残業「80時間超」で企業名を公表 ~学校名、自治体名も追加せよ
企業の長時間残業もひどいが、残業規制の枠外におかれ、事実上の公務である部活動指導など教員の長時間労働も極めてひどい。自治体職員も職員数はかわらず次々と行政需要の範囲は拡大、しかも休みの日も地域や観光イベントに「ボランティア」の名で参加させられる。
慌ただしさは「心が荒れ」、忙しさは「心が滅びる」とは、昔の人の洞察に感服する。いまや「心も身も亡びる」事態。生きること、働くことの意味や根本が揺らいである。生産性の「ものさし」が、「見通しをもって」「共同して」生きるという人類の生き方と真正面から衝突している。ブラックな働き方規制は、重要な一歩。
【残業「80時間超」で企業名を公表、基準厳しく】
大手広告会社・電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24歳)の過労自殺問題を受け、厚生労働省は26日、違法な長時間労働があった大企業に対し、行政指導段階での企業名の公表基準を引き下げることなどを盛り込んだ緊急対策を公表した。
現行の月100時間超の違法な長時間労働を、月80時間超に見直す。早ければ来年1月に各労働局に通達し、適用する。
行政指導段階での企業名の公表について、昨年5月に導入された現行の基準は、1年間に3事業所で、10人以上または4分の1の従業員に月100時間超の違法な長時間労働があった場合としている。しかし、過労による労災認定についての基準はなく、これまでに公表されたのは1社だけだった。
今回の見直しでは、長時間労働の基準を月80時間超に引き下げ、事業所数も年間2か所とした。また、複数の事業所で過労が原因の労災が認定された場合も、新たに公表の対象に加えた。
【新人教員 10年で少なくとも20人が自殺 NHK 12/23】精神疾患などにかかる公立学校の新人教員が急増し続ける中、この10年間で、少なくとも20人の新人教員が自殺していたことがNHKの取材でわかりました。教員は新人でも担任をもったり、保護者に対応したりする必要があり、専門家は「新人教員は即戦力として扱われ、過度なプレッシャーを受ける。国は自殺の現状を把握して、改善を図るべきだ」と指摘しています。
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学校の教員は採用されたばかりの新人でもクラス担任や部活動の顧問を任されたり、保護者に対応したりと、ベテランと同じ役割が求められています。文部科学省によりますと、昨年度、精神疾患などの病気を理由に退職した新人教員は92人で、平成15年度の10人と比べて、急激に増えています。
さらにNHKで、昨年度までの10年間に死亡した新人教員、合わせて46人の死因について、取材した結果、少なくとも20人が自殺だったことがわかりました。
このうち半数の10人が採用から半年以内に亡くなっていて、なかには4月の始業式から2週間余りで自殺していた新人教員もいました。
詳しい自殺の動機は多くの遺族が民間企業の労災にあたる公務災害を申請していないため、不明ですが、おととし自殺した福井県の中学校の教員の場合は時間外労働が月に最大160時間を超え、部活動や保護者の対応に追われていました。
また、同じく自殺した関西地方の教員は担任を任されていましたが、生徒などとの関係に悩んでいたということです。
新人教員の自殺の実態について、文部科学省は把握しておらず、教員の公務災害などに詳しい川人博弁護士は「教員は採用されてすぐに担任を受け持つなどいきなり即戦力として扱われるうえ、理不尽な保護者への対応もあり責任やプレッシャーが大きい。国は自殺の現状を把握して、改善を図るべきだ」と指摘しています。
◆新人教員の自殺 実態は
福井県の新人教員だった嶋田友生さん(27)は、おととし10月、自分の車の中で、みずから命を絶ちました。取材に応じた父親の富士男さんは、「教員になって半年でこういうことになるとは予想もしていなかった」と振り返りました。
友生さんは、なぜ自殺したのか。そのいきさつを知る手がかりが友生さんが毎日つけていた日記にありました。赴任した初日の日記には「目の前の子どもたちのために初心を忘れたくない」と決意が記されていました。1年生の担任と野球部の副顧問を任された友生さん。夢だった教員となり、大好きな子どもたちのためにと日々努力しました。
しかし、次第に日記には「日付が変わるまで戻れない日々」、「休んではいけないという脅迫観念」、「今、欲しいものと言われれば、睡眠時間」。こんな記述が増えていきました。そして、ついには「死という言葉が頭に」という記述が現れました。
当時の友生さんの勤務表を見ると、毎朝7時ごろに出勤し、深夜帰宅の日々が続いています。土日も部活動や授業の準備のため働いていました。6月の休みはわずか2日。時間外の勤務も最大で月160時間に及んでいました。
当時の様子を父親の富士男さんは、「帰宅すると2階にある自分の部屋にたどり着けず、そのまま1階で寝てしまうことが多くなった。食事も取らなくなったり、精神的に追い込まれている様子だった」と話しています。
そして10月、体のだるさを訴え、学校を休んだ友生さん。昼すぎになり、家族に「出勤する」と言い残して家を出て、そのまま命を絶ちました。日記の表紙には、『疲れました。めいわくかけてすみません』と記されていました。
ことし9月、友生さんの自殺は「長時間労働や保護者対応など強度の精神的、肉体的なストレスがあった」として公務災害と認められました。父親の富士男さんは「教員の皆さんには、学校の働き方が非常識だということに気付いて欲しい。息子と同じ過ちを繰り返さないで欲しい」と話していました。
◆職場全体が疲弊 管理職も放置
関西地方で教員となって2年目の女性も、おととし新人教員だった友人が自殺した経験があり、今回、新人教員の実態を知って欲しいと取材に応じました。
この教員は、中学校に赴任してすぐに担任を任せると告げられました。当時の心境を「かわいい子には旅させろ、がけから落とされた気分でした。いきなり担任と言われ、学級開きと言われても何していいかわからない。ありえない失敗をたくさんし続けました」と振り返りました。
初めての担任で子どもたちと向き合うだけでも大変なところに、保護者への対応、さらに部活も担当しました。勤務は早朝7時から深夜まで。土日もほとんど休むことはなかったといいます。さらに、管理職からは若手教員に対して、国が導入を決めた道徳の教科化やアクティブラーニングなどにすぐに取り組むよう求められました。
教員は何度も周りの同僚に相談しようと考えました。しかし、学校には若手の教員が多く、みんなが忙しそうにしているためできませんでした。校長など管理職の姿勢にも疑問をもったといいます。教員は「周りの先生も疲弊していた。助けてと思っても、みんなが助けてという状態だったので、その空気感がしんどかった。管理職は『はよ帰れよ』と言うだけだった。帰りたいけど帰れないと言っても関心がない。何でこんなに遅くなっているんやと聞いてもらえれば、よかった」と話していました。
◆専門家「国は職場の改善を」
教員などの公務災害に詳しい川人博弁護士は、「民間企業は採用後に一定の研修期間があるが、教員は採用されてすぐに担任となり、子どもや保護者との関係で責任を課せられることが多い。新人には精神的にも身体的にも過度な負担がかかっている」と指摘しています。
そのうえで、「学校の中には採用して1年間は研修期間と明確に位置づけて、担任を持たせない学校もある。国は新任教員の問題がどこにあるか課題を明確にして職場の改善を図る必要がある」と話しています。
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