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バラスト水、排ガス規制~日本船が締め出される懸念

 世界銀行も融資しないという原発に固執し、温暖化対策のパリ協定発効にもまにあわず… 本来強みである「ものづくり」が、目先の利益確保とそれを応援する政治のもとで、大きな流れを見失い劣化していると感じる。
 世界を席巻した造船技術も、豪華客船建設で巨額の損失を生み出し撤退(三菱重工、今では必須の情報通信技術への対応をおこたったため)、そして今またバラスト水の処理や硫黄酸化物の排出規制の波に乗り遅れている。
 2つの記事は、日本船が世界の海から締め出される危機を報じている。
「今だけ、金だけ、自分だけ」の株主資本主義を、きちんと規制しないとやっていけないことの証左の1つと感じる。
【日本船、バラスト対応遅れ 来年9月規制条約 1000隻が未対応  産経12/6】

【造船「日本はずし」の危機? 間近に迫る環境規制、対策は難航か Yahoo12/18】

【日本船、バラスト対応遅れ 来年9月規制条約 1000隻が未対応  産経12/6】

 積み荷がない船のバランスを取るために使う海水「バラスト水」に関する新たな国際条約が来年9月発効するのを前に、大規模改修が必要な日本関連の船が1000隻を超えていることが、国土交通省などへの取材で分かった。1隻1億円程度かかる改修は進んでおらず、日本船が世界の海から締め出される可能性もあり、船主や運航会社の早急な対応が求められる。

 空の船が外洋を航海するには、専用タンクに大量のバラスト水を注入しバランスを保つ必要がある。条約発効後は、バラスト水を排出する際、環境に影響を与えないため、プランクトンなどを濾過するなどの処理が必要となる。
 立ち入り検査で装置未搭載などの違反が発覚すると、船が拘留されたり、港から締め出されたりする恐れがあるが、改修には費用などがネックとなっている。

バラスト水は、積み荷のない状態でタンクに注入し、荷積みの後に排出する。タンク容量は荷物の種類によるが、液化天然ガス(LNG)船の場合、積載可能貨物量の約8割に上るなど、航海ごとに数万トンの海水が移動することもある。停泊地で注入する海水には細菌やプランクトンなどの生物が混じってしまう。1980年代以降、欧州に生息する貝が米国で異常繁殖して発電所の取水口を詰まらせたり、黒海に侵入したクラゲが魚の餌になるプランクトンを食べて漁業に影響を与えたりする例が相次ぎ、問題化した。

 国際海事機関(IMO)は2004年、船にバラスト水処理装置の搭載を義務付け、海水中の生物や細菌数を規制する条約を採択。今年9月時点で、締結した52カ国の商船のトン数合計が世界全体の35%超となり、条約で定めた要件をクリアしたため、1年後の来年9月の発効が決まった。
 IMOによると、対象は世界で約7万隻。日本は14年に締結し、国交省や海運会社によると、対象の日本関係船は1000隻を超える。
 海運大手の川崎汽船では、装置を搭載したのは約200隻のうち20隻程度。同社技術グループの池田真吾氏は「負担は大きいが、企業として環境保護に積極的に関わるため、計画的に搭載を進めたい」と話している。


【造船「日本はずし」の危機? 間近に迫る環境規制、対策は難航か Yahoo12/18】

◆船の排出ガス規制が決定 予想より早く、きつい?

 2016年10月下旬、IMO(国際海事機関)はSOX(硫黄酸化物)排出規制の強化を決定しました。これまで欧州海域や北米近海(ECA)のみに適用されていた船舶からのSOX排出規制が、世界中の海で適用(グローバルキャップ)されるというものです。従来、船舶の排気ガスからの硫黄分排出は3.5%まで認められていたのですが、今回の決定により、一気に0.5%以下(ECAでは0.1%)にまで規制されます。
 施行は2020年1月1日で、現存船、新造船問わずすべての船舶に適用される予定です。これに対し日本の造船業界は、「予想したより早いし、きつい」との戸惑いの声を上げるとともに、その情報収集と対処策の検討に追われています。

 海事専門紙である海事プレスが2016年12月1日(木)付けで伝えたところによると、今回のIMOの決定に関し、対策を問われた日本郵船の内藤忠顕社長は「ルールが不安定なため、的を絞り切れない。何が最適なソリューションか現時点ではまだ見えない」と話したといいます。環境対策において日本の海運会社では最先端にあるといわれる日本郵船でさえ、この規制強化への最適解は得られていないようです。
 2020年以降の地球温暖化対策を定めた「パリ協定」に代表されるように、世界的な環境規制の高まりのなかで、船舶界においてもすでにCO2の排出やNOX(窒素酸化物)の排出、バラスト水の浄化対策といった環境対策が実施されています。そして今回のSOX対策については、次の3つの方策を中心に進められると考えられます。

◆3つのSOX対策、いずれも一長一短あり

 ひとつは、燃料油自体からSOXを削減する方法です。現在、船舶用の燃料は「C重油」が使われていますが、これには硫黄分が多く含まれているため、そこへ硫黄分の少ない「A重油」をブレンドするといった方策が挙げられます。IMOの論議では、こうしたブレンド油の十分な調達が2020年に間に合わないという見方もあったようですが、石油業界側が「間に合わせるべき」という意思を受け入れたことが、今回の規制強化の決定へつながったといわれています。
 しかしこれら「低硫黄重油」は、C重油に比べ単純計算で1.3から1.5倍の価格になると見られ、またどんな状態で供給されるのか、世界中の港において供給が可能なのか、といった点で不確定な要素が大きいというのが実情です。

 第二のプランは、排気ガスから硫黄分を削減する「スクラバー」と呼ばれる脱硫装置を船に取り付ける方法です。特に現存船への有効な対策と見られていますが、機器自体が大きく、重量も重く、付帯的な設備も必要になるなど、簡単には導入を決断できないようです。

 そしてもっともドラスティックな3つめの対処策が、SOXだけでなくNOXの除去やCO2対策にもなる「LNG焚きエンジンの搭載」です。すでに欧州では重油とLNG(液化天然ガス)の二元燃料焚きが多く採用されており、こと新造船においては、LNG焚きの普及へと進む潮流の只中にあります。特に入港する港湾が決まっているフェリーでは、LNG燃料供給も比較的受けやすいと考えられ、普及への好材料のひとつでしょう。ほかにも、LPG(液化石油ガス)やメタノール焚き、水素燃料など未来に向けた構想があります。

 一方で、LNG燃料船は、それが二元燃料(重油とLNG)エンジンであったとしても、建造コストが高くなります。またLNGは燃料としての比重が小さいため、重油と同じ量の燃料を積むためには2倍の容量の燃料タンクが必要になります。その点において、なるべくコンパクトな船体が求められるフェリーでは、やはり採用しにくいともいわれています。とりわけ、瀬戸内海では全長200m以下の船しか夜間航行ができないほか、日本特有の様々な規制があり、これらとの整合も必要になります。

◆対策に着手し始めた国内造船業界、しかし世界の選択は…

 日本の造船や船舶用機械業界は、効率的なLNGエンジンの開発、改良や、コンパクトなエンジンルームの開発など、LNG燃料船の新設計に着手し始めてはいるようです。たとえば日本郵船は、欧州海域で運航する自動車専用船として2016年9月、LNG焚き船を就航させています。
 しかし、すでに規制が現実のものになっている欧米の船会社は、フェリー、客船を皮切りに、一説によると90隻以上、建造計画中のものを含めると200隻規模で、大胆にLNG焚き船を導入する計画に着手しているといいます。
 そんななか、北欧の大手フェリー会社であるバイキングライン社(フィンランド)が、2020年就航予定で6万3000総トンにおよぶLNG焚きの大型ROPAX(豪華フェリー)を、1プラス1隻オプション形式で中国の厦門重工に発注したというニュースも伝わってきました。
 いま欧州の造船所は、客船建造ブームで受注余力がありません。そこで欧州のクルーズ会社は、中国の造船所を選択したのです。
 このまま日本の造船所が新しい環境規制の時代へ対応できない場合、客船やフェリーの分野で「日本パッシング」が起きかねません。

若勢敏美(船旅事業研究家)


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