サミット宣言 安倍首相の主張をやんわり、しっかり拒絶
いろいろ数字をあげて、「リーマン・ショック並みの悪化」に言及したが、宣言にその言葉はない。経済情勢は、世界的には3%の成長が予測されており、宣言も「経済の回復は続いている」がベース。成長にばらつきがあり、また転落のリスクも抱えているのと、いつでも通用する話。
財政・金融・構造改革という経済の全分野について、それぞれの条件のもとに最大限に努力するという 「新たな危機に陥ることを回避するため、全ての政策対応を行う」ってのは、何も言わなかったのに等しい。「財政出動」という主張は拒否された、ということ。大人の対応で、やんわりしか言われてないが・・・
CNN、WSJなど、いくつか海外発のウェブサイトをみたが、ほとんど無視。BBCはオバマ大統領の広島訪問であり、サミットは? という扱い。トップにとりあげてるいロイターも辛口、否定的報道。
ところで、9月のG20は、中国の杭州。南京も近い。中国から、オバマ大統領が広島を訪問したように、安倍首相も南京を訪問してください、と言われたら、どうするのだろう。とか考えてしまう。
【焦点:サミット経て財政拡大へ、財源見えず「ヘリマネ」警戒 ロイター5/27】[東京 27日 ロイター] - 伊勢志摩サミットでは、世界経済の下方リスクを意識し、「政策の総動員」や「機動的財政戦略」の文言が盛り込まれた。安倍晋三首相は会見でアベノミクスのエンジンを最大限ふかすと強調。消費増税の再延期も近く表明し、大規模な景気対策も政府内で検討されている。
しかし、来年度の税収増は期待できず、積極財政を支える財源のメドは不透明だ。一部の専門家は、ヘリコプターマネー的な政策が始まりそうだと警鐘を鳴らしている。
<首脳宣言に「リーマン」の文字なし>
首脳宣言では世界経済の低成長リスクを指摘し、「全ての政策手段」を用いるとした。安倍首相は記者会見で、世界経済がリーマンショックの直後と現状が似た状況にあることを強調。各国とリスク認識を共有したと説明したが、首脳宣言に「リーマン」という文言はなく、政策選択でも財政だけが強調された構成とならず、構造改革も並列に盛り込まれた。
安倍首相が当初目指したとされる「財政出動での協調」では一致に至らなかった。
<財政出動シナリオ失敗の背景>
「もともと安倍政権が描いていたシナリオは理解に苦しむものだった」──。財政政策のエキスパートである立正大学経済学部の吉川洋教授は、世界経済はリーマンショック後の2009年にマイナス成長だった時とは異なると話す。
国際通貨基金(IMF)は16年に世界経済の3%成長を見込んでおり、各国に財政出動を呼び掛けても賛同は得にくいことは当初から分かっていたはず、と分析する。
東京大学大学院の福田慎一教授は「財政政策は相手国に(需要増という)恩恵があるが、自国にとっては財政赤字が増加するという現象が起きる。従って相手側が拡大してほしい政策。安倍首相は皆に財政拡大してほしいと頼んでみたが、相手国が渋い反応となるのは当然」と指摘する。
<消費テコ入れ、増税延期へ>ただ、サミット後に日本が16年度2次補正予算を中心とした経済対策を展開することは確実な情勢となっている。
政府内では、所得がある程度伸びている中での消費停滞は「もはや構造問題。将来不安を取り除く必要があり、それができるのは政治しかない」として、消費テコ入れの財政出動に焦点を当てる。
「経済対策内容に一億総活躍社会プランの一部前倒しを含めれば、消費喚起にもなる」との声や、「日銀のマイナス金利政策の効果を活用し、低コストで財投債を発行。経済効果の大きいインバウンド向けインフラ投資を行う必要がある」という案もある。
来年度からは子育て支援などが本格化し、給付金や補助金といったばらまき的な政策が展開される。ただ、恒久的な政策である子育て支援の安定財源確保のめどは、今のところ立っていない。
<見えない一億総活躍の財源>複数の政府筋によると、安倍首相は17年4月に予定されている消費増税を再延期する方針を固めた。近日中に麻生太郎副総理兼財務相、公明党の山口那津男代表と会談し、延期の期間などを最終調整する。安倍首相は会見で、参院選前にはその是非を明らかにすると述べた。
積極財政と税収減という展開が予想される中、財源不足に拍車がかかりそうだ。消費増税延期の場合、年間約5兆円の社会保障財源が不足。子育て支援などの財源として期待されていた税収増は「今の景気状況では、17年度の(法人税などの)税収増は期待できなくなるかもしれない」(政府関係者)という状況だ。
日本は国と地方の抱える債務残高が1000兆円とG7の中でも深刻な状況だが、日銀の国債大量購入で10年最長期国債利回り(長期金利)JP10YTN=JBTCはマイナスで、財政規律が緩みかねない状況だ。
<「ヘリマネ」への誘惑>「給付金などの政府の政策と日銀の大規模な国債購入により、国民にとってヘリコプターから現金が降ってくるような政策はもう始まっているも同然」と吉川教授は分析している。
福田教授も、市場価格から逸脱し高値で日銀が国債を購入し、政府が100兆円分の国債で120兆円を調達するような事態が長期化すれば、ヘリコプターマネーと呼ばれる状況となり、通貨価値は下落していくと指摘する。
「ヘリコプターマネーの最大の問題は、その強い常習性にある」とBNPパリバ証券・チーフエコノミストの河野龍太郎氏は述べる。
複数のエコノミストは、財政拡張と金融緩和が強烈に進む場合、国民が認識しないまま、ヘリコプターマネー政策を実行したのと同じような経済環境にはまり込むリスクを指摘している。
安倍政権の経済政策がそうしたトラップと無縁であるのかどうか。近日中に表明されるとみられる安倍首相の方針に対し、内外の市場や識者がどのように反応するのか注目される。
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