政府見直し求めず…「安保条約」の核心=「地位協定」を聖域化
いくら凶悪事件がおこっても政府は地位協定の改定をもとめない。「再発防止」や「(協定の)運用改善」というその場しのぎの対応。
【防衛相、地位協定見直しに否定的 沖縄女性遺棄事件 共同5/24】
地位協定とは、占領時代の無制限の基地使用という行政協定をそのまま引き継いだもの。
元外務官僚の寺崎太郎氏〔日米開戦時のアメリカ局長、敗戦時の外務次官〕は、「行政協定のための安保条約、安保条約のための平和条約でしかなかったことは今日までにあきらかになっている」「つまり本能寺(本当の目的)は行政協定にこそあったのだ」と語っている。
だから安保条約は、日本防衛を義務付けていない。規定してるのは開戦権をもつ米議会にはかることだけ。
アメリカにより(政治的の思惑によってだが)、戦犯追及からのがれ「公職復帰」した政治家の孫世代が跋扈する政権… だから「協定見直し」の提起すらできないのである。
その点を以前まとめたもの。
【米兵犯罪・オスプレイ強行 占領を継続する地位協定・安保2012/10】
【防衛相、地位協定見直しに否定的 沖縄女性遺棄事件 共同5/24】中谷元・防衛相は24日の記者会見で、元米海兵隊員の軍属が逮捕された女性遺棄事件を踏まえた日米地位協定の見直しに否定的な見解を示した。沖縄県の翁長雄志知事らによる地位協定改定の要求について「今回(の事件)は地位協定上、日本の捜査権、裁判権に基づき厳正に捜査が行われている」と指摘した。
同時に「安倍政権としては地位協定の個々の問題について、引き続き目に見える改善ができるように取り組んでいく」とも述べ、運用改善を進める考えを強調した。安倍晋三首相も翁長氏との23日の会談で地位協定改定に消極的な姿勢を示している。
【米兵犯罪・オスプレイ強行 占領を継続する地位協定・安保 2012/10】たびかさなる米兵犯罪、オスプレイ配備についてもアメリカは「日米安保条約上の権利」、野田首相は「(日本政府が)どうしろ、こうしろという話ではない」と言う。・・・まさに占領の継続といえる状況。
それは、地位協定(行政協定)によって今も規定されているからである。その内容は、端的に言うと・・
・占領化の無制限の基地使用/ 51年「旧安保」で引次ぎ /60年安保にも引き継がれた。
・日本が駐留を希望し、米軍は権利として駐留、日本を防衛する義務を負っていない。
・アメリカは自国の国益で行動している。◆安保条約策定時のアメリカ側責任者・ダレス氏の発言
・「望むだけの軍隊を望む場所に臨むだけ駐留させる権利」を獲得することが「根本的な問題」(ダレス使節団来日、最初のスタップ会議 1951/1/26)
・成立した安保条約について「アメリカは日本とその周辺に陸海空軍を維持し、あるいは、日本の安全と独立を保障する、いかなる義務をおっていない」(フォーリン・アフェアーズ1952年1月号)
そのことは以下の発言、文書で示されている。【安保条約は、米軍の防衛義務をかしていない】
○安保条約第五条
各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。
ここでは「憲法や手続きに従い・・行動する」となっている。米国では、交戦権は議会の権限であり、この条項は「議会にかける」としか言っていない。
なお、NATO条約は「武力攻撃時、安全回復の為、必要と認める行動(兵力使用を含む)を直ちに執る」となっており、まったく別の規定となっている。
~平和条約締結の交渉の中で、米軍駐留を、「基地提供=日本防衛」をバーターする枠組みから、吉田茂のもと日本が「希望する」形にかわり、米軍は「居てやる代わり」の特権を要望する形となった。
(豊下「安保条約の設立」・岩波新書より)【「望むだけの軍隊を望む場所に臨むだけ駐留させる権利」を認めた行政協定・交換公文】
○平和条約の真の意義について、「行政協定のための安保条約、安保条約のための平和条約でしかなかったことは今日までにあきらかになっている」「つまり本能寺(本当の目的)は行政協定にこそあったのだ」(寺崎太郎外交自伝)
○行政協定の内容は、「(これでは)講和が発行して独立する意味がない」(宮沢喜一「東京・ワシントンの密談」)というもので、「望むだけの軍隊を望む場所に臨むだけ駐留させる権利」という内容は、協定とほぼ同じ効力をもつ、密約の形で、「岡崎・ラスク交換公文」として合意した。
○「岡崎・ラスク交換公文」
日米が90日以内に合意しなかった場合は、米軍は基地を使用続けられる。
しかし、日米安保条約は、吉田茂ただ一人が全権大使として秘密交渉し調印。肝心の行政協定、交換公文はその後も秘密にされ安保条約の52年発行と同時に公開された。90日間、アメリカがノーといったらそのまま使える事態に。だから独立国になったのに、基地が1つも返らなかった。○当時、西村条約局長から行政協定の交渉経過や内容を聞いた若き日の中曽根康弘が、「要するに、この協定は日本をアメリカの植民地化するものですナ」とただ一言残して立ち去った
(外務省条約局法規課「平和条約の締結に関する調書Ⅷ」1980年5月。外務省編『日本外交文書――平和条約の締結に関する調書』第5冊(2002年)所蔵 141頁)○安保改定でも引き継がれた内容 ( 藤山、マッカーサー密約 60/1/6)。
①日本国における合衆国軍隊の使用のため日本国政府によって許与された施設及び区域内での合衆国の権利は、1960年1月19日にワシントンで調印された協定第3条第1項の改定された文言のもとで、1952年2月28日に東京で調印された協定のもとでと変わることなく続く。
(1960・1・6・藤山外相とマッカーサー駐日大使が頭文字署名)②「公表しないよう」日本側が要請
日本政府は、(日米地位協定)第3条1項の新しい文言のもとで施設及び区域内の米国の権利を変更しないままにすることを文書で確認する用意ができているが、この趣旨の公表覚書への同意をしぶっている。日本政府は秘密了解にして新しい日米安保条約と行政協定の調印以前に藤山(外相)と私が頭文字署名をおこない、その後新しい日米安保条約と行政協定が発効するさい合同委員会の記録に入れることに同意している。
(マッカーサー駐日大使から国務長官あて報告書1959・12・4)○占領中の米軍の権利を保護 「在日米大使館からの報告書1957・2・14」より
日本における米国の軍事活動の規模の大きさに加えて、際立つもう一つの特徴は米国に与えられた基地権の寛大さにある。
安保条約第3条にもとづいて取り決められた行政協定は、米国が占領中に持っていた軍事活動遂行のための大幅な自主権と独立権を、米国のために保護している。
安保条約(旧安保条約)のもとでは、日本政府とのいかなる相談もなしに『極東における国際の平和と安全の維持に寄与』するためにわが軍を使うことができる。……行政協定のもとでは、新しい基地についての要件を決める権利も、現存する基地を保持し続ける権利も、米軍の判断にゆだねられている。……これに加えて、地元の主権と利益を侵害する多数の補足取り決めが存在する。多数の米国の諜報活動機関と対敵諜報活動機関の数知れぬ要員がなんの妨げも受けず日本中で活動している。
米軍の部隊、装備、家族なども、地元とのいかなる取り決めもなしに、また地元当局への事前情報連絡さえなしに日本への出入を自由におこなう権限が与えられている。……日本国内では演習がおこなわれ、射撃訓練が実施され、軍用機は飛び、その他の日常的な死活的に重要な軍事活動がなされている――すべてが行政協定で確立した基地権にもとづく米側の決定によって。【裁判権】
・旧安保 行政協定 米兵の犯罪は、専属的裁判権を持っていた。
53年の改定 公務外の犯罪の第一次裁判権は日本/ 地位協定17条にも引き継がれている
・しかし、著しく重要に事件以外は「第一次的裁判権を行使する意図はない」(53年・改定の前日)○日米合同委員会裁判権分科委員会刑事部会長の声明(1953・10・28)
行政協定第17条を改正する1953年9月29日の議定書第3項に関連した、(日米)合同委員会裁判権分科委員会刑事部会日本側部会長の声明
「議定書第3項の規定の実際的運用に関し、私は、政策の問題として、日本の当局は通常、合衆国軍隊の構成員、軍属、あるいは米軍法に服するそれらの家族に対し、日本にとっていちじるしく重要と考えられる事件以外については第一次裁判権を行使するつもりがないと述べることができる。(……)」
(津田實(署名)裁判権分科委員会刑事部会日本側部会長)
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