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本当に困っている人だけ救う」制度は、本当に困っている人も助けられない~労働者と社会保障 

  NHK報道への片山議員の横槍、高校生へのバッシング・・・ 

 「本当に困っている人だけ救う」制度は、本当に困っている人も助けられない、とは貧困研究者・唐鎌直義教授の「反貧困の社会保障」のキーワードとなっていることばである。

 以下は、同書も含んだ同氏の論考を基本に、2年ほど前に学習会「社会保障は労働者をどうかえるか」で話した骨子である。「どんな条件の悪い仕事でもする」~これを放置すれば〔社会保障の貧困〕は、国民全体の生活・経済水準の低下をまねく。
 生活保護バッシングは、大資本の利潤追求のツール、国民分断のワナである。

あわせて、雨宮処凛さんのコラムも紹介。
【「非の打ち所のない貧しい人」ってどこにいるの? 〜高校生バッシング、もういい加減やめませんか 雨宮処凛8/24】

【社会保障は労働者をどう変えるか    2014/11/10  】

はじめに

・社会保障って何  ―― 高齢者や障害者などの困っている人を助けるもの ?
                       このことを検討するのが今日のテーマ 

・歴史的・・・ 困っている人とはどういうひとか。本当に困っている人と怠けている人がいるのでは?
         ~  「自助・共助・公助」も同じ発想

イギリス 新救貧法、日本 恤救規則(じゅっきゅうきそく)・救護法
       ~ 劣等処遇、稼動年齢の排除、治安低策的側面、強烈な恥辱・汚名をともなう

例)チャップリン 離婚母子家庭  6歳 貧困から精神を病み救護院に収容〔徹底し抵抗〕 「最も悲しい出来事」

・「国家認定の「貧困・無能力者」の烙印~ できるだけ受けたくないもの・・・・ 現在の生活保護と同じ  
  → 「本当に困っている人だけ救う」制度は、本当に困っている人も助けられない/これが歴史の示すところ

Ⅰ 社会保障の誕生  ~  「貧困」の発見  

・19世紀末、英国の世界市場単独支配が終了/この時、英国は世紀末大不況に遭遇/一般労組が台頭し、社会主義思想が勃興するなど騒然とした世相

・労働者は「貧乏人(プア)」と蔑視され、怠惰・生活習慣のせい、個人責任の「貧困」とされていた。

・強い危機感を抱いた資本家階級に属する人々による「貧困問題」を克服する模索が続く


①ブースの「貧困調査」

・チャールズ・ブース/イギリス、海運業を営む資本家
・労働者側が「25%」が貧困の主張を検証 ~ 労働者の調査  35%が貧困
   貧困層の6割以上が、高齢者、障害者  「生きていくためにどんな悪条件でも働かざるをえない」
    / 怠惰など従来の「貧困」の理由は、1割強

・半失業〔非正規、不安定就労〕が大量に存在 → 労働者全体の状態を悪化させている

・従来の「貧困」とは正反対の「貧困の発見」 → 貧困の大量性と社会的性格の二重の把握

②ブースの「常用雇用化」政策 ~ 「失業する権利」の確立

・高齢者、障害者、など労働市場から引き上げた。/どんな悪い労働条件でも、生きていくために働かなければならない状況を改善する 

・不安定就業をなくし労働を常用化すること /常用雇用を確保するまで、不就業状況を「失業」とすること
→「失業者」「失業の権利」の「発明」/「失業の権利」は、労働力の急迫販売、不安定就業を根絶するため。

・失業保険、無拠出の老齢年金を整備
~ 不利に陥る高齢期の労働者を、「高齢者」という社会的地位を与え、「失業の権利」として、年金制度を拡充

・無料の公的な職業紹介所   ~「雇用の質」をチェックし、不安定雇用を労働市場から除去する役割
   今は、民間委託などされているが、もともと日本でも・・・ 請負契約の排除など

・「労働市場の組織化」 /正規雇用、完全失業者に二分化、組織化する政策


③人民の予算  ~ 財源は、累進課税

・1911年 イギリスで国民保険法   ~  疾病時の所得保障、失業保険
   09年、累進所得税制を導入   デビット・ロイド・ジョージ大蔵大臣「人民予算」と称した
   ~ 社会保障の財源を誰が担うか。非常に大事なもの  

・社会保障を経済的側面から見る--- 「所得再配分」の問題

~ 「社会保障は労働者階級のもの」 / 資本主義のもとで避けられない「貧困」から労働者階級を守るものとして発展・確立してきた。

Ⅱ  カール・マルクスさんの貧困論 と 労働運動

①「貧困と格差の拡大」は 資本主義の法則

貧困が広がる背景に、資本主義生産における資本家-労働者という敵対的関係がある
「資本主義的蓄積の一般的法則」 「富の蓄積」は、対極に「貧困の蓄積」を必然的に生み出す
 → 日本の状態みれば、あきらか。 

*貧困とは、生命的な絶対的水準とともに、社会の進歩にそった歴史的な概念

②マルクスの「相対的過剰人口論」

 好況局面面に、生産合理化(機械化)の推進によって投下資本中の固定資本比率が上昇しつづけ、可変資本(賃金)比率が相対的に低下し続けることを指摘(資本の有機的構成の高度化)
→ 不況期になると、一気に、以前より多くの失業者が生まれる

★「相対的過剰人口」

1)平 時  製品1000個生産 労働者100人
2)好景気  製品2000個生産 労働者120人  ← 設備投資を増やし、生産力拡大/ 雇用も拡大
3)平  時  製品1000個生産 労働者 60人  → 2)に比べ60人、1)に比べ40人が「過剰」に        

 「労働者階級の就業部分の過度労働は、彼らの予備軍隊列を膨張させるが、その逆に、この予備軍隊列がその競争によって就業者に加える圧迫の増加は、就業者に過度労働と資本の命令への服従を強制する」
 「労働者階級の一部分の過度労働による、他の部分の強制的怠惰への突き落とし、およびその逆のこと(強制的怠惰が逆に他の部分の過度労働への突き落としを招くこと)は、個々の資本家の致富手段となり、しかも同時に、社会的蓄積の進行に照応する規模で産業予備軍の生産を速める」(資本論第一部)

→ 半失業者、不安定労働という「労働力のプール」として常にいかなる場合にも準備されている。
→ 資本家階級と労働者階級の力関係を、資本家有利に働かせる。/「産業予備軍の死重」

★貧困の理解には、この資本主義の法則を基礎におくべき /この視点を失うと、貧困の原因は個々の貧困者の個別性と多様性の中に埋没し、貧困の不可知論へと導かれる /貧困は必ず具体的な個人に発現 /だからと言って、政策対応が個々人へのケースワークで済まされてよいはずがない。
・敵の所在を明らかにし、貧困をなくす闘いの共通の土俵を作るためには「資本論」を「導きの糸」とするべき。

③社会的バリケード

・長時間労働を強いるのは、資本家個人の善意、悪意でなく資本主義経済の仕組みの問題
→ より多くの利潤を求めての競争の中で、おしつけられる。という意味

・この「法則」への有効な対抗手段が「社会による強制」「社会的バリケード」
~ 工場法の成立は、資本の横暴に歯止めをかけた「社会による強制」の成功例

・マルクス~ 労働組合の組織と運動の正当性を主張した最初の社会主義者

④労働時間短縮の意味

・資本主義の発展――生産力の発展にともない「少なくなるイス」を増やす運動
   40時間→30時間    3人分の仕事だったものを4人分に  /〔最低〕賃金の引き上げとセットで
   バカンス、年休      総労働時間の短縮
 
★フランス 35時間労働、5週間のバカンスで、地域活動、余暇・文化活動が活発で、退職後も、自由な時間を謳歌できる。/ 若いときから、余暇活動をしているので、老後も孤立しない。
→ 高齢者の孤立は、「1人ぐらし」だからでもなく、その支援は在宅介護、在宅福祉ではなく、労働者の働き方(失業する権利)の問題としてとらえる必要がある。

~ 社会保障と労働時間の短縮は、労働者階級の貧困をなくす「車の両輪」

Ⅲ 日本の社会保障制度の特徴

 年金5種類、医療8種類  

〔1〕国家機関の維持、労働者支配の道具として発展してきた歴史

①年金                                  
・最初の年金〔恩給〕  軍人1875、高級官僚1884
・戦時中の年金制度の成立 ~ 戦費調達の目的 

②医療保険  
・大企業を中心に、互助組織、共済組織〔雇用主の負担〕として発展
・1922 国民保険法 総労働者の 3%のみ
・戦時社会政策  国民健康保険法38年、船舶保険法・職員健康保険法39年
   ~ 徴兵制、健康な兵士の確保

③ 国民年金、国民保険  1959年 

・年金、医療保険の格差構造を温存したまま、低所得層の年金・健康保険として発足
    増加する医療扶助の抑制。高度成長をささえる労働者の確保 

・国民年金 満額 月6.5万  半失業状態におかれる
・国保  非正規雇用の増大。大企業の社会保険料負担の軽減  /公費分は、消費税へ 

  構成 1965年  一次産業42.1 自営業 25.4 被用者19.5 無職6.6
      2011年  一次産業2.8  自営業14.5 被用者35.8 無職42.6 
  一人当たり所得(万円)   国保84 協会けんぽ137  組合健保198 
  1世帯の加入人数で保険料が高くなる ~ 子育て世帯ほど負担が重い /傷病手当がない

 ~ 恵まれた層から制度が確立 / 経済的排他要因が働く ~国民分断のツール /英 1908年 無拠出老齢年金から開始

④失業保険   

・完全失業者の2割しか受給していない。給付期間は、事実上90日。
・生活保護は、相変わらず「稼動力者排除」    / 英 1934失業給付として公的扶助が発展  

~日本では 「失業する権利」の未確立

★EU 保険料納付の長短によらない一律給付 
・デンマーク48ヶ月、ベルギーは無制限、ドイツ25ヶ月、オランダ30ヶ月
・職業訓練に2-4年かける北欧 しかも、職業訓練は公的機関が運営し、質の高い内容。勤め先は正規雇用が基本。
→ 若者に、より付加価値の高い職業・職場への移動の促進/ 国としての成長力の確保

・失業保険後の公的扶助で対応/ 日本では、精神疾患など病気で働けない状態でないがきり青年の受給はほとんどない。


〔2〕格差ある労働条件と「車の両輪」で、貧困を拡大

・「失業する権利」の未確立が、働くルールの未確立を増長
  ILO1号条約「8時間労働」の未批准   
  「同一価値労働同一賃金」の原則の未確立   
  EU 最低賃金がすべての職種の賃金に連動する/  派遣、臨時の方が高くつく

・貧困の「自己責任」化 ~ 社会権を「個別的権利」に転換する強力なテコとなってきた。

  「公務員はめぐまれている」「生活保護で楽している」「いい職業につけなかったのは自己責任だ」

~ まんまと資本のわなにはまっている。
~ 自民党が高校事業料無償化など「所得制限」にこだわるのも同じ  社会権でなく、属人的な問題

◆おわりに  「失業する権利」の確立へ

・「失業」のない資本主義はない~ 「失業」の本質は、不安定就労などの「半失業」
 「失業」を「半失業」ではなく「完全な失業」として権利を保障/ 「労働力のプール」の縮小
→社会保障とは、「失業の権利」を保障し急迫販売を防ぎ、労働者の貧困を防止する/労働者階級が築いてきたもの 

*年金利下げにも高校生がデモをするフランス ~ 「社会保障は労働者階級のもの」という思想・文化の確立を
・今の日本では、285兆円の内部留保を、国民、労働者にとりもどす強力な手段

・働くルール、福祉がはじめて国民的課題に
 新自由主義が企業内労働者統合を破壊~ 非正規雇用の拡大、
 医療保険の統合の動き   国保への支援金
  ~ 分断を持ち込む土壌の破壊でもある・・・連帯の土台がひろがり
  → 最低賃金、福祉がはじめて国民的課題になっている時代

・消費税増税 ~ 勤労者の実質賃金低下、国民の消費減 ~  経済を失速させ、税収減になる懸念
・成長戦略  雇用の流動化 ~ 分厚い社会保障が必要

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