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保育士の処遇改善は保育問題解決のための最優先課題 全保連

全国保育団体連絡会の見解。「保育士は足りないわけではありません。資格者はいるのに、劣悪な処遇のために職業として選ばれなくなっている、保育士として働き続けることに希望が持てなくなっている」ことに問題の本質がある。詰め込み、無資格者の活用… 問題を深刻化させてきた「対策」の延長線では、矛盾が深まるだけである。保育士を専門家として見ていないのだろう。背景に、ジェンダーバイアスも感じる。

 同時に、そこには農林業や中小業者の切り捨て〔 教育や社会保険の重い私的負担が重なって〕、地方で暮らしていけない、東京など都市部への一極集中を推し進めてきた構造的問題がある。

【保育士の処遇改善は保育問題解決のための最優先課題 ― 保育士確保と待機児童解消の実現のために ―3/29】
【待機児童解消のために必要なこと 〈論点整理〉― なぜ深刻化したのか、解消のために何をすべきか ―3/29】

【保育士の処遇改善は保育問題解決のための最優先課題 ― 保育士確保と待機児童解消の実現のために ―3/29】

 「保育園落ちたの私だ!」「保育士辞めたの私だ!」。

 保護者や保育者の悲痛な叫びが、全国各地に広がっています。国はようやく待機児童解消や保育士の処遇改善のために重い腰をあげようとしていますが、これまでの国の施策は規制緩和や基準の弾力化が中心であり、その延長線上では問題の解決がはかれないことは明らかです。何よりこうした施策が幼い子どもの生命と安全を脅かすものになることを危惧します。
 幼い子どもの成長・発達と子育て家庭を支える「保育」という重要な仕事を、専門職である保育士が誇りをもってすすめるためには、保育士の処遇改善など抜本的な見直しが必要です。これなくして保育士確保と待機児童の解消はありえません。ここでは、保育士の処遇改善の問題について、いま必要なことを明らかにするものです

(待機児童解消については別に公表した『待機児童解消のために必要なこと<論点整理>』をご参照ください)。


1. なぜ保育士の処遇が劣悪なのか

① 重い責任に見合わない低賃金

 潜在保育士が保育士として働かない理由に「給与の低さ」があげられています。2015年度の公定価格(国が定める保育の費用)では、保育士の賃金(本俸基準額)を月19万9920円としていますが、非常に不十分なものです(1)。
実際の保育の現場では、国基準(児童福祉施設の設備及び運営に関する基準、以下国の配置基準)以上に保育士を配置しています。多くの保育士が働けば、1人あたりの賃金は国の見積もりより少なくなってしまいます。常勤者でも手取り12万円とか15万円などの実態が報告されているのはそのためです。

 国の配置基準以上に保育士を配置しなければならない要因は、国の配置基準が国際的にも非常に貧しいという制度上の問題にあります。たとえば、4、5歳児は子ども30人に保育士1人の配置となっていますが(2)、それでは1人ひとりの子どもにていねいにかかわることができないので、多くの保育所では国の配置基準以上に保育士を配置しているのが現状です。

 また、保育所では10~12時間の開所が一般的(3)ですが、国の配置基準はこのような長時間保育に対応した基準になっていません。開所時間や子どもの在園時間が年々長時間化するなかで、子どもの人数にあわせて必要な保育士を配置せざるをえないのです(4)。

② きびしい仕事、労働条件

 労働条件の厳しさも保育士不足の要因です。保育士は、幼い子どもたちの生命を守り育てると同時に、保護者支援、地域支援等も行う専門職であり、日々の保育にあたっては高い知見と技術、職員間の共同が求められますが、それにふさわしい労働条件が保障されているとはいえません。国の配置基準の貧しさから、現状では保育士は1日の勤務時間8時間すべてを子どもの保育にあたらなければならなくなっています。たとえば、子どものお昼寝中に子どもたちの安全を確保しながら連絡帳を書くようなことが日常化しているため、休憩時間も充分にとれていません。

 保育士の仕事には、子どもを保育する以外にも、教材の準備、保護者との連絡・相談、保育計画や記録の作成、地域や専門機関との連携などがあり、専門性を高めるために継続的な研修も欠かせません。しかし、現状では、勤務時間内にこれらの時間をとることはできず、長時間労働やサービス残業、持ち帰り残業などをせざるをえないのが実態です(5)。職員間で必要な打ち合わせ会議をする時間も確保されていません。これらは、これまで保育士の献身的な努力に頼ってきましたが、それも限界にきています。

 また、保育所の開園日数の多さにも注目する必要があります。国は、年間約300日、土曜日も含め週6日の開所を保育所に求めています。日曜日に行事や研修を行っても代休をとることがむずかしく、新年度の準備も子どもの保育を行いながらになります。これは、土曜休園があたりまえで、学期ごとに長期・短期の休園がある幼稚園と比べて大きな違いといえます。こうしたことも、保育士の負担となっています。

 保育所は、保護者の就労支援のために必要不可欠な施設として重要な役割を果たしています。しかし、そこで働く保育士をはじめとする職員の労働条件はそれに見合ったものになっていません。

 今、多くの職場で当たり前になりつつあり、幼稚園でも実現している、完全週休二日制を含め、保育所職員のワークライフバランスを確立することが急務であり、そのためには職員配置基準の改善による保育士の大幅増員が必要です。

2.保育士の処遇改善のための課題

① 職員配置基準(最低基準)の抜本的な改善と賃金単価の改善が処遇改善のカギ

 こうした現状をふまえ、以下の改善が早急に必要です。

・子どもの発達を保障し、開所時間、開所日数、子どもの数にふさわしい保育士の配置ができるよう、国の配置基準の抜本的改善
・勤続11年以降は見込まれていない昇給財源の確保など賃金単価の改善
・全産業の平均並の賃金を国として保障する(10万円アップ)

 さらに、保育士が保育の仕事にやりがいを感じ、キャリアを積んで働き続けていくためには、研修や休暇の保障など、専門職にふさわしい労働条件と労働環境が不可欠です。保育士を大幅に増やし、賃金を上げ、働き続けるための条件整備をすすめなければ人材確保はできません。

② 公費が保育士の人件費に確実に使われるためのルールの確立

 1人ひとりの保育士の賃金をあげるために、保育のために支出された公費が人件費として適切に支出されることも必要です。新制度では、保育に必要な費用(公定価格)を国が定め、公費負担分(給付)を保護者に支給(施設・事業者が代理受領)します。しかし、この給付の使途については制限がなく、事業者の裁量にまかされているため、公費が保育士の人件費等に充分に使われていないという問題が指摘されています(6)。

 また、施設整備に対する補助金が不十分なため、新園建設をすすめる事業者は、人件費を削って自己資金を調達しなければならず、これも処遇の劣悪化の一因になっています。補助金を増やし、国や自治体の責任で施設整備をすすめることも課題です。

 これらをふまえ、保育の費用に含まれる人件費の単価を大幅に改善し、保育のために支出された公費は保育以外には使えないようルールを確立したうえでの、公費負担の増額が必要です。そのことが保護者負担を増やさずに保育士の処遇を改善することにつながります。

3.規制緩和策は保育士の処遇改善に逆行し、保育の質の低下に直結する

 保育士確保のためには、上記のような抜本的な対策が急務ですが、国は保育士の確保ができないことを理由に、国の配置基準を一部改正し、保育所等における必要な保育士の配置について弾力化方針を打ち出しました(7)。これは、国家資格である保育士資格がなくても資格者と「みなす」ことができるというもので、他の専門職では考えられないことです。

 これにより、保育所等に配置される保育士の資格者は、不十分な最低基準(8時間を基本)の配置基準上示される数であればよく、長時間開所する保育所では無資格者による保育が事実上認められたことになります。これは、これまで不十分ながらも職員配置基準の改善をすすめてきた保育施策を大きく後退させるものです。

 資格者の配置の弾力化、規制緩和は保育士の「専門性」を貶めるものであり、保育士の処遇改善に逆行するだけでなく、保育の質の低下に直結します。

4.保育士の処遇改善なくして保育士確保と待機児童の解消はできません

 国の責任で制度の抜本的な改善と財源の確保を

 保育士は足りないわけではありません。資格者はいるのに、劣悪な処遇のために職業として選ばれなくなっている、保育士として働き続けることに希望が持てなくなっているのです(8)。専門職としての保育士の仕事を位置付け直し、専門職にふさわしい処遇改善なくして、保育士確保も、待機児童の解消も、保育の質と量の拡充もありえません。規制緩和や賃金の4%アップなど小手先の改善では、保育現場にますます負担を押しつけることになり、現場の疲弊を招きます。

 格差と貧困の広がり、とりわけ子どもの貧困が問題になっているなか、福祉としての保育、権利としての保育がいっそう重要になっており、保育所の役割はますます大きくなっています。

 すべての子どもが平等に保育され、成長・発達する権利が保障されるためには、国と自治体の責任が必要不可欠です。国は保育を市町村まかせにせず、市町村が保育の実施責任を果たせるよう、保育制度の抜本的改善と財源確保をすすめてください。


1. 保育士の平均賃金は全産業の平均賃金よりも12万円低いとされている。(厚生労働省『賃金構造統計基本調査』2014年版)
2. 職員配置基準は児童福祉施設の設備及び運営の基準(厚生労働省令)に定められている。「保育士の数は、乳児おおむね3人につき1人以上、満1歳以上満3歳に満たない幼児おおむね6人に1人以上、満3歳以上満4歳に満たない幼児おおむね20人に1人以上」など、となっている。これをふまえて都道府県、政令・中核市が独自に条例で定めるが、国の基準が不十分なため、国基準以上の基準を定めている自治体が多い。
 また、諸外国と比べても基準の貧しさは明白で、たとえばフランスでは、職員一人あたりの児童数を、3~5歳児については最大15名としている。
3. 10時間以上開所している保育所は、全保育所の98.2%となっている。(厚生労働省『社会福祉施設等調査報告』2013年)
4. 国は、11時間までの保育を認めている標準時間認定の子どもに対して、8時間までの保育を認める短時間認定の子どもより割高な保育費用を設定しているとしているが、まったく不十分な内容である。
5. 同じ専門職である幼稚園教諭は、8時間勤務のうち、実際に子どもと接するのは4時間の教育時間であり、それ以外は会議や研修、教材準備等に充てることができるようになっている。
6. 2013年8月に情報開示請求によって明らかにされた横浜市内の企業立保育所の運営費(2011年度)における人件費の割合は平均で53.2%(最低42.8%、最高62.5%)であった。一般的には保育所運営費における人件費の割合は70~80%と言われている。
7. ①保育所における保育士配置要件の弾力化、②幼稚園教諭、小学校教諭、養護教諭等の活用(保育士とみなす)、③最低基準を超える加配人員における保育士以外の配置要件の弾力化、など。2/3以上は保育士資格者であることが必要。
8.資格があっても保育士への就業を希望しない理由(複数回答)は、①賃金が希望と合わない(47.5%)、②責任の重さ・事故への不安(40.0%)、③自身の健康・体力への不安(39.1%)、休暇が少ない・休暇がとりにくい(37.0%)、などとなっている。(厚生労働省調査 2013年)

【待機児童解消のために必要なこと 〈論点整理〉― なぜ深刻化したのか、解消のために何をすべきか ―3/29】

 保育所の待機児童問題がなぜこのように深刻化しているのでしょうか。

 待機児童問題の深刻化は、認可保育所が不足しているにもかかわらず、この間展開された待機児童対策が、保育所の新増設を基軸にせず、急場しのぎの対応に終始したことで引き起こされたものです。

 現在、待機児童問題への社会的関心が急速に高まったことを受けて政府が行おうとしている対策も、従前の規制緩和策の延長線上にあるものです。このような選択は、保育の質の低下をさらに招きかねないものであり、私たちは認めることはできません。

 今こそ、国がこれまでの規制緩和中心の政策を転換し、真の問題解決のために足を踏み出すことを求めて、以下論点を整理します。


1.保護者の願い

 保育を求める保護者の状況は多様ですが、ただ保育の受け皿が増えることを望んでいるのではありません。その願いは、①子どもにとっての環境・条件が整い、②居住地の身近で、③就学前まで預けつづけることができるような施設への入所にあるといえます。

 こうした保護者の願いを踏まえると、子どもを安心して預けることができる保育の担保として市町村が保育の実施に責任を負うことが重要と考えます。そして、待機児童の解消のためには、市町村の直営ないし委託事業であり、一定の条件が整い、就学前まで保育を受けることができる認可保育所の新増設を基軸にすすめることが必要といえます。

2.待機児童問題が深刻化している自治体の特徴

 待機児童問題が深刻化している自治体は、子どもの人口に比べ認可保育所が極端に不足していた地域です(i)。この問題が社会的に注目されはじめた2000年以降も、後述する待機児童対策の影響を受け、認可保育所の新増設が中心課題にならず、逆に抑制されたことで、事態の深刻化を招いたといえます。このような自治体は、よく言われるように「保育所を作っても、作っても、足りない」のではなく、もともと不足しているのに、その後も他地域に追いつくような保育所作りが行われなかったのです。この事実を踏まえることが、問題解決の出発点といえます。

3.これまで(2000年代以降)の待機児童対策の問題点

① 規制緩和中心の国の待機児童対策
 国が行ってきた待機児童ゼロ作戦などの施策は、認可保育所の新増設を中心にすえず、既存施設の定員を超えた入所の拡大による詰め込みの促進などの規制緩和策に特化したものでした。

② 保育所の整備にブレーキをかけた自治体独自施策
 東京都の認証保育所が代表例ですが、都市部自治体は、独自の認可外保育活用制度を待機児童対策として推進しました。そうした制度は、保育士資格者を6割でも可とするなど認可保育所の基準を規制緩和して適用するものですが、先に示した保護者の願いに沿ったものとは言い難く、あくまでも次善の選択肢にすぎません。こうした施設ができることで、たしかに3歳未満児保育の受け皿は拡がりましたが、一方で認可保育所の新増設にブレーキがかかってしまいました。

③ 問題状況をあいまいにした待機児童集計
 国の待機児童数の把握や公表の仕方などに問題があり、深刻な実態を社会として共有できなかったことも忘れてはなりません。厚労省は、待機児童解消が政治的な課題になると、より少ない数値が集計されるように待機児童のカウント方法を変えてしまい、待機児童の実態を見えづらくしてしまいました(ii)。

 このことで、待機児童問題はすぐに解消するとの誤解が広がり、結果として自治体は、認可保育所の新増設に本腰を入れず一時しのぎのような対応に終始してきたといえます。

④ 公立保育所の新増設という切り札を切らせない政策状況
 公立保育所の運営費・施設整備費財源に対する国庫補助が削られたことで、公立保育所における待機児童対策の実施にもブレーキがかかってしまいました(iii)。加えて最近になって国は、公立保育所の統廃合を促進するような新たな計画づくりを自治体に求めており(iv)、公立保育所による受け皿拡大という、自治体が即決できるカードが切れない状況になっています。

⑤ 小規模保育等の拡大で生じる「3歳の壁」
 2015年度から実施された新制度によって導入された地域型保育の各種事業は、保育所よりも条件を緩くして、3歳未満児保育を「柔軟」に拡大することを目的としていますが、実施1年目にして「3歳の壁」ともいうべき卒園後の受け入れ先不足問題が顕在化しています。小規模保育等を増やせば増やすほど3歳以降の受け皿不足問題が深刻化してしまうのです(v)。

 このように、この間の待機児童対策は、認可保育所の新増設を主軸としない対策でした。今こそ、その転換を図るべきです。

4.さらなる規制緩和には反対

 このような状況を受けて、規制緩和をさらにすすめたり、市町村や、社会福祉法人等の事業者が施設の新増設に消極的だからとして、保育を市場化して自治体の関与をなくし、企業等が自由に保育施設を設置・運営できるようにすることが政府の内外で検討されています。しかし、これまで以上の規制緩和や保育の市場化ともいうべき施策の展開は、子どもの安全やその成長発達に大きな支障をきたす恐れがあり、絶対に容認できません。

 なお、認定こども園の活用を求める意見もありますが、この制度は低年齢児保育を促す仕組みではなく実際に限界もあるようです(vi)。さらに幼稚園の活用についても、待機児童問題が深刻な地域は子ども人口が増えるなど、幼稚園としても低年齢児保育の実施にまで手が回らない状況にあります。

5.今後求められること

 最近になってやっと国・自治体も、認可保育所の整備を打ち出してはいますが、その取り組みはまったく不十分です。遊休地があるのに保育所用に貸し出す国有地が明らかにならなかったり、貸し出ししても高額な賃料を課して、市町村の負担軽減どころか逆に重荷を背負わせる例もあります。

 急速に保育所等の整備をするためには、自治体や事業者の努力だけでは限界があります。市町村や社会福祉法人等の事業者に負担を強いる状況を改善するために、国は、この間の政策を改め、施設整備補助を大幅に改善するほか、公立保育所の整備拡充に財政的支援を復活させるなど、公費投入の増大を基礎に自治体や事業者を支援すべきです。

 さらに国は、3月28日に待機児童解消緊急対策を発表しましたが、既存施設への子どもの詰め込みと規制緩和が中心の内容であり、緊急と言いながらこれまでの政策と全く変わりません。それどころか、国の基準以上に上乗せをして保育の質向上に努めている自治体に対して基準切り下げを要請するなど、保護者・保育者の願いや子どもの権利保障を否定していると言っても過言ではありません。

 規制緩和に頼ったこれまでの政策を引き継ぐのではなく、これを抜本的に転換し、認可保育所の整備を主軸にした対策を、国をあげて推進することこそが緊急に必要です。

 なお、待機児童解消のためには、保育士不足問題の解決が不可欠です。そのために、保育士の処遇改善を実現し、専門性を確立すべきですが、この点については同時に示した「〈見解〉保育士の処遇改善は保育問題解決のための最優先課題」を参照下さい。


1. 待機児童数の多さで注目される東京都世田谷区を例に取ると、その保育所普及率(保育所入所児童数÷当該人口×100 世田谷区調べ)は、2015年当初の段階で25.8%である。全国平均の36.2%(2014年度、『保育白書』2015年版調べ)と比べ、10ポイント以上も下回っている。なお、東京都全体の普及率は、2013年度において31.2%であり、やはり全国平均を下回っている。

2. 厚労省は2001年に、待機児童数についての「新定義」を示した。新定義では、それまで待機児童としていた、認可保育所には入れていないが自治体が何らかの補助を出している認可外保育施設へ入所している子どもは待機児童数から除外することで、旧定義に比べその数は4~5割減となった。保育所の整備目標を明確にするには、隠れ待機児童数も含めて明らかにすべきだったが、逆に課題を曖昧にしてしまった。

3. 公立保育所の運営費の国庫補助外しは2004年度から、施設整備費補助の国庫補助外しは2006年度から実施された。民間保育所には国庫補助があるのに、公立保育所を維持したり新設する場合は、すべて市町村負担となった。このことで、民営化や統廃合がすすみ、待機児童問題が深刻なのに公立保育所が減るという事態が進行した。

4. 2014年、国は自治体に対して、公立保育所などの公共施設の統廃合を進める計画(公共施設等総合管理計画)策定を求めている。それを推進すると財政的に優遇されることになる。

5. 小規模保育等での3歳児の受入容認化も検討されているが、活動量が飛躍的に増す3歳以上児にとって、園庭設置を前提にしていないような小規模保育事業等が保育の場として相応しいとは言えない。

6. 新制度が導入されてからの既存施設の認定こども園への移行状況は、保育所からの移行が幼稚園からの移行を上回っている。これは、保育所から移行した場合に収入増が図れる特殊な単価が設定されたこと等が要因と考えられる。しかし、保育所から認定こども園に移行しても、保育を必要とする子どもの受け入れ枠が増えることにはつながらない。この点を踏まえると、この制度の待機児童対策として効果は限定的といえる。

 注の3であるが、公立保育所の整備に対する国庫補助は廃止されたが、補助率1/2に匹敵する事業費には、地方債が発行でき、元利償還金の全額が、交付税措置される。まあ、交付税も、市町村の一般財源なので、全額市町村負担と言えるが・・・この点は、行政側が「民営化」の口実に使っているので、正確な認識が必要である。

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