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属米 ~ 「地位協定」に固執する日本政府

 普天間基地の補修に米側に言われるままに、数百億円をポンと出す一方、沖縄を中心に「地位協定の改定」を求める声を無視し続け、機智しつけに暴力をもって県民に対峙する自公政府。
 沖縄で起こってることは、日本全国で繰り返される、と思わなくてはならない。自衛隊員の命まで差し出そうとしているのだから・・・

【沖縄・女性殺害事件が浮き彫りにする「理不尽」〜日米地位協定を考える ヤフー8/18】
【なぜ改定されないのか~日米地位協定を考える ヤフー8/18】

【沖縄・女性殺害事件が浮き彫りにする「理不尽」〜日米地位協定を考える ヤフー8/18】

米軍基地が集中する沖縄で今年4月、20歳の会社員女性の殺害・遺棄事件が発生した。しばらくして逮捕・起訴されたのは、元米海兵隊員で軍属の男だった。女性の遺体は海兵隊訓練場のフェンス脇で発見された。米軍がらみの凶悪事件が発生するたびに、沖縄では「日米地位協定」の改定を求める声が高まる。「犯罪の温床」という指摘もある日米地位協定。いったいどんな内容で、どこに問題があるのか。その実態を現場から報告する。(Yahoo!ニュース編集部)

■「地位協定は犯罪の温床です」

沖縄本島の中北部は奥深い山々が連なる。恩納岳(おんなだけ)の東側に立つ三角の形をしたブート岳は、その格好の良さゆえに金武町(きんちょう)のシンボルとされてきた。いまは瑞々しい緑が覆っているが、かつては米海兵隊員たちの実弾射撃や砲弾訓練の標的とされ、植物が生えることはなかった。

町民は1万1000人。町の面積に占める基地の割合は59.3%に達する。その大半は山岳地帯を戦場に見立てた訓練場だ。そして、その訓練場を真っ二つに切り裂くように東西に走る道がある。県道104号線。20年前までは訓練で使用する155ミリ榴弾砲の実弾が頭上を飛び交っていた。

木々の間から、時折、強烈な朝日が路面を照らす。金武町側から車を西向けに走らせると、道路の両側がいまも海兵隊訓練場であることを示す「RANGE」と書かれた英語の看板が目に飛び込んでくる。恩納村に入り数キロ、<現場>はあった。3週間も行方不明となっていた同県うるま市の女性が、遺体となって発見された場所だった。

犠牲者を悼むために置かれた小さな折りたたみテーブルの上には、無数の花束や水、ジュースが捧げられている。それらに囲まれるように、小さな対のシーサー(獅子)が置かれていた。沖縄では古来、シーサーは魔物から身を守ってくれると信じられてきた。
この場所に毎朝、決まったようにやってくる人がいる。元金武町長の吉田勝廣さんだ。
「あのあたり・・・。5月19日に(遺体が)見つかったという連絡があって。あのあたりかと思います」
吉田さんが指さしたのは、立ち入り禁止を表す「沖縄県警察」と印字された黄色いテープの向こう側だった。灌木が茂っていて、その先にはフェンスが見える。海兵隊訓練場のフェンスだ。
死体遺棄容疑で米軍属の男が逮捕される決め手となったのは、男の車から検出された被害者のDNAだった。

「こういう事件が起きるたびに、綱紀粛正とか運用の改善、あるいは好意的配慮とか、いろいろ言います。しかし、政府や外務省は、こんな目先のことしか言えないんですか? あんた方は、なんべん沖縄の人を殺せば本当に起ち上がってくれるの、と言いたいですよ」
吉田さんには苦い思いがあった。それは21年前に沖縄はもとより、日本中を震撼させた少女暴行事件。当時、行政の長だった吉田さんには、少女を守れなかったという自責の念がある。

あのとき、暴行した3人の米兵は基地に逃げ込んでしまった。そのため、日本の捜査当局は3人の身柄を拘束して取り調べるという実効的な捜査手段が取れなかった。
日本で凶悪事件を起こしたという疑いがあるのに、なぜ、逮捕できないのか。日米地位協定でそう定められているからだ。吉田さんは最後の言葉を絞り出した。
「地位協定は犯罪の温床です」

米軍関係者の犯罪が繰り返される背景には、日米地位協定があり、米軍人・軍属を守っているからに違いない。吉田さんはそう考えている。
「犯罪の温床」とまで言われる日米地位協定とは、いったいどういうもので、どこが問題なのだろうか――

■犯罪捜査を阻む「米軍関係者の特権」

米軍人・軍属が起こす殺人や強盗、強姦といった凶悪犯罪。そのたびに浮上する日米地位協定の問題とは、具体的には刑事裁判権を定めた「第17条5項C」を指すことが多い。

第17条(刑事裁判権)
5項(C)日本国が裁判権を行使すべき合衆国軍隊の構成員又は軍属たる被疑者の拘禁は、その者の身柄が合衆国の手中にあるときは、日本国による公訴が提起されるまでの間、合衆国が引き続き行うものとする。

わかりやすくいえば、事件や事故を起こした軍人や軍属が基地内に逃げ込んでしまった場合、米側は、日本が起訴するまで身柄を引き渡さなくてもよい、という意味だ。
今回、沖縄で起きた女性殺害・遺棄事件では、日本がいち早く容疑者の身柄を拘束したので、この条項が直接的には問題とならなかった。
しかし、21年前の少女暴行事件のように、容疑者が基地に逃げ込むなどして身柄が米側にある場合、日米地位協定「第17条5項C」が壁となって、日本の捜査権が及ばなくなってしまうことがあるのだ。
政治学が専門で、安全保障や地位協定を研究している法政大学法学部講師の明田川融さんは、日米地位協定が定める刑事裁判権の問題点を解説する。
日米地位協定によると、米軍人・軍属が「公務中」に起こした犯罪は、日本側に第一次裁判権がない。一方、「公務外」の犯罪については、日本側が第一次裁判権を持っている。ところが、容疑者の身柄の確保をめぐり大きな問題がある、と明田川さんは話す。
「日本側に裁判権がある場合でも、(5項Cにあるように)アメリカ側が容疑者の身柄を確保してしまうと、なかなかその身柄が日本側にわたってこないことが、以前から指摘されているんですね」
つまり、容疑者が基地に逃げ込んでしまえば、日本側は容疑者を逮捕して取り調べることができず、ひいては起訴できなくなる可能性があるということだ。
「米軍関係者の特権」にも見えるこの第17条5項C。被害者から見ると、米軍人・軍属が罪を犯しても罰することができないのか、という理不尽さや不平等さとして映る。
沖縄では、今回のような事件ばかりではなく、事故をめぐっても、日米地位協定に関する問題が起きていた。

■「犯罪者が犯罪捜査をするようなもの」

「ここにヘリが落ちてきて、爆発したんですよ」
沖縄国際大学教授の前泊博盛さんの目の前には黒々と焼け焦げた樹木があった。米海兵隊の普天間飛行場に隣接する大学の一角に軍用ヘリが墜落したのは、12年前。ヘリが軍の「財産」であることを盾に事故現場を封鎖した米軍は、警察の捜査もカメラ取材も拒否したという。
「地位協定上、財産権ですね。自分たちの財産を管理する権利が、という言い方をされたんです」
本来であれば、事故現場はその原因の証拠が残されている最も重要な場所である。にもかかわらず、米軍は「墜落炎上したヘリの機体や部品は自分たちの財産だといって、日本の警察やメディアの立ち入りを拒否した」というのだ。

その根拠となったのが、1960年の日米地位協定締結の際に、日米の全権委員が交わした合意議事録に書かれている次の文章だ。

「日本国の当局は、合衆国軍隊の財産について、捜索、差し押さえ、または検証を行う権利を行使しない」

米軍が「財産権」を盾に封鎖した陰には、もう一つの理由があったという指摘もある。それは、ヘリに積まれていた劣化ウラン弾など放射性物質の回収、処理に当たるため、日本の捜査当局やメディアを近づけたくなかったのではないかという疑惑である。だが、そんな疑惑も闇に埋もれたままとなった、と前泊さんは語る
「犯罪者に犯罪捜査をさせるようなものです。事件の真相が分かるわけがないです。本来、ここは私有地です。(基地の)フェンスの外なので、日本の領土です。(日本の)領土・領海・領空にも関わらず、地位協定が適用された時点で、ここをアメリカ軍の占領地に変えることができてしまうということですね」

■「地位協定の壁が私にぶつかった」

日米地位協定が問題となるのは、沖縄だけではない。
昨年、1冊の本が書店に並んだ。書名は『涙のあとは乾く』。本の帯には「あの日、私はレイプされた・・・」というショッキングな文言が並ぶ。著者はオーストラリア出身で、いまは日本で暮らしているキャサリン・ジェーン・フィッシャーさんだ。

取材の際、名刺に刷り込まれていた短い言葉が目にとまった。「レイプに反対なら、地位協定を変えるべきです」。ジェーンさんがこの意味を解説してくれた。

「レイプの被害者となったときに、何回も日本の政府とやり取りをしたんです。しかし、地位協定の壁が私にぶつかっちゃったんですよ。『地位協定があるからなにもできません』って、言われちゃったんですよ」
レイプ事件は2002年、神奈川県横須賀市で起きた。犯人は米海軍横須賀基地所属の兵士だった。だが、事件後、兵士は基地に逃げ込んでしまった。

本の書き出しは次のように始まる。
「アメリカ軍は日本の警察を呼んだ。レイプは基地の外で起こったからだ。『助かった』、私は思った。警察が私を保護し、犯人を捕まえてくれると信じて疑わなかった」

ところが、事実はそうならなかった。基地の外で、しかも公務外に起きた事件であるにもかかわらず、基地に逃げ込んだ容疑者に対する身柄の拘束や事情聴取は拒否され、結局、不起訴とするしかなかったのだ。しかも兵士は、軍の命令で帰国してしまった。
沖縄で起きた今回の女性殺害事件でも、もし容疑者が基地内に逃げ込んだとすれば、日米地位協定が大きな壁となって立ちはだかり、ジェーンさんのケースと全く同じことが繰り返されたかもしれない。

「改定に向けて何もしてこなかった政府は、加害者と同じ」。ジェーンさんは語気を強めた。

「犯罪は犯罪です。あなたが何をしていたかなんて関係ない。レイプには反対だ、と日本政府は言うべきです。公務中だろうが、公務外だろうが、ビーチにいようが、スーパーで買い物をしてようが関係ない。あなたは罪を犯した。ならば、服役しなければいけない」
日米地位協定は56年前に締結されて以来、一度も改定されていない。それは、なぜなのか。後編では、その理由を考える。

【なぜ改定されないのか~日米地位協定を考える ヤフー8/18】

■「沖縄県民はもがいて、苦しんでいる」

米軍基地が集中する沖縄。沖縄県警察本部の調べによると、本土復帰の1972年から今年6月までの44年間に起きた米軍がらみの殺人・強姦などの凶悪犯罪は575件。年々減少傾向にあるとはいえ、平均すると月1件という割合だ。
沖縄県議会・米軍基地関係特別委員会の仲宗根悟委員長(社民・護憲ネット)は「我慢も限界だ」と怒る。
「国内で起こっている事件・事故については、最初に日本の警察がしっかり取り調べをするところから始めないと、平等で対等な日米の同盟関係ではないと思いますよ。限界も通り越して、本当に苦しんで、もがいてもがいて苦しんでいるというのが、いまの沖縄県民の姿じゃないでしょうか」

まずは日米地位協定の成り立ちを振り返ろう。
1960年6月、日米新安保条約が成立した。地位協定は、安保条約の第6条「日本の安全のため、アメリカ合衆国はその陸・海・空軍が日本国内において施設および区域を使用することができる」という規定に基づいて定められた細則だ。全28条からなる。
日米地位協定を一言でいえば、<在日米軍と軍人、軍属、家族らは日本の法律に縛られないで自由に行動できる>という取り決めである。締結から56年間、一度も改定されることなく、今日に至っている。

■「占領期の気分を残した地位協定」

日米の安保条約や地位協定といった日米政治外交史を研究してきた法政大学法学部講師の明田川融さんによると、米軍は、ドイツやイタリア、韓国、それにイラクやアフガニスタンなど40カ国以上の国々と地位協定を結んでいる。そのうち、基地内に逃げ込んだ容疑者の扱いをめぐって米国と対等な協定を結んでいるのはドイツだけだ、という。
「ドイツの場合はボン補足協定というのを結んでいますけども、そこにはこんな規定があるんですね。緊急に犯人を逮捕したり捜査したりする必要があれば、事前通告なしで米軍基地に立ち入ることができる、と」
一方、日米地位協定では「第17条5項C」により、容疑者が米軍基地に逃げ込んでしまえば、日本の警察は基地に立ち入って逮捕したり尋問したりできないことになっている。容疑者にとっては都合がいいが、被害者にとっては理不尽といえる内容だ。

このような取り決めがなされた背景には何があったのか?

「(56年前に)地位協定が締結されたとき、日本の方は守ってもらう、アメリカは日本が頼むから守ってやるというお互いの思惑があったと思うんですね。それで、日本とすれば、米軍を縛ってはいけないとか、あるいは、アメリカの機嫌を損ねてはいけないといった思慮が働いて、それが今日まで続いていると思うんですね」
戦勝国と敗戦国という立場から始まった日米の関係。憲法上、軍隊を持てない日本が選んだ道が、安全保障をアメリカに委ねることと引き替えに基地を提供することだった。それだけに、日本に駐留する米軍には、さまざまな特別な権利が与えられた、と明田川さんは解説する。

さまざまな権利とは何か? 明田川さんは一例をあげる。

「基地へやってくる米軍人は、日本の出入国管理法令に服さないということがあるんですね」
入国管理という点で言えば、日本側は米軍人の名前も人数も把握できていないということだ。それどころか、彼らが日本国内で車を運転するときも国際免許証は必要なく、車を購入した場合も税金は軽減、高速道路も無料で通行できる。
飛行訓練や演習など基地の管理権は米軍側にあり、犯罪についても、公務中に起きた事件の第一次裁判権は米軍にある。
明田川さんは、地位協定の根本に流れるものは、「占領期の気分」だという。

この「特権」が、ときとして理不尽に映るケースが起こる。それが米軍関係者による事件・事故の場合だ。そのしわ寄せを度々受けてきたのが沖縄である。

■「改定を阻む国民の無知と無関心」

沖縄は、事件や事故が起きるたびに、日米地位協定の抜本改定を訴えてきた。
元琉球新報記者で、現在は沖縄国際大学教授の前泊博盛さん。3年前、『本当は憲法より大切な日米地位協定入門』という本を出した前泊さんは、繰り返される米軍がらみの事件や事故の背後に、日米地位協定が抱える問題がある、と考えてきた。
「(改定の話は)日米交渉の俎上に一度も上がったことがないんです。それがやっぱり問題点なんですけども、今回も容疑者が逮捕された段階で、沖縄県も住民も含めて改定を突きつけるんですが、日米両政府は即座に『改定はしない』と明言しています」

日米両政府は「改定問題に熱くなるのは沖縄だけ」と言わんばかりの態度で、沖縄の抗議を冷めた目で見ている、と前泊さんは不信を募らせる。そんな中で、改定への議論は深まっていくのだろうか。疑問をぶつけると、前泊さんの口調が途端に鋭くなった。

「まず、(本土で暮らす)国民の無関心ですね。関心がないんです。変えようと思わない。それから無知ですね。どういう中身か分からないという無知と無関心が非常に大きいですね」
多くの国民には、米軍が守ってくれているんだから仕方がないという感覚がある、と前泊さんは指摘する。また、地位協定には内容が示されていない合意事項や密約ともいえるものが多すぎて、全体が把握できない難解さもあるという。

前泊さんは、事件に向かい合う日本政府の姿勢についても、批判する。
「今回の事件を見ても分かるように、アメリカ軍はアメリカ国民を守ろうとしているんです。アメリカ国民ですから。犯罪者であろうと(自国の)国民を守ろうとしている米政府に対して、被害者すらも守ろうとしない日本政府の姿が、浮き彫りになった気がします。米軍は大事にするけれども、日本国民である被害者は大事にしない。そして、再発防止にも後ろ向きであると」

■米軍の元関係者「まず日本の国内法の改正を」

一方、アメリカ側は、日米地位協定の「第17条」問題について、どう捉えているのか。日米関係や安全保障政策、戦後沖縄史などの研究者で、去年までの6年間、沖縄の米海兵隊で政治顧問をしてきたロバート・エルドリッヂさんに取材した。

日本国内で起きた事件ならば、日本の国内法で裁くことが自然ではないのか。こう質問すると、エルドリッヂさんからはこう回答が返ってきた。

「(日本の刑事訴訟法によると)基地の外で逮捕されたアメリカ人は、日本の警察署、留置所に送られて、取り調べを(最長で)23日間ずっと受けること(が可能)になっている。弁護士が(取り調べに)立ち会えるといった世界の常識を、なぜ日本は求めないのか。もし、地位協定の改定そのものを目指すのであれば、まず日本は、そのことを改善しなければいけないと思います」
エルドリッヂさんは、日本の刑事司法制度に不備があると指摘してきたのだ。

日本では、犯罪の容疑者は、逮捕・勾留によって起訴されるまで最長23日間の身柄拘束を受ける。その間、弁護士の立ち会いがない状態で、捜査機関の取り調べを受けなければいけない点に問題があると、エルドリッヂさんは批判する。日米地位協定の「刑事裁判権」の規定を改定する前に、日本の刑事訴訟法を改正すべきという主張だ。

そして、こんな苦言を呈する。
「ほとんどの日本人が『日米同盟や米軍基地はアメリカ政府が押し付けたもの』というふうに見ているので、米軍人が絡んだ事件や事故、犯罪に感情的になりやすく、けしからんと思ってしまうのではないか。しかしもう少し冷静に、世界の常識とはなにかを見る必要があるかなと思っています」

■ 「沖縄に基地を集中させてきた」日米両政府の思惑

日米地位協定が改定されない理由について、もう一人、別の観点から分析している論者を紹介したい。国連や日本政府代表として、東ティモールやシエラレオネ、アフガニスタンなど世界各地の紛争地で武装解除や社会復帰などに当たった経験を持ち、紛争解決請負人と呼ばれてきた伊勢崎賢治さんだ。
彼の目に、日米地位協定の問題はどう映っているのだろうか。

「日米地位協定の特異さは、地位協定の条文そのものが60年近くも変えられてないということ。これは非常に特異だと思います」
伊勢崎さんは、歴代の日本政府は改定しないことをかたくなに守っているとしか思えないというのだ。なぜ、そう思うのか。
「(改定問題が)沖縄の問題になっているからです。沖縄の人は事件が起きるたびに悲痛な叫びを上げますけども、国民運動にならない。これはほかの国と決定的に違うところです。ほかの国では(米軍がらみの)事件が起こる場所というのは、誰の目にも分かる本土なわけです。本土で起きれば国民の問題になるわけです。沖縄に基地を集中させてきた歴代の日米の思惑がそこにあるわけですよね」

伊勢崎さんが指摘する「沖縄に基地を集中させてきた」というのは、どういうことか。
実は、戦後の日本が独立を果たした1952年の当時、在日米軍の基地面積の90%は本土にあった。だが、朝鮮戦争を機に本土で高まった反戦運動や米軍演習への反対運動を鎮静化するため、1956年には岐阜県や山梨県にあった海兵隊の基地が、日本復帰前の沖縄に移された。
さらに、1960年代から70年代にかけて、首都圏の基地を大幅に削減する、いわゆる「関東計画」が実行されたこともあって、基地は沖縄に集中することになった。その結果、1970年を分岐点として在日米軍基地(米軍専用施設)の面積の割合は、沖縄が本土を上回るようになった。

多くの国民の目から米軍基地を遠ざけ、その存在を隠してしまう「不可視化」によって、沖縄で起きた事件や事故が「沖縄だけの問題」として済まされてしまう。それがずっと続いてきた、と伊勢崎さんは分析しているのだ。

■「運用の改善」で対応する日本政府

では、肝心の日本政府は、日米地位協定の改定について、どう考えているのだろうか? 外務省の日米地位協定室に問い合わせると、7月29日にメールで返信があった。
その中で、外務省は、3カ月前に沖縄で起きた女性殺害・遺棄事件に遺憾の意を表した上で、米国と集中的に協議を行ったと説明。協議の結果、日米地位協定上の「軍属」の範囲を厳格化することなどを内容とする日米共同文書を発表したことを述べている。
そして、共同発表の内容を具体化するために日米間で協議を進め、「従来の運用改善から一歩進んだ法的拘束力のある政府間文書の作成」を目指すとしている。このように「従来の運用改善から一歩進んだ」との表現はあるが、日米地位協定の改定までは踏み込んでいない。

日米地位協定そのものの評価については、次のように述べ、明確な回答を避けている。

「日米地位協定をめぐって様々な意見があることは承知していますが、政府は、手当てすべき事項の性格に応じて、効果的で機敏に対応できる最も適切な取組を通じ、一つ一つの具体的な問題に対応してきています」

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