歴史に逆行! 人権侵害、「部落差別」固定化法案の廃案を
・「部落差別」固定化法案が、先の国会に自公らによって突如上程された。「差別解消に逆行する暴挙」との全国的な反対運動により、6月1日に継続審査となっている。
・同法が成立すれば、かつてのような「解同」などによる特権・利権あさりの根拠法となり、自治体職員、教職員には、暴力と脅迫の「確認・糾弾」が行われる恐れがある。
・「解同」は、「秋の臨時国会での成立をめざす」としており、断固廃案の世論形成が急務である。
■立法事実がない
①同和問題は、旧身分が差別理由としてのこったもの
~ 消防車が入れない路地、排水路もないなど、劣悪な生活環境だった旧同和地区に対し、33年間、国、地方合わせ16兆円以上かけた特別事業により、差別を背景とした格差は解消
~ 地区内外の混住、交流も進み、就職差別もなく、結婚のわだかまりもなくなっている。
→ 部落差別は、女性や民族など固有の現実をもとにした差別とは異なり、国民融合の中で社会から薄れ消滅していく性格のもの
②同和事業の特別法 2002年3月をもって失効
~ 1982年、同和対策特別措置法の廃止。その後を継ぐ地域改善対策特別措置法も02年に失効
★政府は、特別対策を終了させた理由は3点。
第1は、 国や地方公共団体などの長年の取り組みで、 住宅や道路などの物的な生活環境の改善が進み、 全体として同和地区を取り巻く状況が大きく変化し、 同和地区と周辺地区の格差は見られなくなったこと。
第2に、 こうした下で、 特別対策を継続することは、 同和問題の解決に必ずしも有効ではないということ。
第3に、 経済成長にともなう産業構造の変化や都市化などで人口移動が起こり、 いわゆる同和地区で大規模な混住が進んだことで、 同和地区・同和関係者に対象を限定した施策を継続することは困難かつ適切でないということ。(総務省発行 「同和行政史」)
~ 対策の継続が住民間の「垣根」をつくり、差別解消に逆行するとの認識
■「固定化」法は、部落差別解消に逆行 ~ 歴史の教訓に反する
★今後における地域改善対策について(意見具申) 86/12/11 地域改善対策協議会
・地域改善対策の今日的課題
(1) 今日、同和地区における実態面の改善に比べて、心理的な差別の解消は不十分な状況にある。
…同和地区の実態が大幅に改善され、実態の劣悪性が差別的な偏見を生むという一般的な状況がなくなってきているにもかかわらず、差別意識の解消が必ずしも十分進んできていない背景としては、昔ながらの非合理な因習的な差別意識が、現在でも一部に根強く残されていることとともに、今日、差別意識の解消を阻害し、また、新たな差別意識を生む様々な新しい要因が存在していることが挙げられる。近代民主主義社会においては、因習的な差別意識は、本来、時の経過とともに薄れゆく性質のものである。実態面の改善や効果的啓発は、その過程を大幅に早めることに貢献する。しかし、新しい要因による新たな意識は、その新しい要因が克服されなければ解消されることは困難である。
・新しい要因の第1は、行政の主体性の欠如である/ 民間運動団体の威圧的な態度に押し切られて、不適切な行政運営を行うという傾向が一部にみられる。/周辺地域との一体性や一般対策との均衡を欠いた事業の実施は、新たに、「ねたみ意識」を各地で表面化させ、国民の強い批判と不信感を招来している。
・第2は、同和関係者の自立、向上の精神のかん養の視点の軽視/ 特に、個人給付的施策の安易な適用や、同和関係者を過度に優遇するような施策の実施は、むしろ同和関係者の自立、向上を阻害する面を持っているとともに、国民に不公平感を招来している。
・第3は、えせ同和行為の横行である。民間運動団体の行き過ぎた言動に由来する同和問題はこわい問題であり、避けた方がよいとの意識の発生はこの問題に対する新たな差別意識を生む要因となっている。同時に、また、えせ同和行為の横行の背景となっている。・・・・ 国民のイメージを損ね、ひいては、同和問題に対する誤った意識を植え付ける大きな原因となっている。
・第4は、同和問題についての自由な意見の潜在化傾向である。同和問題について自由な意見交換ができる環境がないことは、差別意識の解消の促進を妨げている決定的な要因となっている。民間運動団体の行き過ぎた言動が、同和問題に関する自由な意見交換を阻害している大きな要因となっていることは否定できない。/行き過ぎて、被糾弾者の人権への配慮に欠けたものとなる可能性を本来持っている。また、何が差別かということを民間運動団体が主観的な立場から、恣意的に判断し、抗議行動の可能性をほのめかしつつ、さ細なことにも抗議することは、同和問題の言論について国民に警戒心を植え付け、この問題に対する意見の表明を抑制してしまっている
・・「解同」による利権アサリと、人権侵害の「確認糾弾」運動、それを許した行政の主体性の欠如、という新しい要因により、新たな「差別意識」を生み出している、とし、この新しい「差別意識」は新しい要因の克服なしには解消できない。と指摘している。「固定化」法は、この分析と指摘をまったく相容れないものである。
■利権あさり、人権侵害や不公正な行政が行われた負の歴史を呼び覚ます法案
①部落差別の定義なし・・・法案は、「部落差別の解消を推進し、もって部落差別のない社会を実現することを目的とする。」としているが、部落差別の定義規定がなく、何を部落差別とするのかが明確でない。
→ 行政上の「同和地区」は存在しない。誰が地区の人なのか、誰も特定も説明もできない
・法案は、部落差別の解消に国、地方公共団体の責務を定め、相談体制の充実、必要な教育啓発を行う努力義務等を規定/ が、部落差別の定義規定がないので、対象事業が際限なく拡大する懸念、その施策によって住民間
に新たな「垣根」をつくり、部落差別解消に逆行する危険がある。
・法案「地域に実情に応じた施策を講ずる」→ 「部落差別」の定義もなく、同和地区も存在しないもとで、恣意的に「部落差別だ」とみなした場合に、同和事業の「施策」を無限低にやれる。
・「教育・啓発」「相談」が、一部特定団体に委託され、特定の考えが自治体、学校に強制される懸念
②継続する調査による差別の固定化… 法案は、国は、部落差別の解消に関する施策の実施に資するため、地方公共団体の協力を得て、部落差別の実態に係る調査を行うものとなっている。/ 同法は恒久法であり、調査を続けることによって、部落差別問題を固定化、永久化することにつながりかねない。
③インターネットよる「書き込み」という口実
・部落差別だけではないし、現行法で対応できる。
プロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)に基づき、プロバイダに対して削除請できる。/名誉毀損の対処できる。
~ 86年の「意見具申」にも、自由に議論できる環境を重要さを指摘したうえで
「差別事件は、司法機関や法務局等の人権擁護のための公的機関による中立公正な処理にゆだねることが法的手続きの保障等の基本的人権尊重を重視する憲法の精神に沿ったものである。また、そうすることが、一見迂遠のごとく見えても、結局は同和問題の解決に資することになる」
として、「確認・糾弾」の取り組み、同和だけを特別視した行政の対応を否定している。
■なぜ道理も立法事実もない法案が出てきたのか。
・組織内候補を当選させることができなくなった「解同」と、“解同票”がほしい自民党の思惑の一致
2015年11月 二階俊博総務会長の選挙区・和歌山県の人権フォーラムを、都内で開催。「解同」委員長も出席、自民・稲田政調会長や公明、民主の幹部もあいさつ。
2016年3月「部落問題に関する小委員会」を自民党内に設置。二階派の議員が法案作成
・従来の自民党の立場~ 「解同」の「部落解放基本法」の署名には応ぜず
「被差別対象地域及び住民を法的に固定化させるという、極めて重大な政治的、社会的結果を惹起する恐れがある」(86年、自民党政務調査会)~ 当時に自民党の認識からも逆行
(→ 一片の道理もない、党利党略から出てきた法案)
■ 同和行政の終結こそ ~ 「部落差別」固定化法を必ず阻止しよう
・02年以降も、自公政府は、一般対策として事業予算を組み続けた
~「同和関係者」の雇用保険給付延長制度/「旧同和地区」保育所への保育士配置/児童生徒支援加配教員の変更配置と勤務/「隣保館」施設での「解同」関係者による「相談事業」や支部事務所併設事態など継続
・00年 自民、公明などの議員立法「人権教育・啓発推進法」の制定~ 解決の実態から乖離した「同和教育」を推進する法的検挙を与えた、
・同法の制定は、終結をはかってきた同和事業を「解同」の要求どやりに復活させることになる
「解同」~「秋に予定される臨時国会で成立をめざす」
《 部落差別の解消の推進に関する法律案に断固反対する声明 自由法曹団 5/24 》1 2016年5月19日、自民、公明、民進の3党は、部落差別の解消の推進に関する法律案(以下「本法律案」という。)を衆議院に提出した。同月20日には衆議院法務委員会で趣旨説明がなされ、25日に同委員会で強行可決される見通しである。
本法律案は、部落問題の解決の障壁となるものであり、基本的人権をまもり民主主義をつよめることを目指す法律家団体である自由法曹団は、この法律案に断固反対する。2 部落差別問題については、1982年、同和対策特別措置法が廃止され、その後を継ぐ地域改善対策特別措置法も廃止され、2002年に同和対策事業は終結した。
これは、部落差別の特徴的な形態である劣悪な住環境等が、各種の同和事業の遂行によって改善傾向にあり、また、職業の自由、居住移転の自由、結婚の自由の侵害という事態も大きく減少するなど、身分的障壁を取り除き、社会的な交流が拡大する方向へと進み、部落解放の客観的条件が大きく成熟したことによるものである。そうだとすれば、着実に解決に向かっている現状においては、本法律案には立法事実がなく、時代錯誤であると言わざるをえない。のみならず、むしろ部落問題による差別、偏見を固定化、永続化し、部落問題の解決のための大きな障壁になり有害である。
また、本法律案は、えせ同和団体の利権あさりの手がかりとなりうるものであり、過度の糾弾による人権侵害や不公正な行政が行われた負の歴史をふまえていないものと言わざるをえない。3 本法律案は、「部落差別の解消を推進し、もって部落差別のない社会を実現することを目的とする。」としているが、部落差別の定義規定がなく、何をもって部落差別とするのかが曖昧なままである。本法律案は、部落差別の解消に国、地方公共団体の責務を定め、相談体制の充実、必要な教育啓発を行う努力義務等を規定しているが、何をもって部落差別とするかが曖昧なままであれば、あまりに広範な施策が実施されることになりかねず、その施策によって施策の対象となる人々とそうでない人々の間に垣根をつくり、ひいては部落差別問題を再燃させることにつながりかねない。
また、本法律案は、国は、部落差別の解消に関する施策の実施に資するため、地方公共団体の協力を得て、部落差別の実態に係る調査を行うものとしている。
しかし、これによって新たな差別を掘り起こすことになり、本法律が恒久法であることを踏まえると、調査を続けることによって、部落差別問題を固定化、永久化することにつながりかねない。
本法律案は、「情報化の進展に伴って部落差別に関する状況の変化が生じていること」が立法理由として説明されているが、ネットへの差別的書き込みなどはプロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)に基づき、プロバイダに対して削除請求するなど、既存の法律で対応することが可能である。4 以上の理由から自由法曹団は、本法律案に断固として反対する。
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