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もんじゅ 廃炉しかない~ 米高官も核燃サイクル見直し支持

 核燃サイクルは、技術的にも見通しがたたず、プルトニウムを貯めつづる再処理に対し、アメリカからも政策見直しを暗に求められている。しかも、もんじゅだけでも、これまで1兆410億円(1980―2016年度)かけ、毎年の維持費に平均161億円余もかかっている。もんじゅを廃炉にし、核燃サイクルから撤退すべきである。
そうなれば、六ヶ所村から使用済み燃料が各電力会社にかえされることになり、ただでさえ満杯に近いプールは空きなくなり、原発は動かせなくなる。原発製作のゆきづまりは明白である。
【米高官、核燃サイクル見直し支持 日本の政策に懸念 東京5/21】
【<文科省検討会>もんじゅ受け皿示せず「半数、専門外に」毎日5/20】
【「もんじゅ」に関する市民検討委員会提言書 5/9】

【米高官、核燃サイクル見直し支持 日本の政策に懸念 東京5/21】

 米ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のウルフソル上級部長(軍縮・不拡散担当)は20日までに、日本の使用済み核燃料再処理を容認した日米原子力協定の効力延長について「大きな議論を呼ぶ問題になる可能性がある」と指摘、日本が核燃料サイクル政策を見直すなら「米国は支持する」と述べた。
 共同通信との単独会見に応じた。核物質プルトニウムを大量に生産する日本の再処理事業に対する米政府の懸念が改めて裏付けられた。
 現在の日米協定の期限は2018年。米国内では協定改定を求める意見も出ており、期限前に問題提起する思惑もありそうだ。(ワシントン共同)

【<文科省検討会>もんじゅ受け皿示せず「半数、専門外に」毎日5/20】

高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)の新しい運営主体のあり方を議論する文部科学省の有識者検討会(座長・有馬朗人元文相)は20日、経営陣の半数以上を原子力以外の専門家にすることなどを提言した報告書案を大筋了承した。原子力規制委員会は昨年11月、半年以内に、現在の運営主体「日本原子力研究開発機構」に代わる新組織を示すように求めていたが、期限内に具体名を示すことはできなかった。

 報告書案は今回の検討を「運転再開に向けた最後の機会」と位置付け、(1)組織が自律的に行動する運営体制を構築する(2)規制の動きやトラブルに関する情報を収集し、関係部署に指南する部署を設置する--などを新組織の要件に挙げた。監督官庁の文科省に対しては「原子力機構の代弁者となり、厳しい指導ができなかった」と批判した。

 検討会は月内にも正式な報告書をまとめる方針。検討会終了後、馳浩文科相は「次回会合で報告書を承認してもらい、規制委に伝えたい。同時に新たな運営主体を特定する作業も進める」と述べた。具体的な運営主体が示されるのは7月の参院選後になりそうだ。

 しかし国内で、液体ナトリウムを冷却材に使うもんじゅのような原子炉を取り扱った経験があるのは原子力機構しかない。一方、規制委は新組織について、原子力機構の「看板の掛け替え」は容認しない方針を示しており、規制委が納得する運営主体を文科省が提示できるかが今後の焦点になる。

 規制委は昨年11月、もんじゅで機器点検漏れなどの不祥事が相次いだことを受け、原子力機構に代わる新しい運営主体を半年後(今月)までに示すよう文科省に勧告していた。規制委の田中俊一委員長は、半年の期限内に運営主体が示されないことについて「様子を見守る」と静観している。

【「もんじゅ」に関する市民検討委員会提言書 5/9】

◆提言

1.「もんじゅ」の新たな主体はありえない。ありえない主体探しに無駄な時間をかけるべきではない。
2.「もんじゅ」は廃炉にすべきである。

◆原子力規制委員会による勧告と「『もんじゅ』に関する市民検討委員会」

 原子力規制委員会(以下、規制委員会)は2015年11月13日、日本原子力研究開発機構(以下、機構)を主管する文部科学大臣に対し、「機構はもんじゅの出力運転を安全に行う主体として必要な資質を有していない」として、以下の勧告を行なった。
貴職において、次の事項について検討の上、おおむね半年を目途として、これらについて講ずる措置の内容を示されたい。

1 機構に代わってもんじゅの出力運転を安全に行う能力を有すると認められる者を具体的に特定すること。
2 もんじゅの出力運転を安全に行う能力を有する者を具体的に特定することが困難であるのならば、もんじゅが有する安全上のリスクを明確に減少させるよう、もんじゅという発電用原子炉施設の在り方を抜本的に見直すこと。

 これを受けて、文部科学省(以下、文科省)は、有馬朗人武蔵学園学園長・もと文部大臣を座長とする「『もんじゅ』の在り方に関する検討会」(以下、検討会)を設置した。
 「『もんじゅ』に関する市民検討委員会」は、2015年12月28日に始まった検討会の進め方が規制委員会の勧告の趣旨に従っていないことについての危惧から2016年1月に組織されたもので、議論の結果、冒頭に掲げた二つの提言に合意するに至った。

◆規制委員会勧告の背景

 規制委員会は勧告を出すに至った背景を以下のように説明している。
 「もんじゅについては、当委員会発足前においても、平成7年のナトリウム漏えい事故を契機として、近年に至るまで、品質保証活動を含む安全確保上の課題について……種々の取組が行われ、……[改組を重ねた当事者による]対策に加え、規制官庁(旧科学技術庁及び旧原子力安全・保安院)による指導も再三にわたって行われてきたものの、結果的に具体的な成果を上げることなく推移し……当委員会発足後においても……保守管理等の不備に係る種々の問題が次々と発覚したため……機構の主務省である文部科学省に対しても適切な監督を行うよう二度にわたり要請してきたが、現在に至るも十分な改善は見られていない。……このようなことから、当委員会は、機構のもんじゅの運転、なかんずく出力運転……の主体としての適格性に関し、原子力利用における安全の確保の観点から重大な懸念を生ずるに至った……」。

◆変わらない体質

 機構および文科省は、規制委員会による問題点の指摘に関し「改善は着実に前進している」と主張し続けた。規制委員会の勧告を受けた後になって「保全プログラムの中核を2ヵ月足らずの期間で策定」しており、「実践しながら修正していく計画であった」などの言いわけがなされている。それならなぜ「着実に前進している」などと主張していたのかは説明されていない。
 また、機構は、指摘された事項については既に対応済みなので「プラントの安全に影響を及ぼさない」と検討会で説明をしている。指摘されないと自主的に改善しようとしない体質が問われていることが理解されていない。1995年のナトリウム漏洩・火災事故から20年もそのような安全軽視の姿勢が続いていることを規制委員は指摘し、「保守管理や品質保証などの保安上の措置は原子力利用における安全の確保の大前提である」と強調している。未だにこのような姿勢が変わっていないという事実は、機構に技術および安全文化面での資質がないばかりでなく、文科省に主管省としての必要な能力がないことを如実に示している。

◆「『もんじゅ』の在り方に関する検討会」には期待できない

 2015年11月17日、馳浩文部科学大臣は、検討会の設置について「勧告文書に廃炉という言葉はなかった」として最初から廃炉の検討を排除し、機構「に代わる運営主体を半年以内に探す」という方針を示して、勧告2については考えていないことを示唆した。これまでの計画のままでの「もんじゅ」延命というあらかじめ用意された結論のもとで設置されたのが検討会である。規制委員会の設定した期限については、「きっちり半年というよりも……来年の夏前ぐらいにはと時間感覚は捉えて」いると述べている。
 後に馳大臣は、勧告1について、「三段階で検討を進める」とし、第一段階で、「いったい何があったのか、これまでの課題の総括を行う」、第二段階で「『もんじゅ』の在り方、運営主体のあるべき姿を示し」、第三段階で「具体的な運営主体の検討を行う」と説明している(馳浩「『もんじゅ』に対する勧告を受けての思い」――『日本原子力学会誌』2016年4月号)。
 検討会は、2016年4月6日の第6回会合から第二段階に入ったという。だが、4月28日の第7回会合に出された「『もんじゅ』の運営主体の在り方について(骨子案)」を見れば、「あるべき姿」の具体性からは遥かに遠い。
 第三段階について、馳大臣は第1回検討会の終了後、「具体論については、また違ったメンバーを加えた方がいいかと思う」と述べ、有馬座長は、「最終的に受け皿をどうするかは政治的決着をつけないといけない」と言っている。つまり、検討会としては第二段階までと考えられているようである。結論が出される時期については、7月の参議院議員選挙後という見方もあり、有馬座長が8月と話しているとの報道もあった(2016年2月8日付『電気新聞』)。
 8月まで延びれば、次年度政府予算の概算要求に文科省の結論が間に合わず、むだな予算要求がずるずると続いていくことになりかねない。「もんじゅ」の維持だけで毎年約200億円の予算が付けられている。再稼働させる場合、これとは別に新規制基準適合性対応に最低でも約432億円がかかると機構が試算していることが明らかになっている(文科省に対する『共同通信』の情報公開請求による)。これは「もんじゅ」用の規制基準が未だ策定されていないために通常の原子力発電所(軽水炉)のケースから算定した額であり、実際はもっとかかることになるだろう。ほかにも関連する予算は多く、高速増殖炉開発プロジェクト全体の予算総額はきわめて大きなものとなる。
 三段階の検討は、規制委員会の勧告の「真意」を探り、「落としどころ」を見出すための時間稼ぎであるかに見える。それこそ、規制委員会が軽水炉の新規制基準適合性審査において「基準を満たす最低線を探ろうとするもの」と忌み嫌った手法であり、勧告の趣旨に反するものだろう。
このような状況に鑑み、私たち「『もんじゅ』に関する市民検討委員会」は早急に方向性を示すことを目的に、東京と敦賀での集中的な議論(現地の方々との意見交換を含む)とインターネットを通じた頻繁な意見交換を行ない、以下の結論に達した。

◆結論1.機構に能力はなく、機構に代われる主体もありえない

 規制委員会の勧告は、「もんじゅは、高速増殖炉であることに伴う固有のリスクを有するとともに、研究開発段階とはいえその出力の規模は商用の原子炉に近いものであって、そのリスクも軽視することはできない」とし、「機構がこれにふさわしい安全確保能力をもつとは考えられない」と述べている。
 しかし機構は、なお「もんじゅ」の開発成果を出していくのは自分たちの責務だと、検討会でも繰り返し主張している。機構の看板を掛け替えたのでは新たな主体として認められないという規制委員会の考えに対し、検討会の文科省側メンバーである高谷浩樹研究開発戦略官は、「特殊なもんじゅの知見を持っているのは原子力機構の職員。そこも加味して考えないと…」と、2015年11月14日付『福井新聞』にコメントを寄せた。東京大学大学院の岡本孝司教授も、『日本原子力学会誌』2016年3月号の座談会で「ナトリウムとFBR[高速増殖炉]が扱えるのは、原子力機構以外にありません」と強調し、『エネルギーフォーラム』2015年12月号では、「from原子力業界」という匿名コラムが「原子力機構以外の組織に運営を任せる方が、リスクが高まる可能性すらある」と述べている。
 すなわち、機構に代わる新たな主体がありえないことは、ほかならぬ「もんじゅ」存続・推進論者らによって言い尽くされている。新法人を設立し、その下で「もんじゅ」の運転部門と研究開発部門を分離し、機構の職員が引き続いて運転部門で働く案が出されているとも報じられているが、それでは看板の掛け替え以外の何物でもない。しかも、保守管理を軽視してきた原因ともされる「研究開発と保守運転は陽の当たりやすさが違う」(検討会資料)実態からすれば、機構職員が研究開発から切り離された運転部門で意欲的に安全確保に専念できるとは、とうてい考えられない。
いずれにせよ、機構を分割したり「もんじゅ」を譲渡したりするには、「もんじゅ」を設置する技術的能力及び重大事故の発生拡大防止措置に必要な技術的能力があること、災害の防止上必要な基準に適合していることを確認するための審査を規制委員会から受けなくてはならない。これに合格できる者は存在しないだろう。
 勧告の第1項は、もともとありえないことを求めているのである。よって、ありえない主体探しに時間と労力を費やし、税金を無駄遣いすることは、やめるべきである。

◆結論2.「もんじゅ」は廃炉しかない

 そもそも「もんじゅ」は、元来がきわめて危険な原子炉である。これは高速炉という特性と、水や空気に触れると激しく反応する液体ナトリウムを冷却材としているという「もんじゅ」の特徴から来る。

1)炉心にはプルトニウムを18パーセントも含んだ燃料を詰め込んでおり、燃料棒が互いに近づくと出力が上がる性質をもつ。また、冷却材の液体ナトリウムが沸騰してボイドが発生すると、軽水炉の場合と異なり、ますます出力が上がって出力暴走事故を起こしやすい。さらに、福島原発事故のような炉心溶融が起こると、再臨界の危険性が大きい。

2)ナトリウムが空気中に漏洩すると激しく燃焼し、鋼製床ライナーを損傷する。実際に「もんじゅ」は1995年12月8日にナトリウム漏洩火災事故を起こしている。漏洩がさらに継続していればコンクリートと反応して爆発し、建物を損傷する危険性があった。

3)蒸気発生器で細管が破断すると、高圧の水がナトリウム中に噴出して反応し、他の細管を大量に破断する事故が起こりやすい。

4)ナトリウムは熱しやすく冷めやすいので、配管は熱衝撃を避けるために肉厚を薄くし、曲がりくねって天井からつり下げられている。そのため地震には極端に弱い。

5)原子炉を停止する装置としては、軽水炉のようなホウ酸投入装置はなく、制御棒のみである。

6)冷却材が喪失したときのための緊急炉心冷却装置がない。福島原発事故のように外部から冷却材を注入することもできない。液体ナトリウムを掛けるわけにも、水を掛けるわけにもいかない。
 加えて、上述の1995年のナトリウム漏洩・火災事故で停止し、2010年5月から7月にかけて一時的に試運転を再開したものの、8月26日に炉内中継装置の落下事故を起こして以来、また、長期停止が続いているために、燃料の劣化はもとより、冷却材のナトリウムも、機器も、劣化・老朽化している。東北地方太平洋沖地震、熊本地震と地震の脅威が現実のものであることを思い知らせる事態が続いていることを教訓としなければならない。
 また当初から開発に携わってきた、「もんじゅ」をよく知る技術者もいなくなってしまった。つまり、安全な運転を確保できる者も、事故が起きた場合に適切な助言等をできる者もいないということである。

 このような危険性は、「夢の原子炉」と宣伝してきた高速増殖炉の実用化に向けた発電用原型炉の役割を放棄し、「もんじゅという発電用原子炉施設の在り方を抜本的に見直すこと」という規制委員会勧告2の文言に頼って、仮に「発電用ではなく研究炉にする」と言ってみても、まったく変わらない。発電はせずに「もんじゅ」を動かすことは、技術的に困難な施設改造を必要とし、さらに余分な投資を伴うことになる(むろん、発電用原子炉として利用する場合も、新規制基準に適合させるためには多額の費用を伴う施設の改修が必至だということは先に指摘した通りである)。

 また、なし崩し的に「もんじゅ」のうたい文句が変えられてきていることも問題である。もともと「もんじゅ」は、希少なウラン資源を活用するために新たな燃料(プルトニウム)を増殖しながら発電する高速増殖炉、すなわち「夢の原子炉」のはずだった。当初予測されたウラン不足は到来せず、夢の原子炉はいつまで経っても実用化されないということで、いまでは機構や日本政府はこの「夢」については多くを語らず、放射性廃棄物の量や有害度を減らす「ゴミ焼却用」の「高速炉」という、さらに現実性のない「夢」をうたい文句にし始めている(ただし、「もんじゅ研究計画」に従えば「高速増殖炉プラントの技術成立性の確認を含む高速増殖炉技術開発の成果の取りまとめ」はしなければならない)。どちらの「夢」も技術的実現性と経済性を無視しているという点では同じである。

 さらに、日本がプルトニウムという核兵器利用可能物質を再処理によって大量に分離していることが、核不拡散・核セキュリティ上の国際的な懸念を増大させているという状況を忘れてはならない。最初は、高速増殖炉の初期装荷燃料用のプルトニウムを使用済み燃料から取り出すために再処理が必要と言われた。プルトニウムをできるだけ増やそうという計画である。今度は、プルトニウムなど超ウラン元素を核分裂させて減らすのに高速炉が必要だと主張されている。高速増殖炉の燃料のために必要と言うにせよ、放射性廃棄物の減容化・有害度低減のために必要と言うにせよ、六ヶ所再処理工場に加えて、さらに次の再処理工場を建設すべきということになる。再処理も高速増殖炉・高速炉計画も惰性で続け、再処理によって核兵器利用可能物質のストックを増やし続ける政策は国際的理解を得られないだろう。

 「もんじゅ」の在り方をめぐっては、今回の規制委員会勧告を待つまでもなく、会計検査院の検査や予算要求の政策仕分けなどで厳しく問われてきた。2011年12月8日の衆議院決算行政監視委員会では、起立総員での委員会決議の中で、こう指摘されている。「高速増殖炉については、[中略]もんじゅナトリウム事故の収束もままならないまま、約40年後の2050年までの実現を予測するなど、その費用規模と技術的な実現性を国民に説明することは極めて困難である」。ゴミ焼却をうたう高速炉についても同じことが言えるだろう。

 むだな予算をつぎ込む前に廃炉とすることが、あらゆる意味で望ましい。規制委員会の勧告から得られる論理的帰結は廃炉以外にない。

◆提言
上記の結論に基づき、関係各大臣・各機関に、また、広く社会に向けて、以下の提言をする。
1.「もんじゅ」の新たな主体はありえない。ありえない主体探しに無駄な時間をかけるべきではない。
2.「もんじゅ」は廃炉にすべきである。
以上


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