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「原発救済策」6つの大罪〜反民主主義・無責任・反原則・自己矛盾・過誤の上塗り・不正義 ISEP

「色んな費用を全部、含めたとしても発電単位あたりのコストは原発が一番、安いと考えている」〔世耕経産大臣〕といいながら、廃炉・賠償費用を、原発に依存しない新電力にも負担させようとしている。
 ISEPが6つの大罪として、まとめている。
【「原発救済策」6つの大罪〜反民主主義・無責任・反原則・自己矛盾・過誤の上塗り・不正義 12/8】

【世耕大臣「原発コスト安い」強調…廃炉費用増加でも 朝日12/7】

【「原発救済策」6つの大罪〜反民主主義・無責任・反原則・自己矛盾・過誤の上塗り・不正義 12/8】

当研究所は、国(経済産業省)が、今、どろ縄的かつ乱暴に進めている「原発救済策」に反対します。本件は、仮に「原発を支持するかどうか」という論点を切り離したとしても、「誰が負担するか」という問題もさることながら、より根源的・本質的な問題を孕んでいることに対する批判であり、当研究所はとうてい同意できません。その「より根源的・本質的な問題」を「6つ大罪」と呼び、以下、その要点と背景を説明します。

6つの大罪
 1.民主主義に反すること
 2.無責任であること
 3.資本主義や市場の原則に反していること
 4.自己矛盾していること
 5.過去の過ちを未来に上塗りしようとしていること
 6.不正義であること

◆大罪その1:民主主義に反すること

現在、議論が進められつつある「原発救済策」は、以下の表のような論点毎にバラバラに議論されており、ほとんどの国民にとっては、何がどこで議論されているのか理解できません。むしろ国が、意図的に国民が理解できにくいように論点を細切れにして、バラバラに議論しているようにさえ見えます。しかも、あれだけ国民に甚大な影響を与えた東京電力に関する議論については、あろうことか非公開で行われています。

表:原発救済・延命策の全体像
Data564


当研究所は、こうした議論の進め方そのものが、今後の国民負担を議論する枠組みとして、そもそも民主主義の基本原則に反していると考えます。具体的には、東京電力福島第一原発事故を筆頭に国民にもたらした影響の甚大さに加えて、あまりにも拙速・泥縄的・乱暴であること、委員構成の適正さへの疑問、事務局を務める経済産業省への国民不信、非公開で行われることの不当性などです。本来であれば、全体として統合的・総合的に、また誠実に国民にさまざまな選択肢を提示し、熟議を重ねて議論すべきであると考えます。

◆大罪その2:無責任であること

当研究所は、東京電力福島第一原発事故の深刻さから考えて、現状の推計値20兆円超ではとうてい収まらず、最終的には国民負担は避けられないと考えています。したがって、国民負担の是非だけを取り上げて批判するものではありません。しかし問題の本質の一つは、国民負担を議論する前に「負担の責任順位」が議論すらされていないことだと考えます。負担の責任順位は、資本主義や市場の原則に照らして、明らかに以下の順位になるはずですが、責任順位の重い最初の3つが見過ごされています。

・最優先責任  東京電力の自己資産・経営者・管理職・社員
・第2責任順位 株主
・第3責任順位 銀行債券
・第4責任順位 東京電力の電力料金(託送料金ではなく)
・第5責任順位 国民負担(税金等)

なお、2013年の電気料金制度の改悪によって、すでに東京電力福島第一原発事故処理費用は「廃炉」という名のもとで、電気料金に負担が転嫁されていることを指摘しておきます。

◆大罪その3:資本主義や市場の原則に反していること

当研究所は、今回の措置は、いくつもの原則に反していると考えます。

第1に、今回の措置を認めてしまえば、今日の日本社会・日本経済が依って立つ資本主義の原則・市場の原則を根底から否定することになると考えます。

第2に、会計原則に反しています。もともと、原子力損害賠償・廃炉等支援機構による東京電量への支援(交付金)や廃炉原発の減価償却費用化を認めた2013年の電気料金制度改悪が会計原則に反したものであった上に、今回は、それをさらに歪めようとしています。

第3に、送電部門の費用ではない事実上の「原発補助金」(事故炉廃炉費用や廃炉の)を託送料金(送電費用)から徴収することは電気料金原価としても会計ルールとしても、明らかに逸脱しています。本来、国民負担を議論するのであれば国会で審議する「税」による徴収を検討すべきところを、託送料金では国会のチェック機能が働かず、経費も不透明で膨張はさけられない。事実上、所管官庁の経産省にとって「取りやすいところから取る」かたちで、託送料金を都合良く「目的税化」しているように見えます。

◆大罪その4:自己矛盾していること

全般的に論理が自己矛盾しています。国も電力会社も「原発は安いベースロード電源」と位置づけて一定比率の原発電源の維持を目指す一方で、こうしたかたちで「原発補助金」を設けることは、明らかな自己矛盾と言えます。
原発が事故リスクを含めても「安いベースロード電源」であるのなら、原発事故の負担をすべて保険でカバーするなどを含めて、すべて自己責任による負担の構図を検討することが妥当でしょう。そうしたリスクとコストを国民負担しなければ維持できない電源なのであれば、国は「安いベースロード電源」としての位置づけを撤回し、原発に代わる再生可能エネルギーを軸とするエネルギー計画に見直した上で、「過去の残債」についての国民負担を率直に求めていくべきと考えます。

◆大罪その5:過去の過ちを未来に上塗りしようとしていること

そもそも問題の原点は、本来、破たんさせるべきであった東京電力の破たんを回避した2011年に遡ると考えています。これは、当時の民主党政権による歴史的な過誤であるとはいえ、国家的な未曾有の危機の大混乱の中で、松永和夫経産省事務次官(当時)と勝俣恒久東京電力会長(当時)が東電破たん回避の「密約」を交わし、しかも国家的な未曾有の危機の最中でありながら菅直人政権(当時)が退陣に詰め寄られていたという状況の中では、当時の「誤った判断」は1万歩譲って目をつぶらざるを得ないかもしれません。

しかし、現在は違います。東京電力を破たんさせても、停電がおきることは考えられませんし、東京電力福島第一原発事故の処理を進める体制も維持することは問題なくできるはずです。むしろ、この「過去の過ち」を固着し拡大することで、福島第一原発事故の処理はますます見通しが立たたない上に、日本の電力市場の方も現状の「東京電力」という歪んだ存在によって、未来永劫、歪んだままとなることは避けられません。東京電力は、本来、電力自由化市場でフェアに競争すべきなのに、実態は国の資金(交付国債等)という「生命維持装置」を付けられていて、けっして倒産しないし、国も今の構造のままでは東京電力を破たんさせることもできません。今後、事故処理や損害賠償費用などがいくら膨れあがっても、交付国債や託送料金でそれを充当することができるため、今の構図のままでは、今後、過去の過ちが未来に向けてますます大きな歪みとなることは避けられません。

◆大罪その6:不正義であること

最後に、もっとも重大な「大罪」は、現在検討されている「原発救済策」が社会的な不正義であるということだと考えます。そもそも責任を負うべき人が負っていないどころか、今もなお権限を振るうという、不正義がまかり通っています。刑事責任や民事(賠償)責任は別としても、せめて結果責任として、経営責任と政治責任と政策責任のある人々は、経営陣や公職から追放されるべきであると考えます。さもなければ、過ちは拡大再生産されることは必定です。

現状のように「誰も責任を取っていない」まま、本来責任を取るべき人たちによって、以上に述べてきた「大罪」を内包するかたちで国民負担が押しつけようとしていることは、重大なモラルハザードに他なりません。
日本社会を「社会」として維持・発展させていく上でも、こうした不正義やモラルハザードは、けっして容認してはならないと考えます。

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