川内原発差止め 「二度と原発事故はゴメン」との社会通念を無視した不当決定
「二度と原発事故はゴメン」との世論を無視したゆる過ぎる規制基準、国際基準の深層防護も満たしていない規制基準を、しかも平均像としての基準地震動、10倍以上の過少となっている火山の評価、避難計画の実効性などの欠陥を認め名から、「社会通念」とのあいまいな言葉でごまかし、現実を無視した不当判決。
これは、92年、最高裁が示した「原発の安全性が確保されないとき、周辺住民らに軍大な危害を及ぼし、周辺環境を放射能汚染させる恐れがある。そうした災害が万が一にも起こらないようにするため、行政は十分に審査を行う必要がある」---この立場も放棄したもの。
以下は、自由法曹団、原告団の2つの声明
【川内原発1、2号機の運転差止仮処分を求める住民らの抗告を棄却した福岡高等裁判所宮崎支部の不当決定に抗議する声明 自由法曹団 4/7】
【九州電力川内原発第1号機、2号機稼働差止仮処分即時抗告決定を受けての原告団・弁護団声明(改訂)4/7】
【川内原発1、2号機の運転差止仮処分を求める住民らの抗告を棄却した福岡高等裁判所宮崎支部の不当決定に抗議する声明 自由法曹団 4/7】1 2016年4月6日、福岡高等裁判所宮崎支部(西川知一郎裁判長)は、九州電力川内原発1、2号機の運転差止仮処分を求める住民らの即時抗告を棄却する不当な決定(以下「本決定」という。)を行った。
福島第一原発事故による凄惨な被害を直視し、原発依存政策からの撤退を求める自由法曹団は、この不当決定に強く抗議する。2 本決定は、原発が確保すべき安全性について、「我が国の社会がどの程度の水準のものであれば容認するか、換言すれば、どの程度の危険性であれば容認するかという観点、すなわち社会通念を基準として判断するほかはない。」と述べ、「本件改正後の原子炉等規制法の規制の在り方には、我が国の自然災害に対する原子炉施設の安全性についての社会通念が反映しているということができ」、結論として、「新規制基準の定めが不合理であるということはできず」、「新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断が不合理であるということもできない」などとし、即時抗告を棄却した。
3 しかし、原発の安全性の判断基準を社会通念などというあいまいなものに求めることは司法の責任放棄であり、福島第一原発事故という現実から目を背ける不当な判断である。しかも、その社会通念の解釈は、まったくもって不可解というほかない。すなわち、福島第一原発事故は、我々国民に、原発事故がもたらす被害がいかに甚大であるかを存分に知らしめたはずである。
事故から5年が経過した現在でも、事故の原因は未解明であり、汚染水は増加の一途である。また、未だ10万人近くの福島の人々が避難を余儀なくされており、被害は収束するどころか、むしろ時を経て被害は一層深刻になっているとさえいえる状況である。
そうだとすると、現時点における原発の安全性に関する社会通念は、福島第一原発事故の被害を直視し、原子炉施設は二度とこのような事故を起こさない安全性を備えるべきだという点にあることは明白である。本決定は、災害の危険性を「無視し得る」とし、こうした社会通念から大きくかけ離れたものとなっている。4 さらに、本決定が示した新規制基準は不合理ではないとの解釈は法令に違反していると言わざるを得ない。すなわち、原子力基本法は、「前項の(原子力利用)の安全確保については、確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として、行うものとしている。」(2条2項)。そうだとすれば、原子力利用の安全確保は、確立した国際的な基準に基づき行われなければならないことになる。
そして、国際原子力機関(IAEA)では、原子力の安全確保のために深層防護(Defense-in-Depth)という基準を定立している。すなわち、①異常の発生を防止する、②異常が発生しても、その拡大を防止する、③異常が拡大しても、その影響を緩和し過酷事故に至らせない、④異常が緩和できず、過酷事故に至っても、対応できるようにする、⑤異常に対応できなくても、人を守るという深層防護(これら①から⑤が独立して求められている。)の基準こそが、国際的な原子力の安全確保のための基準なのである。
そもそも、新規制基準には避難計画は入っておらず、深層防護の基準からすれば合理性が認められる余地はない。しかし、本決定は、その点を問題視することなく、自治体が策定した避難計画について、「当該避難計画が合理性ないし実効性を欠くものとしても、その一事をもって直ちに、当該発電用原子炉施設が安全性に欠ける」とはいえないとの判断を示した。これは、国際的な基準である深層防護(⑤)に明らかに反する判断である。
上記の深層防護という国際的基準に照らせば、むしろ、高浜原発3・4号機の運転差止めを認めた2015年4月14日の福井地裁決定や2016年3月9日の大津地裁決定が示したとおり、「新規制基準は緩やかに過ぎ、原発の安全性を担保するものとしては不十分である」という以外の結論はありえないのである。5 本決定は、社会通念という曖昧な概念を媒介させながらも、結局は、「新規制基準には合理性がある」との結論ありきで、基準に適合した原発は動かしてもよいとの形式的判断に基づき川内原発の稼働を容認したものにすぎない。
形式的な判断に終始し、川内原発の危険性の実質的判断を回避した本決定は、原発が我が国に壊滅的な被害をもたらす危険性を内在するという事実から目を背け、住民の生命、身体の安全をないがしろにするものとの非難を免れない。
また、本決定は、人権擁護の砦となるべき司法の責務を放棄して政府の原発推進政策に追従するものであって、新たな原発安全神話の創設に積極的に加担するものと言わざるを得ない。6 自由法曹団は、福島第一原発事故による凄惨な被害を直視することなく、住民の生命、身体の安全を無視した本決定に対し強く抗議する。
2016年4月7日
自由法曹団 団長 荒 井 新 二__
【九州電力川内原発第1号機、2号機稼働差止仮処分即時抗告決定を受けての原告団・弁護団声明(改訂)4/7】本日福岡高裁宮崎支部は、住民が申し立てた、川内原発1号機2号機の稼働差止仮処分決定に対する即時抗告を棄却した。
本件棄却決定は、応答スペクトルに基づく手法につき、地震動想定に用いる経験式が有するばらつきも考慮されている必要があると認め、断層の長さから地震規模を求める松田式にばらつきがあるとしながら、地域的特性を踏まえた地震動評価であることなどを理由に、過小評価となっているということもできないとしている。ばらつきの考慮が必要であるとしながら、結論としては、ばらつきについて適切に考慮していない決定である。また、震源を特定せず策定する地震動(Ss-2)について、震源を特定して策定する地震動(Ss-1)を補完するものとして、位置づけられているとして、Ss-2に求められる安全性の水準を引き下げてしまっている。この点、抗告人の請求を却下した原決定ですら、Ss-2につき、「付加的・補完的な位置付けとして理解することは相当ではない」と判示していることからさらに後退しているものである。
火山の問題については、新規制基準の一部をなす火山ガイドが不合理であること、過去に火砕流が到達したと考えられる原発は原則として立地不適とすべきであること、及び降下火砕物の影響評価において想定した値が10倍以上の過小評価となっていることを認めておきながら社会通念上そこまでの安全性は求められていないという理屈で申立てを棄却している。
また、改正された原子力基本法上、確立された国際水準を踏まえるべきことが明確に要請されているにもかかわらず、火砕流噴火のリスクは現行法制度上考慮されていないとした部分は、法解釈を誤ったものという他ない。
避難計画に関しては、実際の避難計画に実効性等の多くの欠陥があることを認めながら、避難計画が存在しないような場合でないかぎり、避難計画が合理性ないし実効性を欠くものであるとしても、安全性は保証できるという極めて乱暴な理由で稼働継続を認めるものである。本日の棄却決定の結論及び理由は、東京電力福島事故の巨大さ、被害の深刻さ、を直視することなく、政府の原子力政策を安易に追認するもので私たちは到底認める事ができない。
福島第一原発事故により、原発事故がいかに甚大な人権侵害をもたらすか明らかになった以上、原発を再稼働するためには、極めて高い安全性が要求されなければならないことは自明である。
私たちは、この不当決定に臆することなく川内原発の廃炉まで戦い続けることを宣言する。
以上
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