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「大震災後に作られた法律は、被災者を救済したのか」 メモ

 「東日本大震災 復興の検証」――「第9章 大震災後に作られた法律は被災者を救済したのか」〔津久井進・弁護士〕と、「1章 復興災害の構図と住まい・まちづくり」〔塩崎賢明・神戸大名誉教授〕からのメモ
 原発避難者には救済の法的根拠がとぼしい、半壊以下の被災者の住宅支援策がないなど災害救済法の不備などなど・・・。災者を中心とする理念にもとづく、目の前の命を優先する法律が必要/一人ひとりが大事にされる災害復興法を制定するタイミングである、と指摘する

【大震災後に作られた法律は、被災者を救済したのか】

1 消されつつある原発避難者

・原発事故から5年、きちんとした法的対応はなされず、おざなりの施策は、避難者の切実な声にこたえていない-― その原因
①日本社会において一人ひとりの避難者が大切にされていない
②原発避難者を保護する法律が機能していない
③そもそも避難者が誰であるのか、という根本的な定義がはっきりしない

・避難者の生活実態について、まともな調査さえされていない。/現実は、避難者を線引きする冷酷な対処が筒けられる/ 避難者は、「自分が避難者なのか」「被災者ならどんな権利があるのか」と、社会からも制度からも見放された感覚を持ち、自分はどういう存在なのかと問い続け、自尊心の傷をふめている。

●政府の施策 ~ 原発避難者という存在の「消滅」を狙う
・避難者が存在しなくなれば、事故の終結を宣言できる/ 五輪までの原発事故に区切りをつけるという世界への公約を、原発避難の隠蔽で実現しようとするもの
→ 阪神淡路大震災 「避難所」に数千人の避難者がいたが、「待機所」と看板をつけかえ「すべての避難所は解消した」と宣言した手法と同じ/ 苦難を背負った人々の存在を、社会から消し去る手法

●「福島の再生なくして、日本の再生はない」
~ が、そこに、一人ひとりの避難者の苦悩を解決することが、再生につながる、という回路がない。

・真の「日本の再生」には
①一人ひとりの避難者の存在を正面から認め
②きちんと制度を確立して救済し
③難民化しつつある彼らに普通の日常を取り戻させる。地に足の着いた施策の実施
を早急に講じること

2.5年目の節目に被災者救済の法制度を点検する
・巨額の公費をついやした「集中復興期間」が過ぎた /が、人々の生活の復興は進んでいない
~ つ1の理由/ 一人ひとりの被災者を救済する制度の欠落/または、被災者救済の制度が質・量ともに不足しているか、誤って使用されているか

●「法のあり方」の問題

・震災後の多くの立法~時期区分し分析
①おおむね一年以内に立法された初期段階
②その後5年目までに立法された中期段階
③これからの時期に措置されるであろう後期段階

・立法作業/ 社会で起きているさまざまな現象か抽出された教訓を、社会の一般的な仕組みに組み込む営み
~ 東日本大震災の教訓が生かされて立法化がされたとは、必ずもいえない現実

・初期段階には、40-50の立法化がなされた。一本も立法化されなかった中越地震と比べると目覚しい変化
→ が、阪神大震災、中越地震などで浮かび上がっていた課題を一斉に立法化したもの。やり残していた課題をあわてて手当てしたもの
・中期段階の立法は、東日本大震災を踏まえたものだが、ほとんどが中央の行政の目線で策定されたもの
~ 被災者が主体的に発意した法制度はほとんど見当たらない

3.初期段階の救済法

 被災者救済を目的とするものが目立つが、不備の修正を目的にした、マイナーチェンジな立法が中心

●「被災者弔慰金の支給等に関する法律」にもとづく災害弔慰金
・支給対象となる遺族に、兄弟姉妹が含まれていなかった。
・2011年8月改正で、同居、生計を一にする兄弟姉妹を対象に追加
~ 同居していた建築業を営む兄弟の弟が津波の犠牲になったが、「遺族でない」と支給されなかった事例を、弁護士等が世論に訴え改善 / が、同様の問題は、阪神淡路大震災でも指摘され、00年には議員提出法案が出されたこともあるが、放置されてきたが課題

●「災害援護資金貸付」の制度
・従来は、貸付条件に「保証人を立てること」「年3%の利息」。将来返済できない状況になったときの免除理由が死亡等に限られていた。
・保証人不要、利息年1.5%。保証人を立てれば無利息、に改善。免除理由も弾力化
~ 阪神淡路大震災で、同資金過失の大量滞納が発生し、市町村が多額の不良債権を管理することが、大きな社会問題に発展していた、という背景があった。

●二重ローンに関する制度の改善
・他国では、担保物件が滅失した場合、ローンも消滅するノンリコースローンという法制もある
・日本では担保とローンは別々に扱うので、住宅等が滅失してもローンが残る
~その対応は、91年普賢岳噴火災害以来の課題だったが、阪神淡路大震災で利子補給の仕組みが創設

・新たな措置
①「事業者再生支援機構」が、被災債務を買い取り、機構が債権者として、債務を減免・猶予するととにも新たなファイナンスで、事業者の再生を支援する仕組み
②「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」〔通称「被災ローン減免制度」〕/ガイドライン運営委員会が、債務者の状況を調査、弁護士を無償で配置し、債務減免の交渉を支援し、破産手続き等の法的手段を経ないでも、破産と同等の債務減免の効果をもたらす、というもの

4.初期段階で放置された「災害救助法」の改正

・行政にとって重要な基本法例が「災害対策基本法」なら、被災者に最も重要なのが「災害救済法」
・守備範囲が極めて広い法律 /避難所設置と運営〔食事、寝具、日用品〕、家屋の応急修理、仮設住宅の提供など、被災者の避難生活全体をフォローアップ
・支援が消極的になる制度設計 /自治体の被災者救助に対して国費が補助される制度であり、費用負担に慎重な自治体によって、極めて制限的な適用がされてきた
~ 凍える体育館で長期間にわたり雑魚寝が余儀なくされ、冷えたおにぎりと菓子パン…という状況は、先進国としてはあり得ない時代錯誤の様相/ 1947年に制定された古い法律が、その根拠となっている

・応急仮設住宅~ 災害救助法は大規模災害を想定してないことから、最長期間2年が機械的に適用され、1年後との更新という付け焼刃の対応に / 原発の自主避難者は、住宅再建の見通しがないにもかかわらず、17年度末で打ち切り/ 現実を無視した教条的な先例主義

*鬼怒川決壊水害~ 40日以上もおにぎり、菓子パンの配給、住宅避難者への食事供与の打ち切り、避難所の劣悪な環境を放置したままの整理・統合の繰り返された 
→ 法制度の改正が放置されたまま、東日本大震災の教訓が普遍化されていない

●災害救助法の改正とともに、運用方法の改善が必要
・旧厚生省の内部マニュアルの5原則 「平等の原則」「必要即応の原則」「現物支給の原則」「現在地救助の原則」「職権救助の原則」
→ 悪平等の展開、必要性が減じれば直ちに救助の取り止め、過敏な金銭供与の拒絶など、災害救助法の悪弊の根拠となっている

・新たな6原則を/「人命最優先の原則」「柔軟性の原則」「生活再建継承の原則」「救助費国庫負担の原則」「自治体基本責務の原則」「被災者中心の原則」

・ねじれの解消/ 災害対策は、一時的対策は市町村。災害救助は、都道府県が実施責任を負い、市町村は受託先として救助に携わる仕組み/ 被災者に最も身近で直接的な支援の役割を担う災害救助法こそ、市町村が実施責任を負うべき〔メモ者 当然、マンパワーの充足などの財政的手当てが必要〕

5.原発避難者と災害救助法による住宅の供与

・原発避難者に供与される住まいの法的根拠は脆弱/ 災害救助法は、災害の急性期への適用を守備範囲としており、その運用は「応急的」なものとして規律されている ~ よって、建築基準法、景観法で期限2年となっており、それ以上の延長は、法の想定外

・自然災害と原発災害は根本的な違い
①元の場所に戻れるかどうか不確定 ②被害の時間軸が桁違いに長い ③原因者のある人的災害
 → が、原発災害に適応する法律がない。そこで災害救助法を転用しているだけ/ 被害実態にあわせるのでなく、逆に避難者が制度に縛られている

*県外に避難している原発避難者は、災害救助法と別の根拠で住まいの提供/ 公営住宅の「目的外使用」
→ 入居者を襲う3つの圧力 ①避難先自治体の方針に大きく左右される ②あくまで公営住宅の入居条件に縛られる ③一般の住宅困窮者との公平性を強調される /居住という人権が「自治体の一存」で決まる

*避難から恒久住宅に移る場合も法的根拠は乏しい/災害公営住宅… 住宅困窮者に住まいを提供する目的
→ 原発避難者は、避難を余儀なくされたことで、あるいは生業を奪われ、地域社会の機能停止〔メモ者 医療機関など〕が原因で、住環境を失ったもので「住宅がない」わけではない。ニーズの違い着目する必要がある

*移住を決意する場合/ 避難者が最も悩むのが住民票の移動により、以前の自治体との関係が切れてしまうこと/ 住宅支援の打ち切り強行…避難者に戻るか移住するかの二者択一を迫るもの
→ 本拠地を避難元に置き、日常生活に伴う行政サービスは避難先で受ける「二重住民票制度」「準市民制度」が提唱されてきたが、本格的な立法検討がされないでいる。

・現在、原発避難者は、法制度の保護の枠外に放置されている/ 前例のない社会事態に対し、前例のない法制度が作られるべき
→ 間尺にあわない別の仕組みを、無理矢理適用に適用させていることは、行政による二次被害に他ならない/避難者の災害関連死が今も増え続けている〔福島の関連死1976人/15年9月、自殺80人/15年11月〕ことは、無関係ではない

*日弁連の意見書/住宅供与を国の直轄事業とし、長期にわたる住宅供与・更新制度の導入を提案

・原発事故を教訓とした法制度の整備は、後期段階の重要なテーマ、社会的責務

6.中期段階の立法――中央主導立法と被災者救済

・2年目以降の中期段階でも多くの立法。復興の推進力となったが/被災者の生活再建に直接役立つ制度はあまりない
・原因の1つ/ 中央の視線に貫かれた政策が立案されたこと

*復興構想会議「復興の提言」 7原則が掲げられ、原則5は「被災地の復興なくして経済の再生はない。経済の再生なくして被災地の真の復興はない」~この原則を受けて制定された「復興基本法」の第一条目的の末尾に「日本の再生を図ることを目的とする」と明記
→ 復興予算の流用問題の原因 /「日本の再生を図る目的」なら、被災地外の道路工事も、道徳教育の啓蒙パンフレットの予算にも使える /会計検査院調査 326事業のうち1.4兆円が被災地復興む無関係

●災害対策法の大改正と「人間の復興」の基本理念
・ そうした中で、被災者目線で善戦したのが「災害基本法」の大改正

・5つの主な改正点
①災害における基本理念をはじめて明記
②被災者保護の規定をはじめて盛り込んだ
③避難者への対応を整序した
④大規模災害に即応できる行政対応の仕組みを整序した
⑤教訓の伝承や防災教育など市民力の底上げを図った

・基本理念については、「人間の復興」を提唱する声が各方面からあがった/日弁連の数多くの意見書、関西学院大学災害復興制度研究所の法案など/ そのルーツ…大正デモクラシー論者・福田徳三が関東大震災時に「復興事業の第一は人間の復興でなければならぬ」/ 復興基本法の「日本の再生を図る」とする理念とは段違いの優位性をもちね今後も活用されるべき基本指針


★災害対策基本法 (基本理念)
第二条の二  災害対策は、次に掲げる事項を基本理念として行われるものとする。
一  我が国の自然的特性に鑑み、人口、産業その他の社会経済情勢の変化を踏まえ、災害の発生を常に想定するとともに、災害が発生した場合における被害の最小化及びその迅速な回復を図ること。
二  国、地方公共団体及びその他の公共機関の適切な役割分担及び相互の連携協力を確保するとともに、これと併せて、住民一人一人が自ら行う防災活動及び自主防災組織(住民の隣保協同の精神に基づく自発的な防災組織をいう。以下同じ。)その他の地域における多様な主体が自発的に行う防災活動を促進すること。
三  災害に備えるための措置を適切に組み合わせて一体的に講ずること並びに科学的知見及び過去の災害から得られた教訓を踏まえて絶えず改善を図ること。
四  災害の発生直後その他必要な情報を収集することが困難なときであつても、できる限り的確に災害の状況を把握し、これに基づき人材、物資その他の必要な資源を適切に配分することにより、人の生命及び身体を最も優先して保護すること。
五  被災者による主体的な取組を阻害することのないよう配慮しつつ、被災者の年齢、性別、障害の有無その他の被災者の事情を踏まえ、その時期に応じて適切に被災者を援護すること。
六  災害が発生したときは、速やかに、施設の復旧及び被災者の援護を図り、災害からの復興を図ること。


● 「子どもの被災者支援法」と避難者の自己決定権
・12年議員立法で「原発事故子ども被災者支援法」が成立/ 理念としては極めて充実した内容
~ 避難者の自己決定権の尊重、住まいや仕事の保障、健康に資するための医療措置〔無料検診〕の制度づくりのアウトラインを定め、被災者の困難な生活実態に抜本的に対処するための基本法

・が、制定直後から、復興庁等が中心となり意図的に支援法の骨抜きが画策され、具体的施策が何ら実施されないまま、現在に至っている。/制度成立後に、市民や法律家などが関与する仕組みが作られず、中央省庁に具体的制度設計を一任したことが原因

7 後期に期待される救済法

・原発事故の教訓は、被災者救済の場面では、未だ法制化されず、教訓が生かされていない
・教訓の検証を踏まえた立法を早期に図り、東北の被災者に適用することが最も有効な救済手段となる/首都直下型地震、南海トラフ地震などが迫っている現状から見ても、教訓の法制化は喫緊の課題

●3つの提言
①「災害救済法」の改正  /「4」に詳述

②災害関連死に関する制度の改善

 弔慰金支給法が、硬直的、制限的に適用され、救済されるべき多くの事例が切り捨てられている

*13年9月 日弁連「震災関連死の審査に関する意見書」
 人の死に関わる重大案件の審査なのに、平均審査時間は7.2分/ 関連死の認定率 福島86%、宮城76%、岩手60% ~ 認定率の低さ、地域による差異がうかがえる

*阪神大震災の事例/震災6日前に危篤となり、いつ死亡してもおかしくないと診断された75歳男性が、震災で人工呼吸器が外れ死亡したケースで、震災関連死と認定〔大阪高裁98年4月28日判決、最高裁でも判決が維持〕

→ が、岩手県の関連死基準「高齢・衰弱など震災がなくても同様の経過をたどったと考えられる場合は因果関係がないと判断する」と明記/ 明らかに狭い基準で対応/また、認定は、現在ブラックボックスの中で行われている

・判例の集積あり、改めて基準の定立が必要/ 「死」という被災者の最後の教訓を丁寧に拾い上げ、検証し、次の災害で失敗を繰り返さないようにすることが求められる

③被災者生活再建支援法の改定

・阪神淡路大震災後に成立した議員立法〔鳥取県が独自に支援を実施したことが大きな転機となった〕/全壊世
帯に最大300万円が支給されるもの /2011年に改正が行われる予定だったが、東日本大震災により延期されたままになっている。

・東日本大震災の教訓
 被災者の生活基盤は住家だけでなく仕事、心身の故障、家族・人的交流など様々な要素がある。住宅のみに着目する適用要件は実態にあわない

・仙台市被災者生活再建加速プログラム /被災世帯ごとにニーズを個別に把握し、住まいの支援だけで足りるケース、就労支援も加えなければならないケース、生活再建全体への支援が必要なケースなど、支援策を個別に考えるスキームを実施。生活全体に対応する方法で見習うべきもの

・もともとの世帯が分離して再建に臨む例も多い/離婚した場合、世帯主である夫のみに支給、母子世帯に支給されないケースも多く見られた 
→ 世帯単位でなく、個人単位で支援するのがニーズにマッチする

・災害ケースマネジメントの必要性/ 金銭支給とともに、情報提供、寄り添いめ見守りなどを行う「被災者生活再建支援員」のような人的支援も含めた、個々の被災実態に合わせた支援方法を策定し実施する制度に再編する

8.今こそ被災者目線を

・阪神淡路大震災から21年/新長田の再開発事業、孤独死、震災障害者の放置など、復興施策のまずさが引き出す「復興災害」に苛まれている人々が多数いる。
・東日本大震災も「復興災害」の芽がる。壊れたままの自宅で過酷な生活を続ける「在宅被災者」が、宮城県だけでも数千人はいる。制度から漏れ落ちた人々
→ 災害ケースマネジメントなど新たな発想での救済の手立てが必要
・被災者を中心とする理念にもとづく、目の前の命を優先する法律が必要/一人ひとりが大事にされる災害復興法を制定するタイミングである。


《 在宅被災者について /メモ者 》
 仮設にも災害復興住宅にも入れない〔また、何らかの事情で自宅にと留まらざるを得ない〕が、半壊等した住宅を直す金もない。こうした人は、壊れた住宅で生活し、支援の手からも漏れている。
チーム王冠は2014年10月~11月に石巻市内に在宅被災者の家屋修繕状況を調査。1100世帯以上を訪問。538件の有効回答が得られ、半数は修理未完成の状態。修理できない理由の半数は金銭的理由。在宅被災者の圧倒的多数が高齢者世帯。
サイレンとマジョリティとして膨大に存在すると指摘されている。

◎仮設住宅の入居条件 災害救助法に基づく運用で「全壊」または「大規模半壊」〔だだし自宅の応急修理制度を使うと仮設住宅には入れない〕

*熊本地震で、政府が緩和を事務連絡…「半壊であっても家屋の解体・撤去に伴い、自らの住居に住めない」状態の被災者。対象を拡大させた場合の負担軽減策として、新たに必要となる仮設住宅建設用地の造成費や、その用地として民有地を借りる賃借料などを国庫で負担。具体的な負担割合は、県の財政状況などを踏まえて決まる見込み。毎日5/27 …半壊した住宅の解体・撤去が条件

◎災害復興住宅の入居条件 震災時に居住していた持家または賃貸住宅 ア 全壊、全焼または全流出の場合
  イ 大規模半壊または半壊の住宅を取り壊した場合または取り壊すことが確実である場合

◎被災者生活再建支援法での住宅支援 全壊、大規模半壊が対象 /半壊の解体に補助

《 被災者支援法 一律の「半壊」に憤り…「改善を」8割 毎日 9月11日 》

 8割の被災自治体が改善を求める被災者生活再建支援法。半壊と認定されて支給対象から外れ、被災者に修理費用が重くのしかかるケースがあり、不公平だと訴える声が上がっている。

 壁の一部は応急修理したベニヤ板のまま。はがれた壁紙も目立つ。「半壊でも50万円で修理が済む人もいれば、500万円以上かかる人もいる。ひとくくりにされ、何の支援も受けられないのはおかしい」。熊本県益城町の主婦、北野恵美子さん(63)は自宅を見回して首をひねった。熊本地震で壁や柱にひびが入り、台所のタイルが割れた。「半壊」と認定され、支給対象の大規模半壊にはわずかに点数が足りなかった。「幅広い支援を考えてほしい」

 宮城県石巻市の男性(75)が住む木造2階建ては、東日本大震災の津波で床が水を含んで緩み、雨漏りもひどくなったが「半壊」。トイレだけを直して住み続けた。市独自の住宅再建制度などでようやく修理できたのは今年夏。「もっと使いやすい制度にしてほしい」と男性は望む。

 関東・東北豪雨での鬼怒川の堤防決壊地点から南東約7キロにある茨城県常総市の会社員、落合洋佑さん(69)方は腰の辺りまで浸水し、「半壊」と認定された。その後、修理のため壁紙をはがすと壁の中の断熱材が水を吸い、カビが天井まで広がっていた。壁と天井の張り替えなどに500万円を超える費用がかかった。「被害実態に沿った弾力的な運用にすべきだ」と訴える。


【復興災害の構図と住まい・まちづくり/住宅復興】

・東日本大震災 避難者20万人、プレハブ仮設7万人〔2015年8月〕
福島の避難民12.7万、うち県外4.5万〔2014年8月〕
・応急仮設災害住宅 災害救助法による施設/1戸29.7平米〔18畳〕以内、価格239.7万円以内、期間2年以内 ~ すでに5年経過、痛みが激しく、カビなどによる健康被害も発生、補修が迫られている
・応急仮設として、民間賃貸住宅の借り上げが、大量に供給され、あらたな局面を切り開いた

・応急仮設 建設型~最大で53,169戸建設、48,839戸11.3956人入居、現在42,590戸に93,017人入居
/借り上げ型~最高時68,177戸162,056人入居、現在46,221戸110,339人入居

・プレハブ仮設の問題点
 ①寒冷地仕様でなく、急ごしらえで建設~施工不良、暑さ・寒さ、騒音など/二重窓、水道管の凍結防止、断熱材の施工、風呂の追炊き機能の追加など、何度もの追加工事を要した
 ②狭さの問題~ 3世代同居など大きな住宅に住んでいた世帯も多く、世帯をわけ別居する事態に
 ③立地の問題~当初は希望が殺到し、抽選による入居者選考となったため、従前居住地から離れた不便な団地に入居。買い物、通院への難渋する事態が出現
 ④建設費 当初一戸あたり520~550万円の見積もり。が、13年1月時点で、617~730万円

●木造仮設住宅 建設仮設の1/4を占め、大量供給されたことは大きな前進

・岩手県住田町 費用270万円、断熱・遮音にすぐれ、仮設としての使用後、3万円で払い下げ
・福島、岩手 県産材使用を重視し、仮設建設を公募~ 大半が木造に

●みなし仮設住宅

・もともと恒久建設で、プレハブ仮設より居住性に優れ、居住地を選択できる/希望が殺到
・制度上の問題も多い
①物件が都市部に集中。被災地離れを促進
②被災者の所在をオープンにできないため、ボランティアなどの支援活動が届かない
 →個人情報保護条例の壁 /契約時に、被災者本人に情報の一定程度の公開の了承を得る手立て必要
③府県によっては、公営住宅の空き室活用を優先する例も
みなし仮設は、家主と県、被災者の3者契約。県が借り上げ事務をしなければ供与できない
 →仮設住宅は、現物供与で行う、という災害救助法の「運用」原則が背景/ 救助法4条2項は、知事が認めた場合には現金支給できる、となっており改善が必要
④フリーライド問題  略 
⑤打ち切り問題 ~ 入居者の64%が期限切れ後も住み続けたい。が、自己負担で住み続けられるは9.8%
    → 被災住民と一般住民との「不公平」の解消の面からも、一般施策としての家賃補助制度が必要

●復興公営住宅

・計画 3県で、2.9573戸。2015年7月で完成は、1万1千戸と遅れている
→原因/ 用地取得の難航〔メモ者 相続などで地権者の確定の困難〕、人材確保の困難、資材・人件費の高騰と入札不調

・空き室問題・・・ 希望者が募集定員をしたまわる。入居決定後の辞退
   仙台市 14年度から入居開始の661戸。応募は1297件あったが72戸が空き室/81件が辞退/ 3県の19自治体で330戸の空き室〔NHK 14.9.11〕

・「空き室」の原因
①建設の遅れ。②その遅れにより、被災の意向の変化~ 子どもの成長・入学、高齢者の身体条件の変化など避難先で築いた生活基盤、社会的関係など家族を取り巻く環境の変化したため

→ 大きな問題は、入居後の「空き室」~ 被災者の多くは高齢者、いずれ入居者数が減少。管理する自治体として大きな負担となる
〔メモ者 災害復興住宅の家賃の特例措置は3年間。また一般施策である低所得の特別低減措置は、6年目から段階的になくなり、11年目で通常家賃に/例 7000円→21000円、など家賃の「値上げ」問題もある〕

2.災害公営住宅の利点と欠点

・公営住宅法1条「住宅に困窮する低所得者に対し低廉な家賃で賃貸する」もので、被災者が頼りにするのは当然だが、必ずしも最善の選択肢とは限らない

①住み手の生活事情に合致するとは限らない/間取り、場所など
②行政にとっても、戸数が増えれば管理業務の負担が大きくなる
③今後の大きな課題は入居後の生活支援/介護、見守り、コミュニティ形成などの支援 
~ 建設を急ぐあまり、住民の意向を踏まえた計画・設計に時間をかれることなく標準プランの大量建設の方向に流れる。阪神・淡路大震災での「孤独死」の教訓にたつならば、被災者の生活をよく考えた計画が必要

3 自力再建

 東日本大震災の被災者は多くは持ち家であり、自宅の再建を望む人が多い、と思われる

・自力再建は、行政コスト上も大きなメリット
 仮設住宅の建設から災害公営住宅の建設・提供までのコスト 1戸あたり2439万円/仮設住宅の建設から被災者生活再建支援金を得て、住宅を新設・購入する場合 1戸あたり743万円。1698万円低い

〔仮設住宅の建設・撤去費6,340千円、支援金3,000千円 固定資産税収入(35年間)1,909千円/関西学院大学災害復興制度研究所 試算〕

*被災者生活再建支援法 
・基礎支援金〔被害の程度〕全壊100万円、大規模半壊50万、加算支援金〔再建方法〕 建設・購入200万円、補修100万円、賃貸50万円~ 最高でも300万円〔単身世帯は3/4〕と、住宅再建には不十分
・また、半壊以下は対象とならず。原発災害で家を失った被災者には適用されない〔自然災害が対象〕

・岩手県 県の上乗せ支援100万円、宅地被害〔津波〕の復旧費補助200万円、ローン利子補給135万円、住宅補助100万円、義捐金152万円 /支援制度300万円を加えると、最高1017万円

→ 支援制度の拡充が求められる /対象、金額など

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