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五輪裏金疑惑 AMS・タン = 危険な取引を隠すための「絶縁体」

ガーディアン紙が、電通の子会社と報道したAMS(送金先の口座の所取者・タン氏がコンサルタントとして雇われていた)について、電通は「資本関係はない。単なる取引先」と説明している。
 これについて、デモクラTV代表の山田厚史氏のコラムは、
“「資本関係も人事交流もないビジネスの委託先。この「関係のなさ」にスポーツ利権のカラクリがある。”“
単なる取引先だから、そこが何をしているか知らない。機能は子会社だが、関係のないよその会社だ。ディアク父子にとってタン氏が窓口となって「絶縁体」の役を果たしているのと同じだ。”
“電通とディアク父子は、AMS・タンという緩衝材を挟んでつながっていた。腐敗があるからビジネスにうま味がある。問題はリスクの遮断。危ない橋を渡るには周到な遮断装置が必要になる。”
 と解明している。
ドーピング捜査から今回の疑惑が発覚したのは「皮肉」、、招致のための「不透明な金」はドーピングと同じだ、と断じている。
 一連の流れと全体像、問題点が、とてもわかりやすい内容となっている。

【五輪裏金疑惑は「開催したい人」に任せた大義の不在が招いた5/26 ダイヤモンドオンライン】

こんな記事もあります。
【ダスラーと電通の利害が一致して生まれたISL 樺山 満 06/6/23】

【五輪裏金疑惑は「開催したい人」に任せた大義の不在が招いた5/26 】

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

 1964年の東京五輪を覚えていますか?
焼け跡から蘇った東京を世界に示し、自ら確認する大会だった。日本人の五輪像はあの「復興途上国のスポーツ祭典」ではないか。50余年が経ち、オリンピックは変貌した。巨大な利権となり、招致や放映権でカネが動く。権限を持つ競技団体に腐敗が蔓延し、金儲けを企むビジネスがハエのようにたかる。開催経費は膨張し、宴の後に景気はしぼむ。

そして「裏金疑惑」が浮上した。事件はフランス検察の手の内にある。国際オリンピック委員会(IOC)の倫理規定に違反すれば東京開催は正当性を失うだろう。いったいなぜ、こんなことになったのか。理由は明らかだ。「何のために東京で五輪を開催するのか」。理念が曖昧だった。誰のための五輪なのか。「やりたい人」に任せてしまった咎めを、いま私たちは受けている。 

◆JOC会長の苦しい国会答弁 こんな説明で世間に通用するか

竹田恒和JOC会長の国会答弁を聞きながら、「こんな説明が世間に通用すると思っているのか」と思った。わずか2ヵ月余のコンサルタント契約に2億3000万円が支払われた。 
説明はこうだ。 

一回目は2013年7月末に9500万円。先方のコンサルタントから売り込みがあり、電通に相談し「実績がある会社」と確認したので、契約しカネを払った。2回目は「東京開催」が決まった後の10月。勝因分析を依頼し、成功報酬を加味して1億3500万円。いずれもシンガポールのブラック・タイジングス(BT)社の口座に振り込んだ。タン・トン・ハン氏が経営する実体のある会社と認識している。当時、国際陸連前会長だったラミーヌ・ディアク氏や息子のパパ・マッサタ・ディアク氏と深い関係にあるとは知る由もなかった(2日後、「関係があることは知っていた。言われるような悪い関係は知らなかった」と訂正)。支払いはコンサル業務に対する正当な対価だ。有形無形の各種報告が成果。票獲得に欠かせなかった。ただ、どう使われたかは確認していない。 

証言の要旨はこんなものだ。では、各種報告とはどんな内容で、それがどのように票獲得に繋がったのか。報告を受けた招致委員会の誰が票固めに動いたのか。それともタン氏が説得したのか。「報告と票」の間がつながらない。苦しい言い訳をするから分かりにくくなる。 

「カネを渡して票の取りまとめを頼んだ。どう使ったか、私は知りません」
と言えばすっきりしている。古今東西の選挙で定番となっている違反が「カネを渡し票の取りまとめを依頼」である。要するに買収だ。 

モスクワで開かれた国際陸連の大会にIOCの委員が集まるから票固めをタン氏に頼んだのだろう。というよりタン氏と昵懇の間柄であるパパ・マッサタ氏に頼んだ、つまり父親のディアク会長の威光に頼った、というのが本当のところだ。 

国際陸連でコンサルタントを務めるパパ・マッサタ氏は入金後、パリで高級時計を買った。支払いはタン氏の口座だった。この口座は世界陸連のドーピングもみ消し事件でロシアから不正資金が振り込まれた口座と一致した、とフランス検察は指摘している。 

つまりタン氏はパパ・マッサタ氏の代理人・窓口という役回り。だから会社に実体はない。古びた公営住宅が所在地になっていた。BT社は2014年に閉鎖された。窓口でしかないタン氏を電通は「実績がある」と推薦したのである。実績とはディアク父子の代理人、つまりタン氏にカネを渡せばディアク父子に届く、という実績を言っているのだろう。 

◆ 国際陸連・ディアク氏と電通のパイプは20年以上前から

電通は国際陸連と太いパイプがある。主催する大会に関わる商業利権を01年から29年まで独占している。16年間会長の座にいたディアク氏から与えられた特権。理事会に諮らず電通に利権を与えたことが後に問題になっている。相当な食い込みだ。当然、対価が支払われていることだろう。 

ディアク氏と電通の関係は、20年以上も前から続いている、と電通の関係者は言う。 

発端は1982年に電通がアディダスの創業一族のホルスト・ダスラー氏とスポーツビジネス会社インターナショナル・スポーツカルチャー&レジャーマネジメント(ISL)をスイスに設立したことだ。競技人脈が豊富なダスラー氏が商権を買い取る資金力がある電通に目をつけ、元IOC会長のピーター・ユべロス氏が仲介したとされる。ISLは国際サッカー連盟(FIFA)など競技団体の放映権やブランドを差配する会社だったが、拡大路線が躓き2001年に経営が破綻。詐欺・横領・文書偽造などで役員6人が訴追された。FIFA幹部の汚職も露見した。 

腐敗体質が問題になる中で、アフリカ陸連の会長だったディアク氏がIOC倫理委員会から取り調べを受けた。1993年に3万ドルと3万スイス・フランをISLから受け取っていたことが判明。当時IOC委員ではなかったことから処分は警告にとどまった、という。 

ISLの破綻後、電通は競技団体の権益業務を、新たに設立されたアスレチック・マネジメント・サービス(AMS)に移管、ここを通じて国際陸連の業務などを差配している。AMSは「裏金事件」のもう一つの舞台になった。 

英紙ガーディアンは「電通スポーツは電通の保有するスポーツ権益を運営する関連会社AMSをスイスに設立した。タン氏はAMSにコンサルタントとして雇われていた」と報じた(5月12日)。 

この点を確認すると電通広報は、 
「AMS社は電通スポーツの子会社ではありません。電通及びグループ各社との資本関係もありません。ビジネス上の取引がある会社で、国際スポーツイベントにおけるスポンサー対応などの運営業務をお手伝いいただいています」と回答した。

◆汚職体質の団体と直接取引は事件に  「関係のなさ」が緩衝材になるカラクリ

資本関係も人事交流もないビジネスの委託先。この「関係のなさ」にスポーツ利権のカラクリがある。 

電通関係者によると「AMSは電通スポーツ局の業務を請け負う実質的な代理店」という。汚職体質に染まる競技団体の役員と、直接に取引すると事件になる恐れがある。間に一枚噛ます、それがAMSの役割だという。 

単なる取引先だから、そこが何をしているか知らない。機能は子会社だが、関係のないよその会社だ。ディアク父子にとってタン氏が窓口となって「絶縁体」の役を果たしているのと同じだ。 

「タン氏はAMSにコンサルとして雇われていたか」という問いに電通広報は、

「AMS社とタン氏の関係についてはお答えする立場にありません。当社がタン氏をコンサルタントとして雇ったり、ビジネス上の取引をしたりしたことはありません」

AMSとタンの関係は否定しなかった。電通と「無関係」を強調したのである。 

電通とディアク父子は、AMS・タンという緩衝材を挟んでつながっていた。 

腐敗があるからビジネスにうま味がある。問題はリスクの遮断。危ない橋を渡るには周到な遮断装置が必要になる。 

タン氏は集金窓口であっても、職務権限はない。カネを受け取っても「コンサルタント料」と言い訳して逃げる。カネがディアク父子に渡った証拠がなければ汚職は立件できない。フランス検察はパパ・マッサタ氏とタン氏の二人を国際指名手配した。 

◆不透明な資金はタン氏ルート以外にも  開催地決定にカネが動く現実

気になるカネの流れはまだある。招致委がコンサルに払った金額はタン氏ルートの2億3000万円だけではない。総額7億円を上回るが、具体的な使途は明らかにされていない。「票固め」に使ったカネは他にもあるのではないか。 

もう一つは「不可解な寄付」。今年1月、世界反ドーピング機関(WADA)の独立委員会がまとめた報告書にこんな記載がある。 

「トルコは、国際陸連の大会に400~500万ドルの寄付をしなかったことでディアク会長の支持を失った。寄付を行った日本が開催の栄誉を得た」
形を変えた「買収」ではないか。トルコは寄付を「できない」と拒否し、敗退した。日本はどこからこのカネを捻出したのか。フランス検察が動いているだろう。 

「開催計画の優劣や理念などを競う清廉潔白な争いで、成否は決まらない。約18年、五輪招致レースを取材してきた実感だ」
朝日新聞の稲垣康介編集委員は「開催地決定にカネが動く現実」をそう書いている。 

現実はそうかもしれない。2億円で得票が固まるなら安いもの、と招致に当たる人たちは考えたかもしれない。 

大きな経済効果、世界に向けた宣伝、開催地の誇り、政権の達成感。諸々の効果を考えれば、多少の不透明なカネには目を瞑るのが大人の対応、という声もある。 

不透明な支払いは誰が決めたのか。要求され、断れば票が逃げるかもしれない。招致委の責任者には「NO」の選択はなかっただろう。東京開催に泥を塗る決断は、ごく一握りの関係者でなされたのか。 

◆「大人の対応」で許される?  東京五輪の姿はこれでいいのか

事件が、ドーピング捜査から発覚したのは皮肉である。選手は誰しも勝ちたい。だが薬を使ったら失格。永久追放になるかもしれない。開催地の招致も競争だ。「不透明なカネ」はドーピングと同じではないか。 

選手は厳罰、招致団体は「大人の対応」で許されるのか。 

オリンピックは大きくなりすぎた。何のためにやるのか? 誰のための大会? 

オレのため、カネのため、という輩が群がり、鼻先にぶら下がる私利私欲が推進力になっていないか。 

東京五輪組織委員会は名誉会長が御手洗冨士夫・キヤノン会長。二代前の経団連会長だ。カネをたくさん出せる人が名誉会長になる。民間企業の最高位だ。トヨタ自動車の豊田章夫社長は副会長だったが、昨年12月、理由を告げず辞任した。汚れた五輪とは付き合いきれない、ということか。 

御手洗氏は五輪に何を期待しているのか。名誉会長ということは国際陸連への寄付も奮発したに違いない。大丈夫なのか。 

会長は森喜朗元首相。東京五輪の誘致はこの人を軸に始まった。首相時代は不完全燃焼だった。評判も悪かった。「五輪開催」に熱心だったが、どんな五輪にしたいのか、実のある話を聞いたことはない。 

開催地・東京の知事は組織委に加わってはいない。開催地の知事より五輪を仕切りたい元首相が幅を利かすという不思議。文科大臣も五輪担当相も子分を当てがっている。これが東京五輪の姿だ。 

東京といえば地震は大丈夫か。直下型地震が起こるかもしれない。 

五輪は東京に必要なのか。もう一度考えたい。 

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