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子ども子育て支援制度と待機児問題(メモ)

 経済2016.6 村山裕一氏の先日のメモの前半部分。
こどもにかかわる施策は、児童福祉法の「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され」なければならない、との理念に基づかなければならない。この視点から批判的に解説。
また、「認定こども園」が名前は同じでも新法で大きく変わったことを強調。目玉であった「幼保連携型認定こども園」が、旧制度よりも条件が悪化するため、そして3歳未満には対応しなくなったため、認定こども園をやめて幼稚園にもどったり、幼稚園は,私学助成の制度にとどまったりと、待機児解消には何も役立っていない、と解明。

・・・EUでは、保育士の待遇を教員なみに改善している。「スターティング・ストロング」の基本に立てば当然だ。(保育士、介護士の処遇の悪さには、ジェンダーバイアスが影響している)

Ⅰ子ども子育て支援制度と待機児問題

(1)児童福祉法の理念と原理の尊重

・子ども子育て支援の基本理念は、児童福祉法の理念・原理の尊重が前提にある
~ 子ども問題に関わるあらゆる施策は、児童福祉法がベースに

・第一条「理念」~「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されなければならない」
・第2項「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない」
→ 新憲法の平等の原理に基づき、1947年の制定時に採用

・「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され」なければならない
~ 待機児がいること自体、児童福祉法の理念に違反 (メモ者 保育の質に格差あるのも、同様)
→ 第二条「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う」

・これは保育所だけの規定ではない
~第三条「第二条に規定するところは、児童の福祉を保障するための原理であり、この原理は、すべて児童の福祉を保障するための原理であり、この原理は、すべて児童に関する法令の施行にあたって、常に尊重されなければならない」
→ 学校教育法とか、子どもに関わるすべての法令にかかわる原理/ 新制度もこの原則をベースとすべき

(2) 保育所制度の全体像と自治体行政

①. 新制度 行政システム上は…
 文科省(幼稚園)、厚労省(保育所)の管轄 ⇒ 内閣府(地域型保育事業、認定こども園、給付型幼稚園他)、文科省(私学助成型幼稚園)、厚労省(保育所)
~ 認定こども園法、子ども子育て支援法は、学校教育法、児童福祉法の下位の法律

②. 新制度による「保育」の体系の変化~ 「給付」が位置づけられる 
・保育所 これまで通り、児福法24条1項にもとづき、市町村の責任のもとでの委託
・私立幼稚園は、私学助成をうける幼稚園が残った/ 私学助成をうけるのは学校法人立だけ/個人立、宗教法人立は、学校法人立に移行するか、給付型幼稚園に移行

・私学助成…施設への補助金。幼稚園の運営費としか使えない
・給付型施設(地域型保育事業、認定こども園、給付型幼稚園)
  地域型保育事業…主に0-2歳児を対象にした小規模保育、家庭的保育、居宅訪問型保育、事業主内保育
  地域型保育事業に入らない認可外保育施設は、新制度の枠外 /例 東京「認証保育所」

(3) 「給付型施設」で待機児解消となるか

①「給付」の位置づけ ~子ども子育て支援法
・第8条「子ども子育て支援給付は、子どもたちのための現金給付及び子どものための教育・保育給付とする」
・支援給付…親に支給される補助金/“給付施設を利用した場合に、親にお金が支給される”という考え方
~ 実務上は、給付施設を利用した親に給付されたものを、施設が代理受領する仕組み

・給付施設に入るお金は、親からもらうお金であり、施設補助金とは性格が違う
→ 補助金は施設費、運営費にしか使えない。が、給付の場合は、職員数など基準さえ揃っていれば、施設以外に活用してよい/ 他の事業や配当などなど

・国…給付施設の導入で(民間事業者の参入が促進され)、待機児が解消される、と説明してきた
→が、解消できず。小規模保育の定数は19から22人、2歳までを3歳に、と基準緩和と詰め込み推進
→保育士資格が半分でよいとか、園庭が不要とか、また子どもの成長の面で根本的な対策とはならない。/そもそも上記のように「給付」は「助成」と違い、保育以外に使ってよい、という質の低下を誘発する仕組みがある

・また、地域型保育事業は、3歳未満が対象であるため、3歳以降の保育が保障されているわけではない(認可保育所との「連携」をとることが制度的には求められているが、実態として機能せず、「3歳児の壁」、3歳児での「保活」が問題に)
→ 認可保育所の増設が、保育の質の保ちながら、待機児を解消するカギ

②かってアジアトップレベルから、韓国を下回る
・職員配置 3歳児 韓国15人に1人、日本20人に1人。4-5歳児 韓国20人に1人、日本30人に1人
・韓国 毎日1時間以上、外で遊ばせることを義務づけ。園庭の確保が必須 /日本 なくても認可される
・OECD統計 幼稚園、保育所にかかる公的支出 韓国の方が高い
~ 以前は、保育の勉強がしたい韓国の人は、日本に来ていたが、いまは北欧へ

Ⅱ 親の願いと逆行する複雑な新制度

(1)入所「申請」と保育所決定――親にとっても複雑

①保育認定… 市町村に申請し、保育の必要性と必要量の認定を受ける
(メモ者 育休に入った場合の兄弟、祖父母がいる場合は、必要度が低くなる制度設計になっている。)

②施設への利用申し込み
・保育所 /市町村が「認定」の決定も、入所決定も行う
・認定こども園、地域型保育事業 /園と直接に契約 ~ 一定は、自治体が紹介、調整する場合も
(メモ者 障害があったり、経済的にきびしい家庭などの子どもが排除される懸念/一応、応諾義務があるが、条件が整っていないなどの場合は、その限りでない、との抜け穴がある)

③支給認定  1号、2号、3号
・1号 3歳以上。保育認定必要なし。  幼稚園、認定こども園
・2号 保育認定をうけた三歳以上の児童 保育所、認定こども園
・3号 保育認定をうけた3歳未満の児童 保育所、認定こども園、小規模保育、家庭的保育

(2)「公定価格」と園運営、公私格差是正の課題

・公定価格~ 1人あたりの保育経費。定員によって価格が違う
・保育所  一人当たりの経費を委託費として、自治体から支給される
・給付施設 

(3)大きく変貌した認定こども園
・旧法 目的「幼稚園及び保育所等における小学校就学前の子どもに対する教育及び保育並びに保護者」
・新法   「幼稚園及び保育所」の文言削除/「この法律は、乳幼児の教育及び保育が」
   → 改定認定こども園の対象を「乳幼児」だけ

☆「幼保連携型認定こども園」
・従来/「認可幼稚園」と「認可保育所」の連携・一体化施設/児福法の特例規定で明記。行政に一定の責任
・新制度 必要定員…2号認定の子ども(3歳以上の保育認定児)/3号認定は「定員設定無しも可能」
 ~名前は「幼保連携」だが実態は1本/園長も一人。従来は、園長と主任が2名ずつ

・旧 幼稚園 3-5歳 各50名  2×3 6クラス/保育 3-5歳 各20人 3クラス /計9クラス
・新 3-5歳 1号認定25、2号認定10 35人で6クラス 
→ 結果として、幼稚園は、「認定ことも園」をうけいれず/保育所の条件が幼稚園よりも悪いため。
→ 「認定こども園で待機児解消します」とはならない

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