米軍工事に陸自ヘリ 法的根拠なしの暴挙
「自衛隊の行動」は、防衛出動、治安出動、警護出動、災害派遣・・自衛隊法6章は自衛隊ができることを定めたポジティブリスト。米軍の施設工事のため出動させることができるとは定められていない。だから防衛大臣も「自衛隊法に根拠なし」と認めざるをえなかった。でも強行。法治国家ではなくなっている。
「負担軽減」というが、米海兵隊の「戦略展望2025」は、北部訓練場の部分返還について「使えない土地を返す代わりに、利用可能な訓練場を新たに開発」と機能強化を強調している。
【<社説>自衛隊ヘリ投入 法的根拠が曖昧な暴挙だ 琉球新報9/14】
【社説[米軍工事に陸自ヘリ]嘆かわしい従米一辺倒 沖縄タイムス9/14】
【<社説>自衛隊ヘリ投入 法的根拠が曖昧な暴挙だ 琉球新報9/14】陸上自衛隊の輸送ヘリが米軍北部訓練場のヘリパッド建設の機材搬入に投入された。自衛隊法の具体的な根拠を示さず、県の反対を押し切る暴挙であり、直ちに自衛隊ヘリの運用を中止すべきだ。
翁長雄志知事は民間ヘリが用いられた時点で、「事前に十分な説明もなく一方的に工事を進める政府の姿勢は到底容認できない」と強い抗議を表明していた。
県は自衛隊ヘリの投入を沖縄防衛局に問い合わせていたが、実施時期や法的根拠についての説明もないまま自衛隊ヘリ投入を強行したのである。
県内では2007年にも、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設の事前調査に海上自衛隊の掃海母艦が派遣された。その際、政府は法的根拠を示さないまま、「国家行政組織法」に基づく「官庁間協力」の曖昧な説明で押し切った。
当時、久間章生防衛相は福島瑞穂社民党党首に対し、自衛隊の協力の事例として「さっぽろ雪まつりや遺骨収集」を挙げた。
雪かきや遺骨収集などの民生協力ならともかく、米軍基地建設への協力も可能とするのは、違法な拡大解釈ではないか。
武力を備える実力組織の自衛隊の活動は、自衛隊法など明確な根拠法令に基づいている。国家防衛の主たる任務ほかの活動については「民生協力」など限定列挙により、厳格に規定している。
07年の海自掃海母艦派遣では、辺野古海域での新基地建設に向けた環境現況調査(事前調査)に海自潜水士が投入された。
今回の自衛隊ヘリの投入は07年の事前調査とは異なり、米軍基地建設に直接関与するものだ。稲田朋美防衛相は「必要最小限に限る」としているが、程度問題では済まされない。防衛相は防衛省設置法4条19号を根拠に挙げるが、同省の米軍施設の提供を定める条項であり、自衛隊動員の文言はない。
米軍基地建設に自衛隊が直接関与する自衛隊法等の根拠は何か。防衛相、政府は明らかにする責任がある。
防衛局の「環境影響評価(アセスメント)検討図書」はヘリの輸送回数を「1日5回程度」、合計「20回程度」と記するが、これを上回る輸送回数となる見通しだ。
騒音被害、貴重生物への影響が懸念されるヘリパッド建設にヘリを投入し、さらに被害が拡大する。県民無視の手段を選ばぬ建設強行は容認できない。
【社説[米軍工事に陸自ヘリ]嘆かわしい従米一辺倒 沖縄タイムス9/14】米軍北部訓練場のヘリパッド建設に伴う資材搬入に13日、陸上自衛隊の大型輸送ヘリが投入された。
東村高江周辺のヘリパッド建設工事をめぐって、工期の遅れを取り戻したい防衛省は9日から、民間ヘリを使って資材を搬入している。
今回、自衛隊ヘリの使用に踏み切ったのは、民間ヘリでは運べない大型重機を運搬するためである。なりふり構わずといった対応だ。
国際平和協力活動やゲリラ攻撃に対応する陸自の精鋭部隊「中央即応集団」のヘリが運んだのは、重機やトラックである。県道70号を横切る形で計6回運搬した。
ヘリ投入について、稲田朋美防衛相は防衛省設置法4条19号に基づくものだと説明している。
4条19号は、米軍基地の取得や提供、使用条件の変更、返還に関することなど、同省の所掌事務を記しているだけである。
この条文のどこをどう読めばヘリ使用が可能になるのか、自衛隊がどんな権限で工事に関わるのか。設置法を都合よく拡大解釈したとしか思えない。
ヘリ使用は自衛隊法からも疑問が多い。同法第6章が規定する「自衛隊の行動」は、防衛出動、治安出動、警護出動、災害派遣などである。
県内に根強い反対のある米軍施設建設に自衛隊ヘリを使うのは、県民感情を逆なでするもので、配慮を欠く強引なやり方だ。
住民の生活道路である県道を、重機などをぶら下げた大型ヘリが横切るのも極めて危険である。
■ ■
稲田氏は「沖縄の負担軽減にとって有益で返還に伴う措置」と強調する。
ヘリパッドの移設工事が北部訓練場約7500ヘクタールの過半返還の条件になっているのは確かだが、高江周辺ではヘリパッド建設によって確実に負担が増す。
実際、高江の集落を取り囲むように計画された6カ所のヘリパッドのうち2カ所が完成し、オスプレイの飛行訓練が始まった。騒音被害などが懸念される。
防衛省が工事を急ぐのは、残りの4カ所の工事を促す米軍との約束を履行するためだ。住民の懸念には向き合わないのに、米軍の要求に応えようと必死である。
高江問題は、米軍と自衛隊が一緒になって、沖縄住民に対峙(たいじ)するという、あってはならない構図を浮かび上がらせている。
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ヘリパッド建設は、参院選が終わるやいなや、選挙結果を顧みず再開された。
司法手続きをへないで市民のテントを撤去したり、周辺道路で検問を実施したり、力ずくの警備も目立つ。
全国から約500人の機動隊を動員した上、民間ヘリを使い、ついには自衛隊ヘリまで投入。
米海兵隊は「戦略展望2025」の中で、北部訓練場の部分返還について「使えない土地を返す代わりに、利用可能な訓練場を新たに開発」と米側の利点を強調している。
負担軽減の名の下に基地の機能強化が進んでいる。
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