あまりにも拙速 県の「須崎海洋スポーツパーク構想」
今議会に補正予算が提出されている「須崎海洋スポーツパーク構想」。ところが地元の須崎市議会でも「唐突な計画なので丁寧な説明をしなければならない」と議論がはじまったばかり。事業実施地域の浦の内の住民にはなんら説明もさせていない。
それなのに県が支援する予算を組み、県議会にもはからず辺地債・過疎債の市負担分の半分を県が手当てすると説明している。地元での丁寧な議論も、ニーズ調査の結果も示さずに、「ありき」で進めているとしか思えない。これまでの産業振興計画の取り組みから見ても、異質の対応である。
以下に、県議会の論戦の記事録。
なお、須崎市の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」でも須崎市立スポーツセンターを活用した海洋スポーツの振興とあるが、今回桟橋の整備等をする大嶋地区については執行部は議会でも一回もふれていない。
【須崎海洋スポーツパーク構想】
●吉良県議
豊かな自然を生かしたスポーツの推進として今議会に補正予算が提出されている「須崎海洋スポーツパーク構想」について伺います。スポーツの振興は意義あることですが、須崎市スポーツセンターを活用し、カヌーやオープンウォータースイミングを核として須崎市浦の内地域の活性化を図るという今回の構想は、県政運営の在り方について極めて重大な問題を含んでいます。
県の説明では、地元須崎市で検討が重ねられ、基本構想が練り上げられ、合意されているかのように錯覚してしまいますが、須崎市議会では、この12月議会で、執行部が「唐突な計画なので丁寧な説明をしなければならない」と今、現在、再三議員への説明をしている最中です。須崎市の議会に提案されているのは「辺地債計画変更の議案」です。今回、県が触れていない、平成33年以降の施設整備2億3千万円分も提案されており、まだ何も議論もされていないし、何も決まっていません。
地元でも「唐突な計画」で、議論もこれからという時に、海洋スポーツパーク構想の一環として、海岸の改良実施予算を提案するのは、あまりにも乱暴で拙速です。県の前のめりの姿勢から感じるのは、須崎市というより、むしろ県が音頭をとって、須崎市に構想を押しつけたのが真相ではないかと思わざるを得ません。
「須崎海洋スポーツパーク構想」は、どのようにしてできたのか。今回提案された計画はどこでどのようにしてつくられたのか、経過をお聞きいたします。
■教育長
「須崎海洋スポーツパーク構想」は、どのようにしてできたのか。そして、今回提案のあった計画はどこでどのようにしてつくられたのか、とのお尋ねがございました。
「須崎海洋スポーツパーク構想」は、須崎市が平成27年3月に策定した「すさきがすきさ産業振興計画」、平成27年10月に策定した「須崎市まち・ひと・しごと創生総合戦略」にそれぞれ位置づけられた、須崎市立スポーツセンターを活用した海洋スポーツの振興や須崎市及び浦ノ内地域の活性化を目的とする構想であります。
昨年10月の知事と市長会との意見交換会の中で、須崎市長から構想の提案と県に対する支援の要請があり、県と須崎市で事務レベルの協議を始めております。
そうした中で、県では、本年3月に策定した第3期高知県産業振興計画地域アクションプランに「須崎市立スポーツセンターを活用した体験型観光等の推進による地域の活性化」を新たに位置付け、これまでその実現に向けた具体的な計画について、須崎市と協議をしてまいりました。
その際には、県の産業振興推進高幡地域本部が須崎市と密な連携を図りながら、県庁内関係課と市で定期的な協議の場を持つとともに、須崎市においては、中央及び県の各競技団体や地元関係者への聞き取り、またニーズ調査などを行ってまいりました。こうした経過を経て、このたび整備計画をまとめることができましたので、県、須崎市それぞれで議会への御説明をさせていただく運びになったものでございます。
●吉良県議
政府はスポーツツーリズムを推奨していますが、かつてのリゾート推進の大失敗を繰り返さないよう、地方自治体は、リアルな現状分析にもとづいた堅実な計画を、主体的に判断して取り組むことが求められています。9月議会でも、春野運動公園の芝改修工事で、その安易な拙速さが問題になったところです。そこで「須崎海洋スポーツパーク構想」を推進する県の現状認識を伺います。
スイミングエリアとしての大島地区の整備は、オープンウォータースイミングを従来の坂内地区から移動するためのものです。須崎の大会は、日本水泳連盟が認定する全国8大会の1つですが、はたして同地がふさわしいのか。日本水泳連盟は、2010年3月に「オープンウォータースイミング競技に関する安全対策ガイドライン」を発表しています。そこには「主たる競技者が中高年齢者を中心とした水泳愛好者であるという現実問題を認識」して取り組むこと。そして「主催者は、競技者同様、OWS 競技は常に危険性が伴う競技であることを理解しておかなければならない。そのため競技会の開催に際して、以下のガイドラインを策定する」と書かれています。
会場の条件については「透明度は高いか。常に透明度が低く濁っているような水域は、安全対策上、OWS 競技には適さない」「水質については近くの川から生活排水や工場排水が注いでいないか」「砂浜の広さは十分か。競技運営に必要な本部機能エリアが設営可能か。招集エリア、スタート・ゴールエリアが設営可能か。参加者および同行者の待機エリアが設営可能か」などをあげています。
これまでの大会を開催していた坂内地区は、水が濁り、海に入った人の白いシャツが黄ばむなど、大きな問題があり、大会継続が不可能になったのではないか、それで拙速な提起になったのではないかと推測されます。また、新たな大島地区は、透明度など一定の改善はされますが、「砂浜の広さ」と言われてみれば極めてこれは限定されています。
ガイドラインに照らし、これまでの場所も、移設先も、日本水連は、どのように評価なさっているのか、お聞きいたします。
■教育長
安全対策ガイドラインに照らし、日本水泳連盟は、オープンウオータースイミングのこれまでの場所や移設先についてどのように評価しているのか、とのお尋ねがございました。
日本水泳連盟の認定大会は、競技運営として、日本水泳連盟が定めた「オープンウオータースイミング競技規則」や「オ-プンウオータースイミシグ競技に関する安全対策ガイドライン」の遵守を原則とした大会であり、大会の開催にあたっては日本水泳連盟スタッフによる水質も含めた全体の確認のもとで開催をされております。
日本水泳連盟からは、浦ノ内湾の自然豊かな景観や、大会運営、地域イベントの同時開催など高い評価をいただいているとお聞きをしております。
また、本大会は桟橋からの飛込みスタート、タッチパネル板によるゴール形式で開催されている日本水泳連盟認定の唯一の大会であり、今年は日本最高峰の大会である日本選手権の予選会を兼ねた大会として実施をされております。
一方で、大会前の大雨によるごみや水質の悪化等で大会開催が危ぶまれる状況があったことから、須崎市からは、より水質の良い大嶋海岸に移転することでその間題を解消したいとお聞きをしております。
また来年は、国内トップ選手や海外のオリンピック有力選手を招聘して、大島地区で開催する予定とお聞きしております。
そのため、その大会の実現に向けて、桟橋の整備や歩道の拡幅工事など、開催に間に合うよう行う必要があるものと考えております。
●吉良県議
海上スポーツは、安全対策が極めて重要であり、コストもかかります。
ガイドラインにはライフセーバーは競技者20 名に対して1 名以上および、医師1 名以上を含む複数名からなる人員や水上オートバイ2 台以上、レスキューボート水上のライフセーバーの人数分のレスキューボート、安全救護用船舶1艇ほか、多岐にわたり対策を求めています。須崎の大会は参加者は年1日300名です。参加者が全員県外人としても参加料150万、県の説明資料から計算すると経済効果は430万円程度です。
これまで開催した須崎の大会の実績。県外参加者の数、大会にかかった費用、安全ガイドラインの実効状況について、お聞きいたします。
■教育長
これまで開催した須崎の大会における、県外参加者の数や大会に掛かった費用、安全対策ガイドラインの実行状況について、お尋ねがございました。
すさきオープンウオータースイミングは、平成26年から開催され、今年で3回目を数えていますが、第1回と第3回大会ではリオデジャネイロオリンピック8位入賞と活躍された平井康成選手を招待選手としてお迎えしております。
県外からの参加者については、第1回大会が168人中79人、第2回大会が258人中159人、第3回大会では291人中173人の参加者があり、年々増加をしております。
それぞれの大会経費につきましては、第1回大会が474万円、第2回大会が517万円、第3回大会となった今年は、決算前の概算で521万円となっております。このうち須崎市の負担は毎回200万円となっており、その他は参加費等でまかなわれております。
競技運営については、日本水泳連盟が策定した「オープンウオータースイミング競技に関する安全対策ガイドライン」の遵守を原則とした認定大会であり、適切な医事救護員や安全担当員を配置し、特に安全面に十分配慮した体制で実施をしているとお聞きしております。
●吉良県議
こうした資料を議案説明時に提示もなく、「構想」をすすめることがそもそも問題であるとかんがえられます。
この公式大会の運営費は主催者負担となっていますが、今後市が中心になって様々なイベントを主催したときに、同様な安全対策並びに費用負担が求められ、経済効果は県の予想より減るものと考えます。一体、この他に、どのような増員イベントや要素を予想されて、6000名増としたのか、お聞きいたします。
■教育長
公式大会の運営費は主催者負担となっているが、今後須崎市が中心になって様々なイベントを主催したときに、同様の安全対策および費用負担が求められ、経済効果は県の予想よりも減るのではないか、また何を根拠に県外客を6000人増と見込んだのか、とのお尋ねがございました。
浦ノ内湾の海洋スポーツの拠点整備における経済波及効果は、県外の観光客が本県に訪れることによって生じる宿泊費や飲食費をはじめとする一人当たりの県内消費額を参考として算出したものでございます。
議員からお話のありました、今後、須崎市が中心となって開催する様々なイベントに係る安全対策等の費用につきましては、参加費や協賛金で賄うことを想定していることから、経済効果に直接は影響は及ぼさないものと考えております。
次に、県外客の増加を見込む根拠についてでございますが、まずオープンウオータースイミング大会やジュニアカヌー大会などのスポーツ大会における規模拡大と、新たな大会の開催による効果や、こうした大会と連携して行う各種イベントによる相乗効果から増加が見込まれるものと考えております。
また、修学旅行や企業研修などにおける新たな体験プログラムの実施による効果に加え、スポーツ合宿において、関係施設や設備の機能強化による効果からの増加を見込んでおります。具体的な数字の積み上げに当たっては、これまでの大会やイベントにおける実際の増加数や、大学並びに高校からの聞き取り、修学旅行や企業研修誘致に関する新たな体験プログラムや須崎市の体制強化などをふまえて想定したものなどを基に合計で6000人の増と見込んでいるところでございます。
●吉良県議
次にカヌー競技についてお聞きします。
最初に混乱をさけるために、ドラゴンカヌーと言っているものは、国際標準では「ドラゴンボート」と規定され、カヌーとはまったく別物です。
構想されているカヌーのスプリント競技は、静かな水面、波や風の影響のない場所が敵地とされていますが、海上のコースであるうえ、200メートルと500メートのコースは坂内、1000メートルコースは、大島と分断されてしまいます。
他の場所に比して、誘致に適切と考えた理由をお聞きいたします。また、これまでのカヌー大会や合宿の実績はどうだったのか、これもお聞きいたします。
■教育長
カヌー競技について、坂内地区と大島地区が他の場所に比して、誘致に適切と考えた理由について、また、これまでのカヌー大会や合宿の実績はどうだったのか、とのお尋ねがございました。
須崎市浦ノ内湾は、高知国体でカヌー競技場として使用されましたが、これまでは、県内の高校生や小学生が参加するカヌー大会や四国ブロック大会の会場としての利用や、県のカヌー協会、県内高校カヌー部の合宿などでの利用に留まっております。
しかし、浦ノ内湾は内海であり、静穏度が高く、日本カヌー協会の役員によれば、カヌー競技には非常に適した地形であると聞いておりますし、気候が温暖で本県の新鮮な食材を 生かした料理を提供できるなど、合宿を行う上で多くの魅力的な条件を備えております。
また、大島地区に桟橋が整備されることで、合宿を行う際はコースの近くですぐに乗降ができるカヌー艇の発着場所として利用できますので、さらに魅力も増すことになります。
加えまして、大島地区に1000mのカヌーコースを整備することで、海上に1000mのカヌーコースが設置されている国内初のカヌー場となりますことから、本番を想定して実践的な練習に取り組める合宿地として、全国のカヌー競技団体や大学・高校・中学のカヌー部にアピールしていくこともできます。
またカヌー施設の専門家からは、こうした一連の施設整備が進めば、同じく海上コースで行われる東京オリンピック・パラリンピック大会の事前合宿地としても最適であるとの高い評価をいただいております。
●吉良県議
当然、全国のカヌー競技を実施している企業、大学、高校などのニーズ調査をし、開催地での取り組み実績などを調査し、需要が見込めるから構想をしたものと思いますが、
浦の内のコースに対する、これらカヌー関係者の調査結果、並びに、先進地の調査結果と比較検討などでの分析、結果はどうだったのかお聞きいたします。
■教育長
浦ノ内のコースに対するカヌー関係者の調査結果および先進地の調査結果と比較検討などの結果はどうだったのか、とのお尋ねがございました。
須崎市が中国・近畿地方のカヌー強豪高校や大学などに実施したニーズ調査では、移動距離の課題などがあげられたものの、施設整備が進めば、気候もいいので合宿を検討したいとの回答が半数近くありました。また、回答の中では、合宿実現のために期待する条件として、艇の貸し出しや長距離を漕げるコースなどの施設整備が重点項目として挙げられており、今回の整備計画に反映をしております。
また、須崎市が行った先進地の調査では、香川県府中湖力ヌー場、京都府久美浜カヌー場、来年国体のカヌー競技場である愛媛県鹿野川湖特設カヌー競技場を訪問し、カヌーコースの整備状況や設備の維持管理等について聞き取りを行い、整備に当たっての留意点や、維持管理の経費等について参考になるお話が開けております。
さらに、日本カヌー連盟、県カヌー連盟からの聞き取り超査では、1000mのカヌーコースが整備されれば、他の先進地と遜色がないと聞いております。
東京オリンピック・パラリンピックでは、新たに整備される海の森水上競技場が会場に決定しております。この海の森水上競技場は、今後、我が国のカヌー競技のメイン会場になることが想定されますので、海上での1000mという同じ条件を備えた浦ノ内湾のカヌー場は、合宿の誘致を行う上で優位性があるとのお話しも聞いております。
●吉良県議
県の説明では、県外からの年6000名の訪問増加が見込まれるとしていますが、説得ある根拠はまったく存在しません。
地元須崎市でも議論が開始されたばかりであり、須崎市には、イニシャルコストだけでなく、今後の海岸、施設の維持経費、安全対策の費用など多大な負担をももたらす構想であり、丁寧な議論が必要なことは論をまちません。
県が、海岸整備の実施設計予算を計上し、結果的に、須崎市に拙速な結論を急がせるような状況を作ってしまうことは避けるべきです。市議会や市民の審議と結論を待って予算提案をすべきと思うがお聞きいたします。
■土木部長
「須崎海洋スポーツパーク構想」について、県が海岸整備の実施設計予算を計上し、結果的に、須崎市に拙速な結論を急がせるような状況をつくってしまうことは避けるべきであり、市議会や市民の審議と結論を待って予算提案すべきではないかとのお尋ねがございました。
教育長が申しましたとおり、須崎市は、来年10月に開催される「すさきオープンウオータースイミング」の大会で、国内のトップ選手や海外のオリンピック有力選手を招へいして、大島地区で開催する予定です。
大島地区での開催にあたって、海岸でのアクセス道や遊歩道の拡幅、テントを設置するためのスペースなどが必要との要望を須崎市から、受けております。
来年の大会の開催までに、海岸の整備を終えるためには、来年1月から測量・設計を行う必要がございます。 そのため、今回提出している補正予算において、大嶋海岸の整備に必要な、測量や設計の費用を計上しているものでございます。
●吉良県議
さらに、須崎市では、整備のための辺地債、過疎債を活用した場合の交付税措置を除いた実質負担分の半分を県が負担する、という説明がされています。
県議会にもはからず、そうした約束を県がしているのか、お聞きいたします。
■教育長
須崎市では整備のための辺地債などを活用した場合の交付税措置を除いた実質負担分の半分を県が負担するという説明がされているが、県議会にも諮らずそのような約束をしているのか、とのお尋ねがございました。
「須崎海洋スポーツパーク構想」については、先ほど申し上げましたとおり、昨年より、須崎市と協議を重ねてまいりました。
このたび、具体的な整備計画について協議が整いましたので、須崎市においては、12月議会定例会で整備計画の説明を行うとともに、県においても産業振興土木委員会では、関連予算について、務委員会では、整備計画や須崎市が行う事業に対する今後の支擾の在り方についてもご報告することとしております。
須崎市においては、整備にあたって国の交付金や辺地債、過疎債を活用する計画であるとお聞きしておりますが、須崎市の実質負担に対する具体的な県の財政支援についても協議を進めているところでございます。
このことについては、今議会の総務委員会において、一定のご説明をさせていただきたいと考えておりますし、最終的には今後、県として関連予算を計上する中で、議会のご判断をいただくことになるものと考えております。
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