戦争する国へ~イスラエル政策の180度転換
多くの中東研究者が執筆に参加した「中東と日本の針路 『安保法制』がもたらすもの」(大月書店)が、中東の姿、中東から見た日本の姿など、多面的に光を当てており、極めて興味深い。
中でも、イスラエル政策の変質と安保法制、武器輸出三原則廃止の関係~アメリカ、イスラエルと共同歩調へと、180度変質した日本の中東政策。きわめて重大だ。
◆スケッチ・
・中東問題の核心パレスチナ問題…イギリスが二次大戦中、ダブルスタンダードで、ユダアにも、パレスチナにも、建国を約束したことにはじまり、ことを処理できなくなったイギリスが国連に問題をあずけ、国連が、ユダア人優遇の境界を設定。その後のアラブ側の反発に対する戦争で、イスラエルが占領地を拡大。度重なる国連決議にも反し、アメリカの後ろ盾で、占領と弾圧を続けていることにある。
・イスラエルとの関係は、アラブ人にとって西側の植民地主義に対する民族解放闘争という大義を今も有している。
◆日本の政策の変遷
・73年の石油危機を背景に、政策を見直す〔二階堂官房長官談話〕
①武力による領土の取得および占有は許さない ②第三次中東戦争全占領地からのイスラエル軍の撤退 ③域内すべての国の領土保全 ④国連憲章に基づく、パレスチナ人の正当な権利の承認。
・79年、第二次石油危機ののち、民族自決権にはパレスチナの独律国家樹立の権利が含まれると主張。
・確立した「中東平和に対する日本政府の立場」
①第三次中東戦争全占領地からのイスラエル軍の撤退 ②独立国家樹立の権利を含むパレスチナ人の民族自決権の尊重 ③安保理決議242号を基礎にしたイスラエルの生存権の尊重
~ 日本政府は「日本の政策は西側諸国よりも前向き」と誇ってきた・
☆この中東和平への態度と、この地に軍隊を送った歴史もなく、九条のもとで平和国家として復興した日本には、欧米とは異なる「共感」が存在していた。
◆崩れてきた日本への信頼
・イラク侵略戦争への加担に対する受けとめ
~ UAE「アル・バヤーン」紙 「さらば友好的な日本人よ」(04/2/14)
「イラク占領は、日本軍の歴史のなかで転換点として記録されるだろう。日本は第二次世界大戦後初めて軍隊を国外に送ったからだ」と厳しく批判
◆「安倍・ネタニアフ共同声明」に見る中東政策の激変
・2,014年5月来日したイスラエル首相と「安全保障に関する初の首脳級対話」を実施、共同宣言発表
〔武器輸出3原則を撤廃した1ヶ月後〕
・宣言は「両国の防衛協力の重要性」を確認し防衛当局間の交流の拡大を合意
→ 従来のイスラエルの占領を批判し、パレスチナの自決権を支持していた政策を180度転換
・宣言は「地域安定化」のために「自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値」の重要性わのべ、最後に、テロ反対の立場を強調
→ 多くの国連決議を無視し、他民族を占領し、占領に反対する人々を「テロリスト」と呼び、武力による弾圧を加えているのはイスラエル国家であることは、中東の「常識」である。
→ 安倍首相は、イスラエル国旗を前に「反テロ」の資金援助を公言
~ イスラエルが「テロ」というのは、民族自決権にもとづく闘争を指す。
☆70年代以降の独自路線を放棄し、米国と一体であることを、中東諸国民に宣言したもの
◆イスラエル政策転換の背景
・直接的には、日本も技術協力しているF35の供給に際し「紛争国には輸出しない」という武器輸出3原則が邪魔になり撤廃した。
・経団連は、軍需産業の推進をかかげでいるが、日本に決定的に不足しているのは実践の経験である〔実践を通じ、改良することができない〕。その弱点を補うのが、イスラエルの実践経験である。
・米国は、軍事費削減の圧力にさらされている。そのスキマをカバーするので、自衛隊の進出である。
~ イスラエルは、イランの核開発を「存立危機事態」として、先制攻撃も辞さない主張を押しだしている。ホルムズ海峡が封鎖される事態は、イスラエル・イラクの戦争以外ありえない。その時に、出動できる安保法制。
このように、米・イスラエルの国家戦略にのって、軍需産業の拡大を狙う日本の多国籍企業が、中東和平の政策を180度転換し、日本と世界をより危険にしようとしている。
米国、イスラエルと一体とみなされた日本に未来はない。戦争法とともに、中東政策の大転換の罪は極めて重い。
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