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子どもの貧困・先進地に学ぶ 沖縄タイムズ・特集

 子どもの貧困率が高く、一方で対策をすすめている沖縄県の地元紙の特集と、先進地と紹介されている明石市が来年度より「全小学校区」で、こども食堂を設置するとの記事。市長は「「子どもに対する経済支援の場というよりも、地域と協力して子どもが置かれている状況に気づく拠点にしたい」と述べているが、相対的貧困、剥奪状態は、アンテナの感度をよくしないと見えにくいのが特徴であるし、子どもを軸に、コミュニティの構築をすすめる、という点でも重要と感じる。また「子どもの貧困を本気でなくす気なら、シンプルでユニバーサルな子ども施策が必要だ」と見識を示している。

【「子ども食堂」全28小学校区に 明石市 2016年9月6日 沖縄タイムス】

以下は、特集
【⑥ 培った経験を手引書に 京都山科醍醐こどものひろば】
【⑤「もう汗だくや」かつての利用者が力に 大津市「こどもSWセンター」】
【④「子どもでいられる場を保障」 荒川区「子ども村」】
【③居場所づくり「いつも葛藤」 はちおうじこども食堂】
【②中核市へ児童相談所を 明石市が目指す「子どもに手厚い街」】
【①人口V字回復の鍵は子ども施策 兵庫県明石市】

【「子ども食堂」全28小学校区に 明石市 2016年9月6日 沖縄タイムス】

 兵庫県明石市は6日までに、ひとり親や共働き家庭の子どもたちが無料や低料金で食事ができる「子ども食堂」を市内の全28小学校区で整備することを決めた。
 食堂のスタッフが子どもからの相談や情報を、学校や児童相談所などの関係機関と共有し、適切な支援をスムーズに行えるようにする。市などによると、行政が主体となって全域で環境を整えるのは珍しいという。
 泉房穂市長は「子どもに対する経済支援の場というよりも、地域と協力して子どもが置かれている状況に気づく拠点にしたい」としている。
 市によると、本年度内に5~10カ所を整備し、来年度には全28小学校区に拡大させる考え。公民館や学校も設置場所として利用する。本年度の予算は500万円。主な対象は小学生だが、中高生でも利用できる。週1、2回の食事を提供する予定。(共同通信)

【⑥ 培った経験を手引書に 京都山科醍醐こどものひろば】

 京都市の中心、京都盆地から山を隔てた東隣の山科盆地。山科区と伏見区醍醐地区を合わせて約19万人が暮らす。そのうち約3万人が18歳以下の子だ。
NPO法人山科醍醐こどものひろばは1980年代に発足し、演劇観賞などで活動してきた「親と子の劇場」が前身。2000年、NPOに移行後、地域のニーズに応じて子育て支援や子どもの貧困対策などに活動の幅を広げてきた。商店街と連携し、空き店舗を活用して子どもの夜の居場所「トワイライトステイ」をつくるなど、全国でも先駆的な活動で注目された。
 現在は地域で3DKのマンションや一戸建てを借り、少人数での「トワイライトステイ」を運営。毎年小中学生約20人を支援する。子ども1人が専有できる十分なスペースを確保。マンツーマンで付くサポーターが一緒に過ごし、夕食を食べるなどしながら日常生活や学習などの相談に乗る。
 理事長の村井琢哉さんは「地域に暮らす全ての子どもが豊かに育ってほしいというのが原点。その最低限の部分を保障しようとすると、どうしても生活支援が必要なケースが出てくる」と説明する。
 現在も演劇やキャンプなどの文化・体験活動に力を入れているが、「そこになかなか参加できない子がいる。特別な体験の前にまず必要な“生活”を届けている」という。地域の全ての子を対象にしたユニバーサルな活動と、特定の子のための支援を両立している。

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 村井さんは「とがった石がいっぱい転がっている道を舗装し、整備するのは行政の仕事。民間の活動は自宅の前の道で転んだ子の手当てくらいしかできないが、すみ分けが混乱しているケースもある。役割分担を明確にする必要がある」と指摘する。
 培ってきたノウハウを各地の取り組みに生かしてもらうため今年4月、支援者向けの手引書「支援者のアクションサポートブック~とらのまき~」を発刊した。活動がどこを目指すのか、人やお金をどう集めるかなど「実践への10の問い」を設定。コピーして使えるワークシートが付き、具体的な子どもや家族の状態などを書き込んだり、地域や社会の現状を確認したりできるよう工夫されている。
 困り事を抱えた子どもを見るための「10の視点」として、服装や目線、爪、対人距離、持ち物、遊び方などの注目点を例示。ほかにも行政や学校、地域とのつながり方など、これから子ども支援を始めようとする団体の参考になる情報が多く載せられている。

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 村井さんは「いつも事務所にふらっと来て、しゃべりたいだけしゃべって帰っていく子もいる。学校の先生や福祉窓口は人が変わっていくが、住民の活動はそこに居続けることができる。それぞれの子を長く見守り続けていくことが大事だ」と継続の重要性を語る。
 「続ければ続けるほど、課題の濃さが増していく。子どもの今のしんどさを考え、小さな解決を積み重ねていくことが大事。活動を守るためでなく、子どもを守るための活動だと常に確認することも重要だ」と強調する。(「子どもの貧困」取材班・田嶋正雄)=第5部おわり



【⑤「もう汗だくや」かつての利用者が力に 大津市「こどもSWセンター」】

 滋賀県大津市のこどもソーシャルワーク(SW)センター。社会福祉士の幸重忠孝代表らが家庭や学校でさまざまな困難を抱える子どもたちを支える拠点として2016年4月、民家を改装し、開設した。
 8月の盆休み前には関係者総出で大掃除。ボランティアの若者たちも作業を手伝った。かつて10代の居場所で支援を受けていた若者たちが現在、ボランティアスタッフとなり、活動を手伝っている。
 「掃除終わった。窓も拭いといたで」「そんなとこまできれいにしてくれたん? ありがとう、メッチャ助かるわ」。職員からの感謝の言葉に若者が照れくさそうに笑う。「もう汗だくや、1回帰って着替えてくるわー」

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 センターで運営する夜の居場所「トワイライトステイ」は生活困窮家庭の子どもたちを支援。週1回午後5~9時、スタッフと一緒に食事や入浴、遊び、学習などをしながら家庭的な雰囲気で過ごす。安心できる居場所づくりのため、少人数の子にマンツーマンで対応している。
 スタッフの社会福祉士、木村友香理さんは「自然にしゃべってくれるまで無理せず待つ。最初はあっち行けーって言っていた子がだんだん本音を話すようになってきた」と手応えを語る。「自分を見てくれている大人がいるっていうことが、子どもには安心なんでしょうね」
 かつてトワイライトステイ利用者で現在、活動を手伝っている若者の一人は「そこに事務所があるから来るだけッス」と照れながらも「自分の弟や妹よりもかわいい」と話す。来所する子どもたちにとっては「お兄さん」的存在だ。
 高校中退後も「何となく」、トワイライトステイに通い続けてきた。他者と会話するのが苦手で通い始めた当初はほとんど無言で過ごしていたが、通い続けるうち、少しずつ話せるようになってきたという。
 代表の幸重さんは「当事者だった視点で不登校などの子に接することができるのは、彼らならではの特徴。大学生ボランティアにはできない」と評する。かつて支援対象だった若者たちがトワイライトステイの運営を手伝ったり、利用者の小学生と遊んだりするようになった“成長”を温かく見守る。「学齢期を終えると途切れてしまう支援が多いが、彼らにとっても引き続き居場所が必要。手伝う場面を増やすなど緩やかに移行しつつ、つながりを継続していければ」

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 現在コーディネートに関わる事業はトワイライトステイ2カ所、老人ホームなどを活用するフリースペース3カ所。合わせて約15人の子どもを支援している。軌道に乗った時点で手放しながら、徐々に居場所を増やしていく考えだ。
 幸重さんは「子どもや若者の生活圏にあることが大事。何歳になっても学校や就労などで困ったとき、気軽に立ち寄れる場所にしていきたい」と話す。「貧困の『貧』は政策による解決が必要だが、『困』は孤立を防ごうとする地域の力で、ある程度支えていくことができる」と強調する。



【④「子どもでいられる場を保障」 荒川区「子ども村」】

 東京23区の東部に位置する荒川区。2年前の2014年5月、中高生の居場所「子ども村:中高生ホッとステーション」ができた。区内の民生委員や児童・青少年委員らの有志メンバーが区社協の助成を受けて運営。家庭の事情などで夜遅くまで1人で過ごす子どもたちに週1回、学習支援のほか食事提供や生活支援をしている。
 活動日は10~70代の約30人が夕食の食卓を囲み、雑談を楽しむ。悩みや人生の相談に発展することもある。血縁はないが、家族のような雰囲気で過ごす関係を「ソーシャルファミリー(社会的家族)」と呼んでいる。
 きっかけは5年ほど前から始まった中高生への学習支援の活動だった。学習機会を得られるのはよかったが、成績不振の子の多くが小学校でのつまずきを取り戻せず、学ぶことを諦めかけていた。昼夜逆転の生活をしていたり、食事を取っていなかったり、人とほとんど話せないなど多様な問題を抱えていた。
 「中学校の勉強についていけない子や学習以前の生活面の問題を抱えた子、経済困窮の子たちに寄り添い、フォローする仕組みが必要だった」。代表の大村みさ子さんは振り返る。

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 ホッとステーションに登録する中高生は現在約30人。半数の約15人はほぼ毎回参加する。ボランティアスタッフ約20人で週1回の活動のほか、秋から冬にかけての受験シーズンの「日曜ゼミ」、定期テスト前の土曜学習会などを開いている。
 表面的な強さに憧れていた中学生が理科の勉強を教える高校生の「かっこよさ」に気付き、後を追って歩くようになった例や、身の回りのことしか見えていなかった高校生がさまざまな大人との出会いの中で「ワーキングホリデーで海外に飛び出したい」と夢を語るようになった例など、効果が表れ始めている。通い始めたころ他者と会話ができなかった中学生はボランティアスタッフと関わるうち、明るく会話できるようになった。
 大村さんは「ここで生き方の見本になるロールモデルを見つけ、将来に希望を持てるようになった」と手応えを語る。
 開所以来、子どもの「成長記録」でもある報告書を区や学校に送り続けている。徐々に連携が深まり、区の支援や教諭たちとの交流も始まった。スクールソーシャルワーカーが直接つなげてくるケースも増えているという。「地域のおばさんだからできることがいっぱいある。みんな地域の子どもなんだから、みんなで育てましょうよ、と。そんなに難しいことじゃない」

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 大村さんは「貧困家庭の子ほど、環境が早く大人になることを迫る。子どもが子どもでいられる場所を保障したい」と居場所運営の考え方を語る。「ちゃんと“子ども時代”を過ごさなければ、ちゃんとした大人になれない」が持論だ。
 「面倒ばかり起こすし、裏切られることも多い。でも、子どもと関わっていると、心揺さぶられる瞬間が必ずある」。子どもの居場所づくりに関わると、大人も元気になる。子どもを支える活動が地域づくりやコミュニティー再生につながっていることを実感しているという。
 「子どもが何かを求めて手を伸ばしたとき、助けを差し伸べられる距離に信頼できる大人がいるかどうかが大事。そんな地域の力を付けていきたい」(「子どもの貧困」取材班・田嶋正雄)


【③居場所づくり「いつも葛藤」 はちおうじこども食堂】

 「いただきまーす」。子どもたち、大学生、地域の大人たちが一緒に食卓を囲む。この日のメニューは夏野菜カレー、サラダ、かぼちゃのプリン。「おいしい?」「普通かな」「普通って言うなー」「うそだよ、おいしいよー」。バンダナを巻いた大学生の問い掛けに、小学生がおどけながら答えると、テーブルに笑い声が広がった。
東京都八王子市のはちおうじこども食堂は毎月1回、開店する。市内にある寺の住職の好意で駅前の繁華街に近い別院「アミダステーション」の建物を借り、子どもの居場所をつくっている。子ども100円、大人300円。“腹ぺこ”と“ひとりぼっち”をなくすのが目的だ。
 大学生主体で運営しているのが特徴。市内にある創価大学の学生を中心に、近隣の大学の学生や地域の大人たちがボランティアで関わる。20歳前後のメンバーが「お兄さん、お姉さん」的な存在として、子どもが通いやすい雰囲気をつくっている。
 食後は家庭用かき氷器で、デザート作り。かき氷に果物やシリアル、チョコレートなどのトッピングを楽しんだ。食べ終えると、大学生を相手に夢中で遊ぶ子どもたちの歓声が響いた。

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 住んでいる地域で子どもたちを支える活動をしたいと学生4人が集まり、地域の協力者を得て半年間の準備の後、2015年2月にスタートした。チラシを作り、市内の学童クラブや公共施設に配って回ったという。
 代表の山口光司さんは「自分たち自身も子どもの貧困の理解も十分でなく、本当に子どもが来てくれるのかと不安だった」と振り返る。当初は知人の子どもたち数人だけだったが、徐々に口コミで広がり、現在は毎回10~20人の子どもが来所する。毎月大学生と遊ぶのを楽しみにしている子もいる。特定の子どもだけでなく、すべての子どもを対象にするのが運営方針だ。
 大人やスタッフも合わせると参加者は50~60人。地域のつながりが薄れる中、大人にとっても食事をしながらの交流の場になっている。活動を続ける中で、協力してくれる地域住民や食材提供してくれる農家などが増え、地域に定着してきた。

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 毎回の閉店後はスタッフ全員が集まり、反省会を開く。「バイトの面接より緊張した」「以前よりスムーズに対応できた」「次回はもっと子どもと積極的に関わりたい」。若者らしい生真面目な意見が多く出される。
 会計担当の三宅正太さんは「自分の理想で動いてきたが、当事者の気持ちを本当に理解できているのか、知らず知らずのうちに傷つけていないか、いつも葛藤がある」と打ち明ける。
 「自分たちも未熟な部分が多く、毎回反省ばかり。でも、あてにして来てくれる子がいる以上、大人の都合でやめることはできない。子ども食堂を一時的なブームで終わらせたくない」。子ども食堂の活動は始めるより継続することが難しいと日々、痛感している。
 「子どもに届いているという自信はまだ持てないけど、目指すべき姿に少しずつでも近づいていきたい」。悩みや喜びを仲間と共有しながら、若者たちが居場所づくりの模索を続けている


【②中核市へ児童相談所を 明石市が目指す「子どもに手厚い街」】

 明石市は2018年度に中核市移行を予定する。1年後の19年4月に児童相談所を設置する方針だ。国は中核市に設置を促しているが、開所は金沢市と横須賀市だけにとどまっている。
 13年度、中核市に移行した那覇市では議論は進んでいない。現在県の中央児相とコザ児相の2カ所が県内全域を担当しているが、那覇市が設置すれば県の負担軽減にもつながる。
 泉房穂・明石市長は「中核市になり、国から権限が最も多く委譲されるのは福祉分野。その代表例といえる児童相談所を置かないなら、何のための中核市か分からない」と問い掛ける。
 「児童相談所のポイントは単に施設数だけの問題ではない。障がいや生活保護などの住民サービスを直接担当しない都道府県は家庭の情報を持っておらず、自治会や民生児童委員などの地域とのつながりもない。児童虐待防止に実効性が伴わない理由の一つは都道府県任せの現状にある。児童相談所は市が持つべき施設だと思っている」
 市内全ての子どもの様子を把握するため、乳幼児全員の面接を14年度から始めた。乳幼児検診を受けない約2%の子どもは、保健師が日中や夜間の家庭訪問で健康状態を確認している。

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 離婚時の子ども支援も、国に先行して取り組んできた。
 「行政か裁判所が子どもの立場で不利益を被らないようにするのが他国では当たり前だが、日本は放置してきた。子どもの貧困の原因にもなっている」
 養育費や面会交流の取り決め作りを支援したり、「子どもと親の交流ノート」(養育手帳)を配布するなど全国の自治体のモデルとなり、国でも議員立法の手続きが進み始めた。
 「夫婦でなくなっても、子どもにとっては父親と母親。両方から栄養と愛情を受けるのは子どもの権利だ。強制はできないが取り組みを促し、履行のために助言するのは自治体の役割だ」
 ひとり親家庭の相談も強化。児童扶養手当の現況届を提出する8月は専門窓口を設け、困りごとなどの相談にも応じる。

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 子どもの貧困が注目される中、泉市長は「日本は子どもにお金を使わなすぎる。子どもの貧困を本気でなくす気なら、シンプルでユニバーサルな子ども施策が必要だ」と言い切る。
 「わずかな予算で“救貧”施策をやっても社会全体での効果は薄い。必要なのは中間層が恩恵を実感できる施策だ。行政の本来の仕事は病の原因を断ち、予防すること。傷口にばんそうこうを貼るだけでは駄目だ」
 16年度からの5カ年計画で人口30万人、年間出生数3千人、本の年間貸し出し数300万冊の「トリプルスリー」達成を目標に掲げる。明石駅前には従来の4倍の広さの市民図書館が来年1月に開館する。「こども図書室」や一時保育ルーム、中高生が無料で利用できる楽器がそろう音楽スタジオなども併設される。
 「強調したいのはお金の話だけでなく、総合的な子ども支援の重要性だ。現代の貧困は経済的問題だけでない。文化的な充実も促進し“子どもに手厚い街”を打ち出していく。社会が縮小に向かう中、前例踏襲では昨日と同じ暮らしは守れない。別に変わった市長が変わった施策をやっているわけではない。本気になれば、全国どこでもできることをやっているだけだ」


【①人口V字回復の鍵は子ども施策 兵庫県明石市】
「子どもを核にしたまちづくり」を掲げ、関西圏で唯一人口がV字回復している兵庫県明石市。中学生までの医療費無料化や第2子以降の保育料無料化など、全世帯対象の子ども施策を次々と打ち出し、子育て世代を呼び込んでいる。子どもの貧困に関わる取り組みにも積極的だが、泉房穂(ふさほ)市長(52)は「貧困対策で貧困は解決しない」と言い切る。ユニークな先進自治体の戦略を聞いた。(「子どもの貧困」取材班・田嶋正雄)
 泉市長は2011年に初当選し、現在2期目。中学生までの医療費無料化、離婚時の養育費や面会の合意書作り支援など、特色ある子ども施策を進めてきた。9月からは第2子以降の保育料を完全無料化。17年度以降は児童養護施設の新設や中核市移行に伴う児童相談所の設置も予定する。
 「子どもにかかるコストを誰が負担すべきか。子は親の『持ち物』と考えれば親の責任だが、そうではない。明石の子は社会全体で育て、コストは社会が負担する。欧州では主流の考え方だ」
 同市の特徴は対象者を限定しないユニバーサルな施策。子ども医療費も第2子以降の保育料も家庭の所得に関係なく一律無料だ。
 「対象者の絞り込みは難しく、時間がかかる。どの家が貧困かという議論に子どもを巻き込んでしまう恐れもある。そこにかけるコストやエネルギーを事業そのものに回した方がいい」
 だが中間層や富裕層も含めれば財政を圧迫しかねない。財源はどうするのか。
 「要は優先順位の問題。明石市は子どもを後回しにしない。第2子以降の保育料無料化には7億円かかるが、最初に確保し、残りでほかの予算を編成する」
 市の人口は12年に29万人割れ寸前まで減ったが13年から増加に転じ、16年8月現在、29万8千人まで回復した。施策の効果もあり、20~30代の子育て世代の転入が目立っている。
 「人が増え、地価が上がり、住民税や固定資産税の収入が増えている。税収アップで住民サービスをさらに拡充できる。そんな好循環をつくり出していきたい。特別なことではなく、全国どこの自治体でもできる。首長が本気かどうかが問われている」

■児童扶養手当、毎月に

 明石市は9月から市内の保育園や幼稚園で第2子以降の保育料を無料化する。泉房穂市長は「お金の心配なく、子どもを産み育てられる環境を整えたい。担い手が増えれば、街の安定的発展につながる」と語る。
 「“第2子の壁”は経済的理由がほとんどだ。結婚したくて子どももほしいのに経済的理由で断念するという社会は健全ではない。財政が許すなら、第1子から無料にしたいところだ」
 子どもやきょうだいの年齢、保護者の所得に関係なく一律で無料化するのは関西初、5万人以上の市では全国初の試みだ。
 「25~35歳の若い夫婦と5歳以下の子という家族の転入が増えている。近隣の市から明石に引っ越してきて2人目、3人目の子を産んでくれる。そうやって人口が増えている。情報化の時代の中で、選んでもらえる街になってきている」
 市の試算では、夫婦共働きで年収700万前後、6歳、3歳、0歳の子がいる世帯の場合、年間約74万円の負担減になる。
 「明石に引っ越すだけで年収70万アップと同じ効果がある。その分のお金を塾や習い事に充ててもらっていい。貧困層だけでなく、中間層も助かる。教育熱心な中間層が流入してくればそれだけ街の力が上がる」

 ■    ■

 子どもの貧困に関わる問題でも、全国に先駆けた施策を始めようとしている。その一つが、低所得のひとり親家庭を支援する児童扶養手当を全国一律の年3回の支給から、希望すれば毎月支給に変更できる方式の導入だ。現行の4カ月分の「まとめ支給」だと、計画的な家計のやりくりが難しい世帯の場合、別の用途に使ってしまうリスクが高まる。毎月小分けにして支給することで、家計の収支が安定する効果が見込める。
 「児童扶養手当は子どものためのお金だが、現行だと親が使ってしまうケースがある。毎月に分けることで、本来の目的に使われるようにしたい。4カ月に1回というのは単に行政の利便性の問題。子どもの利益の方を優先させるのは当たり前だ」
 国の現行制度では毎月支給はできない。そのため市社会福祉協議会が毎月一定額を貸し付け、4カ月に1回、行政の支給時に精算する方法で、実質的な“毎月支給”を実現する。
 「お金の配り方が問題なのではなく、子どものために有効に使われるようにすることが重要。渡す際の家庭訪問で使われ方も確認できるようにしていく」
 現在希望者を募っており、2017年1月から開始予定だ。

■    ■

 「泣いている子がいるなら泣きやむように、泣かなくていいようにするのが行政の責任。特に子どもに近い基礎自治体(市区町村)には絶対の責務だ」
 先進的な取り組みを次々と打ち出しながら、「子どもの貧困」をうたった施策は見当たらない。見かけよりも中身、実効性が重視されている。
 「明石市の特徴は所得制限をかけないユニバーサルな施策。子どもの貧困対策では申請漏れや連絡がつかないなど、さまざまな事情で必要な子どもに届かないケースが必ず出る。それよりはすべての子どもの育ちを保障する中で、結果的に貧困の子にも支援が届くようにしたい。行政に求められるのは、そんな施策ではないか」(「子どもの貧困」取材班・田嶋正雄)

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