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教員にも子どもにもさらに負担を強いる学習指導要領・答申

 子どもも教師もますます多忙化させられ、子どもは不登校、学びからの逃走、教師は、メンタルヘルス・自殺、担い手不足・・・人間性を、未来を奪われていくのではないか。
マルクスさんは、1人ひとりには多様な能力。発達させるには時間が必要。時間がなければその能力は埋もれたままになると「時間は人間の発達の場である」(『賃金、価格および利潤』)と解明した。
 そして、強いられた活動、自由な時間を奪われた社会の変革をめざしとりくんだ。
 関連する記事を3本。
【負担を最も強いる 大森学芸大准教授が「答申」を分析 教育新聞12/21】
【新人教員 10年で少なくとも20人が自殺 NHK12/23】
【<中学・全国調査>部活休み、定めず2割…教員負担減進まず 毎日12/15】

【負担を最も強いる 大森学芸大准教授が「答申」を分析 教育新聞12/21】

 12月21日に出された次期学習指導要領に向けた中教審答申を、現場への負担や授業時数の観点から、大森直樹東京学芸大学准教授に分析してもらった。

◆子供に合った教育課程を
 温かい雰囲気の教室でA先生が口を開く。「昨日の物語の続きをやろうか」。子供がしゃべる。「今日はBさんがお休みだよ。昨日の物語はBさんが来てからやろうよ」。子供たちが求めていることと教育の内容。両者が合致した教室の風景だ。
近未来の教室の風景も描いてみたい。いかにも有能にみえるC先生の教室には「深い思考力」という目標が掲げられている。全ての教科で「深い思考力」を目指して、一人ひとりの達成度の評価も怠らない。子供がつぶやく。「今日もまた、深く考えなければいけないんだよね」。
中教審答申による教育課程プランは、後者のような教室の風景を全国に広げていくことになりはしないだろうか。
現場には負担の大きい教育課程プランだ。これからの社会で必要な力を育てるため、次のことを同時に行おうとしている。
 
第一は、教科と内容の増設だ。2018年度から先行する道徳の教科化に加え、高学年の英語を教科化し、プログラミング教育を必修化している。

第二は、教育課程の力点を資質・能力の育成に特化させることだ。そのために次の断定をしている。
①求められている資質・能力は、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」の「三つの柱」に集約できること。
②「三つの柱」は第一次安倍政権下で07年に学校教育法に盛られた教育目標の三要素とも共通していること。
③「三つの柱」を追求するため、全ての教科ほかの目標・内容・評価を改めなければならないことだ。

第三はアクティブ・ラーニングの視点から「主体的・対話的で深い学び」を求めることだ。これだけのことを目指すには、教える内容を絞ることが欠かせないが、5月、馳浩文科相(当時)は「内容の削減を行うことはしない」と言い切っている。

このままだと学校はどうなるか。

 まず、既存の教育課程の大幅なつくり直しが始まる。特に目標と評価はすべて書き換えなければならない。目標と評価が最優先される企業のような学校となる。
小学校高学年の週授業時数は現行から1時間増えて29時間となるが、これは5日制導入前の1989年の指導要領のときと同じ時数だ。5日でこなすと1日平均、5.8時間になる。「三つの柱」に埋め尽くされた息つく間もない授業の連続になりかねない。
授業時数については歴史的な考察も必要だ(授業時数の変遷表=pdf)。小学校高学年の「平日1日の授業時数の変遷」を概観すると、1907年に男4.8時間、女5.2時間で始まり、1941年戦時下の5.8時間をピークとしてきた(このとき1時数は40分)。

戦後は子供の負担への配慮から、1977年に5時間になる。1998年に週5日制が導入されて5.4時間となり、子供の放課後は再び忙しくなる。現行は5.6時間になり、「あわただしい」「つかれる」という声ばかりを聞く。これを戦時下と同じ5.8時間まで増やしてしまう。日本教育史上最も子供に負担を強いるものだ。弾力的運用で対処できる水準を超えてしまっている。

今次の教育課程プランについては、再考が行われることが望ましい。
それでも、現場の声が国には届かず、今次の教育課程プランが導入されてしまうかもしれない。今次の教育課程プランの下でも、子供の生活を大切にした教育課程を実現するためのやり方を見つけなければならないだろう。
打開策を一言で述べたい。教職員の仕事の力点を、子供と遊ぶことと内容(教材)研究の2点に絞り切ることだ。

目標と評価はむやみに肥大化させない。いちばん大切なのは何かを子供から教わりながら、教材の工夫を重ねて授業をつくれば、もっと自然に深い学びを実現できる。
 教育実践の歴史の事実が、それを証明している。

【新人教員 10年で少なくとも20人が自殺 NHK12/23】

精神疾患などにかかる公立学校の新人教員が急増し続ける中、この10年間で、少なくとも20人の新人教員が自殺していたことがNHKの取材でわかりました。教員は新人でも担任をもったり、保護者に対応したりする必要があり、専門家は「新人教員は即戦力として扱われ、過度なプレッシャーを受ける。国は自殺の現状を把握して、改善を図るべきだ」と指摘しています。
学校の教員は採用されたばかりの新人でもクラス担任や部活動の顧問を任されたり、保護者に対応したりと、ベテランと同じ役割が求められています。
 文部科学省によりますと、昨年度、精神疾患などの病気を理由に退職した新人教員は92人で、平成15年度の10人と比べて、急激に増えています。
 さらにNHKで、昨年度までの10年間に死亡した新人教員、合わせて46人の死因について、取材した結果、少なくとも20人が自殺だったことがわかりました。
 このうち半数の10人が採用から半年以内に亡くなっていて、なかには4月の始業式から2週間余りで自殺していた新人教員もいました。
 詳しい自殺の動機は多くの遺族が民間企業の労災にあたる公務災害を申請していないため、不明ですが、おととし自殺した福井県の中学校の教員の場合は時間外労働が月に最大160時間を超え、部活動や保護者の対応に追われていました。
 また、同じく自殺した関西地方の教員は担任を任されていましたが、生徒などとの関係に悩んでいたということです。
 新人教員の自殺の実態について、文部科学省は把握しておらず、教員の公務災害などに詳しい川人博弁護士は「教員は採用されてすぐに担任を受け持つなどいきなり即戦力として扱われるうえ、理不尽な保護者への対応もあり責任やプレッシャーが大きい。国は自殺の現状を把握して、改善を図るべきだ」と指摘しています。

◆新人教員の自殺 実態は
福井県の新人教員だった嶋田友生さん(27)は、おととし10月、自分の車の中で、みずから命を絶ちました。取材に応じた父親の富士男さんは、「教員になって半年でこういうことになるとは予想もしていなかった」と振り返りました。
 友生さんは、なぜ自殺したのか。そのいきさつを知る手がかりが友生さんが毎日つけていた日記にありました。赴任した初日の日記には「目の前の子どもたちのために初心を忘れたくない」と決意が記されていました。1年生の担任と野球部の副顧問を任された友生さん。夢だった教員となり、大好きな子どもたちのためにと日々努力しました。
 しかし、次第に日記には「日付が変わるまで戻れない日々」、「休んではいけないという脅迫観念」、「今、欲しいものと言われれば、睡眠時間」。こんな記述が増えていきました。そして、ついには「死という言葉が頭に」という記述が現れました。
 当時の友生さんの勤務表を見ると、毎朝7時ごろに出勤し、深夜帰宅の日々が続いています。土日も部活動や授業の準備のため働いていました。6月の休みはわずか2日。時間外の勤務も最大で月160時間に及んでいました。
 当時の様子を父親の富士男さんは、「帰宅すると2階にある自分の部屋にたどり着けず、そのまま1階で寝てしまうことが多くなった。食事も取らなくなったり、精神的に追い込まれている様子だった」と話しています。
 そして10月、体のだるさを訴え、学校を休んだ友生さん。昼すぎになり、家族に「出勤する」と言い残して家を出て、そのまま命を絶ちました。日記の表紙には、『疲れました。めいわくかけてすみません』と記されていました。
 ことし9月、友生さんの自殺は「長時間労働や保護者対応など強度の精神的、肉体的なストレスがあった」として公務災害と認められました。父親の富士男さんは「教員の皆さんには、学校の働き方が非常識だということに気付いて欲しい。息子と同じ過ちを繰り返さないで欲しい」と話していました。

◆職場全体が疲弊 管理職も放置
関西地方で教員となって2年目の女性も、おととし新人教員だった友人が自殺した経験があり、今回、新人教員の実態を知って欲しいと取材に応じました。
 この教員は、中学校に赴任してすぐに担任を任せると告げられました。当時の心境を「かわいい子には旅させろ、がけから落とされた気分でした。いきなり担任と言われ、学級開きと言われても何していいかわからない。ありえない失敗をたくさんし続けました」と振り返りました。
 初めての担任で子どもたちと向き合うだけでも大変なところに、保護者への対応、さらに部活も担当しました。勤務は早朝7時から深夜まで。土日もほとんど休むことはなかったといいます。さらに、管理職からは若手教員に対して、国が導入を決めた道徳の教科化やアクティブラーニングなどにすぐに取り組むよう求められました。
 教員は何度も周りの同僚に相談しようと考えました。しかし、学校には若手の教員が多く、みんなが忙しそうにしているためできませんでした。校長など管理職の姿勢にも疑問をもったといいます。教員は「周りの先生も疲弊していた。助けてと思っても、みんなが助けてという状態だったので、その空気感がしんどかった。管理職は『はよ帰れよ』と言うだけだった。帰りたいけど帰れないと言っても関心がない。何でこんなに遅くなっているんやと聞いてもらえれば、よかった」と話していました。

◆専門家「国は職場の改善を」
教員などの公務災害に詳しい川人博弁護士は、「民間企業は採用後に一定の研修期間があるが、教員は採用されてすぐに担任となり、子どもや保護者との関係で責任を課せられることが多い。新人には精神的にも身体的にも過度な負担がかかっている」と指摘しています。
 そのうえで、「学校の中には採用して1年間は研修期間と明確に位置づけて、担任を持たせない学校もある。国は新任教員の問題がどこにあるか課題を明確にして職場の改善を図る必要がある」と話しています。



【<中学・全国調査>部活休み、定めず2割…教員負担減進まず 毎日12/15】

 ◇全員顧問9割
 部活動の休養日を設けていない中学校が2割以上あり、原則としてすべての教員が部活動の顧問をしている中学が9割近くに達することが、スポーツ庁が15日公表した調査結果で分かった。教員の負担軽減のため文部科学省は部活動の休養日設定を求めてきたが、徹底されていない実態が裏付けられた。
 全国の国公私立中学を対象にした2016年度の「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(全国体力テスト)で部活動について追加質問し、9534校が回答した。休養日の設定についての調査は初めて。
 学校のルールとして週1日の休養日を設けている学校は54.2%で、週2日は14.1%。休養日を定めていない学校は22.4%あった。土日に休養日を設けていない学校は42.6%だった。
 部活動の顧問については、原則全教員が務めることにしている学校が87.5%もあり、希望者が務めることにしている学校はわずか5.3%だった。
 部活動は学習指導要領で「生徒の自主的、自発的な参加により行われる」と定められている。しかし、過度な練習による子供の疲労やけがのほか、土日の練習や試合で顧問にも大きな負担がかかる現状が問題になっていた。
 旧文部省は休養日について1997年に「中学校は週2日以上」「高校は週1日以上」と目安を示したが、現場に浸透しなかった。このためスポーツ庁は17年度に全国の中学高校計200校以上を対象に部活動の詳細な実態調査を実施し、適切な練習時間や休養日の設定を明記する新たな指針を定める。【金秀蓮】

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