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世界的趨勢になった水道事業の再公営化~日本政府は周回遅れで逆走

 Transnational Instituteのレポート。
 水道事業の民営化に見切りをつけ、上下水道を「再公営化」に踏み出した事例は、この15年間で35カ国の少なくとも180件にのぼる。
インフラ投資の欠如、料金値上げ、さらには環境汚染など民営化に共通の問題を経験した結果であり、再公営化は総じて水道の民営化とPPPが持続不可能であったことへの共通の対応として実施される。
--―としている。
 それに逆走しているのが日本。政府は5日、「行政事業レビュー」で、PFI方式をめぐって上下水道の導入が進んでいないとし「民間に自由に設備と料金設定ができる権限を与えれば、爆発的に増える」との議論がなされ、初の民営化した大阪市が参考人としてよばれ「民間会社はどこもやっていないので、職員が出向、転籍して株式会社をつくった」とのべ、民間にノウハウがないことが自白した〔これは医療PFIで実証ずみ〕。
【世界的趨勢になった水道事業の再公営化  Transnational Institute】
 「再公営化」は、他の分野でも進んでいる。以前まとめたもの。

【「インソーシング・行政民営化の反転」 備忘録2011/01】


【世界的趨勢になった水道事業の再公営化  Transnational Institute】

◆はじめに

 世界の都市や地域や国で、水道事業の民営化に見切りをつけ、上下水道の経営権を公的部門に取り戻して事業の「再公営化」に踏み出す事例が増えている。その多くは、民間の水道事業者が約束を守らず、利益優先で地域社会のニーズを無視したことへの対応である。本稿では世界的な趨勢としての上下水道事業の再公営化を検証しており、個別事例をまとめた最も包括的な報告書である。この15年間で水道事業が再公営化された事例は35カ国の少なくとも180件にのぼり、欧州、米州地域、アジア、アフリカの有名な事例を含めてその範囲は先進国と途上国を問わない。再公営化を実施した大都市には、アクラ(ガーナ)、ベルリン(ドイツ)、ブエノスアイレス(アルゼンチン)、ブダペスト(ハンガリー)、クアラルンプール(マレーシア)、ラパス(ボリビア)、マプト(モザンビーク)、パリ(フランス)などがある。対照的に同じ時期に水道事業を民営化した大都市は数えるほどで、強力な反対と批判に見舞われたナグプール(インド)やジッダ(サウジアラビア)などにとどまる。  

 この30年以上、国際金融機関や各国政府は民営化とパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)を強引に推進してきたが、いまや水道事業の再公営化の方が政策的選択肢として定着する趨勢にある。インフラ投資の欠如、料金値上げ、さらには環境汚染に至るまで、水道民営化に共通の問題を肌身で経験した結果、地域住民も政策担当者も良質な市民サービスを提供し、水に対する人権を促進するには公共サービスの方が適していることを悟った。再公営化とは、それまで民営化されていた上下水道サービスを地方自治体や、より広くは公共コントロールの手に取り戻すことを意味する。典型的な方法として、地方政府が民間事業者との契約を解消し、または更新しないという形をとることが多いが、その規模は市レベルにとどまらない。地方または国の行政当局が財源や事業方針に大きな力をもち、場合によっては直接に事業を運営していることもあるため、影響もそれだけ広い。

 その形態や規模にかかわらず、再公営化は総じて水道の民営化とPPPが持続不可能であったことへの共通の対応として実施される。民営化は不評を買うことが多いため、民間水道事業者は、コンセッションやリース契約などのPPPは独自な手法であり、民営化とは違うのだと人々に思い込ませる宣伝手法をとってきたが、それは虚偽である。名称にかかわらず、それらはすべて事業の経営権を民間部門の手に渡すことを意味する。政策担当者は水道民営化が高コストでハイリスクなこと、したがって再公営化を選択し、民主的な説明責任のある効果的な公的水道事業の拡充に取り組んでいる行政府の経験から多くのことを学べることを認識すべきである。

◆ 主な結論

1.世界的趨勢となった水道の再公営化

 2000年から2014年に世界各国で実施された水道事業の再公営化は、2014年10月時点で180例が把握されている。調査が進めば、この数はさらに増えると思われる。こうした再公営化への強い流れは先進国でも途上国でも確認できる。高所得国では136件の事例がある。高所得国は途上国に比べて地方自治体の財源が多く、多国間銀行の融資条件に縛られることが少ない。中低所得国では44件の事例がある。先進国で水道事業を再公営化した大都市には、パリ(フランス)、ベルリン(ドイツ)、アトランタ、インディアナポリス(米国)などがある。パリのような代表的な都市だけでなく、多くの小規模自治体も公的管理の道を選択している。たとえばフランスだけでも50以上の市が民間事業者との運営契約を解除するか、または不更新の決定をしている。途上国でもブエノスアイレス(アルゼンチン)、ラパス(ボリビア)、ヨハネスブルク(南アフリカ)、ダルエスサラーム(タンザニア)、クアラルンプール(マレーシア)など、かつて鳴り物入りで民営化された水道事業が再公営化される事例がでている。ジャカルタ(インドネシア)でも市の水道事業の再公営化への動きが強まっている。

2.劇的に加速する再公営化への動き  

高所得国での再公営化の件数は急速に増えていて、81件が2010年から2014年に実施されたのに対し、2005年から2009年の事例は41件だった。この5年間で再公営化の事例は倍増したことになる。フランスなどはこの傾向が特に強く、2005年から2009年まで8件だった事例が、2010年以降は33件に増えている。特に2010年のパリでの再公営化は大きな注目を集め、国内だけでなくスペインなど諸外国にも大きな影響を与えた。

3.共通する再公営化の理由

以下でとりあげる事例が示しているように、水道事業の再公営化を導いた要因は世界的に共通している。水道民営化の謳い文句の嘘が明らかになったということであり、具体的には、民間企業による劣悪な管理運営(ダルエスサラーム、アクラ、マプート)、投資の不足(ベルリン、ブエノスアイレス)、事業コストと料金値上げをめぐる対立(アルマトイ、マプート、インディアナポリス)、水道料金の高騰(ベルリン、クアラルンプール)、民間事業者への監督の困難さ(アトランタ)、財務の透明性の欠如(グルノーブル、パリ、ベルリン)、人員削減と劣悪なサービス品質(アトランタ、インディアナポリス)などがある。

4.民間契約の解消による再公営化事例の多さ

世界的にみると、民間契約の期間満了前に契約を解消して再公営化に転じる事例が最も多いが、例外的にフランスでは期間満了まで待って民営化をやめる自治体が大半である。契約解消による再公営化の事例は世界全体で92件あり、期間満了後の不更新の事例は69件である。つまり民間契約があまりに持続不可能なことが明らになったために、自治体が補償金支払い義務の可能性を承知のうえで、あえて再公営化に踏み切った事例が大半だということである。再公営化に伴うコストを回避するには、そもそも民営化しないのが最善であはあるが、民間契約を中途解消することも可能であり、長期的には民営化を継続するより安上がりなことをも示している。

5.再公営化を先導するのは民営水道事業の経験が長い国

水道民営化の経験が最も長く、世界最大手の多国籍水道事業会社の本国でもあるフランスで再公営化の事例が多発しているのは偶然ではない。フランスの地方自治体と市民は、ヴェオリアとスエズが世界中に輸出している「民間経営モデル」を直に経験してきたからだ。ここ数年、フランスの多くの都市がグルノーブルとパリにならって水道事業の経営権を取り戻す決定をしている。今後数年でさらに多くの契約が期間満了と更新時期を迎えるため、再公営化に踏み切る自治体の数は増えると見込まれる。

6.再公営化はアクセスと水道事業の質の改善をもたらす  

民間企業の至上命題である利益の最大化という動機を排除することで、水道事業の再公営化はアクセスと事業の質の向上につながることが多い。パリ、アレニス・デ・ムント(スペイン)、アルマトイ(カザフスタン)など多くの都市で、公営水道事業の効率は同じか向上させつつ、料金は引き下げられている。グルノーブル(フランス)、ブエノスアイレス、アレニス・デ・ムントなど新たな公営事業体が水道システムへの投資を大幅に増やした事例もある。再公営化による社会的便益が顕著だったのはアレニス・デ・ムントの事例で、ここでは地方政府と新たな公的事業体が、低所得世帯も利用できるよう料金体系を見直した。ブエノスアイレスでは、新しい公営事業体であるAySAが、誰でも利用できる水道の実現を最優先課題にすえてインフラへの投資を劇的に増やした。再公営化以降、AySAは貧困地域に勤務する従業員への訓練プログラムを拡大し、水道利用者の拡大に取り組んでいる。

7.再公営化は民主的統治を確立する機会になる

再公営化で説明責任と透明性の強化が可能になる。パリとグルノーブルでは新しい公的水道事業体が先進的な住民参加の方式を導入した。第1に、市民社会代表が地方自治体代表とともに理事会メンバーに加わり、同等な議決権を付与されている。これにより市民社会は、生活に不可欠なサービスである水道事業の経営に関する決定に参加し、地域社会の利益に応えた事業運営ができるようになった。第2に、市民による監視体制が確立され、投資、技術的選択肢、料金設定に関する決定に参加できるようになった。両市とも、完全な情報開示こそ、説明責任、透明性、参加のための基本的条件だと考えている。

8.再公営化は訴訟になる可能性などの外部リスクを伴う

再公営化を成功させるには慎重な計画立案と外部リスクの把握が必要であり、民間企業寄りの多国籍機関の厳しい監視下にある途上国の場合はなおさらそうである。政策担当者は、再公営化に伴う取引コストとして民間事業者の逸失利益に対する補償が必要な場合もあることを認識しておくべきである。民間との契約を期間満了日前に解消する場合、民間企業は地方自治体に対し、契約で約束された利益の全額の支払いを求めて訴訟を起こすことができる。スペインのアレニス・デ・ムントのコンセッショネア(事業の権利を与えられた民間事業者)は、再公営化に頑強に反対して市議会を訴えた。インディアナポリスの市当局は20年間の契約を10年早く解消するために、フランスの多国籍企業ヴェオリアに2,900万ドルを支払わねばならなかった。ベルリン住民は、民間事業者2社から株式を買い戻すために高額のコストの支払いを受け入れざるをえなかった。アルゼンチンのトゥクマン州とブエノスアイレス市の当局は、民間のコンセッショネアから補償金の支払いを求める訴訟を国際仲裁裁判所に起こされた。ジャカルタ(インドネシア)、ゼゲド(ハンガリー)、アレッツオ(イタリア)などのように、民間契約の解消と再公営化を検討している地方自治体の決定が、高額の補償金支払いリスクによって捻じ曲げられることもある。だが、それ以外の事例では得られる便益が明白なため、自治体もあえてリスクに立ち向おうとしている。

9.官官パートナーシップ(PUP)が再公営化の取り組みを支援できる  

公的な水道事業体と国または地域レベルの団体が再公営化の過程で協力する事例が増えている。スペインでは地域の公営事業体であるアグアス・デル・フエスナ(アンダルシア州)が22の市で再公営化を支援した。パリとグルノーブルの再公営化によって誕生した事業者は、フランスや他国の自治体が水道事業を再公営化し、改善するのを中心になって支援した。フランスの地方当局と公的水道事業者は、地方自治体や公営事業体の団体が支援した再公営化の経験と情報を交換することで、大きな利益を得ている。カタロニア州の州公共水道事業体連合CONGIACもアレニス・デ・ムントの再公営化に際し、方針決定から実施に至る過程で重要な役割を果たしている。こうした事例は国を問わずみられる。モザンビーク政府は官民パートナーシップ(PPP)の実験に失敗した後、オランダの公営水道事業体との間で国内の能力育成を軸に非営利のパートナーシップを結んだ。官官パートナーシップ(PUP)の一環としての公的水道事業体間での協力は、高コストな官民パートナーシップ(PPP)の有望な対案であり、公的な水道事業体のサービス改善を支援する最も効果的な方法と言える。


◆政策担当者と地方当局へのメッセージ

本稿は、過去15年間の水道事業再公営化をめぐる世界的状況を整理した最初の包括的な報告書である。そこからは先進国と途上国の政策担当者と地方当局に対する次のような強力なメッセージが読みとれる。

1.水道事業の民営化またはPPPは回避すること

水道事業の経営権の民間委譲を検討している政策担当者と当局は、リスクを分析し、他の地方自治体の失敗から学ぶ必要がある。水道民営化もPPPも、約束した効率化やイノベーションを実現するのではなく、地域社会と自治体に長期的にマイナスの影響を与えるのが常だといっていい。期待はずれの民間契約を期間満了前に解消するのは、巨額の補償金支払いのリスクがあるために容易なことではない。

2.再公営化は水道民営化とPPPの破綻を修復する実現可能な対案

水道事業の再公営化と品質向上については、各地の自治体と地域社会から多くの教訓を学べる。期待はずれの民間契約を解消しようと検討している政策担当者は、水道事業の再公営化に成功した先進国と途上国の180以上の事例から貴重な教訓を学べる。また再公営化は水道事業を再創造し、効果を高め、地域社会に対する説明責任を確立する機会でもある。再公営化に対しては、公的事業体、地方と国レベルの公共水道事業体連合、そして市民社会が具体的支援の体制を整えつつある。公的機関同士の連帯、協力、パートナーシップは、より民主的で、非排他的であり、持続可能な水道事業への道を切り開く。

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