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ソマリア海賊壊滅 「ミサイルでは解決できないことがある」 日本の寿司チェーンの貢献

 靖国参拝を回避の口実に、稲田防衛大臣がジプチの基地を「視察」している。防衛大臣は「海上交通の安全は依然として予断を許さない。今後も海賊対処を確実に実施することが必要不可欠だ」と、基地の機能強化を言っているが、事実を把握してるいのだろうか。
数ヶ月前に、チェックしていた内容だが、この際なので・・・。
すでにソマリアの海賊は激減している。外務省HPの数字では08年は111件、乗っ取られた船舶42、拘束された乗員815名だったものが、15年にはすべてゼロとなっている。
その背景は、日本の寿司チェーンが、本来マグロの好漁場であるソマリア沖で、漁業で生活できる環境を整備し他に生活する手段がなくて海賊をせざるを得ないる環境を改善した、という話。まさに日本ならではの貢献。
 もはや基地を展開する必要はない、というのが事実では・・

 ただし、ソマリア沖の海賊対処は、国際的な共同の枠組みで実施されており、なにかと他国の摩擦を生み出している中国も参加しているので、それはそれとして意味があるとの指摘がある、とのこと。

【すしざんまい社長が、あの「海賊壊滅作戦」の真相を語った! ミサイルでは、解決できないことがある 2016/4/7】

■マシンガンなんていらない!

最近、インターネットなどで、私がソマリアの海賊を撲滅した、という話が広まっているということを聞きました。
たしかに我が社は近年、紅海、アデン湾に面したアフリカのジブチ共和国とのビジネスに力を注いでいます。ジブチは、ソマリアに隣接する国で、マグロをはじめ水揚げした多くの種類の魚の加工、冷凍、流通に、これまで得た技術を提供しています。
ソマリアではこれまで、せっかく魚を獲っても加工技術がないため、一日1トンくらいしか売ることができませんでした。それを加工することで、輸出が可能になりました。中には海賊行為に手を染めていた人もいましたが、もともと漁民であったため、今では多くが漁師に戻っています。

これについて、お話ししておきたいと思います。

「すしざんまい」の社長・木村清氏が、同店を日本イチ有名な寿司チェーンにまで育てた過程を明かした『マグロ大王 木村清』が発売された。なぜあの価格で一級の寿司ネタを提供できるのか。ビジネスの秘密が満載だ。本書のなかから、話題の「海賊壊滅作戦」について記された部分を特別公開する。

ジブチ共和国からもほど近いソマリア沖は、キハダマグロ、バチマグロその他の世界的な好漁場です。ところが、ジブチを含むソマリア沿岸は、2004年に起きたスマトラ沖地震による津波で、壊滅的な打撃を受けてしまいました。もともと1990年代に始まる内戦、それをきっかけにソマリアの海賊の問題が生じ、現地は平和な暮らしとは縁遠い状況が続いていたところに起こったこの津波被害は、致命的なものでした。
それも影響したのか、2005年頃からは海賊被害がこの海域を通過する世界各国の船舶にも拡大し、ソマリア周辺海域が航行にも危険な状態となりました。そこで、日本の自衛隊や、アメリカ、フランス、ドイツ、スペインなど各国の軍隊が艦艇や哨戒機を派遣するなどして、海賊が出ないように努力してきました。

日本の自衛隊がジブチに活動拠点となる基地をつくったのは、2011年のことです。

ちょうどその前後に、私のもとへもジブチから要請があり、また、私も自衛隊の先輩として、後輩の現役自衛官たちがジブチに行っていて、「どうして海賊が出るんだろう」と不思議に思っていたこともあり、現地に行ってその状況を聞き、また現実に大統領や水産関係者、そこで働く人、国民の声も聞いてみた結果、今書いたような状況を把握することができました。

自衛隊の活動も素晴らしい。でもね、海賊を退治するのに、ミサイルで一掃することはできないのです。完全に武装集団化した凶悪な者を除いて、海賊の多くは小さい船で、持っているのもロシア製の粗末な機関銃だけ。蹴散らしても、ほかに暮らす手段がなければまた海賊に戻るだけです。

■海賊にならずに済む方法を考える

最後は人間と人間の話し合い、会話です。海賊を捕まえて、日本に連れて来たら、「帰りたくない」というのが彼らの本音ですよ。日本で安楽で豊かな暮らしができるなら、危険を冒す必要もありません。でも、それは無理ですから、現地で海賊が生まれる原因をなくし、彼らが今後暮らしていくための形を整えていかなければなりません。

自衛隊は自衛隊として、海賊が出ないための防衛としてやる。治安維持は自衛隊や軍隊の仕事です。一方で、暮らしをつくるのはわれわれ民間の人たちのやることだと思います。民間は経済活動を通して“中”からなくす。
両輪としてどちらも必要なことです。二通りのことをしないといけないと思います。そうして海賊の出ない、普通の経済の国になったらいいと思います。

実際に協力するにあたって、具体的になにができるかを考えてみました。現地に冷蔵庫はあったけれども、魚の売り場所がない。だから「獲ってもしようがない」と言う。現地で消費される量は限られていますし、食べ方もよくわかっていない。しかも、漁に必要な漁船をはじめとする設備も、粗末なものしかないという状況が把握できました。

私も現地で、実際に日本の釣り方を試してみました。そうしたらよく釣れる。水産資源は十分にある。みんな一日何千円でも何万円でも、漁業を通して仕事と収入を確保できれば、海賊をやらずに済む。政府も、彼らが漁業に従事して、国としてしっかりしていくことを望んでいる。ならば、お互いにやりましょう、ということで、我が社も協力して、政府と漁業分野の合意書を交わすことにしました。

現地の漁協を通じて漁民に漁業指導をし、船がないということですから、日本から中古漁船を持ち込みました。

運搬するための船も、日本の船籍だとソマリアに持っていけないので、方法を調べて、スリランカ船籍にして、スリランカ人を訓練して乗員とし、スリランカから持っていくなど工夫しました。

そして、およそ3年。試行錯誤をしながら、ジブチをはじめ、ソマリア沖で漁業ができる人たちとビジネスをするための準備を進めてきました。現地の人たちに魚を獲ってもらって、それを私たちが買うための仕組みをつくろうとしています。今はまだ、採算が取れるような水準ではありませんが、将来的にはきちんと利益が出る目算は立っています。

その間も、アルカイダの問題があったり、ISIS(イスラム国)の問題があったり、国際的に危険な問題もたくさんあるのですが、いろいろな角度からの協力の下で、少しでもジブチやソマリアの人たちの暮らしがよくなるよう、微力ですけれども、応援させていただいています。目先の利益、儲けが第一ではなく、求められることに応えていくことも「商売」ではないか、と思うからです。

おかげさまで2013年には、スリランカのマヒンダ・ラジャパクサ大統領(当時)、ジブチのイスマイル・オーマル・ゲレ大統領がそれぞれ来日された際に、お会いすることもできました。ジブチ政府からは、これまでの活動を認めていただいて、勲章までいただきました。これは私の宝物です。

■寿司に使うマグロは「98点以上」だけ

さて、「すしざんまい」といえばマグロを思い浮かべる方が多いかもしれません。実は、マグロの買い付けは、とても難しい仕事です。1本200万円、300万円もするマグロを買い付けても、いざ解体してみたら質が悪かった、などということはよくあります。生き物を相手にする難しさです。

私が目指すマグロの質を「100点満点」とするならば、滅多にないことですが、時に「100点満点」以上の素晴らしいマグロに出会うこともあります。反対に、90点、80点のマグロだったりすることもあります。
「すしざんまい」が寿司としてお客様に提供するマグロは、感覚的なものではありますが、「98点以上」のものだけです。私は、マグロの質にはいっさい妥協しません。だから、ストライクゾーンを2%くらいの幅に設定しています。
きめの細かさ、柔らかさ、脂の乗りを目利きして、それ以下の点数と判断するものはお出ししません。ほかの寿司店なら提供する水準であったとしても、納得しない限りうちは刺身としても出しません。
「ちょっと落ちるな」と感じたら、焼き魚にします。それよりも落ちるなら、煮魚ですね。煮魚にもどうかと思ったら佃煮にします。それでもダメなら、お客様に提供できないから廃棄? ……とんでもありません! そんなもったいないことは絶対にしません。ならば私は、肥料にすることを考えます。肥料として考えたら、こんな贅沢なものはないかもしれませんが、肥料も品質が大事です。
これはマグロに限らず、すべての魚にいえることです。
日本各地、いえ世界各地のみなさんが、この築地の地に足を運び、喜んで寿司を食べてくださる。それこそ、飲食業に携わる者にとって最大の喜びでしょう。賑わいを取り戻した築地で、私は人の喜びのために働く幸せを噛み締めています。
「人は一人では生きていけない、人の喜びによって生かされている」
これは、私が口癖のようにして使う言葉のひとつです。また、バブル崩壊後の文字通りゼロから、現在の賑やかな築地になるまで、その姿を見届けてきた私の偽らざる思いでもあります。


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