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国と地方の単純な財政比較、国による効果の判定に異議  地方財政審議会・意見

 地方の基金増加などを理由にした地方財源を縮小させようとの財務省の議論、政策効果を地方財源に反映させる仕組みづくりを求める財政諮問会議の民間委員の意見など乱暴な意見が出ているが・・

 「地方財政審議会」の年末の意見書で、「地方は、国と異なり、金融・経済・税制等の広範な権限を有していない」「地方は、小さな町村も含め1,788のそれぞれ事情の異なる自治体の集合体であり、国と対比しうる単一の財政主体ではない」と単純比較を批判。
 また、政策の効果評価についても「日本列島の多様な気候風土や地理的・歴史的特性などを背景に、住民生活や地域の活動には大きな差異がある。必要とされる住民のニーズや課題も、地域的に異なるところに特徴がある。地方自治体は、それぞれ地域の実情に適切に対応しようと創意工夫を重ねている。そうした取り組みに対する効果を国が一義的に判断することが、地方自治法の規定にそぐわないのは明らかだろう」と釘をさしている
 
【今後目指すべき地方財政の姿と平成29年度の地方財政への対応についての意見 地方財政審議会12/14】

【今後目指すべき地方財政の姿と平成29年度の地方財政への対応についての意見 地方財政審議会12/14】

(1)一般財源総額の確保

②地方の歳出構造等
(地方の歳出構造)
 地方財政計画における近年の歳出は、歳出特別枠を含めてもほぼ横ばいで推移してきた(資料3)。
しかしながら、その内容を見ると、国の制度に基づく社会保障関係経費が増加しており、その増加分を、給与関係経費や投資的経費(単独)の減で吸収してきた。このため、給与関係経費、投資的経費ともに、ピーク時から大幅に減少しており、喫緊の課題への取組も求められる中、これまでと同様の対応を続けることは困難となってきている。
 地方歳出の大半は、国が法令等で基準を設定しているもの(警察官や高校教職員数など)、国が法令でその実施を義務付けているもの(戸籍、保健所、ごみ処理など)、国庫補助関連事業である(資料4)。地方の歳出の抜本的な見直しを行うためには、国の制度の見直しを行わなければならない。

(国と地方の財政の違い)
 国と地方の基礎的財政収支の動向の比較や、地方の基金残高が増加していることを挙げつつ、各年度の地方財政計画を通じた財源移転の適正規模について、より一層の精査が必要との議論6がある。

 そもそも、地方は、国と異なり、金融・経済・税制等の広範な権限を有していないことから、国と地方の財政状況を単純に比較することは不適当である。地方は、小さな町村も含め1,788のそれぞれ事情の異なる自治体の集合体であり、国と対比しうる単一の財政主体として認識すべきものではない。

 地方は赤字地方債の発行権限が限定されていることから、税収が上振れた場合には、将来の財政需要に備え基金への積み立てを行うなどの対応を行ってきた。また、収支均衡を図るためには、歳出を削減せざるを得ない。こうした個々の地方自治体における計画的な財政運営への備えや、住民合意のもとでの歳出抑制努力の結果として、財政赤字や債務残高の数値が国と比べて良くなっているものである。
 また、地方交付税を含む国から地方への財源移転(中間支出)の見直しは、国・地方を通じた基礎的財政収支に影響を与えるものではない(資料5)。このため、財政収支及び債務残高に係る国と地方の財政状況の比較をもとに、国から地方への財源移転の水準のあり方を論じることは、国の負担を地方にしわ寄せするものに過ぎない。

 これは、国・地方を通じる真の財政健全化の道を放棄し、今後の国・地方の相互理解に基づく財政健全化の取組に影響を及ぼすものである。既に述べたとおり、地方は国と異なり歳出全体の伸びを抑制しており、国より財政収支等が良好なのは、地方の努力によるものである。地方の努力による財政健全化の成果を、国の財政収支の改善に用いるような考え方は、地方が改革を進める意欲を削ぐことになりかねず、適当ではない。


③給与関係経費
 地方公務員の数は、ピーク時の平成6年度の328万人と比較して、大幅な減となっている(資料6)。一方、地方自治体は、住民に身近な存在として、地域の実情に基づく社会保障等の対人サービスを担っている。これらのサービスを適切に提供するためには、一定のマンパワーの確保が重要である。今後、少子高齢化への対応や社会的に支援が必要な人々へのきめ細かな対応がますます求められることを考えると、これまでと同じように地方公務員の数を減らすことは限界にきている。

(4)交付税算定の改革
(トップランナー方式)
 業務の性格として、これまでトップランナー方式として導入された定型的業務と異なり、教育、調査研究、子育て支援といった政策的な役割を有しており、民間委託等の業務改革が進んでいないものについては、トップランナー方式を導入するのは適当ではない。
 トップランナー方式による効果(基準財政需要額の減少額)が地方財政計画に反映されるよう、計画策定を工夫する必要があるとの議論14があるが、地方財政計画の歳出においては、業務改革等の進捗に伴い、一定の歳出効率化効果が見込まれ減となる経費がある一方で、社会保障関係費の自然増等のように増となる経費もある。
 業務改革の努力をして行政コストを下げれば、その分地方財源が減少するということになれば、むしろ業務改革へのインセンティブは阻害されることは、当審議会が繰り返し指摘してきたとおりである。


■おわりに~地方の自主性、自立性尊重を~

地方自治体は行政サービスの大半を担っている。住民生活と地域の活動に不可欠な行政サービス提供の任務を十分発揮できるように、自らの意思と判断に基づく自主性と、自らの力で運営できる基盤が確立している自立性が、最大限確保されていることが必要である。
日本列島の多様な気候風土や地理的・歴史的特性などを背景に、住民生活や地域の活動には大きな差異がある。必要とされる住民のニーズや課題も、地域的に異なるところに特徴がある。地方自治体は、それぞれ地域の実情に適切に対応しようと創意工夫を重ねている。そうした取り組みに対する効果を国が一義的に判断することが、地方自治法の規定にそぐわないのは明らかだろう。

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