懲役・禁錮4年以上の重大な犯罪」は計676に上る。恐喝や偽証なども含まれ、過去の「共謀罪」法案と同様に対象犯罪が多くなる。このため、対象犯罪の絞り込みを求める方針の公明党との協議の行方が法案提出前の焦点になるほか、国会でも野党の批判が予想される。】

 上記は本年1月7日付け「朝日新聞」の記事である。読者諸氏はこの記事を読んでどう感じられたであろうか?

実際に犯罪行為が行われることがなくても、あるいは具体的な犯罪行為が行われる危険性が実際に発生しなくても、複数の人間がなんらかの犯罪行為を行おうと話し合ったなら、その「話し合い」それ自体を罪として処罰する「共謀罪」については、上記記事にあるとおり、これまで3回国会に提出され3回とも廃案となったものである。それを安倍政権は、今度は本気で通そうとしているのだ(昨年秋の臨時国会でも法案提出の動きはあったが、見送られた)。
しかし、上記記事の論調はどうだろう?《今回政府が提出しようとしている法案は、東京オリンピックを控えたテロ対策のもので、適用対象も限定し、犯罪の準備行為を要件とするなど要件も厳格化している点で、過去3回廃案になったものとは違う》。そんなふうに読めると思うのは、私だけだろうか?
この記事以外に、「共謀罪」の問題点等を指摘する記事や解説や社説は、今日(1月10日)までのところ掲載されていない。「朝日新聞」にしてこの程度である。政府の言っていることをほぼそのまま記事にしただけ。これでは、多くの国民は、《オリンピックもあるし、世界中でテロが横行しているし、こういう法律も必要だろう》と、うなずいてしまうであろう。
私の目についたかぎりでは、「東京新聞」が1月6日付けの「新共謀罪を考えるQ&A」という囲み記事で「『話し合いは罪』変わらず」と題して法案の問題点を分かりやすく解説していたほか、1月7日付け「信濃毎日新聞」は「『共謀罪』法案 危うさは変わっていない」とする社説を掲載、また同じ日の「琉球新報」も「共謀罪提出へ 監視招く悪法は必要ない」と題する社説を掲載していた(なお、「神戸新聞」は昨年秋の法案提出の動きの際に「『共謀罪』法案 副作用への不安は大きい」とする社説を載せている[2016.9.3])。しかし、全国紙は「朝日」にしてこのありさまである。あれだけ問題点が指摘され3回も廃案になった法案が、今度はすんなりと通ってしまいそうな状況である。

 日本政府は「共謀罪」について、2000年の国連総会で採択された「国際組織犯罪防止条約」を批准するために絶対必要なのだと説明してきた。この条約が締約国に「共謀罪」の立法化を要求しているからだ、という。その関連条項は、つぎのような規定である。

【第五条】
 1 締約国は、故意に行われた次の行為を犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。
 (a)次の一方又は双方の行為(犯罪行為の未遂又は既遂に係る犯罪とは別個の犯罪とする。)
  (i)金銭的利益その他の物質的利益を得ることに直接又は間接に関連する目的のため重大な犯罪を行うことを一又は二以上の者と合意することであって、国内法上求められるときは、その合意の参加者の一人による当該合意の内容を推進するための行為を伴い又は組織的な犯罪集団が関与するもの
  (ii)略(組織的な犯罪集団の犯罪活動等への参加についての規定)

 これを見ると、「共謀罪」を立法化しなければ批准できない、という政府の説明は、もっともなようにみえるかもしれない。しかし、それは真っ赤なウソである。
締約国に特定の立法措置を義務づけている国際条約で、その義務づけられた立法措置をしないまま日本が批准しているものが、現に存在するのだから。たとえば、「人種差別撤廃条約」は締約国に対し、「人種的優越又は憎悪に基づくあらゆる思想の流布」、「人種差別の扇動」等につき、処罰立法措置をとることを義務づけており(第4条(a)、(b))、日本も1995年にこの条約を批准しているが、日本ではいまだこのような差別表現等を処罰する立法措置は講じられていない。表現の自由を保障する憲法に抵触する可能性があるとして、この規定については「留保」したうえで批准しているのである。
つまり、条約上義務づけられた立法措置をしなくても、条約の批准はできるのである。だから、「共謀罪」を立法化しなければ「国際組織犯罪防止条約」を批准できないというのは、大嘘もいいところなのである。

 「共謀罪」は、まだ何の実害も、あるいはその危険性すら発生しない段階で、「話し合い」をしただけで罪になる、という点では、差別表現等の規制以上に表現の自由の保障に抵触するものだといえる。差別表現等の場合には、それによって傷つく人が現実にいるという意味では、それ自体が実害をもたらすともいえるのに対し、「共謀」の場合には、それだけでは何の実害も生じないのだから、表現の自由ということでいえば、より慎重になるべきものだといえる。それなのに、差別表現の場合には条約上義務づけられていても処罰立法はできないと言い、「共謀」の場合には条約上義務づけられているから処罰立法を作らなければならないと言う。これは要するに、差別表現は処罰したくないが「共謀罪」は何としても作りたい、と言っているにほかならない。憲法だの国際的義務だの、都合の良いほうを都合の良いように持ちだしているだけなのである。

 それでも、《「テロ」の脅威から国民を守るために「共謀罪」は必要だろう、「テロ」が起きてからでは遅いんだから》と思う人は多いかもしれない。あるいは、《自分はテロ集団とは関係がないし、そういう連中とテロの相談をするなんてことは絶対にありえないことだから、「共謀罪」ができても別に何の不利益もない。むしろ、テロの脅威から守られるのなら歓迎すべきことだ》というあたりが、「一般の人」の感覚なのかもしれない。菅官房長官は、そういう「一般の人」が対象になることはあり得ない、と断言したことでもあるし……。

 しかし、「共謀罪」の対象は、テロやテロの準備行為に限定されているわけではなく、冒頭に引用した記事にあるとおり、その対象犯罪は676もの数になる(法定刑が長期4年以上の懲役・禁固とされている犯罪)。

たとえば、どこかの建物の塀にビラを貼るなどという行為も、「建造物損壊罪」だとして対象になることもありうるのである。だから、「みんなで手分けしてビラを貼ろう」と相談したら、それだけで「建造物損壊の共謀」の罪に問われることにもなりかねない。単に相談しただけだったら、もしかしたら有罪にはならないかもしれない。あるいは、不起訴ということになる可能性もないわけではなかろう。しかし、「共謀罪」容疑での捜査・取調べは可能である。つまり、相談した、話し合った、というだけで、警察は強制捜査に乗り出すことができることになるのである。「共謀罪」の本当の狙いと本当の怖さは、ここにある。

そしてまた、「共謀罪」を立件するためには、「○月○日にどこそこでこういう内容の謀議がなされた」という証拠をつかむ必要があるが、その「謀議」はそもそもが仲間同士の「内輪」のものだから、「外」からの捜査だけでそういう証拠をつかむのは、ほとんど不可能だといってもよい。ではどうするか?電話やメールを盗聴(読?)する。あるいは部屋や車に盗聴器を忍ばせる。内部の人間に見返りを約束して「たれ込み」させる。あるいは潜入捜査。等々、「共謀罪」の立件のためには、こういう捜査手法が不可欠になる。
だから、「共謀罪」ができれば、捜査当局はこれらの捜査手法を堂々と用いることができるようになる。そして、もう一度言うが、捜査そのものは、結果として有罪になるケースに限定されるものではない。

 そもそも、「共謀罪」必要論の根拠とされている「国際組織犯罪防止条約」は、テロ対策を目的としたものではない。それは、マフィアや日本でいえば暴力団などの組織による国際的な資金稼ぎや資金洗浄を各国の協調によって断ち切ることを、そもそもの目的として締結されたものである。先に引用した第5条が、単に「重大犯罪を行うことの合意」とせずに「金銭的利益その他の物質的利益を得ることに直接又は間接に関連する目的のため」という限定を付しているのは、そのためである(この限定は、同条約の他の条文でも繰り返し明示されている)。

 「オリンピック」と「テロ対策」という「マジック・ワード」に騙されて、権力側の「何でもあり」を許してしまっては、後悔という「レガシー」が残るだけである。

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