子どもの貧困対策 県政の重要テーマに位置づく
09年にはじめて県議会質問で取り上げた際にも「大変重要」(知事)、「貧困の連鎖を教育の力で断つ」(教育長)との姿勢をしめしたが、様々な実践を通じ、認識をさらに発展させ、現在、「厳しい環境にある子どもへの支援」が、健康福祉、教育分野で、県政の重要テーマにしっかり位置づいてきている。
市町村事業であるが、この4年で全国最低レベルの実施率だった中学校給食につて、全自治体が実施を決定していることも、県の姿勢の反映と言える。
この間の知事の発言、2月県議会の議論、当初予算、から整理してみた。
〔ただし、この問題。なんと言っても国の姿勢。大きな予算を必要とし、とても一県で対応できるものではないが…〕
【「子どもの貧困」に対する認識の発展 ~ 知事の発言より】、
○2016年年頭記者会見 「教育改革」について
「高知県には厳しい環境にある子どもたちが多いことこそが本当の意味で根本的な課題ではないかと考えています。残念ながら家庭環境が厳しい。ゆえに、勉強に集中できる環境にはない。さらに言えば、そのような問題が原因となって、いじめ、非行、不登校につながっていくことも多々あるのではないかと考えられます。
厳しい環境にある子どもたちへの対策について、福祉の面においては、日本一の健康長寿県構想において高知家の子どもを守っていくための対策をしっかり講じていく取組を進めていきますとともに、学校におきましても学習支援などの取組をもう一段強化をしていく。さらにはスクールソーシャルワーカー、そういう専門家のお助けも借りて、子どもたちに寄り添っていく対策を強化していくことが大事ではないかと思っています。」
○2015年8月27日記者会見 「学力調査の結果」について記者の「低学力層の底上げというのが一番大事」との質問に対して・・・
「ご指摘のとおりだと思います」とし「九九が身についていないことについて、小学校の段階からあまり勉強していないことについて、いろいろな理由があると思います。本人があんまり勉強好きではない場合もあるでしょうが、ただ、よくよく調べてみると家庭環境などの諸事情があり、腰を据えて勉強をするような環境が整っていない場合もあったりします。そういう場合もあるということも踏まえて、子どもたちにしっかりと勉強できる環境をつくり、子どもたちに活かしてもらうことが大事だと思っています。
厳しい環境にある子どもたちへの対策を強化することが、高知県の場合には非常に大事だと思っています。これ実は学力だけではないです。いじめや児童虐待などの問題についても、その厳しい環境にある子どもたちの対策を強化することを今後の教育、さらには社会福祉政策の中の柱に据えていきたいと思っています。」
【2月県議会での質問戦】
●「実態に迫る指標設定を」を。知事「生活調査実施し、進化させていく」と答弁
取り組み全体の進捗管理は、知事が議長の「健康長寿県構想推進会議」で実施
質問では、 政府の子どもの貧困対策大綱で示された指標は、就学援助制度では「周知」にとどまっていたり、保護者の健康状況が対象になっていないなどの不十分さがあることから、県の計画においては、「どういった現状・生活実態であるのか基準となる指標をしっかり設定し把握することが土台」であるとし、そうしてこそ「事業の実効性を検証できる」と指摘し、具体的には「就学援助率」や「相対的貧困率」と「再分配前の貧困率」、そして、「物質的剥奪率」を測る指標項目を設定すべき」であると提案しました。
知事は、新年度に、計画を策定するものの「今後さらにより詳しい状況把握や分析を加えることにより、より進化をさせていく必要がある」との認識を示し、新年度、生活実態調査を実施し、相対的貧困率なども新たな指標に含めていきたいこと、取り組み全体の進捗管理は、知事が議長である日本一の健康長寿県構想推進会議において行うと、積極的な姿勢を示しました。
★計画についての私の「パブコメの意見」
【寄せられた意見とそれに対する考え方 4/5】
なお、この計画案には、家庭勉強しない高所得の家庭の子どもの「学力」が、3時間学習する低所得の家庭の子どもより、高い、という、質問でも取り上げた調査内容を紹介している。
●スクールソーシャルワーカーの処遇改善を
「(役割への)期待感は非常に大きい」「予算措置のあり方研究したい」と知事
厳しい環境にある子どもの支援のために、県は積極的にスクールソーシャルワーカーを配置しており、国の補助事業で配置する人数のうち2%強を高知県で活用、別途15人を県単独での配置。新年度は69名から79名に増員されます。(就学前の5歳児も対象にしている。)
一方、高度な専門性を有する仕事ながら、国の基準はきわめて低いこと、また県の委託事業として市町村に配置していますが、机やパソコンがない、相談にかかせない携帯電話も自前など、仕事をする環境面も十分でない実態があることから、処遇改善を求めました。
知事は、「厳しい環境にある子どもたちへの対策という意味においても、スクールソーシャルワーカーに対する期待感というのは非常に大きい」と述べ「指摘の点なども含めて予算措置の在り方をよく研究をしてみたい」「国に対してしっかり政策提言していきたい」と答弁しました。
●重度障害児の介護 知事「想像を絶する苦労」「しっかり対応する」
2月にNHK「四国羅針盤」で放送された「眠れない母親たち~どう支える重度の障害児介護」を紹介しながら、その厳しい状況に対し、行政が積極的に取り組む必要性がある、とただした。
質問通告をうけて、録画を見たという知事は「正直申しあげまして、ホントにもう想像を絶するご苦労だなということをですね、まざまざと痛感させていただいた」と感想をのべ、「ホントにしっかり対応しないといけない話。よく実態を把握し、専門人材の確保とか、実効ある策を、スピード感を持ってしっかり実行につなげていきたい」と決意をのべた。
具体的なとりくみでは
○一人ひとりの状況を詳しく把握する調査を実施しており、サポート体制の充実につとめたい。
○放課後デイサービスについて、「財政的な支援」でサービスが確保できるよう創意工夫をしたい。
○家族をサポートするために県単事業として、医療的ケアを必要とする在宅の重度障害児者のショートステイを4床設置しているが、見守りの体制が不十分で実際に利用できる状況にない問題では、専門職員の配置などの条件整備に県として取り組む必要がある。
○保育所について、体制整備について県として検討する必要性がある。と答弁がありました。
~障害児を抱えた家庭は、経済的、肉体的にもきわめて厳しい環境にあり、「子どもの貧困」の中の大きなテーマの1つである。
【2016年度当初予算 「厳しい環境にある子ども」関連 】
Ⅰ.「日本一の健康長寿県構想」推進 ③厳しい環境にある子どもたちへの支援(大目標③)
(5大目標のうち3番目。少子化対策は4番目)
○学力の未定着、虐待等の困難な状況、貧困の連鎖等により、厳しい環境にある子どもたち及びその保護者について、 「(仮)子どもの貧困対策計画」に基づき発達や成長の段階に応じた支援を抜本強化する。
・児童養護施設入所者の高校等卒業後の進学・就職率80.7%(全国平均93.2%)(H26)
○ 母子保健と児童福祉の連携強化により、早期にリスクのあるケースを発見して児童虐待等を未然に防止する。
○主な新規・拡充施策
▽入所児童の進学や就職についての相談支援等を行う職員の児童養護施設等への配置を支援
【入所児童自立支援等事業費補助金(9百万円)等】
▽市町村による子育て世代包括支援センターの設置等を支援
(国のコーディネーター配置の基準では、小規模自治体の多い高知県では適用が難しいので、県単で支援。また、乳幼児健診の未受診率が高く、リスクの高い家庭への早期アプローチとして保健師配置を支援策は既に導入済)
【地域子ども・子育て支援事業費補助金(24百万円)】
▽児童虐待防止対策コーディネーターの配置など、地域における見守り体制を整備する市町村を支援
【子どもの見守り体制推進交付金(22百万円)】
▽ひとり親家庭の保護者等の就業促進に向け、高等職業訓練受講時の給付金等の支援を拡充
【ひとり親家庭等自立支援事業(142百万円)】
Ⅱ 教育の充実、子育て支援 ②厳しい環境にある子どもたちへの支援の充実
○ 就学前から高等学校までの各段階に応じた切れ目のない対策を進め、学校支援地域本部等を通じて地域と連携・協働しながら、貧困の世代間連鎖を教育の力で断ち切ることを目指す。
○ いじめ問題について、ワンストップ&トータルな相談支援体制を構築するなど、生徒指導上の諸問題の解決に向け、教育相談支援体制をさらに充実する。
○「高知家の子ども見守りプラン」に基づき、非行を未然に防ぐ「予防対策」をはじめ、各段階に応じた対策を推進し、少年非行の防止を図る。
○ 主な新規・拡充施策
▽スクールカウンセラー(293校、65名→329校、77名)、スクールソーシャルワーカー(69名→79名)の配置を拡充
【スクールカウンセラー等活用事業(288百万円)、スクールソーシャルワーカー活用事業(113百万円)】
▽スクールソーシャルワーカーを活用した、5歳児を中心に小学校入学までの切れ目ない支援を実施
【スクールソーシャルワーカー活用事業委託料(9百万円)】
▽小・中学校における放課後の補充学習支援の充実・強化を支援(学習支援員配置予定校:小学校45校 → 93校、中学校46校 → 77校)
【放課後等学習支援事業費補助金(154百万円)】
▽小学校における放課後子ども教室や放課後児童クラブでの学習支援活動等に対する支援を充実
【放課後学びの場充実事業(29百万円)】
▽放課後児童クラブの開設時間延長のための補助を創設
【放課後児童クラブ推進事業費補助金(366百万円)うち開設時間延長支援(4百万円)】
▽スクールカウンセラー(293校、65名→329校、77名)、スクールソーシャルワーカー(69名→79名) の配置を拡充 【再掲】
▽「心の教育センター」の相談体制を強化し、ワンストップ&トータルな教育相談支援体制を構築
(スクールソーシャルワーカーの機能を高めるためのスーパーアドバイザー機能)
【教育相談事業(27百万円)】
▽学校支援地域本部の設置を促進(85校→125校)
【学校支援地域本部等事業(60百万円)】
【遅れていた中学校給食 この4年で全自治体が実施を決定】
当初、知事は、学校給食実施へ、財政支援を考えていた。が、実践の中で認識を変え、必要性について強力に働きかけをしたと思われる (なお、市町村が南海地震対策で、緊急防災減災債を活用した場合に、市町村負担となる3割分について、全額、県が支援する交付金を作っている。こうした市町村への財政支援とあわせ技的に後押ししたのではないか、思う)。
○中澤・県教育長(当時) 「学校給食実施 金がないのは何処も同じ。首長の判断の問題」
都道府県が(学校給食設備の)ハード整備に関して単独で上積みをしているのは大阪府のみで、その他の県にはない。
今(中学校給食の)目処がたっていないのは高知市と須崎市だけで、切歯扼腕(歯ぎしりして、甚だしく憤り残念がること)している。
たとえば大阪府のように県単独で施設整備の上積みをするとした時に、じゃあ高知市と須崎市がやりますかといえば、やるということではない。市の行政として、そこに至っていない。
私が見るに「金がない、金がない」と言うが、金がないのはどこも同じだ。行政需要というのはあまたあって、金は足りない。その中で政策の優先順位だと思っている。その時に何故そこにならないのか。
現場にはいろいろな声もあるだろう。準備が慌ただしくなるし、アレルギーの問題もあるが、私は決断ではないかなと思っている。
学校校舎の耐震化も高知市と須崎市がすすんでいない。
いつも県で何とかできないかという話を戴く。何とかしたいが、金は足さないで、市町村にやりましょうという働きかけはずっとしてきており、それをやったがために、あと2つだけになっている。他はやってきている。
そういう働きかけは今後もしていくが、どうしてやらないかというはっきりした返事はない。
教育委員会サイドからすれば、高知市も須崎市も金の問題と思っているかもしれないが、でも判断するのは首長だ。私からいえば努力が足りないと思う。努力が足りないからといって、そこに県単を上積みするのはおかしい。
(2014年3月12日、県議会総務委員会)
■日本財団・三菱UFJリサーチ&コンサルティングによる「子どもの貧困の社会的損失推計」レポートの第二弾より~
各都道府県における課題の深刻度と、対策がどれだけ行われているかの指標化のマトリクス
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