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熊本地震で確認された災害福祉の重要性 富士通総研

 救命行為等で命が助かっても、その直後から必要となる介護や援助等を確保するための実態把握、状況や状態に応じた適切な場所や支援の要否の見極め、それらを支えるマンパワー等がなければ、その命は守られず、時間経過とともに新たな被害を生みだす―――その二次被害を防止し、生活機能確保の支援を緊急的に行うのが、災害時に提供される災害福祉。今回の熊本地震でも、その役割の重要性が確認された、とのこと。富士通総研のレポート。その中で紹介されている岩手県の取り組み〔県HP、県議会の答弁〕も探ってみた。
 2013年には厚労省から、都道府県内の福祉支援ネットワーク構築の通知が出ているとのこと。
 高知県では、昨年度から検討が開始され、今年度「体制の検討、構築」として113万円が予算化されている。
 先日とりあげた「災害ケースマネジメント」とともに、県下の取り組みについて研究・検討課題である。

【熊本地震から考える災害福祉 富士通総研7/19】
【災害福祉広域支援ネットワークについて 厚労省資料2015/3/9】
【岩手県災害派遣福祉チームの設置について 2014/4/8】
【在宅被災者~脱・罹災証明と災害ケースマネジメント 2016/7】

【熊本地震から考える災害福祉 富士通総研7/19】

 日本は世界でも有数の自然災害の多い国です。超高齢社会に向かい、核家族化・地域社会の脆弱化が進行する中で安全・安心な社会として何が必要なのでしょうか? その答えの1つが、富士通総研が厚生労働省の助成を受けて取り組んできた「災害福祉広域支援ネットワーク」の構築だと考えます。

 これは、東日本大震災が発生した2011年に富士通総研が実施した実態調査を契機に議論が高まり、2013年には厚生労働省からの大規模災害時における広域的な福祉支援ネットワークとその前提である都道府県内の福祉支援ネットワーク構築の通知を経て、都道府県・事業者の公民協働で体制構築と人材育成が進められており、4月の熊本地震でもその重要性が確認されました。

1.東日本大震災を契機に高まった災害福祉

 災害では人命をどう守るかが最重要課題です。よって、発災直後の「災害による直接的な被災」から命を守る一次被害を防止する活動として、緊急災害医療の専門性が高い組織による救命等は公的な体制として整備されています。

 しかし、東日本大震災当時、その後も続く災害の影響による二次被害防止の体制構築は進んでいませんでした。結果、避難生活導入時に行われるべき支援の見極めの遅れや避難生活の長期化等がもたらす二次被害に陥る人々が長期にわたり大量に生まれました。

 救命行為等で命が助かっても、その直後から必要となる介護や援助等を確保するための実態把握、状況や状態に応じた適切な場所や支援の要否の見極め、それらを支えるマンパワー等がなければ、その命は守られず、時間経過とともに新たな被害を生みます。

 この二次被害を防止し、生活機能確保の支援を緊急的に行うのが、災害時に提供される災害福祉です。

【図】災害後の各段階と支援を必要とする者の関係
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2.熊本地震直前までの状況

 災害時の福祉支援は、災害初期に実態把握を行う先遣隊的な機能である福祉ニーズ把握、避難者に対するスクリーニング、直接的に支援を行うサービス供給と大きく3つの機能に分かれ、各都道府県は各々の実情に応じた方法で、実施体制、災害派遣福祉チームや支援を行うマンパワー確保等を進めています。

 富士通総研の調査研究では各都道府県の体制構築の支援も行っていますが、災害の直接的な被害、すなわち命の危機に対応する医療と異なり、災害時における福祉の必要性の理解は進まず、当初は都道府県の反応も鈍いものでした。

 風向きが変わったのは、命が助かりながらも避難所の過酷な環境下で落命した人々、長い避難生活や生活環境の変化で状態が悪化して介護需要が前倒しで発生したと考えられる人々、そして、数年経っても災害関連死とされる人々が継続して発生したことが知られるようになった頃でした。

 そして、2014年の災害対策基本法改正を契機に、都道府県では災害時の福祉支援の必要性への意識が高まり、平成28年3月末現在の弊社調査では29団体が体制構築に取り組み、平成28年度中に取り組むとした3団体を合わせると32団体・全国の3/4に及びました。富士通総研では構築支援として、年に1回情報交換会で情報や意見の交換、情報提供の機会提供等で各団体をつないでいますが、熊本地震発生直前の平成28年3月の情報交換会では大規模災害時の都道府県間での相互支援を踏まえた全国統一ルールの策定、コーディネート機能の必要性が議論されました。

3.全国初となる災害福祉広域支援の実施

 災害時の福祉支援体制構築では、東日本大震災の被災地である岩手県の取り組みが有名であり、災害派遣福祉チームの人材育成も進んでいます。また、当時の支援の経験から、熊本県も体制構築と人材育成に熱心に取り組み、熊本DCAT(Disaster Care Assistance Team)として災害派遣福祉チームの人材育成も進める等、先駆的に取り組んでいました。

 しかし、熊本地震本震の被害は大きく情報把握も進まないため、被災時に声をあげることの難しさを自らの経験で知る岩手県は、熊本DCATの立ち上げが困難であることを察し、待機状態にあった県内の災害派遣福祉チームの派遣準備を前震直後から進めており、熊本県からの正式な派遣依頼が届いたのは出発直前でした。この派遣は、全国初の都道府県による災害派遣福祉チームの正式な派遣であり、第一次チームである先遣隊派遣、そして次に続く京都府の第一次チームである先遣隊派遣の2回に弊社も調査研究者として同行しました。

 岩手県災害派遣福祉チームが熊本県入りした直後に、ようやくその日より活動開始した熊本DCATの数名と県庁で会えたものの、多くのチーム員が被災していることから他県の事業者系団体の人員を含んで立ち上げた状況を確認しました。

 そこで、熊本県とも協議を行い、災害時の知見を多く持つ岩手県災害派遣福祉チームが熊本DCATと協働して支援を展開することとし、地域の実情に精通した熊本DCATと岩手県の被災経験と訓練ノウハウが融合した支援が可能となりました。この取り組みは、熊本県より依頼のあった益城町で行われ、5月中旬まで続いた岩手県災害派遣福祉チームの第5次までの派遣だけでなく、同じく熱心に取り組んでいた京都府による5月末までの災害派遣福祉チームの第3次までの派遣へと展開されました。これは被災地で減じた機能を広域間で自律的な支援を行うことで補完・代替するとした本来の広域支援の姿であり、今後想定される大規模災害の対応策として数々の示唆を与えるものでした。

4.熊本地震で改めて確認できた災害福祉の重要性

 熊本地震では、改めて次のことが確認できました。

◆セーフティネットとしての体制構築であることの重要性

 発災直後から多くの団体が被災地に入り活動を行いましたが、個別の関係性や関連団体内による事業所支援にとどまる等、活動範囲が限定的な状況も見られました。しかし、超高齢社会の日本では要配慮者も多く、一般避難所の環境整備が不可欠であり、都道府県が構築する災害時の福祉支援体制は一般避難所支援を意識した公的なセーフティネットとして整備される必要があります。
立ち上がりこそ時間を要したものの、熊本県では平時に体制構築を進めていた経験から、外部からの支援を受けて機能確保し、二次被害の発生・拡大の防止を進めました。事前の体制づくり・認識があったからこそ支援の受け入れもスムースに進んだと考えられ、事前に取り組むことの重要性が再確認されました。

◆災害時にも稼働する体制であること

 被災時に体制を稼働させるには、体制構築に関わる各種団体等による事務局機能の補完や代替策を予め考えておく必要があります。大規模災害の場合、それらを行い得る人々を外部から受け入れる可能性があることも十分に理解し、それも念頭に置いた体制づくりが必要です。

◆基礎自治体・地域住民への展開策・浸透策の推進

 一般避難所の管理は基礎自治体、そして住民です。たとえ都道府県内での体制があっても、基礎自治体・住民らの十分な理解がなければ支援活動は困難、もしくは活動開始までの説明や調整に貴重な時間を要することとなります。
 被災時の説明や協議は時間のロスであり、それを防ぐには、体制が当然のものとして当初より認識されている必要があります。

◆活動の環境整備

 被災自治体が外へ支援要請を出すことは困難であることを見越し、大規模災害の発災直後の支援ではプッシュ型も想定しておく必要があります。しかし、災害時の福祉が災害救助法の対象として明確に書かれておらず、都道府県には自団体以外の広域支援に向かうことへのためらいがあります。

 今回の状況や活動実態から、災害救助法を所管する内閣府と厚生労働省は協議を行い、熊本地震における一般避難所への介護人材等の派遣は災害救助法の対象となることが熊本県事務連絡で示されました。この前例は今後の災害でも踏襲されると考えられますが、自動的に動くシステムとするにはさらなる明確化が必要です。

5.おわりに

 日本には毎年のように自然災害が発生し、その度に高齢者や障害者等の要援護者がクローズアップされています。南海トラフを震源とする大地震や首都直下型地震等の大規模災害は、いつ起きても不思議ではありません。こうした教訓を活かし、超高齢社会下にあっても強い社会を公民が共に作り上げることは、現在の日本に必要不可欠です。

 さらに、災害時においてのみ稼働する機能はなく、平時から災害時を見越した体制づくりが必要です。熊本地震でも、災害派遣福祉チームは、各福祉専門職が連携するだけでなく、地域包括支援センター、在宅医療の医師らとも連携して支援を行う等、この体制が平時の地域包括ケアシステムの延長上にあることが確認されました。今後は、より強固な体制づくりを、今後の地域包括ケアシステム構築も睨みながら公民が協働して進めることが重要です。


【災害福祉 岩手県議会】

●齋藤地域福祉課総括課長 災害派遣福祉チームの課題と今後の対応についてでございますけれども、昨年9月に岩手県災害福祉広域支援推進機構を設置いたしまして、大規模災害時に、避難所などで要援護者への福祉的な対応を行う災害派遣福祉チームの創設の取り組みを進めているところでありますが、
今年度は、2月、3月に研修を行い、修了者197名をチーム員として登録し、年度内に30チーム程度を編成する見込みとなっております。
 今後の課題としては、一つには、チームが実際の災害時に円滑に活動できるよう、チームについて県民や関係事業者への周知を図ることや、チームの主な活動場所となります避難所を運営する市町村との連携体制の構築、また、同じく避難所等で活動を行う医療や保健分野などの支援チームとの連携のあり方について検討する必要があると認識をしているところでございます。
 これらの課題への対応といたしましては、平成26年度には、今年度に引き続き、市町村や福祉関係者に加え、医療、保健関係者等も対象として、災害派遣福祉チームの役割等についての周知を図るためのセミナーを開催いたしますほか、市町村の地域防災計画への位置づけなどを進めるための研修会を県内10カ所で実施することとしております。
 また、医療や保健との連携については、平成26年度は岩手医科大学や県医師会、県保健師協会等の助言、指導を受けまして、医療、保健、福祉関係者による検討会の開催のほか、チーム員の研修カリキュラムに医療や保健分野の支援の内容を盛り込むことを考えております。

●知事(達増拓也君) 本県の災害派遣福祉チームの取り組みの特徴についてでありますが、県内の福祉関係団体が実際に被災地で行った支援活動の経験やそこで得られた課題などを踏まえて、県、福祉関係団体、県社会福祉協議会及び県立大学が、官、民、学の共同により、チーム編成や活動内容などチーム創設に向けた検討を進めていることが挙げられます。さらに、チームの派遣主体となる岩手県災害福祉広域支援推進機構についても、福祉関係団体のほか、保健、医療関係団体、県立大学、市町村代表及び県により構成し、本部長を知事、事務局長を県社会福祉協議会とする官、民、学共同の組織とする方向で検討しております。

 今後は、これまでの検討結果を踏まえ、より具体的な検討を進め、9月ごろをめどに同推進機構を設置し、年度内にチームを創設したいと考えております。

 次に、他の都道府県への派遣についてでありますが、議員御指摘のとおり、他の都道府県において大規模災害が発生した場合にも、本県のチームを派遣できる仕組みにしていくことは重要なことであります。他方、県外に派遣する場合は、手続や費用負担のあり方など全国的なルールが必要になると考えられますことから、国において、災害派遣福祉チームの制度化と、全国レベルでチームを派遣、調整するシステムを構築するよう要望を行っているところであります。
 国では、本県の要望等を踏まえ、福祉分野の広域的な支援ネットワークを構築することについて検討しているとうかがっており、本県の取り組み状況についての情報を提供するなど、その実現に向けて積極的に協力してまいりたいと思います。


【岩手県災害派遣福祉チームの設置について 2014/4/8】

 大規模災害時に避難所等において災害時要援護者の福祉・介護等のニーズ把握や応急支援などを担う「災害派遣福祉チーム」について、研修修了者をチーム員として登録し、チームを派遣できる体制が整いました。
 今後は、実際の災害に備え、市町村等関係機関との連携を進め、派遣体制の充実を図ります。

・災害派遣福祉チームについて
 社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士等福祉専門職で一定の研修を受けた者をチーム員として登録し、災害救助法が適用となる程度の大規模災害発生時に4~6人程度でチームを編成し、避難所等において支援活動を行います。なお、チームの派遣主体は「岩手県災害福祉広域支援推進機構」(本部長:知事)です。
岩手県災害福祉広域支援推進機構について

・チームの概要・活動内容
 行政、保健・医療、避難所運営者、その他関係者と連携し、避難所などにおいて要援護者を支援します。

【チームの概要】
チーム編成 福祉職の混成チーム(高齢・障がい・児童・保育等)、4~6名
活動期間  発災初期の概ね5日間程度(必要に応じて延長・追加派遣)
活動場所  一般避難所、福祉避難所等
チーム員  福祉職能団体会員、施設職員等

【初期対応の例】
福祉相談体制の確立(避難所内相談窓口の支援等)
スクリーニング(簡易的アセスメントによる要援護者の選別)
優先的搬送対応(社会福祉施設への緊急入所・福祉避難所への移送等のコーディネイト)
福祉避難室確保対応(一般避難所内での要援護者用別室確保の支援)

【その他の活動例】
相談支援
ニーズの掘り起こし
環境整備
衛生対策
情報提供
生活支援 など

・今後の取組について

 災害時に連携が必要となる福祉、医療、保健関係者や、避難所の運営主体となる市町村にチームについて周知し、チームの活動環境の整備を行います。
チーム員研修を実施し、チーム員及びチーム数の増加を図るとともに、防災訓練への参加等を通じ、災害時の派遣体制の充実を図ります

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