米中が「パリ協定」締結~日本は早期批准を/置き去りの可能性も
世界の温暖効果ガスの4割を占める米中が「パリ協定」を締結したことを受けて、気候ネットワークの声明…今後の状況では、日本抜きで条約が発効する可能性があり、まちがっても日本が温暖化対策の足を引っ張ることがあってはならないと、臨時国会で批准の手続きをとることを求めている。
中国、米国は再生エネの投資でも1位、2位を占めて、15年度も前年比で20%近い伸びを示している。また世界全体でも2014年までは先進国の投資が上回っていたが、2015年は中国を含む新興国や発展途上国の投資額は1559億ドルで、先進国全体の1301億ドルを大きく上回った。
FIT法改悪、電力システム改革での原発維持・自然エネ抑制路線をとる自公政権は、この点でも世界の流れからとりのこされている。
●2015年自然エネ投資額、成長率(前年比)
①中国 1029億ドル +17% ②アメリカ 441億ドル +19% ③日本 362億ドル +0.1% ④イギリス 222億ドル +25% ⑤インド 102億ドル +22%
〔「急成長を続ける世界の自然エネルギー市場16/4/12」より〕
【米中が「パリ協定」締結~日本も秋の臨時国会での批准を急ぎ、年内発効に貢献を~9/5 気候ネットワーク】今月3日、米中両政府は、温室効果ガス排出ゼロをめざす国際約束「パリ協定」を締結した。パリ協定は、世界の温室効果ガスの55%以上を排出する55ヶ国が締結してから30日後に発効する。世界の温室効果ガス排出の約4割を排出する米中の参加によって、パリ協定の早期発効に向けて世界は大きく踏み出すことになった。
気候の異変による被害は世界各地で頻発し、さらに深刻になっている。産業革命前からの地球気温上昇を2℃より十分に下回る水準に止めるために、今世紀後半に温室効果ガスの排出を実質ゼロとすることを目指すパリ協定の早期発効とその実施は世界共通の課題である。今後の見込みでは、日本抜きでパリ協定が発効する可能性すらある状況であるが、間違っても、日本が世界の温暖化対策の足を引っ張るようなことがあってはならない。日本政府はこれまで、「地球温暖化対策の実効性を確保するためには、米国や中国をはじめ全ての主要経済国が責任ある形で参加する枠組みが必要である」との立場を示してきた。また、日本が議長国を務めたG7伊勢志摩サミットの首脳宣言では「パリ協定の2016年中の発効をめざす」と謳っている。今、日本に求められるのは、今秋の臨時国会にて早々に批准の手続きをとり、年内のパリ協定の発効に貢献することである。また、9月21日に国連事務総長が開催する気候リーダーズイベントにて、日本政府として具体的なパリ協定の批准スケジュールを表明すべきである。
さらに、批准の実現にあわせ、国内で停滞している政策議論を加速させ、脱炭素の方向性に向けて、より野心的な温室効果ガス排出削減目標の設定、炭素の価格付けの政策の導入、長期戦略の策定を強力に推し進めるべきである。
以上
【パリ協定発効へ 置き去りにされるのか 東京・社説9/6】 四年後の実施をめざす温暖化対策の新ルール、パリ協定を、温室効果ガスの排出世界一位の中国と二位の米国がそろって承認した。米中が変われば世界は変わる。日本は置き去りにされるのか。 新しい地球温暖化対策のルールの大枠を定めたパリ協定は昨年末、難産の末に採択された。 ただし、国際会議で採択されても、国と国との約束事は効力を示さない。採択した国の法律や手続きに基づいて、個別に承認を得る必要がある。多くの国では、この作業を「批准」と呼んでいる。 パリ協定の発効には、採択に加わった百九十七の国と地域中、五十五カ国が参加を承認し、温室効果ガス排出量の総計が世界全体の55%以上になるのが条件だ。 これまでに二十四カ国・地域が承認したものの、排出量では約1%にとどまっていた。 中国(20・1%)と米国(17・9%)の承認(批准)で、一気に40%近くに上り、年内発効は確実な情勢だ。現行ルールの京都議定書のもとでは、両大国とも削減には参加していない。 オバマ米大統領の任期は来年の一月まで。温暖化対策への貢献を歴史に刻みたいという思いは強く、議会の承認を仰がずに、大統領権限で受諾を決めた。 パリ協定は、いったん発効すれば、その四年後まで離脱できない仕組みになっている。協定に批判的な次期大統領が誕生しても、オバマ氏の“遺産”は残る。 良くも悪くも、米国が動けば、パリ協定は大きく動き、機能し始める。オゾン層保護のためのモントリオール議定書(一九八七年)が効果を挙げたようにである。中国が協調すれば、なおさらだ。 日本はどうか。自国で誕生した京都議定書からはすでに離脱、パリ協定に対しても、「3・11後のエネルギー政策が定まらないから」などと、消極姿勢を崩さない。 発効まであと15%。世界の視線は、第6位の排出国(3・8%)である日本にも再び注がれることになるだろう。 異常気象の進行は予想以上のスピードで、しかも広範に、世界を覆い始めている。米中の積極姿勢の背景も、外交的、政治的思惑だけではないはずだ。気候変動への危機感はベースにある。 パリ協定の中身を詰めるのはこれからだ。その交渉から置き去りにされないためにも、だがそれ以上に、目前の危機から逃れるために、まずは批准を急ぎたい。
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