社会的養護・・・高知県計画
社会的養護に関する都道府県の計画策定、児童福祉法の1部改定について先日取り上げた。
【児童養護と児相の充実を~「子ども権利条約」明記した改定児福法2016/7】
あらためて、県計画を見てみるととともに、昨年12月県議会での論戦、今年度の新規事業を振り返ってみた。
○2016年度新設された事業
・児童養護施設等の子どもたちの自立に向けた相談支援体制の強化
【入所児童自立支援等事業費補助金 8,956千円】
・)児童養護施設等を退所後に就業または進学する子どもたちを支援
【児童養護施設退所者等自立支援資金貸付事業費補助金 98,448千円】
【2015年12月県議会】
【高知県家庭的養護推進計画 2015.3】
◆計画の基本理念
子どもの尊厳及び権利が守られ、健やかに成長することができる環境づくりをすすめ、本県の社会的養護体制を充実することを目指します。
→ しっかり子どもの権利がかきこまれている。
◆高知県における社会的養護の現状と課題
(1)現状
・児相の相談障害相談、非行相談の割合が高く、養護相談、育成相談、保健その他の相談の割合がやや低い
・児童養護施設の定員数が多いことが特徴であり、社会福祉施設等調査(平成24年10月1日現在)によれば、人口10万人あたりの児童養護施設の定員数は全国1位(431人)。
・入所児童 被虐待経験 全体の5割弱、障害のある子ども 全体の3割弱
・在籍年数 1年未満が13.1%、1年以上5年未満45.1%、5年以上10 年未満25.1%、10 年以上16.6%
・児童人口の減少と共に、児童養護施設等の入所児童数も減少傾向。
・小規模住居型児童養育事業(ファミリーホーム)は県内3か所で実施
・里親登録者数 2010年26人→ 2014年6月37人
・全国の里親委託率(2012度末:14.8%)、本県は全国下位が続いている(2013年度末:10.1%)。
・高卒後の進路(2014年3月卒) 進学・就職共に全体の3割程度。障害者支援施設入所が2割程度。
・経済的不安定さ等を理由に措置延長制度を利用した児童は3割
・児童指導員の配置/勤続年数 10 年以上44.6%、次いで5 年未満が7.5%、5年以上10 年未満17.9%。10 年以上の経験があるベテラン職員と経験年数5年未満の若手職員の層が厚い。
年齢構成 20 代39.1%、次いで30 代25.0%。若い世代が全体の約6割る
・子どもの権利擁護 ① 被措置児童等虐待対応ガイドラインの策定 ②子どもの権利ノートの活用(学習、面談での活用) ③ 児童養護施設等の第三者評価制度の受審(結果の公表)
(2)課題
・里親への委託の割合が低く、児童養護施設等による養護が多い / 施設養護の多くが中舎制であり、施設本体での小規模グループケアは14、本体施設と離れた地域小規模児童養護施設は3グループ、本体施設に近い分園型小規模グループケア5グループとまだ少ない。家庭的な生活経験が少なく、家庭のイメージの獲得や地域社会との関わりが薄くなりがちである。
・自立支援、家庭・地域支援 「支援体制が十分とは言えません」と評価
◆将来像
1.供給量
措置児童数 2015年460人 → 2029年334人
里親・FH 38→64人 施設・本体414→198人 GH47→72人
◆今後5年間のとりくみ
。子ども・子育て支援法に基づく「県子ども・子育て支援事業支援計画」のうち、県が行う「子どもに関する専門的な知識及び技術を要する支援に関する施策」の中の「社会的養護体制の充実」として位置付け。
1.家庭的養護の推進
(1)里親
①里親支援/児童相談所と里親支援機関(里親支援専門相談員を配置した児童養護施設等)等との連携強化
②登録里親の増加/説明会・や体験事業の実施、ファミリーホームの設置支援
③里親会の活発化 2015年3ヶ所→5ヶ所へ
(2)施設における家庭的養護推進
①小規模化、地域分散化
②人材育成 研修、チーム責任者など中堅職員育成
2専門的ケアの充実(児相との連携強化)
3自立支援/児童養護施設等による施設入所児童等社会復帰促進事業の実施、児童家庭支援センターによる退所児童アフターケア事業の積極的な活用/「児童自立生活援助事業」(以下、自立援助ホーム)の実施推進
・児童家庭支援センターの設置箇所数 3 →5ヶ所
・退所児童等アフターケア事業実施箇所数 2 →3ヶ所
・児童自立生活援助事業実施箇所数 1 →2ヶ所
4.家庭・地域支援の充実
・児童家庭支援センターの新規設置を促進。同センターの市町村の要保護児童対策地域協議会への参加
【2015年12月県議会】●中根嫌疑
児童養護施設の課題について、以下、地域福祉部長に伺います。
本年3月に、高知県家庭的養護推進計画が策定されました。これは、平成24年11月に厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知により、平成27年度を始期とする各都道府県の推進計画の策定が要請されたことによる平成41年までの将来像と、今後5年間の取り組みを定めたものです。国は計画として、現在、「施設が9割、里親が1割」である現状を10数年後に、本体施設、グループホーム、里親などの割合をそれぞれ、3分の1ずつにしていくという目標をあげています。
本県は、これまでも里親の「委託率」が低く、また、施設が多いことから、その目標達成には様々な課題があると思いますが、どのように家庭的養護を進めていくお考えなのか伺いをいたします。
■地域福祉部長
本県における家庭的養護の進め方についてのお尋ねがありました。
本県における社会的養護の現状につきましては、施設養育が中心となっており、里親への委託率は、近年高まってきてはおりますものの、全国に比べますと低位の状況にあります。しかしながら、児童養護施設等で生活する子どもたちが、原則18歳までで退所を余儀なくされ一人立ちを求められますことを考えますと子どもたちが可能な限り家庭的な養育環境のもとで、愛情を受けて育つことは、子どもたちがその後の自立した社会生活を送るうえで、大変貴重な経験ともなります。このため県としましても、里親やファミリーホームによる家庭的養護を推進していく必要があるものと考えております。
まず里親制度については、その正しい理解を深め、新たに里親登録をしていただける方を増やすため、今年度は、県内の8箇所において、里親制度の説明・相談会を開催いたしますとともに、児童相談所をはじめとする関係する支援機関が里親養育をサポートするための支援体制の整備等にも取り組んでいるところです。
次に、児童養護施設等につきまして、これまでの集団的な養育から、できるだけ家庭的な養育環境へと近づけるため、小規模グループホームによる養育へと移行するよう積極的な働きかけを行っているところです。今後とも、こうした取組みなどを通じまして、社会的養護のもとで育つ子どもたちの健やかな成長・発達に向け、養育環境の整備に努めてまいります。
●中根県議
この推進計画の中でも、社会的養護の課題が、何点か挙げられています。
その一つは、専門的ケアの充実です。この間、虐待を受けた子どもや、発達障害や知的障害など何らかの障害を持った子どもの入所が増えています。平成24年度の調査によれば、虐待経験者が約45%、障害を持っている子どもが28%という状況です。こうした子どもたちの心と体のケアと発達の専門的対応が必要です。平成24年からは、すべての施設に心理療法担当職員の配置が行われました。こうした専門職は経験を生かしながら、継続性による専門性の蓄積、実践交流による力量アップが図られなくてはなりません。
施設任せにすることなく、県としても支援策を講じるべきだと考えますが、お伺いいたします。
■地域福祉部長
児童養護施設等に配置された心理療法担当職員に対する支援策についてのお尋ねがありました。
児童養護施設等に配置されている心理療法担当職員は、児童虐待などによって心理的に傷ついた子どもたちへのカウンセリングを通じて、心理面での専門的なケアを行い、安心・安全感の再形成や人とのつながりの修復を図ることなどが求められており、その専門性を維持・向上していく必要があります。
このため、県では、施設の心理療法担当職員と児童相談所の児童心理司との学習会の継続的な実施により、相互の心理療法の技能向上に努めておりますほか、外部の専門家等を招へいしての個別ケースへの対応に生かされる実践的な研修などにも取り組んでいるところです。今後とも、こうした取組みなどを含めまして、児童養護施設等の心理療法担当職員の専門性の向上につながる積極的な支援に努めてまいります。
●中根県議
2点目の課題は、自立支援です。自立のために最低限必要と言える高校卒業資格を、どう保証するかが鍵となります。通塾のための国の予算措置はされていますが、コミュニケーション力が不十分である子どもたちにとっては、通塾も苦痛なものになります。この間、朝倉ゼミナールの先生方が施設に出向いてくださり、「必ず、高校に行けるようになるよ」と励ますことで子どもたちの目が輝き、熱心な取り組みにより、自立に大きく踏み出した経験も作られています。きわめて貴重な取り組みです。今年から国の制度で、集団学習になじむことが困難な子どもに家庭教師などによって個別指導を行うための措置費も月2万5千円という額ですが実現をしました。
各施設で積極的に活用するよう働きかけるべきだと考えますが、お伺いします。
■地域福祉部長
集団学習に馴染めない中学生への個別指導を行う際の国の助成制度の積極的な活用についてのお尋ねがありました。
児童養護施設等で生活している中学生の中には、学校での授業に遅れを生じている子どもや特別な学習支援を必要とする子どもたちも一緒に生活をいたしております。このため、各施設では、こうした中学生へのボランティアによる学習支援をはじめとする学びの場の確保などに取り組んでいただいているところです。
国の支援策では、従前より中学生の学習塾と集団学習指導に係る費用については対象といたしておりましたが、今年度からは、議員のお話にもありますように、特別な配慮を必要とする子どもたちへの家庭教師等によるマンツーマン指導についても支援の対象とされております。
県としましても、子どもたちが施設を退所し、自立した社会生活を送るためには、必要な教養を身につけさせておくことが欠かせないものと考えており、こうした個別指導を必要とする子どもたちが、学習支援を受けられる折角の機会を逸することのないよう、ニーズの把握を含めまして、制度の積極的な活用を施設に働きかけてまいります。
●中根県議
また自立のためには、就職できること、住居を構えることが重要です。どんな職業に就きたいか、そのためにはどうすればいいか、心にきめ細かく寄り添う相談、指導が欠かせません。適切な住居を選択し、契約するといった一人一人への具体的な対応も必要です。しかし、現在の職員配置基準では、専門的にその援助、指導を行える体制にはなっていません。人口の多い自治体では、そうした事業を委託できるNPO団体がありますが、本県には、存在していませんし、事業化するためには財政的基盤の点で困難な状況となっています。
県として、自立支援のために人的配置のできる支援が求められていると思いますが伺いいたします。
埼玉県では、退所後のアフターケアのあり方、自立支援に何が必要かを政策化するため、退所後の生活実態や自由記載欄をもうけた退所者のアンケート調査を行っています。
本県でも課題を明らかにするためにも、是非調査を行うべきと考えますが、お伺いいたします。
■地域福祉部長
自立支援につながる専門人材の施設配置と、退所後の自立支援に効果的な施策を立案するための実態調査の必要性についてのお尋ねがありました。関連をいたしますので併せてお答えをいたします。
児童養護施設等に入所している子どもたちには、過去の生育歴や家庭環境などから、ややもすれば、自己肯定感も低くなってしまいがちな傾向が見られ、その進路を選択する際に、自らが断念してしまうケースが少なくないともお聞きをいたしております。他方で、施設の職員は、複数の子どもを交代で養育していることから、進路の問題や施設退所後の生活に関する相談などについては、子どもたち一人一人へのきめ細かな支援といった面で、どうしても手が行き届きにくいといった状況にもあります。
こうした子どもたちが、施設の退所後に自立した社会人としてスムーズな社会生活のスタートとその後の安定した日常生活を送るためには、子どもたちの進学や就職、さらには退所後の相談支援などを専門に担当する職員を配置することが必要ではないかと考え、現在、施設への具体的な支援の在り方などについての検討を進めているところです。
また、児童福祉法では、施設に入所できるのは必要に応じて延長が認められるものの、原則18歳までとなっており、退所後の経済的な負担の問題などから、そのつまずくリスクが高いことが言われております。このため、施設退所後の支接の充実が喫緊の課題となっており、その実態を把握することも必要になってまいります。その際には、先程申し上げましたような職員が退所後のアフターケア活動などを通じまして、必要とされる支援策の具体的な検討をおこなうことも可能になってくるのではないかと考えております。
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