産業の振興に関する外部監査 ~PDCA サイクルという視点が非常に弱い
高知市の産業振興に関する包括外部監査。全体は膨大なので「総括意見」の部分から抜粋。
様々指摘しているが、「PDCA サイクルという視点が非常に弱い」が基本的角度。
評価指標、具体的目標があいまで、総括・見直しが弱い。各事業と全体計画の関係は不鮮明など・・・
これは、アウトソーシングにかかわる外部監査でも、目的、評価指標が不鮮明で「アウトソーシング自体が目的化している」と指摘されたことと共通。
個々には慎重に検討すべきこともあるが、 その基本点の問題は、「道の駅」構想、西敷地の高度利用などという、とんでもない計画が出てくることと、ある意味共通しているのではないか、と思う。
【産業の振興に関する外部監査 2016/4】第9.総括意見
「産業の振興に関する事務の執行について」を監査テーマとして取り上げ、市が実施している産業の振興に関する事務事業を検証した。今回の検証結果から、市全体として取り組むべき視点が以下のとおり挙げられる。
(1)PDCA サイクルに基づく事務事業の評価・見直し
「第8.高知市の政策・施策や事務事業の評価について」において、政策・施策や事務事業の評価に関する市の総括的な対応状況を検討した結果、以下の意見を述べている。
① 各事務事業について可能な限り評価指標の目標を設定する必要がある。
② すべての事務事業について当該目標値の達成状況を検証するという簡易な評価を実施し、達成状況が悪い事務事業については、詳細にその状況を分析する必要がある。
③ 上記の結果、対策が必要と認められる事務事業について、改善、整理・統合、廃止等の検討を行う必要がある。いわゆるPDCA サイクルという視点が非常に弱いことから、すべての職員が当該視点を重視することが必要である。PDCA サイクルは、計画(Plan)に基づいて各種施策を実施(Do)し、それらの施策から想定していたとおりの効果が上がっているかを検証(Check)し、そのうえで、改善すべき点があれば必要な見直しを行う(Action)ものである。多くの事務事業を実施している市において、限られた予算及び職員の勤務時間の中で効果的な行政サービスを行うという観点から特に重要といえる。
当該視点については、事務事業単位はもちろん、政策・施策の評価や日々の作業の見直しについても重要となる。あらゆる場面でPDCA サイクルの視点を持つことを強く意識する必要がある。
本報告書において指摘した事項をPDCA の区分でまとめると以下のとおりとなる。①計画(Plan)段階での不備
●項目 監査の結果及び意見(要約) 本文頁
・中活計画の目標設定のあり方について(意見)
各個別施策に具体的な目標が設けられていない。可能な限り具体的な目標を設定することで、事後的な有効性の検証を行う必要がある。29・高知市街路市活性化構想について(意見)
個別施策に対する具体的な数値目標を設けていないため、可能な限り、個別施策に対して数値目標を設定することが望まれる。
また、41 の個別施策を実施することにより、4つの指標の達成を計画しているが、個別施策が上位指標の達成にどのように関連するのかが不明確であるため、この関連性を可能な限り明確にすることが望まれる。61・勤労者交流館管理運営費(意見)
会議室の利用状況や労働相談件数等についての具体的な目標値が設定されていないため、具体的な目標値を設定した上で、実績比較で検証を行い、事業の達成度を測るとともに改善すべき点はないか検証することが必要である。68・観光計画に対する目標設定及び経済的な効果の測定について(意見)
54の主な取組が観光計画の4つの目標にどのように貢献するのかといった関連性が不明確であるため、この関連性を明確にするように計画策定したうえで、観光計画に対する主な取組の貢献度を明確にすることが望まれる。78・土佐のまつり補助金について(結果)
イベントごとの具体的な観光客数の目標値を設定しておらず、また、実績値の報告を受けていなかった。観光客数の目標値を設定し、その実績値の報告を受けたうえで、補助金の効果を検証することが望まれる。84・中山間地域農村集落活性化対策事業について(意見)
事業全体としての評価が実施されていないため、個々の事業で評価される結果、誤った判断がなされる恐れがある。事業全体の明確な中長期的な目標を設定したうえで、それを支える個々の事業については、中山間地域活性化の全般目標との関連性・相関性の高い事業から目標を設定し、課題を解決する取組を実施することが望まれる。127・新規漁業就業者の拡大について(意見)
平成10 年からの15 年間で漁業就業者は4分の1にまで減少しており、高齢化も進んでいる。将来の漁業就業者数や世代別の人数割合について長期的な目標が設定されておらず、短期的な目標としても現実的達成可能な目標とされている。長期計画を立てたうえで、漁業就業者を増加させるための施策を講じる必要がある。144・春野漁港施設について(意見)
春野漁港の漁獲高や、登録・利用漁船が減少している状況において、長期的なビジョンに基づく費用対効果の面からの検討がされないまま、過去に建設された施設の維持を前提として事業が計画・実行されている。地元住民の意見、市の財政、投資の経済的効果及び市の将来像を踏まえて春野漁港の将来のあり方を検討し、それに基づいた長期的な視点で事業を計画する必要がある。153 166②検証(Check)段階での不備
●項目 監査の結果及び意見(要約) 本文頁
・指導団体補助金について(結果)
補助対象経費の範囲を明確にしておらず、また、補助金の交付額の算定根拠が明確となっていなかった。市は指導団体に対する補助金の交付目的の事業を明確に定め、補助対象経費を積算し、補助金交付額の算定根拠を明確にする必要がある。37・発明協会補助金について(結果)
市の中小企業者の技術開発の向上を図ることを補助金の交付目的としているが、小中学生を中心とする児童生徒発明くふう展の行事のために使用されていた。過去5年間、補助金交付目的の事業が行われていないため、事業の評価・見直しを適時に行い、効率的・効果的な事務の執行に繋げていく必要がある。45・観光計画に対する目標設定及び経済的な効果の測定について(意見)
個別事業等に対する効果の予測や検証ができていなかった。観光客の入込者数を予測し、観光事業の経済的な効果がどの程度あるか客観的な指標を提示するとともに、実施結果との分析が必要と考えられる。78③必要な見直し(Action)段階での不備
●項目 監査の結果及び意見(要約) 本文頁
・中央公園地下駐車場の未利用分の活用について(意見)
中心市街地の活性化のために駐車場の利便性の向上を施策として掲げているが、中央公園地下駐車場の未利用率が高い状況が続いているにもかかわらず、積極的な活用が行われていない。今後は未利用分の活用を図ることで中心市街地の活性化に繋げることが望まれる。46・食肉センターのあり方に対する市としての関与について(意見)
市は、食肉センター事務組合の構成団体として、財政負担に見合う便益があるかという観点から、事務組合に対して負担の適正化を求めていく必要があった。今後のあり方に関しては、冷静かつ厳しい意見を述べていく必要がある。116(2)俯瞰的な視点の堅持
1)歳出額に応じたチェック体制
市の限られた予算で効果的な事務の執行を行うためには、多額の予算がかけられている事務事業について、特に重点的な評価・検討を行うことが必要である。また、必要に応じて、他部署との連携や他の機関の意見を参考にするなどにより、本来の目的を達成するために必要な対応を検討する等、組織的な対応が望まれる。
本文において以下のとおり十分な検証ができていない事例が認識された。●項目 監査の結果及び意見(要約) 本文頁
・港湾県営工事負担金について(結果)
港湾工事の負担金の算定額の検証を土木系の技術職がいない商工振興課が行っているため、港湾工事の必要性及び金額の妥当性を検証できる土木系等の技術職を有する課に変更することが必要である。47・高知よさこい情報交流館のさらなる活用と人件費削減について(意見)
よさこい情報交流館運営事業費は高い水準にあるとともに、平成26 年度に大きく増加している。より集客することを目指したさらなる創意工夫が求められるとともに、閑散時期及び閑散時間帯には配置人員を削減する等、きめ細かな対応による経費削減の検討が必要である。86・食肉センターのあり方に対する市としての関与について(意見)
市は、食肉センター事務組合の構成団体として、財政負担に見合う便益があるかという観点から、事務組合に対して負担の適正化を求めていく必要があった。今後のあり方に関しては、冷静かつ厳しい意見を述べていく必要がある。116・春野漁港施設について(意見)
春野漁港の漁獲高や、登録・利用漁船が減少している状況において、長期的なビジョンに基づく費用対効果の面からの検討がされないまま、過去に建設された施設の維持を前提として事業が計画・実行されていた。地元住民の意見、市の財政、投資の経済的効果及び市の将来像を踏まえて春野漁港の将来のあり方を検討し、それに基づいた長期的な視点で事業を計画する必要がある。1532)より上位の目的に照らした有効性の検討
「(1)PDCA サイクルに基づく事務事業の評価・見直し」で述べたとおり、各事務事業について評価指標の目標を設定し、評価・見直しを行っていく必要があるが、各事務事業の目標値に対する達成状況ばかりを気にしていたのでは、本来の目的を見失う恐れがある。各事務事業がより上位の目的(政策・施策、施策の大綱、基本構想)を達成するため有効に機能しているか、上位の目的を達成するために必要な対応は何か常に意識して事務の執行を行う必要がある。
また、当該観点を突き詰めると、市の各職員は、総合計画の基本理念である「森・里・海と人の環わ 自由と創造の共生都市高知」を常に意識して事務の執行に務めることとなる。各事務事業を適切に執行していくためには、膨大な事務を行う必要があるが、日々の事務に追われながらも、基本理念を常に意識した対応が必要である。
当該観点に関して、本文において指摘した事項をまとめると以下のとおりとなる。●項目 監査の結果及び意見(要約) 本文頁
・空き店舗活用支援事業費補助金について(意見)
補助金交付後において、補助事業者からその後の経営状況の報告を求めておらず、また、市は自ら調査を行っていなかった。中心市街地の活性化という目的を達成するために必要な対応は何か検討するために、補助事業者の補助金交付後の経営状況を確認するとともに、事業者のニーズを把握することが望まれる。43・青年就農給付金について(意見)
新規就農者について、2期連続で所得がマイナスになっている事例がある。これらの農家のほとんどは有機栽培を行っているが、安定的な供給ができないことから販路の確保が難しい状況にある。新規就農者を支援していくという本来の目的に照らせば、就農後についても販路拡大等継続的に支援していくことが望まれる。121・中山間地域農村集落活性化対策事業について(意見)
事業全体としての評価が実施されていないため、個々の事業で評価される結果、誤った判断がなされる恐れがある。事業全体の明確な中長期的な目標を設定したうえで、それを支える個々の事業については、中山間地域活性化の全般目標との関連性・相関性の高い事業から目標を設定し、課題を解決する取組を実施することが望まれる。127・こうち農業確立総合支援事業費補助金の実績報告の検証について(意見)
生姜の包装機械をJA 高知市が導入するにあたって、近代化設備整備事業として補助の対象とされていた。当該設備を用いた商品の生産は多くの民間事業者も行っていることや、JA 高知市以外の事業者と取引している農業生産者も多数存在することを勘案すると、自由な経済活動を歪める結果にならないか、自主的・主体的に実施される農業振興対策を推進するという目的に合っているか検討し、当該補助金で支援できる内容か慎重に判断されるべきである。134(3)おわりに
今回の監査において、各部署から膨大な資料を提出して頂き、詳しい説明を受けることができた。市の職員が日頃から真面目に事務に取り組んでいることを確認した。しかし、日々の膨大な事務に追われる結果、その真面目さが、日々の作業をこなすことのみに向けられることのないよう、これまで述べてきた以下の視点を強く持つ必要がある。
あらゆる場面において、チェック・見直しの意識を持つ必要がある。
チェック・見直しを行うためには、各事業について個別の目標の設定が必要である。漠然とした目標のまま事業が実施されることのないよう、留意が必要である。
歳出額の大きい事業については、より慎重で組織的な対応が必要である。
基本理念をはじめとした上位の目標を常に意識し、事業の見直し等に繋げる必要がある。
今後市においては、人口減少や高齢化が予測されている。これらの結果、生産年齢人口が減少し、高齢者割合が増加することから、歳入が減少する一方で歳出が増加することになる。市の財政状態はますます厳しくなることが想定され、限られた予算で効率的な事務を執行することがより一層求められる状況にある。
上記の視点を常に意識し、改革を恐れず、職務を遂行して頂きたい。
以上
« TPP、医療の産業化 皆保険むしばむ高薬価 | Main | 甘利事件~ 特捜検察にとって”屈辱的敗北” が、終わりではない。 »
「高知市政」カテゴリの記事
- 「よいところは継続」 桑名新市長の当初予算に賛成 日本共産党高知市議団‣声明(2024.03.23)
- キャンセルカルチャー 「大衆的検閲」の行く先(2024.03.13)
- 高知市長選 なせ岡崎市長の支援を決めたか(2023.10.04)
- 2023年3月 高知市議会メモ(2023.05.15)
- 生活保護 冬季加算「特別基準」(通常額の1.3倍) 高知市「抜かっていた」「速やかに実施」 (2022.12.28)
« TPP、医療の産業化 皆保険むしばむ高薬価 | Main | 甘利事件~ 特捜検察にとって”屈辱的敗北” が、終わりではない。 »
Comments