「社会保障制度~ 退職後の暮らしから考える」 学習会メモ
ひょんなことから「こうち生協労連」の定期大会の講演するとこになった「社会保障制度~ 退職後の暮らしから考える」のレジュメ。
資料の前半は、年金の平均額を1つの目安に、高知市の制度において、税・保険料を試算し、可処分所得と生活に必要な経費をイメージしてもらい、制度改悪の影響を身近に感じてもらうようにしたもの。
後半は、制度の改悪の流れと、格差社会の是正、本来の社会保障とは・・・スケッチ的にふれている。
若い元気な組合員がたくさんいて、逆に元気をもらった。
社会保障制度~ 退職後の暮らしから考える 2016.9
〔1〕退職後の生活を試算してみる〔高知市在住の場合〕
■年金
A世帯 夫 192万円 月16万円 妻 基礎年金 78万円 月6.5万円
B世帯 夫 168万円 月14万円 妻 146万円 月12.17万円
〔40年間加入 その間の平均年収 A 520万円、B400万円、300万円〕
★2015年の給付額
・平均受給額 国民年金〔基礎年金〕5万4544円、厚生年金〔基礎年金+報酬比例部分〕14万5596円
・厚生年金の月額支給額 男性16万6418円、女性10万2086円
■合計所得金額について /収入と所得は違う
合計所得金額…前年中の公的年金収入額(課税年金収入額)および合計所得金額の合計額
非課税となる障害年金や遺族年金などは含まれない。
例〕年金収入のみの方 公的年金所得=「年金収入額」-「公的年金等控除」
(公的年金等の収入金額の合計額が1,200,000円までの場合は、所得金額はゼロとなります。)
1,200,001円から3,299,999円まで 100% 1,200,000
★合計所得金額 夫A 72万円 妻ゼロ円 夫B 48万円 妻 26万円
■所得税
合計所得銀額 5.105%を乗じた金額が源泉徴収
★A家族 36756円 B家族 24504円 + 13273円 計 37777円
■住民税
○均等割
・前年中の合計所得金額の限度額
315,000円×(本人,控除対象配偶者及び扶養親族の合計数)+189,000円
ただし,控除対象配偶者又は扶養親族のいずれも有しない場合,189,000円は加算しません
1人 本人 315,000円
2人 本人+扶養家族1 819,000円
○所得割 350.000×… +320.000 /均等割と同様の計算方法だが、控除額が違う
1人 350,000円
2人 1,020,000円
★A家族 夫、妻 非課税 B家族 夫・均等割・所得割とも課税、妻・非課税
均等割 年額5,500円
所得割 13万円×10% 13,000円
〔B 妻の収入が年間130万円を超えているので、扶養家族とならない〕
■介護保険料〔市町村によって違う/基準額と区分〕
第二段階 世帯全員が市町村民税非課税で,第3段階に該当しない方 基準額*0.5 31480円
第三段階 世帯全員が市町村民税非課税で,前年の課税年金収入金額 基準額*0.75 47220円
が80万円を超えている方,または,課税年金収入金額に合
計所得金額を加えると80万円を超える方
★A家族 夫31480円、妻31480円 計62960円
第4´段階 本人は市町村民税非課税だが,世帯内に市町村民税課税者 基準額*0.91 57,300円
がいる方/ただし、本人の課税年金収入額が80万円以下
第5´段階 本人が市町村民税課税で,前年の合計所得金額が190万円 基準額*1.16 73040円
未満の方/ただし、合計所得金額が125万円未満の方
★B家族 夫73040円 妻57300円 計130340円
■国保料〔高知市〕 市ホームページ自動計算式より 65歳以上の場合
平等割〔世帯にかかる分〕、均等割〔人数にかかる分〕、所得割
★A家族 139320円 B家族 110520円
A世帯 B世帯
年間所得 270万円/ 月22.5万円 314万円/月26.2万円
所得税 36,756円 37,777円
住民税 18,500円
介護保険料 62,960円 130,340円
国保料 139,320円 110,520円
税・保険料計 239,056円 297,137円
可処分所得 2,460,944円/月20万円 22,842863円/月23.7万円
■必要な出費は・・・
水光熱費
新聞・TV、携帯
車、ガソリン
家賃・固定資産
食費
家具・家電、衣服
医療・介護サービス利用 /有料老人ホームなど月10万円以上、
嗜好・交流など /冠婚葬祭の敬遠、社会的孤立
■一人になるとさらに悪化
A家族 妻死亡78万円消滅 /夫死亡 114万円〔報酬比例部分〕*3/4 85.5万円 ~約30万円減
B家族 扶養家族でなく、遺族年金が、自身の年金より低いために受け取れず ~一人分の年金がなくなる
〔そうなれば、税、保険料などはある程度減額されるが・・・B家族 介護31480円 国保62520円〕
〔2〕退職時の選択・・・知っておきたいこと
●医療保険~ 任意継続 2年間〔協会けんぽの資格喪失から20日以内に申請〕
保険料 退職時の保険料の2倍 〔事業主負担がなくなるので〕
国保は前年の所得〔退職金は除外〕にかかるので、1年目が高くなる /国保は扶養家族が多いと高くなる
→ どちらがよいか、計算して選択を〔国保料は、市町村の窓口で計算してくれる〕。
●高齢者雇用安定法 希望すれば65歳まで採用することを義務づけ
多くの事業所は、再雇用という形で、同じ仕事ながら給与が6割とかになっている。
●給与収入による年金カット /年金事務所に相談を
①勤務先で社会保険に加入しない場合
⇒ どれだけ働いてもOK。年金の減額・停止はありません。
②社会保険に加入する場合〔基礎年金は65歳から〕
・65歳未満 年金月額と給与月額の合計額が28万円以下は、年金はカットなし。
年金月額28万円以下で給与月額48万円以下~合計額の28万円を超えた部分の1/2が支給停止
・65歳以上 年金月額と給与月額の合計額が46万円以下は、年金はカットなし
合計額が46万円を超える場合は、46万円を超えた部分の1/2が支給停止となる。
③高年齢雇用継続給付 支給停止にほぼ相当する額が給付
雇用保険加入が5年以上の60歳以上65歳未満の加入者で、賃金額が60歳到達時の75%未満
〔3〕社会保障の相次ぐ改悪―――悪化する老後の暮らし 】
図 妻が基礎年金のみの専業主婦のケース〔ダイヤモンドオンライン「老後のお金クライシス」2015/8/26)。
・1999年は、国民健康保険料 10万円程度で、所得税と住民税はかからず、手取り額は約290万円
・2015年 所得税・住民税が約13万円、国民健康保険料・介護保険料が約29万円、手取り約258万円
■2000年以降、年金の手取りを減少させる制度改悪が次々と・・・
【おもな増税】
2004年:配偶者特別控除(最大38万円)の一部廃止
2005年:65歳以上の老年者控除(50万円)の廃止、65歳以上の公的年金控除額の縮小
2006・2007年:定率減税の縮小&廃止
2014 消費税増税 5→8%
【社会保険料負担アップ】
2000年:公的介護保険の導入による保険料発生
2008年:後期高齢者医療制度導入による保険料発生 /17年より特例軽減の廃止
その他 国民健康保険料と介護保険料は毎年のようにアップ /年金より天引き
介護サービス利用料、入院負担の増加など /なぜ特養待機52万人…
【年金引き下げ】
2013-15年 特例水準の解消 -2.5%
05年度 マクロ経済スライド発動 -0.9% /デフレ化でも発動できるよう検討
〔賃金水準もしくは物価水準の変動をそのまま年金額に反映させるのではなく、現役世代の人口の減少と平均余命の伸びを反映させ、支給額を減額する制度/デフレ化では発動しない仕組み〕
〔4〕 社会保障をめぐる対決
①2015年骨太方針 年1兆円増える社会保障費を、3年間で1兆5千億円増に抑制
・大企業の税、保険料負担の軽減
・民間保険〔がん保険〕、営利企業の参入〔保育、介護、医療〕拡大
・社会保障費の増額 高齢化だけではない/保険料収入低迷〔97年~ 賃金低下、非正規増〕、高薬価の新薬
★ 国の借金1千兆円の「ウソ」 政府の借金先は→ほとんどが国内金融機関、その原資は国民の貯金
~ゼロにしなくてよい/ 問題は対GDP比。経済成長率の方が高ければ、比率は縮小する
・租税回避地…ケイマン諸島への日本からの投資残高75兆円~10年間で倍増
・大資産家の急増
③社会保障とは[
●労働者の貧困防止策として誕生/ 労働力の窮迫販売の防止 …「社会保障は労働者階級のもの」
・年金、失業保険 100年以上前に、イギリスで・・・
★労働時間短縮、有給なども、労働生産性が上昇するもとでの失業防止、労働力の窮迫販売の防止策
●継続する平和の基盤 「恐怖と欠乏」からの解放
/ILO宣言、特に、フィフデルフィア宣言
●富の一極集中を是正し、富の再分配として雇用、生活を支え、経済を立て直すもの
〔図 内閣府 09年度年次経済財政報告〕
〔おわりに〕
・富の一極集中を是正する不公平税制の是正/所得再分配の強化〔社会保障の充実〕
→ 劣悪な労働の是正/家計消費の増加
→ 経済再建、少子化是正
★ 私たちの暮らしの願いが、
日本経済と日本社会を救う!
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