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米大統領が「核実験禁止」の安保理決議案提出/自国は1兆ドルの核兵器再生計画

 オバマ米大統領が核実験の全面禁止を求める決議案を国連安全保障理事会に提出することを決めたとのこと。「核兵器のない世界」を目指す狙いと、報道されている。
が、アメリカ、ロシアが技術開発した未臨界実験は対象でない。そもそも、オバマ大統領は、広島訪問まえに、今後30年間で1兆ドルを投じる核兵器の「再生計画」を承認し、使える核兵器にている。
さらにアメリカは、NPTに参加していたインドに対し、条約で禁止されている原発輸出・技術協力を進めている。
核保有の拡大は許さないが、自らは使える「核兵器」は開発する――この姿を報道しないと…

【オバマ大統領>核実験禁止へ安保理決議案 9月にも提出 毎日8/5】
【オバマ大統領広島訪問】核は「使えぬ兵器」から「使える兵器」へ変貌 被害極小化も…「心理的ハードル下がった」恐れ 産経5/29】

【オバマ大統領 核実験禁止へ安保理決議案 9月にも提出 毎日8/5】

 【ワシントン会川晴之】米ワシントン・ポスト紙(電子版)は4日、オバマ米大統領が核実験の全面禁止を求める決議案を国連安全保障理事会に提出することを決めたと報じた。署名開始から今年9月で20年を迎える核実験全面禁止条約(CTBT)の発効に見通しが立たない中で、条約と同等の効果がある安保理決議採択で「核兵器のない世界」の実現を目指す狙いがあるという。決議案は早ければ、来月の国連総会に合わせて提出される可能性がある。

 CTBTは1996年9月の国連総会で署名が開始された。日本をはじめ164カ国が批准を終えているが、米国は99年に議会で否決された。野党共和党が議会多数派を占める中で、早期批准は不可能となっている。また、条約発効には米国のほか中国、北朝鮮、インド、パキスタンなどの批准も必要だが、米国と同様に批准の動きはない。このため、核専門家らが安保理決議の採択をオバマ政権に促していた。

 米国以外の安保理常任理事国のうち、英仏露はCTBTを批准。中国は批准していない。ただ、安保理に決議案が提出されれば、可決する公算が大きい。採択されれば、核実験を強行する北朝鮮への強いけん制になる。

 オバマ氏は、米国の大統領として今年5月に初めて被爆地・広島を訪問。2009年のプラハでの演説で「核兵器のない世界」の実現を訴え、ノーベル平和賞を受賞した。残りの任期があと5カ月と迫る中で、核政策の転換を図ることが「外交上の政治的遺産(レガシー)」作りにつながるとの思いがある。

 ワシントン・ポスト紙によると、エネルギー省のモニズ長官らオバマ政権の幹部が、決議案提出への理解を得るため、議会との接触を始めているという。

 一方、米国家安全保障会議(NSC)のプライス報道官は、毎日新聞の取材に「(CTBT批准に向けた)議会への説得を続ける」考えを強調し、ワシントン・ポスト紙の報道を否定している。

 【ことば】核実験全面禁止条約(CTBT)

 1996年に国連総会で採択され、宇宙や地下などあらゆる空間での核爆発実験を禁止する。発効には潜在的な核開発能力を持つ44カ国(発効要件国)の批准が必要。このうち、米国▽中国▽エジプト▽イラン▽イスラエル▽インド▽パキスタン▽北朝鮮--の8カ国が未批准。印パと北朝鮮は署名もしていない。現在は署名183カ国、批准164カ国(いずれも日本を含む)。


◆包括的核実験禁止条約(知恵蔵2015)

 核兵器の実験的爆発を禁止する条約。地下核実験、平和目的の核爆発、低威力の核爆発を伴う流体核実験など、爆発を伴う核実験を例外なく禁止することにより、新型核兵器の開発と現有核兵器の維持に制約を課す。ただし核実験場の閉鎖を定めず、また核保有国がすでに技術開発した未臨界核実験など爆発を伴わない核実験は禁止していない。そのため現有核兵器の信頼性の確認手段や、核保有国による新しい核兵器の技術開発の可能性を全く排除したわけではない。1996年、国連総会で採択。発効には軍縮会議加盟国で研究・発電の原子炉を保有する44カ国の批准が必要。交渉と批准は共に難航。インドなどは、NPT体制が無期限延長され、CTBTが爆発を伴わない核実験を許容するのは、核保有5カ国の核独占となり不当として反発。98年5月、インドとそれに対抗するパキスタンが相次いで核実験を実施し、軍備管理体制全体を揺るがした。その後、印パはこの条約に署名する意向を示したが、2006年8月現在未署名。米国は1999年10月、上院が同条約の批准案を否決し、ブッシュ政権も批准放棄の方針をとっているなど、発効の見通しは立っていない。
(坂本義和 東京大学名誉教授 / 中村研一 北海道大学教授 / 2007年)


【オバマ大統領広島訪問】核は「使えぬ兵器」から「使える兵器」へ変貌 被害極小化も…「心理的ハードル下がった」恐れ 産経5/29】

「人類が自らを破壊するすべを手に入れた」。被爆地・広島を27日に訪れたオバマ米大統領は、核軍縮の必要性を強く訴えた。膨大な人命を奪う非人道性から「使ってはならない兵器」と封印されたかにみえた核兵器だが、実戦使用を念頭にした弾頭の小型化などの開発が今も進む。威力を抑え軍事施設をピンポイントで攻撃し、民間被害を最小限にする狙いとは裏腹に、専門家からは「むしろ核使用の心理的ハードルは下がった」とも指摘される。(塩原永久)

◆ロシア「最高機密」の実態は
 「彼ら(ロシア)が新型爆弾の開発に取り組んでいると確信している」。オバマ氏への助言役ともいわれる核問題の専門家、ウィリアム・ペリー元米国防長官は最近、軍縮関連誌でこう述べ、強い懸念を示した。
 「最高機密」(軍事専門家)とされるロシアの開発内容は、爆発の威力を抑えた小型の核兵器を用いるものだとの見方が根強い。昨年、露国営メディアに開発中のものとして報じられた新型兵器は、敵の殺傷を目的としたものではなく、小型核の爆発で発生させた放射性物質により、都市を居住不可能にさせることで敵国にダメージを与える狙いがあると指摘されている。

◆オバマ氏も…1兆ドル計画を承認
こうした新たな兵器開発は米国も力を入れる。昨年に新型の兵器「B61-12」の投下実験を実施。小型の弾頭を積んだミサイルの精密誘導性能を高め、攻撃対象以外に被害が及ぶのを防ぐためとみられている。
 核軍縮を訴えるオバマ氏自身、今後30年間で1兆ドル(約110兆円)を投じる核兵器の「再生計画」を承認した。オバマ政権も「新たな戦略環境に応じた核抑止力の向上を目的に開発を続けてきた」(拓殖大学の佐藤丙午教授)という。

 冷戦時代の恐怖は、米ソの首脳が「核のボタン」を押すことでの全面核戦争だった。新たな核兵器には、専門家から「核の“敷居”を下げる恐れがある」(元駐ウクライナ米大使のパイファー氏)などと、核使用の心理的抵抗感を小さくするとの見方も出ている。
 また、小型の弾頭が用いられるのは、大陸間弾道ミサイル(ICBM)に比べ射程が短い「戦術核」が中心になるが、この分野の軍縮交渉は手つかずだ。
 オバマ氏が広島の地を踏んだ姿は各国で報じられ、「核なき世界」の機運を高めるだろう。ただ、停滞する核軍縮交渉に「具体的な動きがすぐに出てくるかといえば、非常に難しい」(佐藤教授)のが現実だ。


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