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背筋凍るTPPの真実〔メモ〕

鈴木宣弘・東大教授の論考〔前衛2016.11〕からのメモ
農業、食料、職の安全問題を軸にしたものであるが、「私服を肥やすためにじゃまなルールや仕組みは徹底的に壊し、また都合のいいように変える」ことで、命、健康、暮らし、環境よりも私益を追求する、「今だけ、金だけ、自分だけ」の行為というTPPの本質を告発するとともに、野党共闘で示された「まっこうから悪政と対峙する姿勢の重要さ」を指摘し展望を語る。

【背筋凍るTPPの真実】

◆「自由貿易」と「規制改革」が本質

・本質…「対等な競争条件」の名目の下に「私服を肥やすためにじゃまなルールや仕組みは徹底的に壊し、また都合のいいように変える」ことで、命、健康、暮らし、環境よりも私益を追求する、「今だけ、金だけ、自分だけ」の行為。「1%」のためのもの
~基本的に制度とは、一部の人々に利益が集中しないよう公平・公正を保つためにつくられたもの/一部に利益が集中しないように相互扶助で中小業者、生産者の利益・権利を守る協同組合 ~これらは最も邪魔な存在

・それゆえ「既得権益」「岩盤規制」と攻撃/ 米国でも日本でも、推進する政党、政治家は、多国籍企業から多額の献金を受けている ~ 結局、一部の大企業の利益のための政治


◆アトランタ「大筋合意」の真相~日本は米国の草刈場
・条文の玉虫色の決着で「活躍」した日本政府 ~ 新薬データの保護期間 当初20年、最終的に12年を主張した米国と5年で譲らない豪州、マレーシアの中をとり、5年とも8年とも取れる表現の条文を作成/ TPPは決定し、進んでいるようでも、条文の解釈をめぐって今ももめている。

・「決着」のために譲り続けた日本

①ハワイ合意を決裂させた自動車利益まで譲歩~ TPP域内での部品調達率が55%以上でないと関税撤廃の対象とならない〔中国、タイでの生産の多い日本車は条件クリアがむつかしい〕、しかも関税ゼロは普通自動車25年後、大型車30年後

②農産物では、日本だけが7年後の再交渉を約束させられる/協定には、今回の合意は関税撤廃への過程であり、最終目標は全面的な関税撤廃、と書かれている。

◆何も説明していない政府

・「交渉過程は4年間秘密」と、全面黒塗り資料を出すという国民愚弄
・共同通信2016年4月 全国知事アンケート 説明「十分」、決議「守られた」、試算「現実的」 全てゼロ

◆内閣府試算のでたらめさ

・GDP 前回、全面関税撤廃の下で3.1兆円増が13.6兆円に/農産物の損失3兆円から1300-2100億円
~前回も、価格が1割下がれば生産性が1割上がる「生産性向上効果」、GDPの増加率と同率で貯蓄・投資が増えるとする「資本蓄積効果」で水増ししたものを、加速度的に水増ししたもの/どのようにも仮定、操作可能

・2016.6 農水省の事務次官の挿げ替え、「酪農団体の廃止はさすがに無理」と抵抗した担当局長、課長の更迭
→ 霞ヶ関について、幹部人事を官邸が決める事にした法改正で、抵抗力を骨抜きに

・影響試算の根本的問題~農産物価格が10円下がっても、差額補填により、所得・生産性が普遍、というもの
/加工原料乳価 7円下がっても生クリーム向け補填と畜産クラスター事業の強化で補うというが、保証なし

・国内の主食米をすでに飼料米に向けられている中、輸入米を飼料米にまわせば影響ないというのは虚構

・牛肉、豚肉の赤字9割補填するので所得、生産量がかわらない/とするが、補填には、農家負担が25%あり、実質の政府補填は67.5%で、赤字のままだから生産量は減少するのが当然

・アメリカ政府による影響試算2016.5.18 /実質GDPは0.15しか増えず、農業分野は日本への4000億円含め8000億円の輸出増だが、製造業は生産も雇用もマイナス
→ 日本政府の農業生産額の減少が1700億円前後→ 米だけでなく豪,加など加えると、過少評価は明らか

◆TPPはビジネスチャンス?

・グローバル企業にとっては話であり、国民の仕事増、賃金アップは不可能
→ ベトナムの賃金は日本の1/20~1/30.。そのもとで投資や人の移動の自由化が進めば、結果は明らか

・政府試算で、失業が問題にならない仕掛け/ 農業で失業しても、即座に自動車産業の技術者として再就職が可能とする生産要素の「完全流動性」「完全雇用」を仮定した虚構の数字
→ 非現実的な仮定を排除したタフツ大の試算/ 日本のGDPは、10年間で0.12%低下、雇用7.4万人減

◆「地産地消」を破壊するISDS条項

・企業が政府を訴える仕組み/ 投資による利益確保のみが物差し~ 「濫訴防止条項」は、こりまでの自由貿易協定には規定されているもの。そのもとでも訴えは乱発されている。

・TPPは「米国企業に対する海外市場での一切の差別と不利を認めない」ことが本質/ 食品表示、安全基準、地産地消の取り組みも、TPP協定に緩和が規定されてなくてもISDS条項で提訴される危険
→ 米韓FTA 韓国政府は、提訴される懸念から、学校給食での「地産地消」条例を廃止・修正

・公共事業 / 地元企業優先などローカルロールも不可能になる危険。そもそも今でもTPP参加国の中で最も開放している国
→ 一方、アメリカは、TPPが連邦法にしか影響しないので、州レベルの公共事業は国際入札の対象外、州法による「バイ・アメリカン」(公共事業に、米国産義務付け)も影響をうけない

◆消費者の利益になるか

①「食料価格が下落」という主張…

・牛丼、豚丼など確かに安くなる。が、関税は下げれば関税収入(1.2兆円)も減る。農産物の補助制度などは、関税収入を財源としており、減少分を補う消費者、国民負担は別の形で発生する
〔メモ者 トータルでは、プラスマイナスゼロ〕

②健康リスクの増加

・米国牛肉 女性ホルモンめエストロゲン投与/ 発がん性があるとしてEUでは使用・輸入も禁止
~ EU 米国輸入を禁止してから6年間で乳がんによる死亡率が大きく低下したデータもある/ 日本は国内使用は許可されていないが、輸入は許可されている。

・牛、豚の成長促進剤 ラクトパミン  人に中毒症状を起こすとしてEU、中国、ロシアで使用、輸入禁止/日本は、国内使用は許可してないが、輸入認めている

・米国乳牛 遺伝子組み換えの牛成長ホルモノを注射~ 米国で使用許可された94年から数年後に、乳がん発生率が4倍、前立腺ガン発生率が7倍という論文が発表され、スターバックス、ウォルマートは「成長ホルモンを投与した牛乳、乳製品は扱っていません」と表示/ 日本は使用は許可されていないが、輸入はフリー

・BSE 20ヶ月齢以下に限定して輸入を認めていたが、30ヶ月以下に緩和。米国での検査率は1%未満

・食の安全基準 「国際基準の順守となっている」が、国際基準は日本の基準より緩い/TPP協定は、規制には「科学的根拠」と規定
~ BSE 30ヶ月齢以下にしている「科学的的根拠」、「遺伝子組み換えを使用してない」表示の「科学的根拠」を示せと迫られ、示せないなら止めろとなる。
→ 仏カーン大学の実験。二年間ラットにM社のGMトウモロコシを食べさせたら、ガンだらけにななつた。米の安全性検査は、3ヶ月食べさせた結果で判断され、長期的影響を無視している。

・グリホサート系除草剤でも枯れないGMトウモロコシ ~ 最近は、耐性を持つ雑草や害虫の発生で使用量が増加 / 米国では残留基準を緩和 → これらが大量に日本に輸入されている

・防カビ剤(ポストハーベスト) 日本は収穫後の農薬散布は禁止されているが、米国の果物、穀物は、長期間の輸送に耐えるように使用/ 米国の圧力により坊カビ剤を食品添加物に分類し輸入を認めている/日本では食品添加物の表示義務/ 米国は、それを不当な差別といい始めている
→TPP付属文書 二年前に米国の要求に応えて規制緩和を約束(当初、政府は、そんな約束はないとウソ)

☆健康リスクを勘案すれば「表面的には安く見える海外産が、総合的には国内食品より高い」と認識すべき
→ 原産地表示が「科学的根拠なしに米国を津別するもの」とISDSの提訴で脅かされる危険/ 米とEUのFTAでもEUのチーズの原産地表示を問題視/ 米国内での食肉の原産地表示を義務が、カナダ、メキシコから不当差別としてWTOに提訴され、米国が敗訴
→ TPPに限らず、「自由貿易」の名のもとで、食料の原産地表示が困難な状況が広がっている

◆TPP以前に現場の疲労が進んでいる ~ 自民党農政の結末

・現状の政策体系では、日本の食と農を持続的に守ることは困難になっている。
・10年を待たず米価1俵1万円を切る(政府は、収入保険を、経営安定対策というが、過去5年間の平均米価を基準とするので、米価下落のもとでは、基準そのものが年々低下していく)
・ 米の総生産は2030年に670万トン、稲作農家数は5万戸を切り、地域コミュニティを存続できない地域が続出する可能性/ 一方、コメ消費量は、コメ離れと人口減で600万トン
→ 生産減少で地域社会が維持が心配されるにもかかわらず、コメが70万トン「余る」
→ 政府は、他作物への転換、飼料米生産/ が、飼料米の需要先となる畜産部門が、現状の4-5割程度に縮小

☆自民党農政のもとで、農村現場は持たなくなっている。そのうえ、TPPを進め、所得の下支え廃止(戸別所得補償制度廃止、生産調整の緩和)、農協解体を推進→ 「農業、農村はつぶれてよい」と言っているのと同じ

◆競争力でなく食料戦略が米国の輸出力を支える

・米国産コメ タイ、ベトナムの2倍/ が一俵4千円で輸出 国内米価との差額は、政府が補填して輸出(輸出補助であり、国内対策でないとの「理由」をつけておとがめなし。自由貿易どもない)
→ 穀物3品目で、多い年で1兆円。日本は、輸出補助金ゼロ

・日本農業「過保護論」のウソ 農業所得に占める政府補助金の割合 英仏90%前後、スイスほぼ100%、日本は4割弱で先進国で最も低い 
→ 農業は、命を守り、国土を守り、地域を守っている産業として国民的に位置づけている

【TPP 「農業過保護」論、「輸出産業」論の虚構(メモ) 2015/12】

◆農協「改革」の本質

・「改革」という名目で、実質は「解体による収奪」、地域を支えてきた相互扶助のルールを壊して、農協の事業と金を、資本の利潤追求の場にしようとするもの
→ 信用と共済で140兆円ある農協マネーをねらう保険・金融機関、農協の価格交渉力をなくしもっと安く買い叩きたい流通業者、肥料や資材の価格を上げたい商社、農業参入したい大手小売・流通業者と人材派遣会社などが、「既得権益」「岩盤規制」の打破を大義名分に、市場を奪おうとするもの。
→ 農家の所得向上とまったく逆なのが政府の「農協改革」

◆地域の未来を、私たちの力で築こう

①本質的な議論を深め、TPP批准を突っぱねよう
〔メモ者 本質とは、多国籍企業の利潤獲得に邪魔なルールを取っ払い、貧困と格差を拡大すること〕

・世界的に行過ぎた格差と富の集中に対する大きな揺れ戻しの潮流が顕著に
 アメリカ 「格差是正」「自由貿易反対」の声がサンダース、トランプ現象を生み出す
 イギリス 格差と貧困の広がり、EUの緊縮政策に反対の声が、国民投票で{EU離脱}へ

〔メモ者 各種の報告でも・・・
OECD  「所得格差は経済成長を損なう」 2014.12
国連 持続可能な開発のための2030アジェンダ 「あらゆる形態と側面の貧困を撲滅することが最大の地球規模の課題」2015.9〕

・その中で、日本だけがTPP、残業代ゼロ法案、社会保障の切捨てなど、極端な方向に進もうとしている
~ 先進国の中でも、最も貧困率が高く格差社会となっている日本の国民こそが声をあげなくてはならない

②新自由主義推進、米国追従でいいのか

・オバマ大統領 TPP推進の最大の理由の1つが中国主導のAIIB
→ 米国多国籍企業が途上国から利益を得るために活用してきた世界銀行、IMFによる「収奪」体制〔新自由主義政策の押し付けと一体で〕が、AIIBによって崩される心配
→ TPPにより、米国企業のアジア諸国からの「収奪」をいっそうし易くしようとするところに、AIIBで、それに逆行する流れを阻止したい/ オバマ大統領「中国にアジアのルールを作らせてはいけない」発言

・AIIBには、米穀物メジャーの自己利益のための開発政策から、途上国の貧困撲滅につながる開発援助投資を行えるよう、中国、ロシア、インドなどの新興国が立ち上げた側面も認識すべき
→ 思考停止的に中国にむやみに対抗し、米国に盲目的に追従する姿勢をつづければ、最終的にどこからも見放され孤立し、日本の国民を守ることはできない
〔メモ者 南スーダンの自衛隊PKOも、先進国で部隊を出しているのは日本だけ。中国がPKO部隊を送っており、アフリカへの関与で、遅れをとりたくない、という「対抗心」が固執する背景〕

③野党+市民 ~ まっこうから悪政と対峙する姿勢の重要さ

・参院選 野党共闘、「東北、甲信越の乱」 〔メモ者 新潟知事選の統一候補勝利〕
→ まっこうから悪政と対峙する姿勢を強めること意義が確認された

・衆院選挙試算〔森島賢・元東大教授〕 野党候補一本化なら、前回と同じ得票数でも
野党64 vs 与党231 が逆転し 野党155 vs 与党140 に。
→ この数字の意味するところをしっかり受け止めれば「暴走阻止」は可能

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